地球には若気の至りって言葉があるみたいだけどよ。
これはセイバートロニアンにもいえる事だって俺は思ったね。

エネルゴン酒の臭いをまきながらスタースクリームは口を開いた。




参謀会議





何前万年も前の話だ。正確な日付なんて覚えちゃいねーさ。
内容ももううろ覚え。ただ単に俺が記憶してなくてもいいって思っただけかも
しんねーな。

時期はデストロン軍に入ってすぐ。自分は「航空参謀」と言う位置についた。
すぐに航空参謀になったから、俺には新人なんていう感覚はなかった。
それでもメガトロンは俺を新人として扱ったし、わからないことは
サウンドウェーブに聞けが口癖だった。サウンドウェーブも俺を新人として
扱ったしな。そんなメガトロンとサウンドウェーブに腹も立てた。
メガトロンのことはそこそこに敬ってたさ。
その頃は宇宙を統べる器だと思ってたし。でもサウンドウェーブ。あの野郎は別だ。
なんでこんな奴が情報参謀なんてやってんだかって
毎回戦闘や廊下で会うたびに思ってた。



まぁ、今思い出せば若かったってやつかもな。



*






今日のサイバトロンどもは弱かった。捕虜も手に入れた。
自分の怪我も対した事ないし。リペアは必要ねぇな。
時折ふんふんと鼻歌を歌ってみたり、廊下ですれ違う一般兵達に挨拶されたり
しながらセイバートロン星のデストロン基地内をスタースクリームは闊歩していた。


「スタースクリーム」
「あぁ?んだよ…サウンドウェーブ」

スタースクリームは長い廊下を荷物を引きずりながら歩いていた。
全身青の機体がどこからともなく現れて声をかけてくる。
自分が好印象を抱かないサウンドシステムだということにはすぐに気付いた。

「今日は殺すな」
「はぁ?なんでだよ…」

スタースクリームは廊下を紫色のオイル色に染めながら進んできたのだ。
その手には鎖が握られていて、その鎖の先にはサイバトロンの生き残りが3体いた。
1体は気絶。1体は朦朧としているが意識はあるようだ。
もう1対はまだ暴れるほどの力がある。


「理由でもあんのか?」
「少し使う。…一番元気なのを残しておけ」
「あぁ?これか?けっ…俺が手足をもいでやろうと思ったのによ」
「………」

サウンドウェーブは返事をしなかったが黙って見つめ返してくる。
自分はこのサウンドウェーブの雰囲気が嫌いだ。
何考えてるのか、全然わからねぇし。

「はいはい。わかりましたよ…」

再度サイバトロンどもを引きずると拷問部屋まで運んだ。



これは俺の趣味さ。生意気な口をきくサイバトロンの感度を最大まであげて
じっくり、ゆっくり手足をもぐんだ。その時の悲鳴は最高だ。
感度は最高まであげてあるからな。指の関節を一つもぐだけでも身体を
引き千切られたかのような痛みが走るだろう?そんな悲痛な声が自分を煽る。


「おぇっ……だすっ…けで…」
「命乞い!いいねぇ…サイバトロンらしくて好きだぜ。それ」

足元にすがるサイバトロンの腕を引っ張ってみしみし言うまで引き伸ばす。
喉の奥から痛みをこらえるように悲痛な声が漏れ出てくるがまだぬるい。

「ぁあああ!!ああ!」
「っ…最高だ…」

ぶしっと関節部位から紫色したオイルが噴出して顔を汚してきた。
頬から頭部にかけてオイルが滴るのを自分の手で拭う。口の周りは舌で舐めとった。


「…スタースクリーム」
「ん。あぁ、サウンドウェーブ」
「……酷い匂いだ」
「あぁ、サイバトロンの体内オイルだぜ。これが癖になるんだよ…」

サウンドウェーブは理解不能と首を振ると辺りを見回した。

「…残りは」
「奥だぜ。あんまりにもうるせぇんで麻痺させて転がしてある」
「そうか。意識は」
「残ってるだろうよ。ガタガタ暴れてるみたいだしよ」

目で最後のサイバトロンのありかを示すとサウンドウェーブは視線を追った。
確かに目の先には小さな箱があり、ガタンガタンと音を立てている。

「あの中か」
「あぁ」

スタースクリームはすでにサイバトロンを1体ばらしているので今の今まで
遊んでいたサイバトロンの胴体に座るとサウンドウェーブを見上げた。
椅子が傷みに苦痛の声を上げる。素敵なつくりだと思うだろう?


