天気は快晴。風は東より。温度も良好。
本日戦闘日和。
欠席者ゼロ。



「妊娠おめでとう。スタースクリーム」
「妊娠じゃねぇっていってるだろうが!」


サイバトロンは「またまた」「気にするなよ」「名前は決めた?」と思い思いに声をかけてきた。







Pregnancy sequel







「まさかスタースクリームがねぇ」
「いつ生まれるの!?」
「名前決めたのか?」

「まだまだ生まれるのは先さ。バンブル」
「生まれるとか言うな。ただのスパーク摘出だ」


サイバトロン側にたったスカイファイアーがバンブルに微笑みかけて答える。
スタースクリームはメガトロンの隣でにらみつけた。


「メガトロン様!サイバトロンの野郎を殲滅しましょうぜ!」
「もちろんだ。スタースクリーム」
「あぁ、メガトロン」


メガトロンが融合カノン砲を構えるとコンボイがひょいと右手を上げて近づいてきた。

「ん?なんだコンボイ。撃つぞ」
「まぁ、待て。これ、早いけどお祝いだ。受け取ってくれ」
「む。上質オイルだな」
「受け取るな!阿呆大帝!」

コンボイに渡された箱を開けると中にはオイルがボトルに入って何本も入っていた。
メガトロンはそのボトルをひとつ取り出すと目の前でたぷたぷと揺らした。

「うむ。こりゃいいわい」
「そうだろう。わざわざオメガスプリームに乗って遥か遠くの惑星で取ってきたんだ」
「ほう」
「出産は1000万年は後だと聞いたぞ。その時になったらまた出産祝いを」

「………」


コンボイとメガトロンの会話が盛り上がってきたあたりでスタースクリームは意識ががっくりとへこんだ。
なんだ。なんだこの状況…最悪だ。
周りを見るとジャガーとフレンジーとバンブルでじゃれてるし、スカイワープは岩に座ったまま寝てるしで
体たらくも良いところだ。ここはやっぱり自分がしっかりするべきでは。そう。ニューリーダーの俺様が…!

「これは俺様の出番だ…なぁ。サンダークラッカー」
「あ?ここで俺に話し振るのかよ…」

「スタースクリーム」
「ん…スカイファイアー」
「具合良さそうだね」
「最近エネルゴンも摂取しやすくなったからよ…」
「今日またデストロン海底基地に遊びに行くから」
「またかよ…ったく」


それがすでに間違ってると思うんだがとサンダークラッカーは誰にも気付かれないようにため息を吐いた。




*






「んぅ…はっ」
「スタースクリーム」
「スカイファイアー…頼む…もっと…」
「駄目だよ…負荷はかけられない…」
「いいっ…少しくらい…っ」
「駄目だ。安静にしなくては」



スカイファイアーは唇を十分に楽しんだ後に離した。
スタースクリームは息を荒くしてスカイファイアーの腕にしがみついたがスカイファイアーはその手を離した。

スタースクリームの口内をスカイファイアーは長い時間をかけて楽しんだ。
最初は拒んだスタースクリームだったが口内に舌を押し込められて舌を絡めればすぐに抵抗もやんだ。
脱力していく身体を抑えるためにスカイファイアーが背中に腕を回すと受け入れるようにスタースクリームも両手を
スカイファイアーの腕にまわしてしっかりとしがみついた。

スカイファイアーは何分もかけて口内を蹂躙すると口を離して「もうやめよう」と言った。
そうすれば異論が出るのはスタースクリームからだ。
嫌だといったのにキスをされ、散々楽しみ感情が高ぶってくるとやめようと言われる。
これが数日間続いている。

確かにこのまま行為を続けようとすると体調を崩すのは自分だ。それはもうすでに立証済みでもある。
最初は気持ち良いのにどんどん気持ち良いより気持ち悪いが勝ってきて吐き気がする。

それならスカイファイアーも最初から手を出してこなければ良いのに。それなのにこいつはキスを強要する。

1000万年ぶりの快感なのに。

スタースクリームはイライラしていた。





「惚気を聞く気はないぞ」
「スカイファイアーの言っていることは正しい」
「何でい、スタースクリーム。お前やられたいのか」
「…最近頭痛が酷いから阿呆な相談は受付ねぇぞ」

スタースクリームは恥を忍んで聞いたのだ。
どうすればいいか。1000万年スカイファイアーとこんなことを繰り広げるのはごめんだ。
時々デストロンに来て、触れて、触れるだけ触れて、帰っていく。
しかし全員とも「聞く気ありません」といった感じで流される。
メガトロンはスカイファイアーを基地に入れないようにすると言っていたがそれはそれで困る。

