サウンドウェーブの寝室でホットエネルゴンを飲みながら スタースクリームが「飼っていた犬に手を噛まれた気分だ」と睨みつけてきた。 飼われたつもりはないし、噛んだつもりもない。 自分もスタースクリームが入れたホットエネルゴンを口に含んだ。 あの後、息を整えるスタースクリームの下腹部にまとわり付いていたオイルを拭い 思ったよりも加熱しているスタースクリームの額に手を置く。 スタースクリームがぼんやりとバイザー越しの目を見つめてくるが 多分視界に入ってはいないだろう。 「スタースクリーム大丈夫か」 「……ね」 「なに」 「しね」 ぼんやりしているが多分本気で言っている事に気付いてしまう 自分の良すぎる勘にうんざりした。 * その後もぼんやりしていたスタースクリームと自分を迎えに来たのは デストロン軍団の大帝であるメガトロンとジェットロンの2羽だった。 カセットロンの損害は大きいがそれによりもたらした功績は大きく、メガトロンは 喜んだ。 カセットロンは一流のリペア技師達により修理され、どこも支障はなさそうだ。 サウンドウェーブ及びスタースクリームは作戦成功の褒美としていつもよりも多く 高濃度エネルゴンを受け取った。 スタースクリームによりサイバトロンに大きく損害をあたえることもできたと 次の日の夜には宴が開かれることになった。 そして今に至る。 「もうすぐ宴だ」 「まだ準備してたぜ」 今回、2人は準備に参加せずとも良いとメガトロンなりに労われ、時間まで 休息を取っていた。 スタースクリームは自室に戻るかと思いきやサウンドウェーブの寝室に立ち寄り サウンドウェーブの寝室にある、普通のエネルゴンを暖め飲み始めた。 サウンドウェーブもホットエネルゴンを受け取るといつもどおり飲み始めたが スタースクリームの表情は変わらない。ずっと不愉快そうにしている。 「何だ」 「…何だじゃねぇよ…最悪だ」 「…」 「飼っていた犬に手を噛まれた気分だ」 「お前は喜んだ」 「ざけんな!!!」 スタースクリームは叩き割れるんじゃないかと思うほど強く ホットエネルゴンのはいったコップをデスクにたたきつけた。 反動で中に入っていたホットエネルゴンが少し零れる。 零れたエネルゴンを拭こうかとエネルゴンに目を見やったが スタースクリームが腕を掴んできてそれを実行に移すことは出来なかった。 「スタースクリーム」 「イヤだって言ったんだ…!俺は!」 「気持ち良いとも言った」 「言わせたんだろうが!だいたいなんで…!」 「お前に久しく触れていなかった。だから触れた」 「……触りたかったのか…?」 「お前が触れてほしがっていると思った」 「……お前は…」 「?」 「お前は何もしなくてよかったのか…?」 「…なに?」 スタースクリームはそれ以上言いたいことがないのか。 それとも言葉を口に出来ないのか。 多分後者であるが、スタースクリームはそれ以上口を開かなかった。 『お前は何もしなくてよかったのか…?』 何が言いたいのか理解しがたい。 俺が何をしろと?やることはやってやったのにまだ何かしたりないのか? 無知を口にするのは好きではないがスタースクリームに聞いてみることにした。 「どういう意味だ」 「……だ、から!…俺だけ…」 「なに?」 「俺だけで…よかったのかよ…!」 スタースクリームの頬が羞恥に赤く染まる。 あぁ。そういう意味か。 「あぁ」 「…あぁ…って…なんだよ」 「俺はしなくても良い」 「…なんでだよ…」 「興味ない」 スタースクリームの顔から一瞬で恥が消えたのがわかった。 一気に熱が冷めたように目を開いて見つめ返してくる。 「それって」 『スタースクリームー。サウンドウェーブー。メガトロン様が呼んでるぞー』 『今日はお前らが主役だから早く来いよ〜』 スタースクリームが何か言いかけていたがサウンドウェーブは通信に答えた。 「了解。今から向かう」 『もう乾杯するからなー』 通信をきってスタースクリームのほうを見るとすでに背中を向けていた。 何かまた怒らせる発言をしたらしい。肩を掴んでこちらに向けさせる。 驚いたように目を見開いていたが想像した表情とは違った、無表情だった。 もっと目を薄く開き、鋭く尖らせて、口を一文字に結んだ拗ねた表情を 予想していたのだが。 「スタースクリーム」 「………」 しかし怒っていることは変わらないらしい。言葉を発しない。 スタースクリームは唇に触れると機嫌が治るのを知っている。 スタースクリームに見えるようにマスクをスライドさせるとスタースクリームが 少しだけ反応した。 身体全体をこちらに向けるようにして正面から両手で頬を包むように固定する。 少しだけ自分の方が背が高いので少しだけ顔を上に向けさせるとスタースクリームが ゆっくりと目を伏せた。わかりやすいNo.2だと思う。 最初に軽く唇に触れて、ちゅっと音を立てるとスタースクリームが 昨日のように首の後ろに腕を回してきた。 舌先でスタースクリームの唇を撫でると少しだけ隙間が開いた。 昨日より以前はずっと拒んでいたが一度やってしまえば気にしないのか 少しだけ開かれていた隙間に舌を入れるとスタースクリームも舌を絡めるように 動いてきた。 互いの舌が絡むと口内オイルが卑猥な音を立てて、それにスタースクリームが 少し赤くなって反応する。 最近ではスタースクリームのこの様子を自分は気に入っている。 頬に触れたり、唇に触れたりするとスタースクリームは満足感と羞恥心で 少しだけ頬が赤くなる。少し困ったような表情をしてみたり、嬉しさで 頬が緩んだりする感情豊かなところに惹かれているのかもしれない。 サウンドウェーブはスタースクリームを「好き」ではなかった。 だがくだらない出来事で付き合う事になり、「恋人」になってしまったことに 対して不満はなかった。この現状をサウンドウェーブは満足していたのだ。 「呼ばれている」 「…あぁ」 「……?」 「…一緒に行ったら、変に思われるかも知れねぇだろうが」 「…わかった」 部屋を出る間際に「出てくる時はロックをかけて来い」と告げると 「わかってる」と返事が返ってきた。 スタースクリームがこちらに顔を見せないように顔の角度を背けているが 気にせず部屋をでた。 「…サウンドウェーブ」 サウンドウェーブが先に部屋を出て5分間、スタースクリームはその場に 立ち尽くしていた。 スタースクリームが小さい声でサウンドウェーブの名前を呼んだのを 聞き逃してしまったのはすでに盛り上がり始めていた宴会場に着いていた サウンドウェーブからしてみれば仕方がないことだった。 それでもスタースクリームは彼が聞き逃さない事を期待していた。 ------------------------------------------------------ スタスクだって馬鹿じゃないんですぜ。音波さん。 雲行き怪しくなってきましたが、着々と終わりには近づいています。