ある日のメインルームにて 「スタースクリーム。この間の…」 「お前のデータを兵器に組み込んでテスト済みだ、4パターン目だけ 調整必要だから一度戻すぜ」 「わかった」 「俺のは?」 「終わっている。媒体を3つに分けた」 「コピー作って電子媒体はレーザーウェーブに送ってくれ、紙媒体は?」 「了解…紙媒体も作った」 「俺様が読む」 「部屋だ」 「じゃ、後で取り行くからよ」 一通りの会話を終えるとスタースクリームは自室に残してある仕事を やるために扉の方へ踵を返した。 「またな」とサウンドウェーブの肩に軽く手をやるとサウンドウェーブも それに同意するように頷く。 「夢か?」 「明日は嵐だな…」 「よ…ようやく…あ奴もNo.2としての自覚が…!」 「メガトロン様!」 「またヒューズがぶっ飛びそうな顔してますぜ」 「て、言うか破壊大帝がこんなことで目から冷却液流さんでくださいよ…」 スタースクリームと付き合って数週間が過ぎたが これといって大きく何かを得た訳でも損なう訳でもなく、あえて言うならスター スクリームの入れるホットエネルゴンは案外美味いと言う事と、最近スタースク リームに協調性がみられるのか、とても連携が取りやすい。 「今回の作戦はお前らがキーとなってもらう」 メガトロンが2人の参謀を呼んで命令を下した。 サウンドウェーブはカセットロンを率いてサイバトロンの足止め。 その間スタースクリームは今回の目標であるクリスタルの選別に向かう。 今回のエネルギーを大量に含むクリスタルはエネルギーのバランスが酷く 不安定で仮にも科学者だったスタースクリームがいないと採取は難しい。 「比較的バランスのとれているエネルギーはサンダークラッカーと スカイワープに詰む。作戦が終了次第サウンドウェーブは撤退しろ」 「了解」 「まーた、穴だらけの作戦ですなぁ」 「…スタぁースクリーム…貴様は…」 その後、メガトロンに文句を言うスタースクリームと、小言と嫌味でチクチク 刺していたメガトロンがナルビームと融合カノン砲を持ち出した喧嘩を する事以外、特に大きな支障はなくスムーズに作戦は進んで行った。 * 「フレンジー…応答せよ」 「っ…いてぇ…さ、サウンドウェーブぅ…いてぇよ」 サウンドウェーブの通信機に小さいすすり泣く様な声が入った それは自分の部下の中でも優秀な小さいカセットの声で、酷くひび割れた声色に その身体の破損を安易に想像させる。 ついにフレンジーもやられたか。 最初にジャガー、次にランブル、そしてフレンジー。 簡単に誰でも劣勢と判断できる、敵の数がまずい。しかも囲まれてるときた。 不幸中の幸いはパワーグライド、スカイファイアー及びエアーボットがいない。 上から集中放火をくらう事はまずない、と言う訳だ。 しかし自分が空を飛行し、上から集中砲火と考えようものなら落とされる。 ランブルが実際にそうだったように。 サウンドウェーブは岩影で小さく息を吐いた、耳を澄ませて足音を拾う。 サウンドシステムの聴覚なら大抵の音は拾えるのだ。 右後方の重い音がコンボイだろうと判断すると右後方からサイバトロン司令官の 声が聞こえた。 「サウンドウェーブもう諦めるんだな、助けはこないぞ」 「こいつ…てこずらせやがって」 「待て。アイアンハイド。できることなら捕虜にする」 捕虜だと?ふざけるな。 ふつふつと怒りがわいて来る。 ここにブロードキャストがいたら多分飛び出して 殴るかかるくらいの苛立ちがサウンドウェーブには起こっていた。 その苛立つブレインサーキットに声がかかったのはサウンドウェーブを 落ち着かせるいいきっかけだった。 『サウンド…ウェーブ…?』 「…スタースクリームか」 『ど…した?通信…機…異常…が』 「サイバトロンにやられた。離脱は不可能に近い」 『…ん…て!こっ…は…』 スタースクリームの言葉はほとんで理解できないものだった。 通信機を弄っても変化はなく、その間にも後ろから詰め寄ってくる足音は 途切れることはない。 端的情報に耳を貸す暇はなさそうだ。 