「どうぞ。俺は高みの見物といかせて貰うぜ」
「……好きにしろ」


嫌いだ。先輩面する青いサウンドシステムが。
無口で無愛想で何を考えてるのかわからない。
メガトロンにへつらってゴマすりする糞サウンドだ。
そのサウンドシステムがわざわざ捕虜一人相手に何をするのか興味がないやつの
方がおかしい。
サウンドウェーブは箱を開いて中身を確認するとそのまま箱を横倒しにして
両手両足を縛ってあるサイバトロンを足だけで転がすように出した。


「殺す…殺してやるぞ!デストロン!」
「……まだまだ元気だな」
「少しもぐかぁ?」

自分の指関節を曲げ下げして笑うとサウンドウェーブは振り返ってため息をついた。

「いい。俺はお前と違って手足をもぐ趣味はない」
「あ、そう」

時々椅子代わりのサイバトロンが呻くので足で蹴る。
意識が落ちかけているようだ、しかし落とさない。自分の仲間が破壊される所を
ゆっくりと一緒に見物してもらうことにする。

サウンドウェーブはまだまだ元気そうなサイバトロンを暫くの間眺めると
足元にしゃがみこみ、両足首に巻かれた鎖を解きにかかった。

「お、おい。何してんだよ」
「お前には関係ない」
「関係ないだぁ!?俺が苦労してだなぁ!」
「黙っていろ」


振り返りこちらを睨んでくるサウンドシステムは恐ろしく殺気だっていた。
自分でも悔しくなるが息を呑む。それ以上言い返さないとサウンドウェーブは
またサイバトロンのほうを振り返り、鎖をときにかかった。

もちろんサイバトロンとて黙っているはずがない。
解かれた脚を使ってサウンドウェーブを蹴り倒そうとする。
サウンドウェーブは慣れた動きで脚を受け止めると股関節部位のネジを数本抜いて
装甲をはいだ。
装甲と下にあった配線を眺めるとそこから何本か選んで引きちぎった。

力抜けたように脚が地面に落ちる音をサウンドウェーブとスタースクリームは
黙って聞いた。
今引きちぎった配線はブレインサーキットの命令を受ける配線だよな。
って事はもうあいつの意思で脚が動くことはないってことか…
ちゃっかり痛みを感じる配線を残しているあたりがデストロンだと思う。

「……」

サウンドウェーブは動かない脚を左右に開いた。
スタースクリームも何してんだ?とその姿を見つめた。
自分の位置からは中々サウンドウェーブの行動が見難い。
なにやらごそごそしているのはわかったが。



「ぃっ…あ、?…あぁ…!いっあああ!!!」
「っ……、サウンドウェーブ…お、おまえ…」
「なんだ」
「何してんだ…っ?」

慣れた手つきでサイバトロンの下腹部に手をやるとそこにあるレセプタに
手をやって3本ほど無理に指をねじ込んでいた。当然だがサイバトロンの悲鳴も酷い。

「ぅあっ…ぬ、抜いてくれ…!ぬけっ…!」
「いいだろう」

サウンドウェーブはサイバトロンの言葉に従い指を抜いた。
サイバトロンが圧迫感が失せたことによりふっと息を吐くのがここからでも
わかったがサウンドウェーブが自分の下腹部を開いてそこからコネクタを出した時に
やっとスタースクリームは何をしているか理解できた。
ほぼ同時にサイバトロンも理解したようだ。


「ひっ…!やめ…っ!頼む…なんでもするっ…なんでもっ!」
「心配ない」
「ちがっ……違、う…!いやだ!」

椅子代わりにしたサイバトロンもその光景を見て歯の根が合わないといった感じで
ガチガチと歯を鳴らした。
スタースクリームは自分が標的じゃないからまだ余裕があったが確かにこの光景を
恐ろしいと感じる。

サウンドウェーブは抜いた手サイバトロンに見えるように構えると手首から先に
あった指を一度体内にしまいこんで手首より先を刃物に変えた。
それは戦場で見れば小さな刃物だったろうが
今、この状況じゃあのサイバトロンにはどんな大剣よりも鋭い刃物に見えただろう。

