今日も待ち合わせの場所に座り込む。
スタースクリームを待ってるこの時間も嬉しい。

「スカイファイアー!」
「ん。スタースクリーム…?」

空より舞い降りた彼を見ると勢いそのままに飛び掛ってきた。
正面より抱きついてきたスタースクリームに驚きつつも背中に手を回す。
にこにこした彼を見るのは久しぶりだ。

「ど、どどどうしたんだい?」
「えへへ」
「え、えへへって…」

首の後ろに回って来ていた腕が離れて両肩を掴まれると引き離された。
残念だと思いつつもスタースクリームの顔を見ると満面の笑みだ。

これはまた…

「メガトロンがな!」
「……うん」
「エネルゴン酔いして酔いつぶれた俺を自室まで連れてってくれてよ」
「自室?」
「メガトロンのだ」
「どうして」
「俺の部屋の入室番号忘れたんだろ?朝まで一緒にいてくれたんだぜ…!メガトロンの寝台で!」
「…」

破壊大帝が入室番号を忘れるなんてことあるだろうか。
酔いつぶれたスタースクリームを自室へ運んで寝台に寝かせ朝まで一緒にいた。と。
自分がそういう目で見てるからだろうか。何もなかったとは思えない。
例えばその唇に触れたとか。

「…スカイファイアー?」
「え、あ…」

にこにこするスタースクリームの唇を触って親指でそのふくらみを押していた。
あっと自分の唐突な行動に焦りを感じて手を引こうとするがその感触から離れたくなくて
そのままなぞってやる。

「なんだ?」
「いや、その…」
「…」

手を押しのけられて唇を突き出してくる。
途端拗ねた表情になったのに少し笑いを誘われながらも「ごめんよ」と素直に謝る。

「あまりにも嬉しそうだったからつい」
「ついの意味がわかんねーんだよ」
「案外、メガトロンも君のことが好きだったりしてね」
「…ね、ねーよ!!」

顔を真っ赤に染めるスタースクリームは「ない!ない!」と顔を隠すように俯いた。

「…大丈夫だよ。今度、メガトロンにキスしてごらん」
「き、きすだぁ!?」
「うん」

顔を真っ赤のまま弾けた様に顔をあげたスタースクリームに極めて丁寧に笑いかける。
もにょもにょ言いながらスタースクリームは顔をそらした。相当恥ずかしいらしい。

「…こんくらいで良いんだよ」
「あ?」

唇に微かに、ほんの少しだけ、本当にちょっとの間、唇を重ねた。
友達というか、ペットにするような軽い触れただけのキス。

「……」
「こんなキスをしてみたらどうかな?」
「……お、まえ!!」
「いたっ…!ご、ごめ」

ゴッと嫌な音がして殴られる。
一発ではなく、何度も殴られる。

「悪かったね」

両手首を掴んで押し返すとスタースクリームはかなり怒っていた。
今のなんて自分のやりたいことの5分の1以下なんだけどなぁ。と内心ため息を吐く。

「今のは友人にするようなちょっとしたものだよ」
「本当かよ…?」
「あぁ。メガトロンにも『日頃のお礼』だとか『敬愛の意を込めて』ってやってみたらどうかな」
「……」

うーん。と悩みつつも小さい声で「わかった」と頷いた。
それをみて自分は何を助言してるんだか…と悲しくなる。

「…ありがとな。やっぱ頼りになるわ」
「…本当にそう思う?」
「あぁ。うちは馬鹿ぞろいだからよ」

あぁ。デストロン軍団内での話か。頼りにならない…とは思わないが。

「サウンドウェーブ…とか」
「あんな無口野郎。役たたねぇよ」
「スカイワープとサンダークラッカー」
「あの馬鹿とチキンか?駄目駄目」
「…」
「やっぱ俺と対等に話せるのはお前だけだぜ…」

口の端をにっとあげて笑う彼を見て嬉しくなる。
ただ、彼は自分以外に好きな人物がいるし、何より彼は自分を友人としか見ていない。

「おら」

両肩を掴まれて再度軽いキスをする。
スタースクリームからの、その軽い感触に自分は身動きが取れなかった。

「『お礼』として、なんだろ?」
「あ、あ。そうだよ…」
「…じゃあな。スカイファイアー」
「うん。またね…」

スタースクリームは微かに照れ笑いしながら宙に飛んだ。
足の裏からジェット気流がでて風が自分を撫でた。今からスタースクリームはメガトロンに触れに行くんだろう。
宙でトランスフォームしたスタースクリームは一度も振り向かずかなりのスピード基地に帰還した。

もし明日も機嫌よくきたらどうしよう。
明日、逢うのが怖くなった。



 
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多分続く。ような気がする。