とても静かな夜だった。
聴覚機能が壊れてしまったのかと思うほどに静かな部屋で自分はメガトロンの膝の上にいた。
金属の膝にすわり、誰もが恐れる破壊大帝の胸にもたれかかる。こんな権利があるのは自分だけだろう。
高濃度のエネルゴンがはいったキューブをぐっと傾け一度で大量に飲んだ。
普段飲むエネルゴンよりも濃い、飲み応えのあるエネルゴン。

身体の奥底までしみこんできて、ちりっと足先まで電気がはしる。
身体の機能が活発化したような気になる、喉がごくりと動いて全て飲み干せば口より今飲んだエネルゴンの
香りがする。メガトロンがぐっと肩を抱いてきた。



abyss




「これ、このエネルゴンって」
「褒美だ。好きなだけ飲め」
「…ん」

濃度の濃いものを一度に大量に飲んだため少し身体が熱くなる。
それを感じ取り、換気の為に体内のファンが音を立ててまわった。
メガトロンがそれを聞いて笑うと抱き寄せていた肩をさらに強く抱いてきた。

「メ、ガ」
「口を開け」
「ん、あ」

微かに口をあけるとメガトロンが噛み付くように唇をついばんだ。
久しぶりの舌を堪能するように互いに噛み付く。
じゅるっと音がするほど吸い付かれると足先まで身体が痺れた。

「お前の口の中も十分味わいがいがあるな」

メガトロンが舌をだすとそこには飲んだばかりのエネルゴンの色があった。
それを見て興奮する。もっと、もっと触れて。装甲よりも中に触れて。
下腹部を一度撫でられて小さい声でメガトロンの名前を呼ぶとメガトロンは笑った。
寝台に押し倒されて足を左右に割られると酷使し続けていたレセプタを覗き込まれた。

「…酷いな」
「メガトロン様っ…」

レセプタクルをよく見てレーザーウェーブ同様、淵を撫でられる。
レーザーウェーブでは感じなかった感覚。欲しい。
レセプタを撫でるメガトロンの手を握るとこちらを見た。その目が赤々していて好ましい。

「…はやく」
「…くくっ…スタースクリーム。我慢しておれ」
「…」

目を細めてやわい快感に耐えるとメガトロンがさらに足を左右に開き屈んだ。

「っあ!」
「…一度何か塗ったのか」
「あ、あ、あ!」

舌でレセプタを舐められると驚くほど快感が走った。
思わず両手で押し返すとメガトロンの舌がレセプタ内に入り込んできた。

「めっ、めがとっ…っは…」
「…やはり内部に損傷があるな…レセプタについているのは薬か?」
「…れ、ざウェーブが…エネルゴンを…」
「ふむ。応急処置か。これ以上悪化するようなら内部から交換が必要だな…」
「はやく…!」
「…今日はインストールだけにしておくぞ。スタースクリーム」
「なんっ…」
「今接続すれば破損は間逃れん。しかも神経回路を破損すれば大変なことになるぞ…」
「…ッ…」

恨みを込めて睨むとメガトロンが顔を近づけてきた。

「リペアした後だ」
「……」
「…ソフトを送ってくれるか?スタースクリーム」
「……はい」

メガトロンが自分でコネクタをだして傷ついたコネクタにあてがってくる。
腕を握られてそのまま背中に回すように引き寄せられる。抗わずメガトロンの背中に両手を回すと
メガトロンは珍しいくらい優しげに笑った。

「…機嫌良いんですね」
「あぁ。そうだとも。よくわかったな」
「…そりゃ」
「挿れるぞ…奥まではいれんが痛むかもしれん」
「…」

返答の変わりに背中に回した腕を強く引き締めた。
メガトロンの首筋に顔を押し付けてくるだろう圧迫感に備える。
メガトロンの寝台がぎしっと音を立てて軋む。背中に当たる布が心地良い。

「あ、あ」
「…ここまででいいだろう。さぁ、送れ」
「う、」

送りながらもレセプタがメガトロンに反応して締め付けようと動いた。
メガトロンが苦笑しつつも顔を撫でてくる。

「こら。よさんか」
「…メガトロン…!」
「2、3日以内にはレーザーウェーブに部品を送らせるわい」

そうしたらだ。と互いの額を擦り合わせて言われると頷くしかなかった。



*




久しぶりに触り、密着し、互いの口内を味わったにもかかわらずメガトロンは自分を自室へと返した。
メガトロンへのウイルスソフトのダウンロード、インストールも終了し、自分の仕事は終了を告げた。

