約束をした。結構無茶な、しかも無理やりに。

「毎日、ここで会うのはどうかな」
「毎日ぃ?」

スタースクリームは嫌そうな顔をして腕組をした。




密会






「よう…」
「おはよう。スタースクリーム。今日も良い天気だね」

気恥ずかしげにやってきた友人に笑いかける。
いや、友人というか、実は自分の思い人でもあるんだけど。

毎日会おうだなんて無理な約束を案外守ってくれるスタースクリームに笑いかけると
スタースクリームは何笑ってんだよ。とはにかんだ。

きょろきょろと辺りをうかがってサイバトロンもデストロンもいないことがわかると
スタースクリームは既に座り込んでいたスカイファイアーの背中を借りて寄りかかった。

スタースクリームは文句を良いながらも毎日こうやって会って近況とか、最近の気分とかを
お互いに話す。その間お互いのかは見ない。背中合わせに座るだけで面と向かって話はしなかった。
そうしようって決めたわけではなく、ただ単にインシグニアの見える位置に立ちたくないんだ。

スタースクリームの近況といえば。

「…」
「…ぼんやりしてるね」
「……まぁな」
「またいいこと、あったんだ?」

そういうとスタースクリームが黙りこんだ。
きっと前から見ればその表情は赤いだろう。
その表情は好きだ、可愛いから。でも今その表情になる理由は好きじゃない。

「メガトロンが、褒めてくれた」
「…そう」
「…頭撫でてきやがってよ…」

撫でられたであろう部位にスタースクリームが手を当ててぼんやりと空を見上げている。
ちらっと振り返るとうっすらと口元に浮かべた笑みと照れくさそうな少し拗ねたような横顔が見えた。
嬉しいとは言えないのだ。それほどまでに破壊大帝を好いているのだろう。

スタースクリームは自分をなんとも思っていない。
昔同じ研究所で働いていた同僚。それくらいだろう。
それでいて、上司である破壊大帝が好きで好きで仕方がないので相談できる良い相手、なんだ。

「素直に甘えれば良いんじゃないかな」
「…俺様がぁ?無理だな」

首を左右に振りながら全体重を背中に預けてくる。

「きっとメガトロンは答えてくれるよ…試しにキスでもしてみたらいい」
「ねーよ」

ないないと言いながらもにやにやするところを見ると多分想像したのだろう。
甘えるスタースクリームにそれを受け止めるメガトロン。想像しただけで身震いしそうだ。

「キスの練習に付き合ってあげようか」
「冗談」

笑いながら流されてしまう本気もむなしく、今日も日が暮れるか雨が降るか
お互いの上司から連絡が来るまでこんな会話をするのだ。

いっそ盛大に振られてくれれば、自分にも光が差すかもしれないのにね。