「嫌です」


「何?」

スタースクリームとメガトロンが睨み合う。
この表現は適切ではないだろう。メガトロンは困惑しているからだ。




「何故だ?」
「何故もなんもないですよ。どうして俺がこんな無愛想ラジカセと
 何度も組まなきゃならんのです?」

そうなのだ。
現在揉めている原因はスタースクリームとサウンドウェーブをまたコンビを組ませて
作戦の決行しようとメガトロンからの命令だったがそれを断ったのだ
それに反論はない。この間のことを考えれば今更共闘したところで
きっといい結果は残せないだろう。

しかし、メガトロンは俺達の仲は良いと思っているらしく手を組んで
欲しがっていたようだ。
この間の作戦の結果が良すぎたのだ。そう何度も上手くはいかない。
特に、今の自分とスタースクリームでは。


「何か理由でもあるのか?」
「だから理由なんてありませんって。あえて言うなら足手まといなんですよ」
「なんだと?」
「この間だってサイバトロンの足止めも十分に出来ずにあんなことに
 なったじゃないですか」
「それをお前が上手くカバーしたのだろう?それを今回も期待しているのだが」
「……」


上手いな。とサウンドウェーブはいつも思う。
スタースクリームの使い方が上手い。
メガトロンは育てたい時には落とすし役立って欲しい時には褒める。
成功した暁にはしっかりとした褒美も休みもとらす。カリスマ性もあふれている。
この人こそがリーダーの器だといつも思っている。

少しスタースクリームはメガトロンを視界からはずすと気まずそうに
「イヤなんです」と呟いた。
メガトロンはその様子をどう取ったのか顎に手をやって黙った。
メガトロンがこちらをチラリと見て目があったのを確認すると身体ごと
こちらに向けてきた。

「サウンドウェーブ。少しこの作戦は延期する」
「わかった」
「それと、少しスタースクリームの話すことがある」


それ以上自分の上司が言葉を紡がなくとも何が言いたいかわかる。
退室を促しているのだ。一度だけうなづくと背中を向けて歩き始めた。

作戦会議をしていた部屋の扉まで行って廊下へと出る。
廊下に出た後、振り返り扉を閉める為に外からロックナンバーを入力する。
スライドし始めた扉が閉まる瞬間見えてしまった。

メガトロンがスタースクリームの肩を抱き寄せるのを。





*




その光景を見てから数日後、ラウンジはデストロン軍団で賑わっていた。
スタースクリームはジェットロンたちとエネルギー補給を行っているようで
机をジェットロン3羽で囲み、コップに暖めたエネルゴンをいれて飲んでいるようだ。


「スタースクリーム」
「あ?」
「メガトロン様に頼まれた。これをお前にと」
「……ちっ」

データチップを渡すとメガトロンがスタースクリームに頼んでいた解析データ
だったらしく面倒そうに舌打ちをした。
スタースクリームの隣にいたサンダークラッカーがデータチップを覗き込む。

「何それ」
「今日中にやっとけって言われてたやつだ…すっかり忘れてたぜ」
「おっ、怒られるんじゃねぇか?」
「るせぇ。スカイワープ………あー、面倒だけど部屋戻るわ」
「はいよ」

スタースクリームは一度もサウンドウェーブと目を合わせることなく
立ち上がりラウンジをでた。
その姿を目で追った後に残ったジェットロン2羽を見るとホットエネルゴンを
飲み下していた。

「スタースクリーム。エネルゴン忘れていきやがったな」
「俺、もうタンクパンパンだわ。飲むか?サウンドウェーブ」
「……遠慮する」
「うまいぜ?スタースクリームが入れるホットエネルゴン」
「俺、この間真似したら爆発しちまったし」
「お前馬鹿なんだからやめろよ」

知っている。
どうやってエネルゴンの味付けを変えているかはわからないが加熱可能な
エネルギー物質を他のエネルギーと混ぜて、更に加熱する。
混ぜたエネルギー物質にもよるが、少しの加熱の度合いによってはエネルギーは
膨張して爆発する。そういえば、最近飲んでいないなと思い出した。

「さーて、俺らも鉄材集め行きますかー」
「そうだな。今日どこ行く?」
「南アジアは?」
「この間行ったからサイバトロンが見張ってるだろうよ」

ジェットロンのくだらない会話を聞きつつ、その場から離れはじめる。

「そういや、最近スタースクリーム、メガトロン様にべったりだな」
「あいつがメガトロン様にべったりなのは今に始まったことじゃないだろうよ」
「いやいや、本当。今すげぇよ。最近毎晩メガトロン様の寝室に入り浸り」
「……まじに?」
「まじに」
「それがどうも変で…あ?サウンドウェーブ。お前もカセットロン動かして
 エネルギー強奪行くんじゃねぇの?」
「メガトロン様より別件がある」


スカイワープが目ざとくその場を離れようとしたサウンドウェーブに気付く。
声をかけたがサウンドウェーブはいつもどおり抑揚のない声で
質問に答えるだけだった。


しかしサウンドウェーブの内心はそうではなく。
サウンドウェーブ自身も気付かないであろう浅い部分でいらだっていた。
感情を表に出さない性格だった為、それは誰にも気付かれずに進行していた筈だった。
サウンドウェーブはメガトロンに頼まれた仕事を片付ける為にメインルームへと
向かった。

それをしっかりと見送ったジェットロンは背伸びをした。

「まぁ、スタースクリームとメガトロン様の毎晩の密会も
 気になるけどよぉ、スカイワープ」
「あぁ、サンダークラッカー。わかってらぁ」
「サウンドウェーブもなかなか気になるよなぁ?」
「デストロン軍団も捨てたもんじゃないよなぁ」
「あぁ、暇しねぇわ」

2羽はくすくすと顔を見合わせて笑った後に鉄材集めへと飛び立った。