「ここを開けろ!」 扉が壊れるのではないかと思うほど強く叩かれると壁まで揺れた。 声の主はスタースクリームである。そのの必死な声が外から聞こえたが 望み通り中に入れるわけにはいかないと、その扉を内側よりスカイワープとサンダークラッカーが押さえ込んでいた。 「どうする。メガトロン様」 サウンドウェーブの低い声が主へと向いた。 この忠臣なら自分の命令を聞けば簡単にスタースクリームを捕まえて取り押さえることも可能だ。 しかしメガトロンは椅子に腰掛けたまま顎に手を当て少しだけ視線を上げるだけで命令を下さなかった。 大帝もまた、迷っていた。 「メガトロン!」 その声とほぼ同時に扉が蹴破られるとスタースクリームは扉を押さえつけていた同機を殴り飛ばし道を開かせ 椅子に腰掛けるメガトロンの目前まで走り迫った。 サウンドウェーブがメガトロンとスタースクリームの間に入り壁になろうとするがメガトロンが 「いい。退いていろ」と呟くと控えめにメガトロンの脇へと退いた。 「メガトロン!てめぇ…」 「スタースクリーム…」 そのままの勢いで走り寄って来るのをメガトロンは椅子に座ったまま待った。 カノン砲を構えるでもなく、怒鳴りつけるでもなくただスタースクリームの顔を見つめた。 スタースクリームも両手を左右に広げると勢い良く飛びかかる。 「触らせやがれ!」 「ぐっ…!」 首元に思い切り抱きつくとメガトロンの胸にスタースクリームは顔を押し付けた。 frostbite こんなことになった始まりは宇宙探査にでようと言い出した自分なのか。 それとも相も変わらず生意気なこの2のせいなのか。 アストロトレインとサウンドウェーブを供に宇宙探査にでた。 コスミックルストの一件があったのでサウンドウェーブを供につれてでたのは間違っていないだろう。 見知らぬ惑星を見つけ降り立つとそこには見たことのない兵器があった。 「これはまた面妖な…」 「どぉれ。このスタースクリーム様が」 「やめろ。触るなこの愚か者めが!サウンドウェーブ!アストロトレイン!」 サウンドウェーブに兵器を調べるように、アストロトレインにスタースクリームを押さえつけるように命令する。 アストロトレインに羽交い絞めされたスタースクリームがまたわーわーと騒がしくなったが無視を決め込んだ。 「どうだサウンドウェーブ」 「…これは破壊、攻撃目的の兵器ではない」 「ではなんだ」 「…2体のトランスフォーマーのシンクロ率をあげて合体できるようにする為の調整機だろう」 「ほう。合体…」 「シンクロ率が上がれば合体せずとも攻撃力も総じてあがる。増幅装置かなにかだ」 「ふむ…では儂とサウンドウェーブで試してみるか…」 サウンドウェーブは一度頷くとその装置を触り始めた。 いったいいつの機械かはわからないが見て明らかなほどの外傷もない。 サイバトロンの兵器でサイバトロンを蹴散らすのは破壊大帝の趣味でもあった。 少なからず興味を持ってしまったのだ。 「んん!」 「あの2体が合体したら面白いだろうなぁ。スタースクリーム?」 「んっ…口を押さえるなこのでかぶつ!」 肘鉄をアストロトレインの顔にぶつけるとスタースクリームは羽交い絞めにされ宙に浮いていた身体を ようやく地面につけることができた。準備する2体を見て「けっ」とつまらなそうな顔をする。 「見てろよ。アストロトレイン」 「あぁ?」 「俺様がもっと面白いことにしてやるぜ…」 「準備できた」 「そうか。では始めるぞ」 兵器のスイッチを入れると一筋の光線のようなものがメガトロンに当たった。 足元から頭までスキャンし、スペックを読み取るような音がする。 少しするとその光線がサウンドウェーブのほうへ向かった。 「食らえ…!」 「す、スタースクリーム!」 スタースクリームが背後よりサウンドウェーブに飛びかかるとサウンドウェーブがその兵器へとぶつかった。 異音がしたがサウンドウェーブを狙っていた光線がスタースクリームに当たり そのままスタースクリームのスペック値を測っていく。 「キサマ…!」 「合体には興味ねぇがパワーアップするべきは俺様でしょう?メガトロン様」 「こっの…!愚か者めが!!」 メガトロンはスタースクリームに掴みかかり首を絞めサイバトロン製の兵器へと投げ飛ばした。 