「なっ…んで最後まで…やらねぇんだよ!!!」

スタースクリームは一人部屋で暴れた。

「こんなとこにいられるか!!」



*





「くそっどいつもこいつも俺様を馬鹿にしやがって!!!」
「それでなんでこっちにくるんだい…スカイファイアーに連絡しておくからな…」
「なんで連絡するんだよ!」
「面倒見切れないからさ」


スタースクリームは怒りを偶然通りかかった人物にぶつけていた。

「サイバトロンの副官として、デストロン2のお前をかくまうのは」

マイスター副官。
サイバトロンの副官でサイバトロンの面々からも人望厚く、人間にも優しく、デストロンからしたら
強い上に機転のきく、邪魔な存在なのだが鬱陶しいスカイファイアーとデストロンの面々から
逃げてきたら見回り中のマイスターと出くわし
「君妊娠してるらしいけどこんなところで一人でいるとは無用心過ぎないかい?」
などと紳士ぶった発言をされたので「そう思うならちょっと付き合えよ」と無理やりマイスターを引き連れて歩いているのだ。

しかしやはりサイバトロンというか、発言がちくちく刺さる。

「私も見回りだからね。お前と長々一緒にいるつもりはないんだよ」
「大体考えなしに妊娠したのが問題あると思うがね」
「それにスカイファイアーの言うことはもっともだ」
「スパークに負担をかけたくないなら、そういう行為は慎んだほうがいい」
「別にデストロンの君に負担がかかるのは構わないんだけどね」

「だからいい加減ついてくるのはよしてくれ。もうサイバトロン基地は目の前だ」

言い返すことも出来ず。マイスターの説教を全部聴くことになってしまった。
しかし言ってることが的確というか的を得ているというか全て脳内まで染み込んでくるようなことを言う。
メガトロンも正論を言うがデストロンの面々よりもまともな発言をするので反論できずじまいでここまできてしまった

「…私は基地内に戻るけど」
「……」
「……今追い返したらどっかの誰かさんたちに怒られそうじゃないか」
「…俺は…」
「少し話を聞くだけだよ。ストレスを溜め込むと母体とその子供に悪影響だと聞いた」
「…母体とか言うんじゃねぇよ…」
「部屋には通すけど、ここがサイバトロン基地だってこと。忘れないでくれ」
「…俺様だって自分の立場くらいわかってらあ。メーワクはかけねえよ」


スタースクリームは今の今まで聞かされた精神的虐めに少なからずへこんでいた。
普段なら「ふざけるな」「てめぇの話はつまんねぇな」「うるせぇ!」と言っていただろう。
体内にあるスパークのせいもあるのか。感情の上がり下がりも激しい。今は極端に感情が落ちていた。
スタースクリームはバイザー越しに見られながら表情を見られないように俯いた。

(おや意外とかわいらしい反応をするもんだねえ)

マイスターはその俯く前の表情をしっかりと視認して少しだけ笑った。


「わかってくれているなら良いよ。ついておいで」
「……」


俯いていたスタースクリームはマイスターの笑みに気付かないまま
マイスターについていった。


*







「だからスカイファイアーは!」
「おいおい。大きな声を出さないでくれ。私の自室だからと言って防音されてるわけじゃないんだから」
「うっ…」
「言いたい事はわかるさ。煽るだけ煽られて放ったらかしなのがいやなんだろう」
「…違う」
「違わないさ。しかしスカイファイアーに煽られなければ君はなんともないのだろう?」
「…なにが?」


マイスターは何度か惚気か…と思いつつも辛抱強くスタースクリームの話を聞いた。
最近コンボイ司令官とメガトロンがスタースクリームの妊娠についてよく喋っているからか
デストロンに対する危機的意識が欠落し始めているのかもしれない。
スタースクリームにわざわざ栄養価のたかいエネルゴンを準備するあたりそれを物語っている。

「おまえさんはスカイファイアーに良いように触られない限りは禁欲的なんだろう?」
「…嫌な言い方しやがる…」
「でもそうだろう?ならそれを伝えたらどうだい?スカイファイアーに触るなら最後まで。最後までやる勇気がないのなら」
「………お前嫌な奴だな…」
「そうかな?とても真面目に答えてるんだけどね」
「………いや、だから…俺は」
「ん?」
「最後まで……」
「……」

スタースクリームは顔をそらして決して顔をみせないようにした。
もらったエネルゴンのコップを額に当てながら顔をそらすところをみると

「流石デストロンというか。欲に弱いね…禁欲的だ何て言ってすまない」
「っ…うるせぇ!てめぇに何が…!!」
「……」


わからないさ。
1000万年前に失った相手が戻ってきて。
1000万年ぶりに触れてきて。愛しているよと言ってきて。
しかし身体を重ねることが出来ないだなんて。知りたくもない。


