「行って良いぞアストロトレイン…ブリッツウィング!」 比較的に安全な、純度の高い鉱石を大きな2体に積んだ。 その2体は既に空を飛ぶための形状に変わっていてスタースクリームはその2体の間に立つと 2体の身体に手を置いて一度叩く。 「でろ!」 返事はなかったが両サイドから轟音がしてそれと同時に爆風が巻き上がる。 スタースクリームの両隣にあった機体はいなくなり、細めていた目をはっきりと開いた時には 遥か遠くの空を飛んでいた。 「…次!ジェットロンでるぞ」 スタースクリームが振り向くとそこに立っていたサンダークラッカーとスカイワープ そしてダージとラムジェットがトランスフォームして戦闘機に変わった。 「爆発したりしねぇのか?」 「大丈夫だ。熱に強いみたいだしな…安定してる鉱石を積ませるから心配いらねぇ」 本当に危なくなったら積荷は捨てて良いと告げると「了解」と全員から返事が返ってきた。 スタースクリームはそれに頷き返すと「ん?」と声を上げて顔を左右に振った。 「…スラストは?」 「…?」 「あれ、スラスト?」 「いねぇぞあいつ」 遠足じゃないんだぞ…とスタースクリームは内心舌打ちをしたが ため息を吐くと一度体内時計を確認してからその洞穴の奥を見た。 「…俺が見てくる。お前らは先行ってろ」 スカイワープがギゴゴと音をさせて変形すると立ち上がった。 きょとんとした表情を向けられれスタースクリームも見つめ返すと スカイワープが腕組みをして「お前が?」と疑問を口にする。 「あぁ」 「珍しいじゃねぇか。No.2としての意識が芽生えたってか?」 「うるせぇ。早く仕事を終わらせてぇだけだ、変形しろ!」 スカイワープがまた変形するとスタースクリームはダージのキャノピーを叩いた。 数度叩くとダージが「なんでい」と少し動いた。 「堕ちんじゃねぇぞ」 「ったりめぇだろ!」 「お前はすぐ堕ちる」 へっへっへと他のジェットロンからも笑いの声があがり ダージが「舐めんじゃねぇぜ!」などと捨て台詞を吐いて最初に離陸した。 「見ててやんよ!」とスカイワープとラムジェットが飛ぶとサンダークラッカーだけそこにいた。 「どうした。お前もでろ」 「おう。気ぃつけろよ」 「何に」 「さっきからドタドタ作業してたからな。あちこち脆いぞこの洞穴」 「…」 その言葉の信憑性を増すようにカラカラとあたりの壁を小石が転がった。 すぐに崩れることはないだろうが丈夫ではないのがわかる。 例えば一発でも発砲すれば生き埋めなんてこともありうるのがわかった。 「…阿呆見つけたらすぐ戻る。メガトロンにとりあえず報告しとけ」 「了解」 サンダークラッカーが点火すると猛スピードででていった。 その風圧でまたあたりの壁が崩れた。 「…さて、馬鹿は」 数歩後ろに下がるとばたばたと足音が聞こえた。振り返る前にぶつかって来た機体のせいで ますます辺りは崩壊を匂わせた。 「ばっ、ばか!何してる!」 「ス、スタースクリーム!よかったまだいたのか!」 いたのかって気付かずぶつかって来たのかこいつはと内心悪態をついて 目を薄く細めると腰の辺りに抱きつくようにしてぶつかってきたスラストは焦りながら口を開いた。 その顔を見て次に用意していた言葉を呑んだ。 「…どうした?」 「鉱石積んでたら奥にしらねぇエネルギー反応が」 「別に鉱石があるってのか?」 「しかも高エネルギー反応でよ…触って良いかわかんなかったから放置だけど」 「よくやった。見てくっから先にでろ」 あわよくば俺の手柄に。なんて思いつつもスラストの背中を押した。 洞穴の出口は一つ。ここだけだ。調べつくしたと思ったがまだ奥があるのか、と スタースクリームは奥を見据えてもう一度スラストに催促した。 「お前、手柄独り占めするつもりか?」 「…へへ。てめぇじゃ見つけるまでしかできねぇだろ?」 「選別はてめぇだが見つけたのは俺だぜ?」 スラストはついてくるつもりだとわかった。 手柄の独り占めはしない。互いの手柄にしなくてはこいつは気がすまないだろう。 「勝手にしろ」と言い捨てると「する」と後ろからついてきた。 「どこだ?」 「そっち右だ。奥のほう」 「…狭いな…」 「羽がぶつかる狭さだけど、いけねぇこともねぇ」 背中の羽が岩にごりごりとすると壁が崩れた。 スラストがあぶねぇぞと忠告してくるが視界にキラリと虹色の鉱石が見えれば そんなものはどうでもよくなる。あの色合い的に純度は最高だ。 「お前はここにいろ」 「どうして」 「狭くて2体同時には無理だ」 当たり前で、見れば判断がつくだろう答えを差し出すとスラストは渋った。 付け加えて安心させる言葉を吐く。 「心配すんな。だったら今のうちにメガトロンにでも見つけた報告しとけ。俺が見つけましたって言えば良いじゃねぇか」 「……」 「俺はあの鉱石を調べてくる」 岩と岩の間に身体を滑らせて奥へ進むとその鉱石の全容があらわになった。 純度の高いクリスタル。