コタツをつくってくれた話を読んでいない人はこちらからどうぞ。コタツデストロン
読んでいなくとも話はわかります。








寒いなぁ!!とスカイワープが叫んで、スタースクリームが寒いと続ける。
自分も寒い。サンダークラッカーはぶるぶると翼を震わせた。


「鍋だ」
「…鍋?」
「それだ!!」






[hotchpotch]







人間で言う給料とは違うがメガトロンから一日分のエネルゴン支給の量は大抵決まっている。
エネルギー奪取で活躍した者や、作戦成功の宴の際では大量にエネルゴンは支給されるのだが
スタースクリームなんかは自分の実験や体調が悪い、などで使ってしまうので
メガトロン様にエネルギーがたりねぇ〜とまとわりつくのが目に付く。
スカイワープも似たようなものだ。ワープでのエネルギー消費は大量な上に、こいつも計画性がない。
あまり大掛かりな技を使わず、エネルギーを消費しないようにすごしているサンダークラッカーに
たりねぇ〜と寄り添ってくることは少なくない。
よく人間の中には貰った給料を全部使ってしまって、だらしなく友人を頼りにすると言った状況が
あるようだがそれに似ているのかもしれない。
今日はそんな阿呆ジェットロン2羽が出した案は全員でエネルゴン出し合って補給兼温まろうと言う訳だ。


「コタツは?」
「借りてきた」


サンダークラッカーとスカイワープの部屋にコタツを持ち込む。
サウンドウェーブが以前寒い寒いと騒いで居た時に簡単に作ってもらったものだ。
始めてみた時はなんだこれと思ったが温かかったのでジェットロンでよく使っている。

スタースクリームは借りてきたといったがあれはメガトロン様も好んでいたから多分無断だろう。
サンダークラッカーはそれを見てため息をついた。


「準備できたかー?」
「このスタースクリーム様にぬかりはねぇ」
「へぇ、いつもみたいに口だけじゃなきゃいいけどなぁ」
「るせぇぞスカイワープ」


サンダークラッカーは黙って2人の話を聞いていた。
スタースクリームは多少なり「鍋」について知っているらしいがサンダークラッカーは「鍋料理」を知らなかった。
温かくなれる料理だというのは知っている。地球にある鍋という陶器の中で煮込むのだ。
スタースクリームはどっから持ってきたんだか俺らサイズの鍋とコタツの上に簡易用のカセットコンロを置いた。

「スタースクリーム。準備良いな」
「スカイワープと暫く前からやってみてぇなって言ってたんだぜ」
「サンダークラッカー。液状エネルゴン取ってくれよ」
「あ、あぁ」

サンダークラッカーは作業の邪魔にならない程度に近くで眺めていたのだが
スカイワープに頼まれ、部屋にあるエネルゴンを渡すと鍋に入れて煮込み始める。

「エネルゴンって煮ていいのか?」
「それはスタースクリームが管理してる」
「心配いらねぇよ。俺様がエネルゴンの沸点をいじって」

スタースクリームはぶつぶつと昔の研究員だったころの癖なのか
どうやってエネルゴンを爆発させずに沸点を弄り、温めているのかを語っている。
スカイワープは聞く耳持たずといった様子で暖まってきたコタツにもぐりこみ指先をさすっている。
サンダークラッカーもそれを見て先ほど同様翼をぶるっと震わせた。

あー…俺もコタツはいろう。



もそもそとスタースクリームの対面に座って温かくなっていくエネルゴンを眺めた。
スタースクリームがまだぶつぶつ良いながら鍋をかき回す。
どうやったんだかエネルゴンを固形化させて、形を丸や長方形にしたものを鍋に入れていく。

「これ全部味変えてあるからよ」
「え!?」
「そんなんできるのかよ!?」
「…お前昨日の出撃こなかったの…」
「全部入れたから暫く煮込むぞ」


スタースクリームは黙って蓋をするとスカイワープが盛大に笑った。
そのスカイワープを蹴る為にコタツの中で脚を動かすと蹴られたのはサンダークラッカーだった。




*




「うめぇじゃねぇか」
「だろ!」
「やるじゃねぇか」
「まぁなぁ!」


スタースクリームは褒められて嬉しそうに笑った。普段のような悪い笑みでなくにこにこと笑う。
いつもこうやって笑っていれば可愛いのになぁとサンダークラッカーは思いつつ言わないでおいた。

