目を覚ました。凄くまぶしい。
顔を軽く叩かれた気がする。
殺す。誰だ俺の顔に触ったの。


「起きろ。時間だ」
「…っ…」

小さく声を発するとそれは声にならずくぐもって消えた。
しっかりと目を開くとそこには大勢の宇宙人がいた。




落札価格





…は?


目を見開いた。
きょろきょろと辺りを見ると背後の柱に何か見たことのない拘束具で自分はそこにくくりつけられている。
天井は高すぎず、低すぎず、空は見えないので建物の中だろう。自分の上にはいくつも照明が設置されていてまぶしい。
奥が見えないが自分のいる建物は広かった。その建物内は電気が落とされていて真っ暗だ。
その中で自分だけが光を浴びているので異様に目立つ。

武器は…没収されている。上から声がかかって上を見上げると知らない顔があった。


「始まるんだから目を覚ませ」
「…んんっ!」

口にも拘束具。どうやら発言権はないらしい。
声をかけてきたのはどこの惑星の生き物かもわからない形をしていた。
言葉も難しい。昔、研究員時代に使っていた翻訳ソフトをブレインサーキットに引っ張り出してきて相手の言葉を訳していく。
何処の言葉だ?わからない。言葉を発せられてから少しのタイムラグがあるが何を言っているか理解できた。

「むぐっ…!んん!」
「黙れ。始まる。顔をあげていろ」

むかつくが話を聞く気はないらしい。
辺りを更に観察すると自分は手足、そして口を拘束されている。
他にもあたりを見ると自分の後ろに5体。すぐ横に1体。全員同じ惑星の宇宙人だろう。姿が似ている。
正面に30歩ほど進んだあたりにまたもや見たことのない宇宙人。多分これはまた自分の右にいる宇宙人とは別の惑星の生き物だ。
真っ暗で形が全て見通せるわけではないがびちゃっと水っぽい音がするのもいればカサカサと音がすることもある。
何体いるかはわからないが多分、100体超えてるんじゃないだろうか。


…わかんねぇ。だから何でこの状態なんだ。
周りを見るよりも気を失う前の記憶を辿った方が状況を知るに速いかもしれない。
顔を伏せて自分の記憶媒体を漁っていく。と、首に巻きついていた鎖をぐいっと引っ張られた。

「んんっ!」
「顔を上げていろ!」
「んんん!!?」


てめぇ誰に言ってるんだ!俺はデストロン軍団のスタースクリームだぞ!


「では、セイバートロン星、製造年数想定1000万年以上!主食はオイル。エネルギーを固めた物質エネルゴン!」
「……?」
「またトランスフォーマーなのでジェット機に変形可能!空を飛ぶこともできます!スピードもぴか一です!」
「…」

あ、こいついい奴?何か凄い俺を褒めてるな。

「また、この顔を見ればわかると思いますが中々の美形」

うんうん。わかってるよお前。

「身体も少し乱暴に扱ってもセイバートロン星の鋼鉄を使っているので丈夫です」

うん…まぁ、確かに俺は丈夫だぜ?なんたって一流の鉄を使ってるしな。格好良いだろ?

「色は白、赤、青と明るい色を基調にしていて空を飛ぶ姿は見栄えがあります」

まぁな。俺はすげーぜ?俺の飛ぶ速度についてこれるのはスカイファイアーやジェットロンくらいかな。

「そして!デストロン軍団のNo.2で航空参謀の任についています!」


いっきに会場がざわついた。
聞きなれる言葉も今の自分では聞き取れない言葉も左右から聞こえてくる。
「本当に?」と聞こえた。本当だってんだよ!誰だ言ったの!?この俺様を見間違えるなんてどこの田舎惑星の奴だ!

ん、むしろ何でこいつ俺がデストロン軍団のスタースクリームだって知ってるんだ?
横に立つそいつを見上げる。すると視線に気付いたのかにっと笑って羽を片方掴まれた。


「この羽に付くインシグニアが証拠です!今なら保証書をつけましょう。3ヶ月の間、返品可能です」


……ちょっと待て。なんかおかしいぞ。
どこだ。どこに俺は突っ込むべきだ。


「それでは後ほどオークション開始します!単位はセイバートロン星の賃金で1万アストロからです!」

安い!!!!
ふざけんな!殺すぞ!


大きく呻いて睨みつける。
羽を放した男は自分の正面に立つと思い切り顔を引っぱたいて来た。
これが痛い。多分手の平に何か仕込んでる。もしくは鉄を越える成分で身体が組織されているのかもしれない。

あまりの痛さに黙り込むとその男は会場にまた声を張り上げていた。



「今より少しの間は、こちらの商品を展示しておきますのでどうぞ、見て、触り、御気に召すかどうかご検分ください」



俺、売られる。
それがわかった瞬間泣きたくなった。