メガトロンがレーザーウェーブから部品が届くまでは自室で安静にしていろといわれ
更に入手困難な高濃度のエネルゴンを貰った。風味も良い、よく眠れるエネルゴンだ。
貰ったエネルゴンの大半を棚に仕舞い、一つだけ飲み干すと少し火照った身体を自分の寝台に投げ出した。

すぐに眠りが自分の背中に圧し掛かる。アイセンサーの出力を落としただけで眠れそうだ。
目が覚めたら久しぶりにジェットロンにかまってやろう。それでエネルゴン飲んで。
サウンドウェーブにちょっかい出して、レーザーウェーブをせかして。またエネルゴン飲んで。
気付けば届いてる新品のレセプタクルに取り替えて。

「メガトロン…」

ゆっくり沈む意識を完全に手放した。








かしゃっと音がした。何かのぶつかる音だ。
近くに何か存在を感じ取った。ジェットロンか。メガトロンか。またサウンドウェーブとか?

あ。

唇に触れたのが相手の唇だと言うのはすぐにわかった。
両顎を掴まれて合わさった唇に舌が入り込んでくる。
メガトロンだ。なんだ。やっぱり我慢できなかったんじゃねぇかよ。
首だと思われるところに手を伸ばして絡ませる。

「メガトロン…」
「くくっ」
「……」

互いの舌が絡み合って水音を立てた。
相手の舌の上に何かが乗っているのを感じ取って舌を竦ませると
相手が口移しの形でそれを口内にいれてくる。そのまま顎を固定され飲み下すまで舌を絡ませられた。
喉を動かして飲み落とし、味からしてエネルゴンか?と首を少しだけ傾げた。
アイセンサーを起動させて相手の顔をしっかりと視認する。


「…ブレストオフ…!」
「よう、スタースクリーム?メガトロンとそんな関係だったのか」
「オンスロート…!てめぇら…!」

首に手を回していたのはブレストオフ。
自分の頭上に立っているのがオンスロートとわかった瞬間飛び起ようとしたが自分の腕を
オンスロートが掴んで頭上でしっかりと固定し、押さえつけた。

「…ぶっ殺す…」
「そりゃあこっちの台詞さ。スタースクリーム」
「お前には前々から復讐してぇと思ってたけどよ。今回はちゃんと作戦たてたんだぜ」

コンバットロンのことを忘れていたわけではないがまさかこんなに早く行動にうつるとは
思っていなかった、それは完全に自分の油断だ。
しかもこんな状況下で、自室の扉にロックをかけなかった自分が悪いのかもしれないが
メガトロンやらジェットロンやらが来るかもしれないと思った。無用心だった。

「…俺様に逆らうとどうなるか…お前らじゃ理解できなかったみたいだなぁ…?」
「もちろん理解したぜ?」
「この前みたくはいかねぇぞ。スタースクリーム…」

自分の啖呵ははったりではない。
ウイルス防衛プログラムを送信する際、行為に及ぼうとしたこいつらを自分はねじ伏せた。
コンバットロン部隊は俺が製造、改造を施した、そのため俺には逆らえないように細工してある。
常に効果が発揮できるわけではない細工だが、こういった時には俺の意思で細工は作動できる。

自分を見下ろすコンバットロン共を睨み付けたまま、細工を作動させようとする。
しかし口を鷲掴みにされ、そのまま強く握られた。頬がぎしっといやな音を立てる。
ブレストオフは笑った。

「前に言ったよなぁ?正直俺はこんな身体に閉じ込められてうんざりしてんだ」
「っ…!」
「お前さんだけセイバートロン星のちゃんとした金属で、俺らだけ地球のおんぼろだ」

刑務所から助け出してやっただけありがてぇと思いやがれ。と動かせるだけ足を動かして
蹴り倒そうとする。しかし横になった状態ではうまく蹴り倒すことが出来ない上に
足をスィンドルが押さえつけてくる。