飛んできたスタースクリームを見てサウンドウェーブは何とか避けると恒例行事を見るようにその様を見ていた。 もはやスペックを測っていた光線は縺れ絡みあうスタースクリームとメガトロンの周りをうろつくだけの光になっていた。 スタースクリームを測りたくても動かれてはスキャンできない。 「うああ!」 「まったくお前はいつも儂の邪魔をしおって!」 「ま、まって!俺はデストロンの2ですぜ?俺の後にサウンドウェーブがパワーアップすれば」 「うるさい!」 頭をつかみガンガンと兵器にぶつけるとスタースクリームは痛い!痛いです!と騒いだ。 アストロトレインとサウンドウェーブはそれを「またか」と黙って見守っていたのだがそれを見守れないものがいた。 『動作異常確認。電源を落として暫く時間を置いてからの使用をお勧めします』 「む。なんだ?」 「な、なんの音ですかい?」 メガトロンはスタースクリームを兵器の上に乗せ、その上に跨ると周りを伺った。 スタースクリームは強打した頭を撫でながらメガトロンを見つめ、状況の説明を望んでいたが この場で確実に状況判断できている者は誰一人いなかった。 「危ない。メガトロン様。乱暴に扱ったせいで兵器に異常が起きている」 「おいおい…なんか曇ってきてないか?」 兵器から出ている光線がようやく動きを止めたスタースクリームをスキャンし終えるとほぼ同時に サウンドウェーブがぶつかった時にできたヒビより煙を噴出していた。 白い煙は一気に室内に回り視界を奪っていく。 それに対処する前にメガトロンとスタースクリームの周囲の壁より複数のケーブルが現れ巻きついた。 「はぁ!?」 「な、なんだこれは…!おいサウンドウェーブ!アストロトレイン!何とかしろ!」 「メガトロン様。こちらから視認できない」 「前が見えねぇ!」 アストロトレインとサウンドウェーブが煙をかきわけ2体を探すが何も触れない。 その間にもスタースクリームとメガトロンの喚き声が聞こえていた。 ずるずるとケーブルが擦れる音が聞こえ2体の叫びを聞くと正直進みたくない衝動にアストロトレインはかられた。 視界の不鮮明はそれほど恐怖である。しかしそのアストロトレインの手に窓がぶつかった。 換気できると手を伸ばすとさび付いて開かなくなっているのを知った。ならば割ればいいと拳で直々に叩き割る。 しかし遅かったのか煙が晴れた時には静かに倒れこんだ2体がいた。 「メガトロン様…!」 「スタースクリーム!」 「……ぃ…っ」 「なんだったのだ…今のは…」 メガトロンは起き上がると身体を擦りあたりを見回した。 どこからか出てきていた配線もロングアームも消え、身体には微かな倦怠感しか残っていなかった。 「いっ…おい。アストロトレインもっと優しく抱きおこせよ…!」 「何無理言いやがる。ほら、起こしてやるだけでも優しいだろうが」 「おいスタースクリーム。なんともないのか?」 「はぁ?…ちょっと熱いですかね…機体が」 「それだけか」 「…ははーん。びびって腰が立たないのを自分だけでなく俺もだと言いたいのですかい?」 「馬鹿者。サイバトロンの罠だったのかもしれぬのだぞ」 アストロトレインの手を借りて立ち上がるとゆっくりとアストロトレインより放れ スタースクリームは自分の足で体重を支え、腰に手を当ていつも通り偉そうにポーズを決めるとにぃっと笑った。 「この通り。なんともないですよ。破壊大帝」 「そうか。サウンドウェーブ。状況は」 「…兵器は壊れた。スタースクリームもメガトロン様もパワーアップしたような形跡はない」 「あーあ。結局無駄足でしたなぁ」 「キサマのせいであろう愚か者め!」 アストロトレインをトランスフォームさせると一旦地球の基地に戻ることにしたが 帰還までの間、アストロトレインの中でメガトロンは身体をさすっていた。 小さくため息を吐きながら腕をさする姿は破壊大帝らしくもない。 「どうかしたか。メガトロン様」 「…いや、なんか寒気がしてな」 「ご老体はこれだから…俺は少し暑いくらいですぜ?」 アストロトレイン冷房入れてくれ冷房。と言うとアストロトレインはねーよと言い返した。 暑いだと?寒気どころかかなり寒いのは儂だけか。 