やっぱりよ。知的生命体ってのは複数いれば群れる。群れれば派閥が出来る。
どんなに頭が良かろうが悪かろうがグループってもんは作られるもんなんだぜ。




繋がり





「よう。スタースクリーム」
「よう」
「それ終わったか?」
「まだ途中だ。見りゃわかるだろうが…」

研究所のラウンジでスタースクリームは小型コンピューターを叩いていた。
マグカップに研究所備え付けのラウンジで配っているエネルゴンティーなんかいれて
更に小さいエネルゴンキューブを数個いれたものだ。
知り合いなんかは趣味悪いというがなかなか美味い。頭が回るし。

自分は基本的に一人で行動することが多かった。
しかし自分がこの研究所の中でも知能体力基本能力どれをとって飛びぬけてるのは自覚がある。
見た目もスマートでイケメンだ。邪険にする奴もいるが好意の目だって受ける。
「問題は性格だ」なんていわれるが俺様がにこにこ笑って優しいだなんて気味悪いだろうが。

最近2体以上でチームを組み、惑星から植物を採取してあるウイルスの抗体を見つけるなんていう
面倒くさい仕事を任された。さっさと終わらせて自分の仕事に戻りたい。

相方は目の前に座ると数ヶ月前に採取した植物を検分し
ウイルスを注入させた結果の入った瓶をいくつか机の上に並べた。
結果はまだでない。全部失敗に終わっている。ちらりと並べた瓶を見てから腕で机の端まで押しのけた。

「出すな。見たくもねぇ」
「後20種しか残ってねぇからな」
「…」

数年かけて惑星を回ってきたが植物も少なくなってきた。
もし結果が出なければまた採取に行く必要がある。また何年もかけて。自分の仕事に遅れが出るのが不愉快だ。
相方もそれほど仲が良いわけではないので面倒臭そうに瓶をしまいはじめている。
それから次の実験はどの植物で試すか。原液のままか。溶かすか。刻むか。
ラウンジの入り口にでかい何かが視界にはいって視線をやる。

「…相変わらずでけぇな」
「ほっとけ。俺らには関係ねぇ」

スカイファイアーという白い機体をしたトランスフォーマー。話したことは数回しかないが
性格は温厚が代名詞みたいなもんだ。いつもにこにこしていて俺らとは別次元の生き物みたいな。

研究所には地味に、こそこそもそもそ朝から夜まで根詰めて仕事するセイバートロニアンと
自分達みたいに怒られない程度に自分の仕事をして、後はのんびり過ごすセイバートロニアンといる。
スカイファイアーはどっちかってっと前者だ。真面目すぎて気持ち悪いと思った。
いつぞやか数日寝ないで仕事をしていたのを見たことがある。定時にあがって休むだろ普通。
仕事熱心なあっちは俺らをゴミみたいな目でみることもある。興味もないのに研究員をしてる無価値なトランスフォーマーだと。
まぁ、確かにこのご時世だ。研究員になった奴全員が研究意欲があるってわけではねぇし。


「スタースクリーム」


声をかけられてはっとする。話聞いてなかった。
「あ?」と聞き返すと笑って植物をとりだした。

「今日の実験はこれだ」
「それかよ…」
「…多分これ成功すると思うんだよなぁ」
「はぁ?てめー、前任の引継ぎ聞いたか?この実験してた奴が失敗した植物だぞ」

一応確認の為、惑星から取ってきただけだぜ。と付け加えるとそいつは口を左右に開いて嫌な顔をした。


「…スタースクリーム。賭けしようぜ」
「はぁ?」
「みろよ」

視線をそらされたので視線の先を確認する。スカイファイアーだ。
あいつがどうかしたか?と尋ねるとにやにや笑って小さい声で話し出した。

「もし成功したらあいつに告白してこいよ」
「なんで」
「罰げぇ〜む」
「くだらねぇ。失敗したらてめぇでいけよ」
「いいとも」

自分のコンピューターを暫く見つめて電源を落とす。


「てめぇがスカイファイアーにフラれる所とか見物だわ」
「こっちの台詞だ馬鹿が」




*





「嘘だろ…?」
「ウイルス死滅〜!やっと自分の仕事戻れるぜ…コンビ解消お疲れ様」
「なんでだ…」
「前任者のデータ見たら少しだけウイルスの数減ってから改良してみたんだぜ」
「…わかってやがったな…」
「スカイファイアーへの告白おめでとう。早く玉砕してこいよ」