「体調が悪くなるんだ。我慢するしか」
「できるわけねぇだろ!」
「…そんなに快感に弱いのか?デストロンの副官殿は」
「てめぇ…言わせておけば…」
「そう怒らないでくれ。ちょっといいかな?」
「……なに…」

客用の椅子に座っていたスタースクリームの両脇に手を置く。
瞬時にスタースクリームが反応して身体を硬直させた。

「そんなに脅えないでくれ。何もしないさ」
「……なにするつもりだ…」
「どれくらいなのかなと思ってね」
「何かするつもりじゃねぇか!」
「しないさ。デストロンに手をだすほど私はだらしなくないさ」
「って…め…!」

首筋を一噛みする。そして少しだけ強く吸うとスタースクリームの声質が少しだけ変わった。
睨まれて渡していたエネルゴンを顔面にかけられる。


「……なにするんだ」
「てめぇが!」
「もったいないな…しっかり舐めてくれ」
「は!?わっ、ばかやろう!どけって…!」


顔にかかったエネルゴンを放ったらかしてそのままスタースクリームのキャノピーの隙間や腹部を少し撫でると
スタースクリームは表情をゆがめた。その表情が苦痛ではなかったこともマイスターは見逃さなかった。

「ほら。スタースクリーム。舐めてくれたら解放する」
「……やっぱ…サイバトロンってのは最低だな…」
「わかっていてそれに乗るデストロンのほうが最低だと思わないか?」

その言葉を苦渋の表情で聞くとスタースクリームは舌をだしてマイスターの頬をなぞった。
マイスターも頬のエネルゴンを舐められつつ腹部をゆっくりと撫でた。
ここにスパークがあるのかとマイスターは腹部を丁寧に撫でた。
スタースクリームは繊細な機具の隙間にマイスターの指が入り込んでくるたび喉を引きつらせながら
たれるエネルゴンを追ってバイザー、頬、顎と舐めた。

そのスタースクリームの表情は見たことのないものだったのでマイスターはその表情をよくみて楽しんだ。
この反応は予想外だ。普段うるさい分、こういった行為でもうるさいのかと思ったがそうでもない。


「まいすたっ…もっと…ちゃんと触…」
「……それはできない」
「っ!」


睨みつけてきたスタースクリームが熱をもっているのはわかった。
しかしスカイファイアーは自分の仲間であり、敵に回したくはない。
ここでスタースクリームの要望を聞き、行為に及んだりしたら何をされるか分からない。
正直に言うとこのスタースクリームの表情には結構くるものがあった。
それでもマイスターは冷静だった。仲間と自分の私欲を天秤にかけてあっさりと仲間をとった。


「君を助けてあげたい気持ちもある。しかしそれはいけないことだよ。わかるね」
「……てめぇも…!こんなにされて…どれだけ…!」
「……スタースクリーム。それはスカイファイアーにも言えている事だ」
「あ…?」


自分はスタースクリームに一切の特別感情はない。あえて言うなら戦場で会えば躊躇なく撃てる相手だと言える。
それでも今のこの状況が。自分を少なからず煽っている。表情や反応。スタースクリームが自分を煽っている。
そうしてスカイファイアーはどうだろうかと考えた。スタースクリームと同じで1000万年の間何もなかったのだ。
きっと触れたいと言う願望はスタースクリームの比ではないだろう。
毎日キスだけで我慢しているのだ。賞賛に値するとマイスターは判断した。


「スカイファイアーを大事にしてやるといいさ」
「何が!」
「君のこんな痴態を見て最後まで手を出さないなんてかなり辛いことだろう」
「………」
「我慢してるのは君だけじゃないはずさ」
「…………」
「スカイファイアーにできてスタースクリームに出来ないことがあるかな?」
「……くそっ…」


嫌な奴だな。
小さく呟いたスタースクリームの頭を撫でて少しだけ笑った。あざ笑ったわけではない。
スタースクリームの拗ねたような態度に和んだ為にでた笑いだ。


「落ち着いたじゃないか」
「……一息入れると冷める」
「そんな感じで我慢できるだろう」
「……」

まだ拗ねたようにするスタースクリームの顔を覗き込んで諭すように言う。
まだ文句あり気だったが最初よりは随分落ち着いた様子だ。


「そうだね。もしスカイファイアーに反撃してやりたかったら」
「たら?」
「こうすると良い」





*





「スタースクリーム!どこに行ってたんだい!?」
「おー。スカイファイアー。また来てたのかよ」
「スカイワープに聞いても知らないっていうし、メガトロンに聞けばスタースクリームに無理強いはよせと…」
「………」
「とにかく出かける時は一言でも良いから…」
「悪かった。スカイファイアー」
「……え?」

