どうやら

「サウンドウェーブ。これこの間のデータ。やっといてやったぜ」
「助かる」

航空参謀は案外なつきやすいようだ。




誰もいない廊下でデータの入ったディスクを受け取り、礼を述べる。
それに対して「当たり前だ!」と声をあげたスタースクリームを見ると
褒められたことが嬉しかったようで、口元が少しはにかんでいるようだ。
こいつは案外扱いやすい、受け取った物はしまいこんで右手で頭を
ぐりぐりと撫でてやる。

「っ…子供扱いすんじゃねぇよ」
「礼を言う」
「………」

文句は口から出るのだが撫でられることをそのままにする、嬉しいからだ。
少しくらい乱暴に撫でても気持ち良さそうにしているのを見て
ジャガーやフレンジー達の事を思い出した。あいつらも頭を撫でると
気持ち良さそうにする、そんな感覚で撫でてやった。
頭をひとしきり撫でて、その指を頬に移して目元をごしごしと擦ると
少し声を漏らしたがそれでも抵抗はない。

「サ…サウンドウェーブ…」
「出撃時間だ」
「………」

少しむすっと顔をゆがめられた。
指をスタースクリームから放してそのまま背中を向けるとますます
怒ったようだった。何か言いたげだったがスタースクリームに
ジェットロンからの通信、サウンドウェーブにメガトロンから通信が
入ることによってそれは阻止された。



*




「愛が足らねぇな」
「なに」
「お前だよ!」

彼が自分の部屋に尋ねてきた。
唐突の訪問だったが座る所がないので自分はデスクへ、スタースクリームは
寝台に座らせた。

この間頭を撫でてやった日、出撃後は互いに2日は多忙でなかなか会えなかった。
スタースクリームは航空参謀としてジェットロンを率いるのが忙しかった
ようだし、自分もまた陽動・諜報活動でカセットロン部隊を動かし
メガトロン様への毎時間ごとの状況報告で多忙だった。

つまり彼の話を要約するとこうだ。
戦闘の最中、コンボイ率いるサイバトロンが攻めて来た時に
自分は一番にメガトロン、二番にカセットロン部隊を守った。
確かにメガトロンに危機が迫っていた時、彼は上空でエアーボット部隊と
戦っていた。
少し見ただけで彼が劣勢なのもわかったが、メガトロンと
カセットロンに加勢したのだ、それが気に食わなかったらしい。

それは仕方がないと説明する。
仮にもメガトロンは我等の主で、デストロン軍団のリーダーだ。
カセットロン部隊は自分の部下で、できるかぎりの損傷は控えたい。
最後に自分がお前を助けに行った所でお前らのスピードについていけないと
付け加えることによりこの問題は不問とされた。

次に彼の話はこうだ。
2日間会えないのなら他に連絡手段があったのではと。
別に報告することはなかったと伝えると彼は更に立腹した。
何故怒っているのかわからない、今まで1週間、長くて半年顔を合わせない事
だってあったのだ。それが今更2日位何だというのだ。

「お前俺のことが好きなんじゃねぇのかよ!」
「………」

確か、数日前、そんなことを言った気がする。
付き合ってやるという申し出を甘んじて受けた。
それとこれが何の関係があるのだろうか。

「好きだ」
「じゃあ連絡くらいしろよ!」
「…何故」
「俺の声が聞きたくなったとかねぇのかよ!」
「……」

それは

「お前だろう」
「あぁ?」
「お前が俺の声を聞きたかったんだろう」
「………」

暫く活動停止を見せた後、スタースクリームの顔がボッと赤くなった。
金属生命体なのに器用な身体だ。こんなころころ変わる表情自体珍しい。

そうか。「付き合ってもいいんだぜ」を「わかった」で受けたと言うことは
地球上で言うと我等の関係は「仕事仲間・参謀同士」から
少し異なった所に位置したのか、と今更ながら判断する。

「ちっ…ちげぇよ!!!」
「声がでかい」
「黙れ!」

もう帰る!と立ち上がるスタースクリームの顔は酷く混乱しているようだった。
そうか、と呟き一緒に立ち上がると扉まで一緒に歩き、開けようとする
スタースクリームの手を押さえた。

「んだよ」
「そんな酷い顔で行くと周りにばれるぞ」
「何が…」
「俺達の関係が」
「あぁ?」
「恋人同士なんだろう」
「!!」

ばっと勢いをつけてこちらを見たスタースクリームは真っ赤だった。
大丈夫かこいつは、ヒートしたんじゃないだろうか。
何故、アイセンサーに冷却液が溜まっているのかわからない。
冷却すべきは目でなく、顔だろう。
指先を頬にやってその温度を確かめる、かなりの熱を保持していた。


「ばば…バカやろうがぁ!」
「!」


その指先を払いのけられて扉を開くとガンガン身体をぶつけながら出て行った。
この時間帯はそんなに基地内にトランスフォーマーはいないと思うが
あの顔色は普段、スタースクリームを目の敵にしている人物でも心配するだろう



その日の夜に仕方がないので通信をいれてみた。
通信機の向こうからはいつもの口調のスタースクリームが
「用もないのに連絡するなよ」と発言を返してきたが
通信を切られない所を見ると、多分スタースクリームが自室でどんな顔を
しているかなど安易に想像できる。


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初々しいスタスク!可愛いよスタスク!
一応他の小説とはまったく別次元で考えているので
スタスクは交歓行為をやったことがないどころか、こんな感じで。
付き合い始めた中高生みたいな。何でメール返事してくれないのよ!馬鹿!的な


スタスク視点みなくとも話は繋がります。