ちらりとサウンドウェーブを見るとその様子はない。 スタースクリームもあちーと扇ぐような動きをしている。 基地に戻ったら一度体内を調べた方がいいかも知れんな。 * しかし帰還するまでに状況はますます悪化した。 「もっと!もっと部屋を暖めんか!」 「もうこれが限界だ、基地内部の温度はこれ以上あがらない」 「あっつ…!ちょっとメガトロン様はどうしちまったんでい」 「基地内が暑すぎてカセットロンがへばってたぜ…」 ジェットロンが大きい毛布を抱えてメガトロンに毛布をかけていく。メガトロンは寒くて寒くて仕方がなかった。 身体ががちがちと震え、今にも凍り付いてしまうのではないかと思うほどに寒い。 しかし調べても異常はなかったのだ。体温異常も調べただけでは何も問題はなくサウンドウェーブは首を傾げた。 「む…スタースクリームはどうした!」 「あれ?スタースクリームは?」 「暑くてヒューズがとんでたりしてなぁ。見てくるか」 ジェットロンが毛布を全てメガトロンへかけ終えるとその足でスタースクリームの私室へと向かった。 基地内にいるのはこの場にいる面子くらいである。サウンドウェーブとジェットロン。 最初は全員揃っていたが暑過ぎる基地内に溜まらず外へと飛び出していったのだ。 メガトロンは大帝を思いやる心が足りんと内心憤慨していた。 まったく、スタースクリームめ。あいつのせいで無駄足だったの言うのに儂が故障時に見舞いにも来ないとは。 しかしバタバタと足音がするとジェットロンが駆け込んできた。 「め、メガトロン様ぁあ!」 「スタースクリームが…!」 「む?どうした…!?」 スタースクリームはいた。スカイワープの背中におんぶされ、ぐったりとしていた。 その表情からはすぐに異常がわかった、ぜぃぜぃと息をきらし苦しそうにする姿を見れば普段と違うなど一目瞭然だ。 スカイワープとサンダークラッカーが心配するようにその顔を覗き込む。 「あ、つ」 「どうしたんだよスタースクリーム…!」 「あつい…あつい…!」 「暑い?基地内が暑すぎるのか?でもこうはならねぇだろうよ!」 スタースクリームを床に降ろすとスタースクリームは少しでも冷たいものをと手を彷徨わせた。 サウンドウェーブがスタースクリームの近くに座り込みスキャンする。 「…体温に異常はない。故障しているようではないようだ」 「でもこんなんなってんだぜ!?」 「どうにかしてやってくれよ!」 「あつ、い…誰か…!」 スタースクリームが手を伸ばすとそこにはメガトロンがいた。 メガトロンは寒くて寒くて仕方がなかった分、「暑い」と言うスタースクリームが少し羨ましいと思いたが 流石に普段は強がりなNo.2がこんなにも苦しむ姿を見て多少は親心がでたのか心配になった。 倒れこむスタースクリームの顔を覗き込みしっとりと汗ばむ額に手を当てる。 「…!」 「…む…」 メガトロンは身体に巻きつかせるように被っていた毛布を全部床へ落とした。 スタースクリームは身体を起こすとメガトロンを見つめ、暑い暑いと呟いていた口も静かになった。 「…」 「…」 「メガトロン様?」 「スタースクリーム?」 2体は暫く見つめ合ったが先に動いたのはスタースクリームだった。 両腕を左右に大きく開くとメガトロンの胸元へ抱きついた。 「うぇ!?」 「うわあ!遂にスタースクリームが壊れた!」 「…気持ちいい」 「はぁ!?」 「キモイ!スタースクリームが気持ち悪い!」 「うるせぇ!な、なんか知らねぇけどメガトロンが冷たくて暑いのが収まるんだよ!」 「…メガトロン様。どうした…」 「…儂もだ。寒かったのが嘘のようだ」 サウンドウェーブが首をかしげ再度その状態のままの2体をスキャンし始める。 その間も2体は抱きしめあったままだったのでジェットロンが顔をしかめ小さい声で「気持ち悪〜…」と呟いた。 喧嘩ばかりの2体が抱きしめあう姿など誰でも引く。メガトロンは基地内に他の連中がいないことに安堵した。 「う、うるせぇ!しかたねぇだろ!」 「サウンドウェーブまだか…!」 メガトロンもスタースクリームの背中に手を回して強く抱きしめた。 先に抱きついたスタースクリームが強くなった抱擁に顔をしかめて「気持ち悪いですぜ」と呟いた。 