スタースクリームは素直に謝罪するとスカイファイアーの胸元に手をやって
緩やかに足先のジェットを起動させると少しだけ空に浮いた。
そのままスカイファイアーの眉間に少しだけ触れるキスをしてまた地面に脚をつけると
スカイファイアーを見上げて少しだけ口に微笑を作った。

「悪かった。心配かけちまったな…」
「…す、すたー…?」
「メガトロンに呼ばれてるから。また今度来いよ」
「……え、あ、ちょっと…待って」


踵を返して背中を向けたスタースクリームの腕を掴む。無意識にだ。
スカイファイアーは掴んだ後に力を入れすぎないようにと配慮して掴み直した。
そうして振り向かせようとする。スタースクリームの微笑をもう一度正面から見たかった。
振り向かせようとするとスタースクリームの掴まれなかった方の腕が動き
スカイファイアーの口を指先で抑えた。スカイファイアーは突如とした動きに「むぐっ」とくぐもった声を出した。


「……暫くキスはお預けだ。スカイファイアー」
「なっ…」

抑えた指先にスカイファイアーの唇の感触を感じつつ、スタースクリームは
スカイファイアーの唇を押さえる自分の手にキスをした。
指の向こうにはスカイファイアーの唇の感触がある。実際に唇同士が重ならなくとも
スタースクリームは何故か満足した。スカイファイアーの驚愕の表情に満足したからかもしれない。

「…またな」
「……」

ゆっくり指を放してまた背を向けるとスカイファイアーの力の抜けた手から腕は開放された。





『出来る限り余裕の表情で。できたら微笑むのがいい。あぁ、違う違う。それじゃ凶悪すぎる。
もっと自然に微笑むんだ。唇の両端を少し上げる程度で。片側だけ極端に上げると微笑みじゃない』

マイスターの忠告を思い出しつつ演技した。
スカイファイアーに確かに仕返しは出来たようだ。若干気恥ずかしさは残ったが。

『微笑んだまま「お預けだ」というんだ。できたら頬や身体の一部にキスしたりすると更に良い』
『…それが仕返しになるか?』
『スカイファイアーにはこれほどない苦痛だと思うよ。これが成功すればあっちから行為をねだってくるかもしれない』
『何!?本当か!?』
『確立は低いさ。彼は君の体を一番に考えているからね。それでも焦らすんだ。「まだお預けだ」と』

そうすればいつかは陥落するさ。






流石サイバトロンの副官さまだ。考えがあくどい。
スカイファイアーには悪いがこれは仕返しだ。あいつから「繋がりたい」といわせてやる。
だいたいスパークはそう簡単に壊れたりしない。あいつはちょっと心配しすぎだ。




*





天気は快晴。風は東より。温度も良好。
本日戦闘日和。
欠席者。体調不良にてスタースクリーム。

「何?メガトロン。それは聞き捨てならないな」
「何を言うか。コンボイ。当たり前だろう」


「…今回は何の話してんの?」
「生まれた子供はデストロンかサイバトロンかだってよ」
「…くだんねぇー」


「大体スタースクリームの体内で生成されたスパークだぞ」
「飛行能力に富んだ子供になるだろう。そしたらサイバトロンにいれるのが良いと思わないか?」
「貴様らなんかに預けたら性格が破綻するわ!」
「それはこっちのセリフだメガトロン!」



マイスターは暇そうに肩に乗っている鳥を観察していた。
今日はこのまま戦いに入りそうだ。すぐに銃器稼働できるようにしておこう。
スタースクリームは今回の戦闘には参加していないのか。
鳥を観察しつつも状況を視認する。スカイファイアーがぼーっとしているな。


「スカイファイアー。随分とぼんやりしてるけど」
「ま、マイスター副官!そ、そうですか?」
「うん。してるね。今日は戦闘になりそうだし危ないぞ」
「すいません…少し考え事を」
「スタースクリーム?」
「えっ!や、そんな」
「彼も子供が出来ると言っても彼自身、精神的に未成熟だ。面倒見てあげるといい」
「…はぁ」


マイスターは機嫌が良かった。
中々面白いものを見れた。
そして近いうちにでもあいつはまたくるだろう。自分の助言を聞きに。
そうして肩にいる鳥達を眺めているとバンブルが興味深そうに鳥を見ていた。


「ねぇ?副官?どうして最近よく鳥を肩にのせているのさ?」
「鳥は一度餌をあげるとよく懐くから。懐いたみたいだね」
「そうなの?」
「餌を食べるまでが長いけどね」

マイスターは機嫌よく笑った。





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マイスタ×スタスクって言うより
スカファスタ+マイスタでした。

10000打企画する前から、と言うか妊娠ネタが思いついた時点でマイスタネタは思いついてたんで…
妊娠ネタの続きとかでなく純粋なマイスタを読みたかった人いたら申し訳ないですが。

ネタを一緒に考えてくれたTさん有難う御座います^^