「スタースクリーム。このオンスロートさまを馬鹿にしない方が良い」
「ん!」
「お前がぐっすり眠ってて仕事がはかどったぜ…少し回路を弄らせてもらった」

オンスロートを見るとマスクでわかりにくいが、にやにやしているのはわかった。
こいつは仮にも「攻撃参謀」の名を持つものだ。コンバットロン部隊の中でリーダーとして動き
また、頭もそこそこに使える。しかし他人の身体の中を弄るほど能力に長けているのは知らなかった。

「通信機と俺たちの動きを封じる細工。取り外させてもらったぜ」
「っ…!」
「スタースクリーム」
「んっ…!!」
「お前今この状況どんな感じかわかってんのか?」

オンスロートの手の力が強くなる。両手首がいやな音を立てた。
手首に意識が行くと足を左右に割られる。相手が何をしようとしているか理解して焦る。

…おかしい。身体が熱い。
抑えられた口の端から微かに漏れる息は行為中のそれと似ていた。
触れてくる一挙一動に装甲の表面が震えた。

「さっきお前に飲ませたのなんだと思う?」
「この間の続き。させてもらうぜ」
「破壊すんのはその後だ…」



本当にこの間のようにはいかないようだ。5体相手ではどうにもならない。
スタースクリームの脳裏にいやなものが浮かぶ。されはこれから起こる事を想像したに過ぎないが
鉄の身体がひやりと冷たくなるものだった。




*






「…っ…ひっ!」


数度震えてコネクタからオイルをだした。
それでもレセプタ内の異物は退かなかった。
そのかわりに笑い声が降り注いだ。

「お前何度目だよスタースクリーム」
「堪え性ねぇなぁ。くく」
「っ…うごくな…っ!」

揺さぶられるたびに身体が痙攣するほど快感が走った。
間違いない。先ほど飲まされたのは神経回路を研ぎ澄ます類のものだろう。
この交歓行為をする状況下であれを飲まされたということは媚薬効果を期待してだろう。
オンスロートが考えたのか、確かにその効果は発揮されていた。

「ぅっ…うあ、やめ」
「さっき言ったろ?ちゃーんと俺たちをイかせられたらやめてやるよ」
「でもお前だけよがってちゃ意味ねぇんだぜ」
「がばがばだしなぁ」

ぎゃははと下卑た笑い声がする。
頭がぐるぐるして気持ち悪い。何度イったかわからない。
普段ならもう限界に達しているにも関わらず今だ自分は感じていた。
メガトロンに長時間付き合わされることもあるが大抵は途中で意識が落ちる。
それなのに気を失わず、それでいて誰かが自分のそこを突く度に甲高い声があがった。
先ほどまで口に咥えていたのは誰のコネクタだ?何度か飲まされた気がする。

微かに視界に入る床はぬるぬるとしていた。それがエネルゴンなのか、他の何かなのかまでは
意識が回らない。ただ反応する下半身だけが快楽を求めて動いた。
自分から下半身をコンバットロンに擦り付けているのはわかっていた。それをやめられない。
視界を彷徨わせるとスィンドルがメガトロンより貰ったエネルゴンを飲んでいる。

メガトロンと言う単語が自分の中に生まれるが、コンバットロンの誰かが接続部を激しくゆすり
打ち付けてくることによって消えていった。
ぽたぽたとアイセンサーから何かが零れ落ちるのを見てコンバットロンが笑う。
それでも殺してやりたいよりも、快楽が先行する。
久しぶりの接続なのだ、しかも感度を高めるためのウイルスドラッグ付き。
我慢していたものが音を立てて崩れていく。薄く開いた口からメガトロンの名を呼んだが誰にも聞こえない


「オンスロート。さっきの薬は?」
「まだあるぜ」
「もっとくれよ。もっとぐでんぐでんにしちまおう」

エネルゴンを飲みつつ近くにいたオンスロートから神経を過敏化させる錠剤を受け取り
無理に開かせた口に放り込んで飲み込むまで口を押さえた。
それも吐き出したくても上手く飲み下せるように顎を固定された。
舌で押し返そうとする、口内の熱ですでに溶け出した錠剤は微かに苦かった。



「おい。スタースクリーム」


外から声が聞こえた。
残念ながら当のスタースクリームに声は届いてなかったのだがコンバットロンには聞こえていた。
ノックの音と部屋の主を呼ぶ声。ブレストオフが顔をあげるとひらめいたように言った。