「お前からしてきたのだろう!」 「だって暑くて!」 「儂とて寒いのだ!」 「…シンクロ率が安定しないのが原因だと考えられる」 「なに?あれは失敗したのだろう?」 サウンドウェーブがスキャンを終えてそう言うとメガトロンはいぶかしんだ。 スキャンしたデータをコネクタを通してモニターに表示させるとメガトロンとスタースクリームもそのデータを見る。 青や赤で色分けされたグラフが座標をうねる。その右にはまた違うグラフ。下には何かの数値。 どこを見れば良いのかもわからないと2体は首をかしげた。 「…わかんねぇけど」 「どうなってるのだ?」 「ここの値が安定しないのがわかるか」 「それがシンクロ率とか言うものか?」 モニターに表示された値を目で追う。 スタースクリームも理解はしてるようでふむふむと頷く。 ジェットロンは首をかしげたまま顔をしかめていた。 「この値は火力。こちらがエネルギー残量。ここが体内バランスの値だ」 「…スタースクリーム…エネルギーを盗み食いしたな」 「今はいいじゃないですか…痛い痛い」 スタースクリームのエネルギー残量が異様に多いのを見て頬をつねるとスタースクリームは逃げようとした。 しかしお互いで抱きしめあっている為それもできない。サウンドウェーブはそれを見守った後再度説明を開始した。 「2体がひっついていないとこのバランス値が崩れる」 「あぁ」 「それで?」 「バランス値が荒れると火力が安定しない」 「そうだな」 「それで?」 「バランス値が荒れるとエネルギーの消費量が速くなる」 「おう」 「それで?」 「それだけだ」 「…」 「…」 「…」 スタースクリームとメガトロンが床に座り込み抱きしめあった状態のままサウンドウェーブを見上げる。 メガトロンはこの時説明下手な情報参謀を怒鳴りつけることもせず黙っていた。それはスタースクリームも同様である。 見つめてくる2体をサウンドウェーブは見つめ返しそのまま静かで微かに不穏な空気が流れた。 先に喋ったのは情報参謀である。 「気持ち悪い」 「放っておけ!」 「てめぇが代わりやがれ!」 スタースクリームはメガトロンを引き離すと立ち上がりサウンドウェーブにつかみかかった。 サウンドウェーブはその勢いのまま床に押し倒されるとスタースクリームを黙って見上げた。 「直す方法聞いてるんだよ!」 「ない」 「探せ!何でこんな暑く感じるんだよ!」 「シンクロ値が下がっている。互いが近くにいないと体内に異常が発生するのは仕方がない」 それが温度感知というわかりやすい形で現れただけだとサウンドウェーブは続ける。 つまりは互いに触れ合っていないと温度感知の部分に異常が出て寒く感じたり暑く感じたりするのかとメガトロンは頭を抱えた。 スタースクリームは歯を食いしばり淡々とした参謀を睨み付けたが諦めたように熱いため息を吐いた。 「はぁ、…ちくしょ…」 サウンドウェーブを放してメガトロンの元へ戻っていく。 メガトロンの隣に座ってもたれかかるとスタースクリームの少し荒かった息は安定してきた。 メガトロンも寒くなってきていた身体がスタースクリームの触れた部分からじんわりと暖まり 身体中に広がっていくのを確かに感じていた。 「…あ〜…丁度いい〜…」 べったりとくっつき、脚に縋りついてくるスタースクリームを一度見ると メガトロンはその首を掴んで廊下まで引きずった。その際にスタースクリームが喚きだしたが スタースクリームの言葉を無視する術など既に知っている。そのまま歩くと室内よりたたき出した。 「いってぇ!なに…!」 「邪魔だ!愚か者め!」 「え!?だ、だってあんだだって…!!」 扉を締め切り内部より鍵をかける。 スタースクリームが扉を強く叩く。 メガトロンは少し肌寒くなった身体を擦ると毛布を拾って椅子へと戻った。 「サンダークラッカー。スカイワープ。扉を押さえておけ」 「へ、へい!」 「了解!」 外より暴言が聞こえる。 それを全て意識内よりはじき出して精神統一する。 破壊大帝ともあろうものがあんな兵器に翻弄され暑いだの寒いだの言っていては器が知れる。 一度ため息を吐いてサウンドウェーブを見つめた。 