「…うわっ!」 目覚めは最悪だ。 2日目 サウンドウェーブの寝室の、床で目が覚めた。 自分以外には誰もいなくて、身体を起こすとぬるりと何かが滑った。 視線を下腹部に向ければそこには自分のものではないオイルがべっとりとつき 立ち上がろうとすれば未だ開かれたままのパネルからぽたぽたとそれは滴った。 「…さ、最低だ…!最低だ…!」 思い出すと同時に涙目になる。声まで涙声だ。 犯されたのだ。サウンドウェーブという男に急に無理やりな形で。 しかも何も理解できないままぶち込まれて、俺には快感与えないで 自分だけ中に出して気絶した俺に一言も言わず、片付けもせず。 せめて寝台にあげてくれても良いんじゃねぇの?せめて寝室に帰してくれても 良いんじゃねぇの? 「…っなんだよ…!」 元を辿ればスタースクリームのせいだ。 あいつに謝らせてやる。根にもってやる。 くそっくそっと内心罵声を吐き、サウンドウェーブの寝室にあるもので レセプタの掃除をした。拭い取ったオイルたちは自分のものではなく この部屋の主のものだ。と、言うわけで拭い取った布は寝台に放置してやった。 流石に上司にこれは…とも思ったがこんなことされたんだ。これくらい良いはず。 自分は悪くない。何一つ悪いところなどない。 寝室からでて自室へ向かう途中でスタースクリームにあった。 スタースクリームは自分を見た途端笑い出し近距離まで近寄ると 憎たらしい笑顔を見せつけながら言った。 「気持ちよかったかー?」 「…」 「あれ、サンダークラッカー?どうしたよ不感症?」 「…お前なんのつもりだよ」 「あ?」 「ふざけんなよ…痛かったじゃねぇか。床で、無理やり、一晩放置だし… 中だしされっぱだし」 「ぎゃはは!サウンドウェーブ最高」 「…」 「わりわり。いや、俺も詳しい話はしらねぇけど、なんか溜め過ぎて 不調起こしたらしくてよ」 「不調?」 首を傾げるとスタースクリームも笑うのをやめて腕組しながら「んー」と唸った。 「やっぱ俺らも機械だけどよ、たまにはやっとかねぇと駄目じゃねぇか」 「駄目じゃねぇだろ」 「おら、エアコンってたまにつけねぇと壊れるだろ、あれに似てる」 「……にてるか?」 「んでサウンドウェーブ暫くやってねぇんだと」 「それであれかよ…ひでぇぜ…」 「まだ続くからな」 顔に手を当てて俯くとスタースクリームの最後の言葉を自分の聴覚は拾い上げた。 続く?何が。と考えてからいやな予感がした。 ゆっくり顔をあげるとスタースクリームが「はっ」と鼻で笑って口角を吊り上げる。 「本人曰く一週間分らしい」 「…だからなんだよ」 「後6日間頑張れよ」 「俺!?お前もやれよ!手伝えよ!」 「断る」 あんなのとやるのは趣味じゃねぇとスタースクリームは背中を向けた。 顔だけでこちらを見るとスタースクリームは「お前も望んでただろ?」と 言ってのけた。 「なっ」 「好きなんだろ?良いじゃねぇか。好きな奴に抱かれるってのがよ」 「誰が抱かれたいだなんて言ったよ…!?」 「言ってなかったか?」 「言ってない…!」 スタースクリームがあれ?と首をかしげた後に「まぁ、良いじゃねぇか」と 簡単にいなした。 何がいいんだ。後6度ああやって抱かれるとなると流石に身体がもたない。 他の誰かに代わってもらおうと考えるが思い浮かばなかった。 「逃げんなよ」 「な…っ」 「お前が逃げたら俺が捕まるだろ」 「捕まっちまえ!」 「夜にはサウンドウェーブの寝室にいろよ。あいつも仕事終わったら 戻って来るはずだ」 「嫌に決まってんじゃ…」 「メガトロン様の許可が下りてんだぜ」 「…」 真面目に?と小さく呟くと「大マジだぜ」とスタースクリームも小さく返事を 返してきた。 確かにあの優秀な男が溜まってるを理由に不調になっているのだとしたら それを取り除いてやるべきだろう。しかし理由があんまりすぎる。 自分で抜くのとはまた違うのだろうか。誰かを抱かなきゃいけねぇんなら 何も同性の同胞を抱かなくても良いじゃねぇかとも思う。 「あいつ、はぁはぁ言ってて気持ち悪かったろ」 「お前なんで知って…」 「俺最初にはぁはぁ言い寄られてお前を差し出したんだからよ」 「てめ…」 「サウンドウェーブに言っておいてやるよ。後片付けはちゃんとやってやれってな」 「それだけじゃねぇだろ…!」 後の要望は自分で言えよとスタースクリームは背を向けたまま歩き始めた。 上司に要望も言えない自分で悪かったな、とむっとする。 スタースクリームも自分の直属の上司だがやはり「同機」であることが大きい。 サウンドウェーブなんて駄目だ。要望だなんていえるはずもない。 と、言うよりちゃんと謝ってくるまで口も聞きたくない。 抱かれるだなんてもっと嫌だ。 いくら上司でもやっていいことと悪いことがあるもんだ。 謝ってくるまで、俺からは絶対動かないからな。 * 「悪かった」 「…あー…」 思いのほかこう言うことはすぐ来てしまう。 逃げよう逃げようと思っているうちにサウンドウェーブに見つかって ほいほい寝室に連れて行かれて、拒否を口にする前に謝られてしまった。 困った。これじゃ自分は抵抗できない。 いっそ、昨日みたく意識半分くらい飛んでるサウンドウェーブが襲い掛かって きたら殴ってでも逃げようかと思っていたが謝られて、手を握られ抱かせてくれと 言われたらそれは無理やりではなく、命令に近いものになる。 「…あ、あのよ、俺…」 「スタースクリームに」 「…」 「酷い抱き方をするなといわれた」 「…あー、うん。酷かった…かな」 「丁寧にする」 「で、でも俺そういう意味じゃ」 今度はちゃんと寝台に連れて行かれ押し倒された。 いやいや、まだ話があると押し返そうとすればまた手首を掴まれた。 結局何があろうと抱くのか、と半ば諦めつつも小さく拒否の言葉を吐いた。 「抵抗するのか」 「…て、抵抗って言うかよ…普通はまぁ…」 「なら仕方ない」 寝台にうつ伏せにされると腕を捻られ、背後から下腹部を触られた。 「えっ」と声を漏らして暴れるが圧し掛かられては暴れようがない。 「ま、まって!まってくれ!」 「待たない」 「や、やめっ…!」 ずるっと何かが入り込んでくる感覚に身体が震えた。 嘘だ…この野郎、最低だ…!しかし言えるはずもなかった。 この男は自分の上官なのだから。 そしてやはり、というか、この男は自分に快感を与えない抱き方をする。 確かにサウンドウェーブは今自分を抱いているのではなく、自分を使ってるだけだ。 それでも、酷いだろ…この仕打ち…! 「サウンド…うぇ…ぶ…!いてぇよ…いて…!」 「…すぐ終わる」 「っ…」 早く終わらせてくれ。 何も感じない。それだけだった。 →