「あ、おはよう。スタースクリーム…」
「お、おう。おはよ…う」



誰もいない廊下ですれ違いざまに挨拶した。
返事を返すと微笑んでくれたスカイファイアーをみてスパークがばくばくした。

「キスしてぇ」と自分の感情を置いてきぼりにした発想が飛び出してきて
また自分の顔が赤面しそうなのを必死に抑えた。


繋がり2




研究施設でお互い以外にセイバートロニアンがいる時にはまったく話さなかった。
あっちもあまり周りに知られるのは好まないだろう。自分としてもまだ
スカイファイアーを可愛いと思うなんてどっか回路おかしくなったとしか思えず
この感情を他の誰かに悟られるなどもってのほかだ。

昨日けしかけてきた奴には少し細工をした音声を渡した。
告白したところまではまんまだがスカイファイアーが承諾したこと。
それと自分がキスできるか何て言ってそれを真に受けたスカイファイアーが本当にキスしてきて
自室に戻って「可愛いじゃねぇか」とか言うところは全て削除した。
「結果がはいってねぇ」と言われたが「冗談だってすぐばれた」と誤魔化してみた。
若干、不審に思われたが飽きやすい奴だ。すぐこんなこと忘れるだろ。
昨日の実験の結果をレポートにして提出。これが通ればコンビ解消で仕事に戻れるからな。

廊下を歩いているとスカイファイアーとすれ違った。
「あ」と思ったが口には出さなかった。スカイファイアーの隣には他にも研究員がいたし
スカイファイアーもこちらを見なかったから。
隣を素通りすると会話に夢中になっている研究員達にばれない程度にスカイファイアーがこちらを見た。


「ラウンジにいて」
「!……わかった」

歩みを緩めたのは一瞬だ。すれ違う時に小声でぽそりと言われたから。
まさかあっちからコンタクトを取ってくるとは思わなかったがスカイファイアーが一瞬微笑んだので承諾した。

何の用だ。まさか昨日のことで何かあんのか。
そう思いつつもラウンジに向かう。またいつも通りマグカップにエネルゴンとキューブをいれて飲み始める。
ついでにレポートでもやっとくかとコンピューターを取り出して仕事を開始する。すでに周りには誰もいなかった。
時間はすでに遅く、普段なら支給されている自室に戻る時間帯でもある。


「スタースクリーム」
「スカイファイアー…」
「待たせたね。すまない」
「…いや」

スカイファイアーの後ろを見るが誰もいない。

「さっきの奴等は?」
「残って仕事をするといったら帰ったよ」
「ふん…」

スカイファイアーはすぐ隣に座ると同じく小型の持ち運びコンピューターを取り出し何か仕事を始めた。
その様子を暫く眺めた後、手持ち分沙汰になって声をかけた。


「……で?」
「ん?特に用はないよ」
「…はぁ?」
「コレくらいの時間帯しかゆっくり話せないからさ…」
「…」

困った顔で笑う。鬱陶しいと思うだろう。前の自分なら。
くっそ…可愛いぞ…

「…けっ」
「スタースクリームはいつもそういう態度だね」
「…悪いかよ」
「良いと思うよ。個性があるし」

時々こちらを微笑みながら見るスカイファイアーの手元を眺める。
手は止めず仕事をするスカイファイアーを見る限り本当は暇ではないのだろうに
冗談で好きだといった自分の為に時間を割いてると思うと、もあもあと感情がわいてきた。


「…ラウンジじゃなくても良いだろうよ」
「私の部屋は汚いから…」
「…俺の部屋くるか?」
「え!いいのかい?」
「…あ、あぁ」
「興味あるな。スタースクリームの部屋」


…だから、その顔やめろよ。可愛いな…なんだこいつ…
その顔をまじまじと見てから顔をそらす。
あー、キスしてぇ。…じゃねぇって!


完全に自分の感情を置いてきぼりにする発想を抑えて「部屋はこっちだ」と立ち上がると
自分よりも断然大きい白い機体も一緒に立ちあがった。



*




白い機体を背にして歩き始めると後ろから重い足音が聞こえる。
扉を開いて中に招き入れるとスカイファイアーは興味深そうにしていた。


「思ったより綺麗だね」
「汚ねぇと仕事進まねぇだろ…」
「私は汚さより仕事に目が行ってしまうんだ」

にこにこするスカイファイアーにキスがしたくて仕方がなくなる。
キスしたい、でも理性が否定する。
背筋がぶるっと震えるとスカイファイアーがこちらを見た。


「…スタースクリーム?」
「…俺からもキスさせろよ」
「…え…」

スカイファイアーの顔が赤くなる。別に誰かいるわけでもないのに
周りをきょろきょろと見回して焦っている。

「…嫌かよ」
「そ、そうじゃなくて…その、まだ」
「まだ?」

聞き返しておいて「やっぱり昨日のはなしで。」なんて言われるのではないかと少しだけ焦った。
それでも良いじゃねぇか。なかったことになればいつも通りの生活が始まるだけだ。
またラウンジでエネルゴン飲んで、自分の仕事しつつ、くだらない知り合いと顔をつき合わせて
それで遅れてスカイファイアーがラウンジに入ってくるだけだ。