サイバトロンの悲鳴を無視してレセプタに刃物を当てて少し切り開く。
自分との規格が合わないのだろうがレセプタに刃物を当てて無理に切り開かなくても
慣らすなりなんなり他にもまだ方法は他にあっただろうが…

スタースクリームは目を細めてその光景を見ていた。
ぎちぎちと嫌な音がしてサウンドウェーブが腰を進める。
両腕を鎖で固定されたままのサイバトロンは苦しげに身体をそらせながら
口を魚のようにぱくぱくと開け閉めさせた。

その口からは透明な口内オイルがあふれ出している。
目からは冷却液が絶え間なくもれでて酷い顔をしているが
自分がサイバトロンをいたぶっている時の表情に限りなく近いのにまったくの別物。

「ひぅぐ…あっ…ああ!」
「……デストロンに犯されて喘ぐのか。」
「うぅっ…んっ…!」

顔を左右に激しく振る。しかしその口から漏れる声は痛みではなく喘声だろう。
サウンドウェーブは煽るように言ってパルスを流し込んでいる。
レセプタが破損している為、パルスを流し込むたびにばちんばちんと
漏電しているような音が聞こえる。

サウンドウェーブの声は楽しんでいたと思う。低く、抑揚のない声だ。
この声を聞けば誰もが畏怖するのではと思うほどに、冷酷な声。
現にスタースクリームはすくんでいた。見下していた先輩参謀の隠れた性癖を
見たからかもしれない。

しかしスタースクリームは笑った。
いいじゃねぇか。面白いじゃねぇか。サンダークラッカーよりも幾倍もマシだぜ。
デストロンとはこうあるべきだ。殺戮を楽しみ、悲鳴を好めば良い。
平和だ?秩序だ?いらねぇだろうよそんなもの。全部ぶっ壊してこそデストロンだ。

スタースクリームの喉からは引きつった笑いが漏れた。
サウンドウェーブがソレに気付いて振り向いたが構わない。笑いが止まらない。

「ひゃははっ…最高だぜサウンドウェーブ…」
「……そうか」


サウンドウェーブはどうでもよさそうに呟くと両足を掴んでいた手を離し
快感のパルスに翻弄されている捕虜の首に両手をかけた。

「殺すのかぁ?」
「見てればわかる」
「がっ…ぁっ…」

いやな音がして首に指が埋まっていく。
指が装甲をつぶして中に入ってもまだ指からは力が抜けずにしまっていく。
サウンドウェーブは痛みと苦しさに顔をゆがめ、しかし下からのパルスに喘ぐ
サイバトロンを静かに見下していた。

「こうすると締まりが良い」
「へぇ。変わった性癖だ」

暫くスタースクリームは黙ってそんな姿を見ていた。
椅子は失神していた。それにも気付かないほど自分は目の前の光景を楽しんでいた。
サウンドウェーブがコネクタを抜いたのは捕虜が息絶えた後だった。
スタースクリームは立ち上がるとそんなサウンドウェーブに微笑がけた。


「良いもん見してもらったぜ」
「……」
「次、捕虜捕まえたらお前に何体か取っといてやるよ」
「…1体で十分だ」

そう言ったサウンドウェーブは事後とは思えないほどに息を乱していなかった。




それからスタースクリームのサウンドウェーブに対しての評価は変わった。

無愛想。メガトロンの忠臣。そんな表面的なところは変わっていない。
変わったのは「何を考えているのかわからない情報参謀」から
「デストロンらしい残忍な性癖を持つ情報参謀」にかわった。


「よう!サウンドウェーブ」
「……なんだ」
「そう怒るなよ。拷問部屋に1体放置してあるからよ」
「……わかった」

スタースクリームの趣味も変わった。
腕をもいだり、苦痛に歪む顔。大きな悲鳴。そんなもの比べ物にならない余興。

「サウンドウェーブ。気持ち良いのか?」
「あぁ」

サウンドウェーブが捕虜を犯すのを見る。破壊終わるまで見る。
レセプタに傷をつけて、そうしてからコネクタを無理に押しこんで。
相手が苦しさと快感に狭間でうろちょろしてる間に永遠の停止に落とす。

