「サウンドウェーブ…いるかー?」 「いる」 休んでいたら悪いと思い小さい声で名を呼んだにもかかわらず サウンドウェーブは扉をスライドさせてわざわざ出迎えると 入室を許可してくれる。 「どうした」 「いや、ちょっと…来ただけ」 サウンドウェーブは珍しいなと思ってる。雰囲気でそれを感じ取ると たまにはよ…と言葉を返した。 「構わない。好きにしろ」 頭をぽんぽんと叩かれて幸福感で一杯になった。 仕事中だったようでモニターにはグラフやらなんやらが表記されていた。 ちょっと見たが仕事内容は半分もわからない。有能な男だなと改めて理解した。 「すぐ終わる」 「あ、ゆっくりやってくれて良いぜ。勝手に来ただけだしよ…」 サウンドウェーブは一度頷くとモニターを見つめだした。 切り出せないなと思いつつも気になるからタイミングを見計らう。 できればサウンドウェーブの機嫌の良いときが良いよな。怒られたくねぇしよう。 んーと悩んでいるとサウンドウェーブが正面まできた。 一瞬反応が遅れて「うぇっ!?」とか変な声が出る。 「何を考えてる?」 「や、対したことじゃ」 サウンドウェーブの親指が唇に触れる。 自分は唇を尖らせて考え事をしていたようでサウンドウェーブが その唇を摘んでくる。 「ジェットロンは全員この癖だな」 「むぐぐ」 手を放してもらって見つめ返す。 「そうだっけ?」 「考え事してるときと拗ねてる時は、こうだ」 そうだっけかな。そうだったかもなー。 サウンドウェーブが今度は人差し指で唇を押してくる。 「まただ」と微かに笑ったような気がしてこちらまで笑いたくなってくる。 今なら言えるんじゃないか?雰囲気は悪くない。 「あの、サウンドウェーブ」 「なんだ?」 「実はさ、この間の飲んでた液体?あれを」 「どうした」 唇を押してきていた指が退いて赤いバイザーが自分を覗き見た。 怒っていないと思う。まだ、大丈夫。 「中身、ちょっと調べたんだけど、あ、悪いと思ってるんだぜ? でもなんとなく…何か気になって」 「……」 「よくわかんねーけどブレインサーキットを安定化させるもん?なんだって?」 「…スタースクリームか」 「あ、あぁ…だって俺じゃわかんねーしよう…」 サウンドウェーブは黙っていた。もしかして知られたくなかったのか? 怒ってるのかな、スタースクリームを怒るだろうか。それとも 俺を嫌いになるだろうか。 「…さ、サウンドウェーブ?」 「気にするな、お前の身体に触れる時に飲むだけだ」 「え!?お、俺!?」 カシュっと音がしてサウンドウェーブのマスクが収納されると そこに形の良い口が見えた。両肩を掴まれて少し上を向かされる。 少し息を飲んで今から触れるだろう唇をみた。 「サウンド」 「静かに」 「ん…っ…」 2度3度唇に触れるだけ触れる。口を閉じたままでいると頬に口付けされた。 「…サウ…」 「飲んでおかないと、とまらなくなる」 「そ、そんな理由?」 「…あぁ」 『ただの安定剤じゃねぇよ。お前なんかが飲んだら馬鹿になるぜ』 『どんだけのもん抑えてるかしらねぇけど、こんなの1週間に2本も飲んでみろ。 電子の流れを絶ちすぎて空っぽになっちまう』 スタースクリームの台詞を思い出しながらサウンドウェーブの唇を受けていた。 顔を近づけて鼻筋にキスして、され返される。 「するか」 「……」 「するか」の意味はわかっている。この雰囲気で、自分達は寝台に座ってて。 小さく頷くとサウンドウェーブが立ち上がってデスクに戻った。 「え?」 「あれを飲む」 「後に飲むんじゃねぇの?」 「効果がまだ続いている時は後でもいいが効果が切れてる時は先に飲む」 サウンドウェーブが小瓶を取り出して中身を確認している。 その背後に回って手を押さえた。 「…なに」 「飲まないで、やろう」 「サン」 「それ、身体に悪いんだろ?」 「…」 否定しないところを見ると肯定だ。そういう男だ。 「…サウンドウェーブ…」 「…」 「それ飲まなきゃ駄目だって言うんなら俺はやりたくない」 自分がこんな我侭言うのは久しぶりだ。 サウンドウェーブも驚いているが瓶をデスクに置くのを見る。 「わかった」 「…よし」 瓶から手を放したのをしっかりと見てサンダークラッカーは笑った。 →