「おでんとか言うものを似せてみたんだ。硬さや味を」
「これでセイバートロン星で店開けるぜ」
「明日のメシもこれにしてくれ」
「冗談じゃねぇぜ」

嫌がりながらもしかしスタースクリームは嬉しそうに笑っている。
スカイワープはばくばぐ頬ばると口元を汚した。

「あー、スカイワープ。汚してるぞ」

サンダークラッカーがそれを拭う。口の端についたエネルゴンの欠片を指先でとって
口元を濡らす液体を親指で拭とスカイワープは黙ってそれをまった。

「サンダークラッカー!お前食べてないだろ!」
「え?んなことねぇよ」
「俺様の鍋が食えねぇってか?」
「え、だから、食べてるって…」

スタースクリームは鉄製の串で四角いエネルゴンをさすと器用に鍋から取り出して
サンダークラッカーの口元まで持っていった。


「ほら」
「あ、う」
「食えよ」

差し出してきた串の先で温かいエネルゴンが湯気を立てる。
口前で湯気を出すエネルゴンが滑り落ちそうになる。

「あ、わ」
「だー!落ちちまうじゃねぇか!馬鹿が!」

無理にサンダークラッカーの口内に押し込めると先ほどのスカイワープと同様口周りに液体がついた。
スタースクリームはとりあえず食べさせたことに満足した。
スカイワープと言えばお前だって人のこと言えねぇじゃねぇか!と少しだけ笑った。

「ほら、こっち向けよ」
「む、ひぶんで」

口の中にまだ入っていて喋りづらい、スカイワープが横から顎を掴んで自分の方に向けると
スカイワープはサンダークラッカーが自分にやったように口を拭った。
「べとべとするわ」と一言呟いて顎先までたれた液状エネルゴンを舌で舐める。
そのままスカイワープは口周りを舐めるとついでに舌を口内に押し込んだ。

「お前ら食事時に……」
「んんっ!!ん!」

スタースクリームが呆れ声をだして鍋をつつく。
そんなこと言っても困っているのは自分だ。スカイワープはきっちり両手で顔をはさみこんで離さなかった。



*




「あー、あったけぇ」
「ちょっと熱くねぇか?」
「ばぁか。これぐらいが丁度良いんだよ」


3人でコタツからでれないまま暫くたった。
ふざけだしたスカイワープを口からひきはがして再度食べ初め
食べ終わった鍋は再度蓋をしてコタツから降ろし、床にカセットコンロ共々置く。
満腹だ。これ以上の摂取はよくないな。
サンダークラッカーは満足気にため息を吐いてコタツに肘をついた。


「なんかつまんねぇな」
「なんか楽しいことねぇのかよ。スタースクリーム」
「あぁ?なんで俺…」


お前らは何かっちゃぁ俺だなぁと拗ねたように腕組みしたスタースクリームは首を捻った。
何か考えているらしい。ろくな事考えないことも多いが、スタースクリームは中々面白いことを言い始めるので
サンダークラッカーとスカワープは期待を込めてみた。



「…よし…熱いんだよな?サンダークラッカー?」
「あ、あ…あぁ」

スタースクリームの笑い方は微笑みとは言わない、歪んだ笑顔だった。
少し引き気味にサンダークラッカーはうなづく。

「確かに、コタツに入って温かいもん食って、満腹となりゃ身体は温まっても仕様がねぇ」
「まぁな」
「それでなんだよ?」
「…今から俺がお前らをゆっくりゆっくり、言葉だけで冷やしてやるよ…」
「はぁ?」
「言葉だけで?」
「地球にあるホラーとか、怖い話ってやつだ」


スタースクリームはにやっと笑って遠隔操作で部屋の電灯を落とした。
ぱっと一瞬で部屋は暗くなる。アイセンサーを赤外線に切り替えようかと考えたが
スタースクリームがコタツの前まで手を伸ばしてきたのが分かる。
スカイワープもわかったようで赤外線に切り替えずにその指先をみた。
スタースクリームは中指の第一関節を人間では曲がらない方向に折るとそこから小さい火がでた。


「明かりはこれだけだ…オイルちびるんじゃねぇぞ?」
「てめぇの話なんてたかが知れてるんだよ」
「その火仕込んでおいたのか?」
「これは新兵器の一環だ。まだ開発途中」


スタースクリームの指先の火はゆらゆら揺れて今にも消えそうなほど小さくなったり
兵器と言っても過言ではないほど大きくなったりした。