「今日はもう終わりか?」
「既に弱っていた。壊れた」
「中々丈夫なのが見つかんねぇな」

サウンドウェーブがただ単に乱暴なのだが。こんな奴に犯された奴はかわいそうに。
自分はこんな奴と接続だ何てお断りだねと見物中は何度も思った。
それでも自分はサウンドウェーブのそんな性癖に畏怖と尊敬という真反対の
感情をもった。

サウンドウェーブが自分をどう思ってるかなんて考えもしなかった。
ただサウンドウェーブは自分を邪険にしてなかったと思う。
あっちから声をかけてくることも多くなった。


「スタースクリーム」
「んん?」
「エネルゴン酒をメガトロン様から貰った」
「お!くれるのか?」
「俺の寝室に来い」


こんなやり取りは日常的だったと思う。



「これ美味ぇじゃねぇか!」
「…甘すぎる」
「そうかぁ?丁度いいじゃねぇかよ…」
「そう思うなら全部飲め」


じゃ、遠慮はしねぇぜと笑うとサウンドウェーブは頷いて背中を向けると
自分の寝室の戸棚を開いて数本お好みのエネルゴンボトルを取り出した。

サウンドウェーブの寝室は広い。昔っからメガトロンに使えてるだけあってが
自分の部屋よりも充実した備えで寝台も自分のものより広かった。
部屋の真ん中にある円卓と備え付けの椅子の定位置にいつも通り腰掛けると
スタースクリームはサウンドウェーブが甘いと言ったエネルゴンを一気の喉に
流し込んだ。サウンドウェーブはその様子を見ながら向かいの椅子に座った。


「一気に飲むな。酔う」
「俺様がぁ?酔うかよ!ばーか!」
「……」

サウンドウェーブは自分の持ちやすい大きさのキューブを出すと
そこにエネルゴンを注いでいく。
なみなみに注いだところでそれを飲み始めるのを見て自分も同じものを
飲みたくなった。

「俺にも、それくれよ」
「お前にはそれがあるだろう」
「一口」
「……」

机にキューブをおろすとスタースクリームはキューブを手にとって口に当てた。
エネルゴンの触れた部分がかっと熱くなったがそのまま口内に含んで数口飲み下す。


「飲みすぎ」
「んっ…熱…」
「濃度が濃い。熱く感じるのはこの濃度になれていないから」
「んなことねーよ」
「ある。お前はそっちを飲め」

また甘いエネルゴンを差し出されてそれを飲んだ。
この時点で既に自分は酔っていたとは思っても見なかった。
自分が酔っていることにサウンドウェーブでさえ気付かなかった。
気付いたのはそれから2時間後だ。

「…スタースクリーム」
「んん〜?なに、?」
「酔ってるな」
「まさ、か」

サウンドウェーブが立ち上がって自分の横まで来ると首に手をやってきた。
あ。と思った。絞められると思って期待した。


「…熱いな。休め」
「…やす…?」
「部屋までコンドルに送らせる」

首で体内熱を測られて、サウンドウェーブはそれを終えると手をすんなり離した。
自分の肩に手をやってコンドルをイジェクトする為にボタンを押そうとする。


「…なんだ?」
「…あっ…その」

その腕を押さえたのが自分の手だと気付かなかった。サウンドウェーブは
首をかしげた。
珍しい動作を見れて得した気分になりつつも自分の内心は大混乱を来たしていた。
何か言わなくてはと焦り、どもる。

「ま、まだ平気だ…!」
「平気じゃない。体内温度が急上昇している。ヒートの可能性がある」
「ねぇよ!」
「駄目だ。安静にするべきだ」


サウンドウェーブは淡々と告げる。
心配してくれてるような気もするが自分はここにいたいのだ。
どうしてここに居たいかなんて考えもしなかったがサウンドウェーブは
イジェクトしようとしていた腕を下げ一応聞く体勢に入った。
自分も掴んでいた手を離すと真正面から見られるのを防ぐ為に顔をそらした。


「心配してくれんのかよ?」
「…メガトロン様にお前の面倒を見るように仰せ付かっている」
「…そうかよ」


このときの行動が自分にとって若気の至りと呼べるのではないかと思う。


「帰れ。酒はまた明日だ」
「サウンドウェーブ…」
「……なんだ?」
「…接続しようぜ…」



酒の効果もあいまって、自分の息は荒かったと思う。
これを若気の至りと呼ばなきゃなんと呼ぶんだよ?