なのに、焦ってる。


「…昨日キスしてから…スパークが落ち着かなくてね…」
「…え」

スカイファイアーの指先が自分の指先に触れる。
こんなふうに他のトランスフォーマーに触られたのは初めてだ。
指先同士が触れ合う。手を引かれて、スカイファイアーの胸元に指先が当たった。


「…装甲が邪魔だからわからないと思うけど」
「……」
「凄い緊張してる」


視線を外して顔を赤らめる。
気付かなかった。緊張してただなんて…

駄目だ。
何こいつ。
すげー可愛いじゃねぇか馬鹿野郎。

必死にブレインサーキットを冷やそうとした。
なのに加熱するばかりで自分の顔まで赤くなってきてるのがわかる。
いや、冷静だったと思う。根底は冷静だった。

自分よりも二回りは大きくて、お人よしで、自分の娯楽よりも科学への探究心を優先する。
こいつなんて気持ち悪い奴としか思えなかった。


「…スカイファイアー」
「ん?」
「…ちょっと屈めよ」
「……」

スカイファイアーは黙って膝をついた。顔の位置が今までにないほど近くなる。
自分が自分以外に興味を持つなんて滅多にない。研究意欲はあっても自分以外のトランスフォーマーにこんな感情抱かない。
目元を指で擦って、赤い頬を自分の青い手で包んだ。
本当に触れるのか?スカイファイアーに。口に。


「…ス、スタースクリーム」
「…」


スカイファイアーの困った顔とか細い声に誘われるように口を重ねた。
スカイファイアーはびくっと硬直した。その硬直した唇を何度も吸う。

「ス…タースクリーム!」
「なに」
「待ってくれ。その」
「…」

額に唇を当てる。
スカイファイアーは身を任せてくれた。
時々待ってくれと手を握ってきた。それさえも可愛い。


「…スカイファイアー」
「んっ…」
「可愛い」
「えっ…わ、私が?」
「俺から見たら、可愛いんだから良いんだよ…」
「…私もスタースクリームが可愛いと思うよ」
「はぁ?俺がぁ?」

うん。と微笑むスカイファイアーを可愛いと思いつつも驚く。
俺に可愛いとか言うのはこいつくらいだ。
少し面白くなくて唇をとんがらせるとスカイファイアーは笑った。

「すまない。気分を悪くさせたかい?」
「ちょっとな」
「ふふ、ごめん」

謝ってきたのでその口をもう一度塞いだ。
スカイファイアーは顔を赤くしながらも背中に手を回してきた。
構図的に自分がキスされているような状況が気に食わないがスカイファイアーが
頬を染めるので自分としては満足だ。

何度も触れた。口を何度も重ねてスカイファイアーの時々漏れる声を聞いた。


「……ス、ター」
「ん…なんだよ…?」
「…ちょっと…いい?」

一度だけ頷くとスカイファイアーが嬉しそうに笑った。
脇の下に手を入れられて持ち上げられる。足が宙に浮く。
「うわっ」と声を出すとスカイファイアーは「少し我慢して」と呟いた。

空を飛ぶジェットロンだ。足に地面の感覚がないくらいなんともない。
それよりも脇下に差し込まれたスカイファイアーの腕と持ち上げられたことに驚きを隠せない。
持ち上がった身体が寝台に置かれるとそのまま押し倒されて唇をふさがれた。

「んんん!!?」
「んっ」

背中に寝台が当たって口を開くと舌が入り込んできた。
スカイファイアーは相変わらず頬を染めている。その顔は可愛いと思う。
ただ圧し掛かってくる巨体に驚きが隠せない。
スカイファイアーが舌をいれてくるだなんて信じられない。

互いの口内オイルが音を立て始めた時点でやばいと思った。
押し返すとスカイファイアーはすぐに離れた。

「ちょっとやってみたかったんだ。ごめんね」
「お、おまえ…」
「どうだった…?」
「…」

驚いたがスカイファイアーが笑うのでこちらもつられるように笑った。
腕を掴んで寝台とスカイファイアーの間から抜き出るとスカイファイアーの上に乗った。
スカイファイアーはきょとんとしていたが、両頬を手で掴んで唇を塞いだ。
舌を押し込んでいくとスカイファイアーは少し驚いていた。


「こんな感じだったぜ」
「…わかりやすい説明有難う」


スカイファイアーも笑う。
自分も笑う。

その後も飽きるまでキスした。
ごろごろ上になったり押し倒されたりしながら舌を絡めた。
最終的にスカイファイアーに体格で押し切られて寝台に押さえつけられた。

「ずりぃぞ!」と言うと笑われた。
体格差で押し切られるのはずるい。むかつく。悔しい。しかしその時に思った。
絶対てめぇにコネクタぶちこんで接続してやると。





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次でおしまい。
細かい所を飛ばして書いてるから短いなw