大げさに舌打ちする。こいつ仕組んでやがった。
大体なんでスカイファイアーなんだよ。何で告白なんだよ。

「お前スカイファイアーあんまり好きじゃねぇだろ。だからだよ」
「そんな理由があるか」
「嫌いな相手に告白して玉砕する所がみたい」
「絶対しねぇ。仕組んでたなら破棄だ」
「ばらすぞ」

暫くにらみ合う。
鋭い眼光で睨んでもここ数年一緒に惑星を旅した仲だ。ひるまない。


「あのスタースクリームが俺なんかに先に結果を出されて、しかもスカイファイアーに告白しようとしてますってな」
「あぁ!?そんなでまかせ…!」
「でまかせじゃねぇよ。噂はすぐ広まるぜ?それより早く行こう」
「今!?」
「心配すんな個人的趣味だ。広めたりしねぇから。ほら」

背中を押される。個人的趣味だぁ?趣味悪すぎなんだよ。
そう思いつつも確かに頭もそこまで良くない奴に結果を出されたのは納得行かない。
とりあえず告白して、すぐに嘘!って言えば良いか。そうすりゃ問題ない。あるけど。
条件として本当に言いふらさない。結果を見つけたのは俺とお前。
この2つを条件にすると苦笑いしながらわかったと返事が返ってきた。


スカイファイアーはいつも遅くまで研究室にこもっているので多分すぐ見つかるかと思ったが
今日はさっさとあがったらしい。人目がなくて好都合だ。

「残念だったな」
「はい。これ」
「…」
「本当は生で見聞きしたいんだが」


録音器を渡され、「持っていけ」という意味だろう。
録音器を暫く眺めて腐れ研究員を見ると「これ部屋の位置」とデータも渡された。

「マイク塞ぐなよ。明日報告よろしく」
「…そこまでしたいか…てめぇ」

一度だけ頷いた顔を見て張り倒すとスカイファイアーの寝室にさっさと向かった。




*







「スカイファイアーいるか?」
「……スタースクリーム?」
「あぁ」

寝室の前に立ってインターフォンを慣らすとスカイファイアーの声が聞こえた。
心底疑問を抱いているような声だったが声だけで自分だって気付いたのは驚いた。
話をしたのは数回だ。自分はスカイファイアーを声だけじゃ区別つかない。



「ちょっと入っても良いか」
「…あぁ。もちろん歓迎しよう」


疑問は抱いたままの声でそう答えると扉のロックを解除する音が聞こえた。
こちらから扉に手を伸ばす前に扉は開くとそこから大きな機体が現れた。
斜め上から見下ろされ良い気分はしないが「どうぞ」とにこやかに笑うこいつは
ラウンジで見た姿のままだ。遠慮せず部屋に入る。


「君が私を訪ねてくるなんて珍しいね。どうしたんだい?」
「いや、まぁ、ちょっと」

ちょっと言い出しにくい雰囲気だと思ってしどろもどろになる。
首をかしげて「?」といった表情をするとスカイファイアーは「座って」と椅子をだしてきた。
その椅子に座って部屋を眺める。

「どうぞ。少し熱いかも」
「お、あ、」

両手でカップを受け取ると湯気の上がったエネルゴンだった。
いたせりつくせりだな。何か言い出しにくいぞこの雰囲気。
自分の背中につけた録音器から「はやくしろ」と言われてるような気がして落ち着けない。

「汚いだろ。片付けが苦手でね」
「…まぁ、研究員の部屋なんてこんなもんだろ」

机の上にあるファイルやらディスクやらは崩れて机というより物置になっている。
3台並んだモニターには今までやってただろう仕事が映っていた。
うぇ。本当に自室にまで仕事持ち込んでやがる…

「今、新しく作っている機材があってね」
「へぇ」

スカイファイアーは自分の仕事の話をした。自分はまだ切り出せなくて黙って聞いてた。
話の内容は科学者らしいというか自分にとっては興味深い内容でかなり長い間話し込んでいたと思う。
3杯目のエネルゴンを飲んでいるときになってスカイファイアーは急にはっとした。


「す、すまない。何か私ばっかり」
「いや?なかなか興味深かったぜ。それが成功すればこれからの研究所の発展に繋がるだろうしよ」
「そう思うかい?…ありがとう」
「は?」
「結構馬鹿にする者もいるからさ」

あぁ、まぁ、それは俺もしてたから何とも…
実生活にまで研究資源を持ち込んで朝も夜も時間を気にせず研究するこいつを少しだけ
気持ち悪く思ってたが話すと面白かった。無理だろうと思うような研究内容を掘り下げて
成功に導こうとする姿は悪くない。少しだけ好感度があがった気がする。