地球も捨てたもんじゃねぇなと暫くにやつきアイセンサーの全てを向けた。 含まれる成分から、エネルゴン生成に利用できるかなど。良く観察して情報を蓄積する。 「…いいな。これ」 「使えそうか?」 狭い岩肌の向こうから声がした。 振り返り「大分良い。手柄だぜ」というと嬉しそうな声がした。 「俺らで積むか?」 「…いや、傷つけないほうが良い。傷に弱いからアストロトレインが良い」 俺らじゃ詰める量は限りなく少ない。 しかも砕き、割って入れなきゃいけないのだ。 アストロトレインなら丸ごと回りの関係ない石から砕いて詰め込むことが出来る。 「それで?」 「俺はここにいる。アストロトレイン呼んで来い。ついでにメガトロンも」 「りょうか、…?」 「どうした?」 「…今ー…」 スラストの足元に大きな岩が落ちた。 んっとスラストがそれを見る。 スタースクリームもそれを見ていたがもと来た道を通るのに邪魔だなと認識した。 「どけておいてくれ」 「ほいほい」 スラストがそれを持ち上げると同時にもうひとつ岩が落ちた。 先ほどよりも少し大きめだ。互いに無言になるとアイコンタクトを取った。 「…これやばいか?」 「…もう一つ、岩が落ちたらやばいな」 その言葉を待ってましたともう一つ岩が落ちる。 スタースクリームが立ち上がった。 「一時俺も撤退する」 「もったいねぇ」 「ここにいて生き埋めはごめんだ」 岩の隙間を通ろうとスラストに歩み寄ると一瞬でスラストは見えなくなった。 「あ!?」 「あっスラスト!」 「崩れた!」 「どけてくれ!」 「…重いんだ!」 完璧な密室となった穴でスタースクリームは焦った。 撃つか?他のも同時に崩れるのが目に見えてる。 「スラスト!スラスト助けてくれ!」 「どうにもできねぇ!」 「スラスト!」 「ど、どうすりゃ…っ」 「…サウンドウェーブ…カセットロンなら隙間っから入ってこれるかも」 「カセットロン?」 「フレンジー達ならなんとかできるかもしんねぇ、呼んで来い!」 「わ、わかった!」 走る音が聞こえると自分の真上より岩が降ってきた、なんとか転ぶようにして避けると ますます隙間はなくなりその望みも薄まった。 「…馬鹿が。走るんじゃねぇ」 小さく呟いてスタースクリームは鉱石の前に座った * 「メガトロン様ぁ!」 「…スラスト。どうした」 「あ、あの、一応さっきも報告連絡いれたんですけど」 「すまん。聞こえなかったな」 サイバトロンの注意を惹き付ける為にまったくもって離れた場所で戦闘を行っていた。 メガトロンとサウンドウェーブ、そしてカセットロン部隊は前線で戦っていたし 連絡になんて気付かないのも仕方がない話である。 「それでどうした」 「あ、あの例の洞穴…」 「静かにしろ…サイバトロンに聞かれる」 アイコンタクトでメガトロンがサウンドウェーブに合図するとメガトロンは前線より数歩下がった。 スラストの近くでしゃがみ込み話を聞く体勢に入る。 「洞穴、に新たなクリスタルが」 「ほう」 「それで、スタースクリームが生き埋めに」 「…生き埋め?」 話が急に変わりメガトロンが理解不能だと顔をしかめると スラストは慌てて順を追って話を始めた。 「あっ、あの。調べていない奥のほうで」 「落ち着け」 「そ、れでスタースクリームが調べてたら、岩が崩れて」 「生き埋めに?」 「はい!」 巻き起こる風と爆音に顔を上げると応援にジェットロンが駆けつけた。 スカイワープが嬉しそうにメガトロンの脇へと着陸すると名を呼んだ。 「メガトロン様!助けにきやしたぜ!」 「スカイワープ。良く来た。前線にでろ」 「はい!」 「はい」 「サンダークラッカー。荷物は?」 「既に基地においてきました。アストロトレイン達は積荷が多いのでまだ基地に」 「そうか。サウンドウェーブ。一緒に来い」 「今手が放せない」 メガトロンがサウンドウェーブを見るとすぐに離れることが出来ないだろうのがわかった。 応援に来たデストロンを全員サウンドウェーブの助けにいかせて メガトロンは数歩下がった。 「サウンドウェーブ。先に行く、後で来い」 「わかった」 常に前線にいるはずのメガトロンがそこを離れるのは異常だが内容が内容だ。 そして何よりもう一つ、サウンドウェーブから受け取った腕につけている機器の調子が悪いのか 既に寒さを感じ取り始めていた。まだお互いのパルスを流し込んでから数時間しかたっていない。 思いつくのは機器の故障。または順応力だ。 常につけている為にこの程度では足りなくなる場合もあるだろう。 そしてもう一つ、思いつくのはこの呪いのような効果の悪化。 速く直さないと酷くなる一方なのかもしれない。 最初の一つ以外がもし当たりならばスタースクリームにもこの症状は出てているだろう。 一瞬で熱さにやられてぐったりするスタースクリームを思い出し、今の状況に重ねた。 「…愚か者め…!」 その声はいつもと違う、怒りを含まない声だった。 →