「アストロトレインだぜ。この声」
「あいつか」
「あいつも刑務所出だろう?仲間に入れてやったらどうだ」
「そりゃあ良い」

コンバットロンがスタースクリームの寝室の扉を開くと眠たげな表情でアストロトレインがそこに
立っていた。ようやく直った身体に錆はなく、新品同様だ。
気だるげな姿勢で立つその手にはエネルゴン酒のようなものが2本。
ぱっと見ただけでスタースクリームと酒を飲むためにきたのが分かる。

「あぁ?んでお前らいるんだよ」
「ちょっとスタースクリームと遊んでたもんでなぁ」
「スタースクリームは?」
「そこだぜ」

アストロトレインがスタースクリームを見て黙り込んだ。
どこを見てるかも分からないアイセンサーで、薄く開いた口からはぼそぼそと何かを呟く。
見るからに身体に力は入っていない。そのだらりと横たわる身体を無理やり引き寄せて
うでを掴み、脚を無理に割って、接続する。
スタースクリームはアストロトレインに気づかないまま、頬に脳内を冷却するための涙を流していた。

「…何やってんだ?」
「スタースクリームだって喜んでるんだぜ?やりてぇってな」

アストロトレインがスタースクリームを見ると確かに快楽を感じている顔だった。
抵抗するそぶりもなく、逆に下半身をコンバットロンに押し付けるように動いている。
しかし微かに手首の装甲が削れているのだけアストロトレインは気付いた。

「お前もヤるかぁ?」
「俺達はこのエネルゴンに今夢中だからよ」
「俺らはもう大分ヤッたし」
「つか疲れたわ、ねみー」
「こいつメガトロンの愛人やってんだぜ。結構口での奉仕が上手くてよぉ」

アストロトレインがスタースクリームの顔が良く見える場所に移動して錯乱している表情を見た。
アイセンサーがまともに動いていない。視界が右往左往して何かを視界に捕らえるそぶりすらない。
「見てろよ」と言うと数度スタースクリームの中にあるコネクタを動かし
スタースクリームが感じるように部分的に狙って突いた。


「あうぁ…!ひっああ…!」
「……何か飲ませたのか?」
「へへ。ちょっとだけだぜ」
「…」

アイセンサーから冷却液の零れる頬を撫でるとスタースクリームが辛うじて反応した。
手に顔を擦り付けてくるようにしてぼろぼろと冷却水を落とす。

「うっ…あ…めが…」
「…?」
「が、とろ…ん様…?」
「…」

アストロトレインは黙ってそれを見るとスタースクリームに多い被さっていたコンバットロンの
首を引っつかんで入っているコネクタごと引きずりなぎ倒した。
スタースクリームが内部を擦られて甘く鳴いたがそれよりも壁際に放られた
コンバットロンの声のほうがでかかった。

「いってぇな何しやがんだよ!」
「こいつ借りるぜ」
「はぁ?スタースクリームをか?なんだよヤりたいのか?」
「てめぇらはここで酒でも飲んでろよ」

アストロトレインが机に持ってきた酒を置くとコンバットロンはそれに飛びついた。
本当にもうスタースクリームに興味はないらしい。スタースクリームはそんなことにも
気づかずに今だにデストロン軍の破壊大帝の名を切なげに呼び続ける。

肩に担ぐ形でスタースクリームを抱き上げると飲み散らかした部屋からでた。
コンバットロンがここでしていかないのかと言ってくるが、流石に見られながらする趣味はないし
こんな小汚い場所にようもない。アストロトレインはスタースクリームに用があってきたのだ。
背中にある羽にスタースクリームの指が触れてカリカリと引っかかれる。
強すぎない指圧にアストロトレインはスタースクリームが大分薬を盛られていることに気付いた。

「…だ、れ」
「ちょっと黙ってろ」

手近な部品貯蔵庫の扉を開いて中に誰もいないことを確認するとアストロトレインは
スタースクリームを担いだ状態で中に入り、ロックをかけた。
一応怪我をしない程度に床に放るとスタースクリームが呻いた。


「…いてぇ…」
「…」
「…だれ…だ」
「…」
「…あ、アストロ…?」
「あぁ」

スタースクリームは床から半身を起こすとアストロトレインを暫く黙ってみた。
静かに見つめ続けると、ぐっと喉を鳴らす。咄嗟に胸に手を当てて前かがみになったが
続けて咳き込むと口からオイルが吐き出された。