詰め寄ってくる足音に打開策を巡らせるがどれもパッとしない。 足音だけに気を取られていたが遠くから風を切る音が聞こえた。 「……スタースクリーム」 サイバトロンどもが騒ぎ始めた。 上からの奇襲攻撃に岩を盾にちりぢりになった様だ。 聞き覚えのあるジェット音と時折スピードをあげた時に発生する風切り音が とても美しい。 ふとそのメロディーがやむと眼前にジェットからトランスフォームした スタースクリームが着地した。焦った様子で自分の身体を見渡し腕を掴んでくる。 「スタースクリーム」 「トランスフォームできるか!?こいつらリターンしろ!」 スタースクリームは破損の酷いカセットロンを拾ってきたらしく サウンドウェーブに無理やり渡した。 それを受け取り、小さくサウンドウェーブはリターンを唱えると 自分の部下がカセット型に変形して胸元にしまわれて行く。 「お前もトランスフォームしろ」 スタースクリームに言われるがままラジカセに変形すると片手で鷲掴みにされ 空中に放られた。 自分が地面へ落下する前の段階で、それに合わせてスタースクリームは空中で トランスフォームすると自分の身体はF‐15の機内に転がった。 スタースクリームの体内へ取り込まれ、声を出す前にスタースクリームの 指示が自分へとかかる。 「しっかり掴まってろよ」 スピードがだんだん上がって行くとジェット音と風切り音で機内は劈くような 音だ。 サウンドウェーブは外で聞くのと中で聞くのとでは違い過ぎると呟いたが 自分の声ですら聞き取れなず終わった。 * 「何故サイバトロンは追って来ない」 「スカイファイアーくらいじゃなきゃ追ってこれねぇさ」 スタースクリームが随分と自慢げな語りは15分にも及んだが要約すると 最初にサイバトロンを頭上から攻撃したのはスタースクリームご自慢の ナルビームではなく、不安定なクリスタルをサイバトロンたちにぶつけて 攻撃したらしい。 その爆発、及びクリスタルをまともに食らったら追跡どころかリペア要患者に なるのは目に見えている。 次にスタースクリームはその不安定なものと安定しているものが入れ混じった クリスタル鉱山地帯を潜り抜けて来た為、元科学者のスカイファイアーか パーセプターくらいじゃないとあの地帯はくぐり抜けて来られない。 わざわざここのクリスタルの見分け方をスタースクリームは10分かけて語った。 更に言うならスタースクリームの飛行速度に匹敵して、あの地帯をくぐり 抜けられるのはスカイファイアーくらいと言う結論に至ったが スカイファイアーはその場にいなかったのだ。 「流石俺様だぜ」 「助かった」 「俺様をこれからも崇拝しろよ!」 崇拝した覚えは一度もないがあそこでスタースクリームが来なければ 間違なく捕虜、最悪破壊されていただろう。 今さらながら自分の危機を乗り越えられたのが信じられない。 「ここはどこだ」 「クリスタル鉱山地帯にある洞窟だ。ここならサイバトロンに追いつかれても あいつら発砲できねぇだろ?」 「…………」 そこまで考え来たのかと半ば感心していると F-15から再度ロボットモードへとにトランスフォームしたスタースクリームの 手にラジカセ型のサウンドウェーブはすっぽり収まった。 「…サウンドウェーブ?トランスフォームしねぇのか?」 「…動作異常確認。トランスフォーム不可能」 「はぁ?お前さっきできたじゃねぇか!」 「ロボットモードへの移行ができない。リペアが必要だ」 「うわっ最悪だな…こんな小さいのリペアできねーよ…」 「リペアしろ」 「無理だ、基地まで我慢しろよ」 「リペアしろ」 「何意地はってんだ!無理に変なとこ弄るよりちゃんとリペア技師にだな」 「リペアしろ」 3度目でスタースクリームは大きく息を吐いた。 手のひらサイズの恋人を冷ややかな目で見つめた後 「戻らなくなっても知らねぇからな」と呟いてアームをリペア機具に チェンジした。 --------------------------------------- 続くよ!多分お次は大人向けだよ!(自分馬鹿ヤロウ)