「えー、とそれで…君は何しに?」
「え!あ、…」

そこに来てやっと自分のここへ来た理由を思い出した。
わざわざ会話が盛り上がってる時にこんな事言いたくねぇけどまぁ、仕方がない。
適当に言って適当なところで「嘘だ」って言って笑い話になれば良い。


「スカイファイアー」
「ん?」
「…好き、だ…って…言ったらお前どう思う?」
「…え?君が私を?」
「…ん、…そ、そう」
「………」


スカイファイアーがぴたりと無表情になった。
こいつもしかして冗談通じない?やっべ。と思いつつも一応返事を待ってみる。
しかし少しも動かないスカイファイアーにますます雰囲気が重くなる。
あー、やっぱ駄目だ。早く嘘だって言おう。


「スカイファイアー」
「それ本当?」
「…え」
「嘘?」
「…えー、と」

自分より大きい機体が正面に座って首を傾げる。
顔は怒っているようにも見えるが口調はまだ穏やかだ。

「ほ、んとう」
「…本当…」

馬鹿!本当じゃねぇよ!嘘だよ!
雰囲気に呑まれて思わずそんな事いう。
だいたいこの俺がこいつに流されてるってのがおかしかねぇか!?
速く切り上げたい。速く戻って今日という日を過去にしてしまいたい。
こいつまさか言いふらしたりしねぇよな。こいつがそんな奴だとは思ってねぇけど
明日になって「スタースクリームがスカイファイアーに告白したらしい」なんていう噂で持ちきりに
なってたらとりあえずスカイファイアーとこんな事けしかけたあいつを破壊する。

「スタースクリーム」
「お、う」
「…じゃあ付き合って…みる?」
「…え」
「まぁ…君と私が付き合うとかちょっと面白そうだし…」
「…」
「それに私は君が嫌いじゃないしね」


は?本当に?マジで言ってるのかこいつ…
俺はお前のこと嫌ってたし、それが伝わらないほど鈍感でもねぇだろうよ。
「でも皆には言わないでおこうね」と微笑んでその後の会話は覚えてない。

気付いた時にはカップの中のエネルゴンはなくなっていたし
そろそろチャージポッドに入らないと明日の仕事に支障が出そうな時間帯でもあった。

「じゃあそろそろ」
「あ、あぁ」

何を話したのかほとんど覚えてないがスカイファイアーは「楽しかった」といった。
何が楽しかった?俺と一緒に居て楽しかったのかよ。
寝室を出て、スカイファイアーが扉に手をかけて「おやすみ」を囁いた。
待て。今までの全部本当か?実は逆に俺が騙されてるとか…

「ス、スカイファイアー…」
「ん、なんだい?」
「…き、キスできるか?」
「え」
「俺に…」

スカイファイアーは驚いていた。口を開いて少しだけ頬を赤らめた。
頬なんか赤らめんじゃねぇよ。でけぇくせに。できないんならこの話はなかったことにしよう。
大体俺はそんなつもりじゃなかったわけだ。スカイファイアーから見えないようにして口元だけで笑う。
やっと自室へ戻れる。また自分のペースに戻れるというそればかり考えていた。

だからスカイファイアーの腕に気付かなかった。


「スタースクリーム」
「んっ…!?」
「……内緒だよ…」

流石に引き下がると思ってた。

両肩を掴まれて、金属にしては柔らかいものが唇に当たった。
目を見開いて真正面を見据える。
スカイファイアーは少しだけ触れて、離れていくと両肩を離した。
指を一本立てて口に当てると「内緒だよ」と囁き微笑まれた。


「…おやすみ…スタースクリーム」
「…あ、あぁ」


スカイファイアーの顔は赤かった。
足早にスカイファイアーが室内へ戻っていったので扉の前で立ち尽くした。
唇を薄く指先でなでて今の感触を思い出す。



「……ばっ…」

大きな声が出そうになり口を押さえる。周りを見て急いで寝室の前を離れると
そのまま自室へと急いだ。
自室までたどり着くと顔が熱くなってるのに気付いた。まさか俺が赤面はねぇって。
スカイファイアーもなかったが俺もない。つか雄型セイバートロニアン2体そろって赤面はねぇって。

『……内緒だよ…』


スカイファイアーの照れた顔を思い出すとますます顔が熱くなった。
熱い顔を両手で包んでしゃがみこむ。



「かっ…可愛かったじゃ…ねぇか…」


自分の発言に驚きつつも赤面したスカイファイアーの表情を思い出すとスパークがばくばくいった。






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スタスカファっぽいスカファスタです。
最初はお互い気にしてませんがスカファ←スタスクです。
スタスクにはもうスカファが可愛くて仕方がないですww

ちょっとだけ続くけど没作品なんで結構短い。お蔵。