飲まされた薬は良くないものだったのか安物だったのか。
正直、ブレストオフに突っ込まれてからの記憶が怪しい。


「…」
「なに、みてんだよ…」

続けられていた快感から少し遠ざかるとスタースクリームはようやく冷静さを取り戻し始めた。
メガトロンの「全軍にソフトの譲渡」を命令されて以降、達することや快楽に身をゆだねるのを
耐えてきたのにここであいつらに犯されるだなんて想像もしていなかった。
ため息を吐いて俯く。アストロトレインが来てくれて助かった。
しかし見下ろしてくるばかりのアストロトレインは無言で、こちらも無言で睨みつけるしかなかった。

「……助けたのかよ」
「…」
「…」

俯いて床を眺める。吐いたばかりのエネルゴンが汚らしい。

「…本当は酒持ってきたんだけどよ」
「っ!」

アストロトレインが体内の収納から酒瓶を取り出してそこから鮮やかなエネルゴン酒を浴びせて来た。
汚れた床が今こぼしたばかりのエネルゴンで染まる。
頭からかぶり続けるエネルゴンは甘い匂いのする物でメガトロンがくれたものよりかは
安っぽいが良質なのがわかった。良いにおいだ。

「なに、すんだよ!」

アイセンサーにかかった酒を腕で拭いアストロトレインを見ると
こぷこぷと瓶から直接エネルゴンを飲み干す姿が見える。
しゃがみ込むと顎を掴まれてそのまま口移しの形で飲まされる。
こちらはまだ思うように動けるほど回復してない。何のつもりかわからないがそのエネルゴンを飲んだ。

「礼だよ。お前が俺を助けたんだろ?」
「…あぁ。コスミックルストか…あれは命令だったからだぜ」
「それでもお前が俺の為に動くだなんて珍しいじゃねぇか」

肩を押されてエネルゴンまみれな床に倒れこむ。
急に動かされたせいで頭がぐるぐるした。また気持ち悪い。

「あの時とは体勢が逆だな…」
「…あの時は…」

あの時といわれてすぐに思いつく。アストロトレインの上に跨って、接続した日。
あの時俺がやってやったみたいに顔を撫でられる。少しだけ心地いい。

「…あの時お前があんな顔しなけりゃ」
「…?」
「こんなことせずにすむんだぜ。スタースクリーム」
「…い、っ…あ」

倒れこんだ身体を起こそうとすると鉄の舌が首筋を舐めてきた。
体中にかかったオイルを舐め取るようにアストロトレインが動き、身体を振るわせる。
それを感じ取ったアストロトレインが笑う、見下ろしてくる表情が気だるげなものから
微かにデストロンらしい、昔のアストロトレインのような、狂気に満ちた顔に変わっていく。

「本来は、酒を奢って終わりにするつもりだった」
「な…に」
「礼だって言ったろ、こんなことするつもりはなかったんだぜ」
「…」
「ただ…あんな姿見せ付けられちまったらなぁ」

少しの快感に大げさに反応する身体がにくい。
駄目だ。コンバットロンのクズどもだけじゃなくてアストロトレインにまでやられるのはごめんだ。
メガトロン様になんていえばいい。襲われましただなんていえない。

顔を必死に押しのけると舌打ちをされて腕を押さえつけられた。
アストロトレインと自分の体格差はかなりある。力じゃ当然叶わない。
中断されていた快感が再度始めると身体は素直に受け取り、腰をアストロトレインに押し付けた。

「素直じゃねぇか」
「ち、がっ…あ、あ!っ」

身体を懸命にコントロールしてアストロトレインより離れるように命令を下す。
惜しむように腰が離れて逃げようと身体をねじった。

「…一度吐いたら薬も抜けちまったみてぇだな」
「…っ、たの、むから…!」
「あの薬、刑務所じゃ結構有名な薬なんだぜ。スタースクリーム」

先ほど寝室を出るときにコンバットロンより拝借した錠剤を懐からだすとスタースクリームに
見せびらかすようにかざした。
スタースクリームがその薬を見るとそれよりも歪んだ笑みをしたアストロトレインが目にいった。
なんて真っ赤なアイセンサーだろうかと、まるでメガトロンのようだとスタースクリームは思った。