「アストロトレインを使ってあの兵器を持ち運びここへ持って来い」 「どうする」 「安定値を修正する為の参考くらいにはなるだろう」 「わかった。できるだけ急ぐ」 サウンドウェーブはどんどんと叩かれる扉を見てからメガトロンを見た。 「あれがうるさい」 「……あやつは我慢というものをしらんのか…」 我慢を知らない2は扉が壊れるのではないかと思うほどに叩き そうして数分後にはスタースクリームは扉を蹴破り進入してきた。 仲間であるジェットロンを殴り飛ばして、首元に抱きついてきたスタースクリームはそのまま停止している。 はぁ…とスタースクリームがため息をつく。そのため息は満足したような声で安堵感に浸っていた。 メガトロンはその声を聞いたまま擦りついてくるスタースクリームを見下した。 ぬくい。スタースクリームの機体がほのかに暖かく心地がいい。 頭がぼんやりしてきて思わずスタースクリームの背中に手を伸ばしかけた。 ふと視線を感じて顔を上げるとサウンドウェーブと殴られ床に重なるように 倒れこんでいたサンダークラッカーとスカイワープがこちらを見ていた。 2羽は流石スタースクリームと同機というか、スタースクリームがメガトロンに叱られた時のような 口をぽかーんと開けたままの状態で直視し、サウンドウェーブに至っては表情はわからずとも 雰囲気で「気持ち悪いからやめてくれ」と物語っていた。 背中に回しかけた手を止めて少し引っ込めると羽を鷲掴み床にスタースクリームを捨てた。 「ふん!」 「うわぁ!」 「何をするかこの愚か者め!」 「あ、あんただって俺が欲しいだろう!?」 「気持ち悪い事を言うでないわ!」 スタースクリームが起き上がって喚く。 今度こそサウンドウェーブが自分らの間に割ってはいると銃器を突きつけた。 スタースクリームもそれをみて少しだけ口を慎むと控えめに続けた。 「あれのせいで俺とあんたはもう放れることができねぇんですぜ!?」 「儂はなんともない」 「嘘だ!少し放れてるだけでぞわぞわするじゃねぇか!」 「しない」 「身体が暑くて!頭が朦朧として!力が入らなくなって!」 「そんなことないわ」 「メガトロン!」 「そんなに暑いのならどこか寒いところにでも送ってやるわ。」 サウンドウェーブにコンドルをだせと命令するとサウンドウェーブの中からコンドルが飛び出した。 スタースクリームはぎくりと身体を引いて逃げ出そうとしたがもう遅い。 足元を撃たれ転んだ所を足首を捕まれそのまま基地外へと運び出されていった。 「おもしれぇ…!見に行こうぜサンダークラッカー」 「あぁ。何処に捨てるか見ものだな」 床に倒れこんでいた2羽が起き上がるとそのままコンドルを追って飛び出した。 それを黙って見送るとサウンドウェーブが振り返った。 「いいのか」 「何がだ」 「スタースクリームの言っていたことは嘘ではない」 「…」 「スタースクリームが離れればメガトロン様にも異常が現れる」 「問題ないわ。あんなサイバトロンの兵器なんぞに惑わされる儂ではない」 「…そうか」 サウンドウェーブはそれだけ言うと自分の仕事に戻った。 メガトロンは無意識にスタースクリームの背中に回しかけた手のひらをぼんやり眺めると スタースクリームの擦りついてきた部分がまだ暖かいことに気付いた。 どうして抱きしめ返してやらなかったのか。などと考え始めてはっとする。 何を考えておる サウンドウェーブが仕事に集中していてよかった。 コンソールとモニターを見ているサウンドウェーブの背中をちらりと見てスタースクリームが抱きついてきた部分を 擦り、そこに残る暖かさと感触を記憶した。 * 「さむ!」 「さっみぃ〜…か、帰ろうぜ〜…」 「…案外丁度いい」 北極の雪に埋まるようにスタースクリームはいた。 吹雪が激しくなりスカイワープは羽をブルブル振るわせた。 サンダークラッカーも風を正面から受けないようにしてコンドルを冷やさないように抱き込んで立っていた。 「丁度いいって…」 「いや、案外丁度いい。俺ここに基地立てるぜ」 「はぁ?」 「暑さが緩和されて…」 「こいつ遂にまじでイカレやがった…」 「ヒューズ飛んでるってだけじゃすまねぇなこりゃ…」 自ら雪の中にずぼずぼ入っていく直属の上司を見つめながら2羽はため息をついた。 →