自分は部下思いではない。
ある程度の感情は抱いているがやはり自分を中心としてあるべきが破壊大帝だ。
だからこいつに特別な感情を抱いてはいけないのだ。

「ナイトスクリーム」
「ガルバトロン様」



特別




玉座で眠る自分が目を開けるとそこにナイトスクリームは居なかった。
しかしわかる。少し神経を集中すればすぐ傍にいるのが。

「ナイトスクリーム」
「はっ。こちらに」

ふっと暗闇より浮かび上がる姿を視認するとナイトスクリームは片膝をついて
玉座から良く見える位置にしゃがみこんだ。

「なにか?」
「…少しよれ」
「はっ」

ゆっくりとした動作で立ち上がりすぐ傍まで寄る。
近寄ってきたからだが触れられる位置まで来るとその機体を少し撫でた。

「どうかされましたか…?」
「…笑ってみろ」
「は?」

顔を両手で掴んでしっかり固定する。
自分の命令に一瞬反応を遅れさせたナイトスクリームだったが見つめ続けると
口元を少し横に伸ばし、口角を上げようと努力するのがわかる。

「…ぎこちないな」
「申し訳御座いません。少々…」

出来ないことを恥じたのか俯いて少しだけ目を伏せる。
両頬に置いたままの手で頬を撫でると顔をあげた。
薄い黄緑色が鮮やかに瞳の周辺を照らす。

「ガルバトロン様?」
「ここをもっとあげてみろ」
「っ…」

頬を引き寄せると抵抗なく近寄ってくる。
そのまま口角を舐めるとぴちゃっと音がしてナイトスクリームの顔にオイルがついた。
一瞬だけ身体がすくんだように動いたがすぐにそれはなくなり自然体を装っている。
嫌なら嫌がれば良い。それができないこの部下を可愛いと思う反面、どうしても
思い出す。

あいつなら顔を赤くして嫌がっただろうに。

自分のくだらない考えを打ち消すようにナイトスクリームの頬に走る傷跡を舐めると
また身体が少しだけ引いた。その際、痛かったのかと問いかけた。
細めた目に食いしばる口、それでも平常心を保とうとするのは主である自分への為
なのだろう。首を小さめに左右へ振って問いへの答えにいいえと返事を返した。

「この傷跡」
「はっ…」
「リペアしても直らないな」
「そのようで…」

一度だけ傷のある部分をリペア液をつけて集中的にリペアしたことがあるが
修復には至らなかった。
本人もまったく気にしていない、この怪我で戦闘力に変わりがあるという訳でもない。
しかしこの傷跡だけが自分の物になっていない気がするのだ。

「もう一度眠る」
「はっ。護衛につかせていただきます」
「いや…お前も共に眠れ」
「……それは」
「他の連中に見られたくなければいつも通り姿を消しておけば良い」

そういって背中に手を回して自分の膝の上に上半身をのせる。
対格差がかなりあるので膝の上において抱き込むことも容易だ。
背中に、肩に手を回して強く密着するとそのまま、またアイセンサーをにごらせた。
暗くなりつつあるアイセンサーにナイトスクリームが透明になっていくのが映る。
やはりこの状況を他の連中に見られるのはあまり好まないらしい。
こいつの少ない感情表現だ。多分命令すれば、透明になるなと言えば
こいつは2つ返事で姿を現したまま共にするだろう。

「お前も眠れ。ナイトスクリーム」
「…はっ…」

ナイトスクリームの身体から力が抜けていくのを感じ、自分の身体に
ナイトスクリームの体重がかかるのが嬉しい。
自分ともあろうものが、こんなことに幸福感を覚えるとは。破壊大帝失格だ。






オマケ

「ナイトスクリームは?」
「レイヒ〜。ガルバトロン様のところだぜ〜」

ショックフリートはきょろきょろと見回した後スノーストームをみた。

「玉座の扉からちょっと覗いたけどいなかったぞ」
「よぉ〜く見るといるって」
「どこに」
「ガルバトロン様の膝の上、ガルバトロン様の腕、宙に浮いてたろうよ?」
「……ショック」
「まぁ、割り込まない方が懸命な判断だと思うぜぇ〜?」


そこまで見なかった。が、時々確かにガルバトロン様の身体が不自然な時がある。
意味もなく右腕が宙に浮いていたり。何もないところを撫でていたり。
ナイトスクリームが姿を消してガルバトロン様に抱き込まれてる時など、その状態が
多い。

本人達は気付いていないつもりなのだろうが。あの2人も大概、天然気質だ。


「ナイトスクリームはガルバトロン様の特別だからな」

デストロン軍の中でそれは周知の事実だ。





------------------------------------------------------

隠せてない隠せてない!

スパリンの
ナイスク「……ヒントさえくだされば…」
ガル様「ヒントなんてあるか!〜〜(略)あ。答え言っちゃったよ…」

が可愛いすぎると思うんだよね…天然だよこの2体…