つい先日あんなことがあったのに、俺らは一緒に居た。 アストロトレインは自分より一回り小さい航空機を見ると 視線に気付いたのかぱっと顔をあげてこちらをみた。 the rebel troops 「なんだ?」 「別に」 やっぱり頭悪そうな顔してやがる。 しかし最近になってわかったのはスタースクリームと自分は少しばかり似ている。 そう、メガトロンに対しての考え方が酷似していた。 無能な大帝だと思う。 「今すぐリーダーの座を明け渡すべきなんだよあいつは」 「あぁ、まったくだ」 相槌を打つとスタースクリームは嬉しそうに笑った。 もちろん、お前にとは言っていない。リーダーの座につくべきは自分なのだ。 「よう、お前ら」 「大ぼら噴きじゃねぇか」 「ブリッツウィング。どうした」 「どっか行こうぜ。暇でしかたねぇ」 スタースクリームと行動を共にするのは一緒に居たいからなどという甘ったれたものではない。 どちらかと言うと別行動をしたいのだがスタースクリームは羽を持つものを好むらしい。 ジェットロンを見かけない今、羽を持つ自分にまとわり付いて来るのは 最近になってわかったスタースクリームの基礎行動だった。 「ブリッツウィングー」 「あぁ、うるせぇ」 「なんでだよ」 空を飛べばスタースクリームはブリッツウィングの羽の上に乗った。 重てぇとブリッツウィングが身体を揺らすとスタースクリームはすぐに離れた。 「乗るならアストロの馬鹿にしやがれ」 「馬鹿だと?馬鹿はてめぇだブリッツ」 「あーあー、どっちも馬鹿には変わりねぇだろうが。ったく…」 ある日、メガトロンに基礎知識を確認したいと言われてブリッツウィングと一緒に軽い問答を行った。 メガトロンの質問に対して答えを返すだけのそれは数十分で終えると 大帝はすごく渋い顔をして「お前らの頭の悪さはよくわかった」などといわれた挙句 「やはり作戦はスタースクリームに頼む。お前らはトリプルチェンジャーの基地へ戻れ」といわれた。 まさかスタースクリームに劣っているとでも言うのか。俺様が?ありえない。 「まじ笑ったぜあれ。アストロトレインの答えがよ、「新幹線を仲間にする」でよ」 「お前新幹線舐めるなよ。こいつこそ「参謀を手にいれる」とかどこでだよ」 「わかったって。どっちも馬鹿なのは」 スタースクリームがアストロトレインの上に乗る。 自分よりも小さいスタースクリームが乗ったところでなんともない アストロトレインは注意もせずそのまま乗せたまま空を飛んだ。 「やっぱ空はいいぜ」 「羽も持たないメガトロンは愚図だ」 「あぁ、これからは空を制す者の時代だぜ」 そんな会話にも満足するようにスタースクリームは笑った。 ブリッツウィングをちらりとみるとブリッツウィングもこちらを見て頷いた。 メガトロンを潰す。しかし、その副官であるスタースクリーム。 こいつにも消えてもらう必要があるのだ。 * スタースクリームとメガトロンを氷付けにして数時間が経過した。 アストロトレインは駅を乗っ取りメガトロンに質問された問題の中の一つ。 「仲間を増やす時はどうする?」に対する答え。「新幹線を勧誘する」を実際に行っていた。 コンポーネントがない分、真のトランスフォーマーは作り出せない。 だいたいコンポーネントがあったとしても取り付け方なんてわかんねーし だからといってセイバートロン星に行ってこいつらに命を吹き込むことも不可能だ。 とりあえず、目先の目的のために自分に忠実な部下を作り出した。 「我らはアストロトレイン帝国のためにエネルギーを運ぶことを誓います」 その言葉を復唱するように駅構内の機械たちはライトを光らせて音を鳴らした。 満足そうに笑ってエネルギーを集めに行く。 エネルゴンさえ作り出せばこいつらをもっと強化できる。エネルゴンが大量にあれば メガトロンの部下だった奴らも俺を認めて配下に就かすことができるだろう。 暫くそいつらの面倒を見ているとある程度エネルギーが溜まった。 それを自分に詰むとまずは外へ運び出した。 自分が運び出す間もエネルギーは作り続けさせる。 言葉は話せないが自分と同じ機体がいるというのはこんなにも嬉しくなるものだ。 「何やってんだアストロトレイン」 「なんだお前ら、それがリーダーへの口の聞き方か」 「はぁ?何言ってんだ?ポンコツSLが」 外に出るとそこにはジェットロンがいた。 新ジェットロン3体と、そこにサンダークラッカーまでも。 新ジェットロンはどうやら旧式のジェットロンに憧れに近い物を抱いているようで しょっちゅうスカイワープやらサンダークラッカーやらに声をかけては連れ出している。 またお仲間ごっこか、とアストロトレインは内心呆れたため息を吐くと お前らに「真の部下」ってやつを見せ付けてやる。 「アストロ軍団!参れ!」 …? 来ない 「アストロ軍団!?」 しかし来ない。 ジェットロンの下卑た笑い声が響くと「見てきてやる」と ジェット音を響かせてトンネルの中へと入っていった。 自分も続けて中に入っていくと奥のほうで新ジェットロンの笑い声が聞こえた。 サンダークラッカーは苦笑いと言った表情でそれらを見つめていた。 「おいおい、これが部下かぁ?」 「どうやらお昼寝のようだぜ?」 見てみるとそこには改造した仲間がくったりと倒れこんでいた。 エネルギーぎれ?俺の改造の仕方が間違っていた? 「どうした!早くエンジンをかけないか!」 よろよろと新幹線が動き始める。 遅すぎるその動きに舌打ちをして大声で怒鳴る。 「もっと早く!」 「あっ」とサンダークラッカーが声をあげた。 まさにその顔は嫌な予感がすると言い出しそうで目をしかめると かかとをとんっと床にぶつけて音を立てるとジェットを微かに点火した。 「どうしたサンダークラッカー?」 「嫌な予感がする。お前らも点火させとけ」 ぼそぼそとジェットロン同士が喋るのをアストロトレインは気にすることなく 懸命に走る仲間を見ていた。 そこでやっとアストロトレインも気付く。スピードをだしすぎた。 「ま、待て!止まれ!」 水道管にぶつかるのとサンダークラッカーが飛ぶのは同時だった。 * 前回と同じだ。 三日天下、いや前回もながら三日も持たない自分の天下の終焉だった。 「立て。愚かもどもが」 メガトロンの低い声が倒れる自分へと投げかけられた。 近くで倒れこむスタースクリームもそのメガトロンを見あげる。 乱戦となったこの地で一人地に足を着けるメガトロンは強かった。 アストロトレインは感じていた。 自分にはこの軍を手中に収めることはできない、と。 スタースクリームをチラリとみるとスタースクリームはそんなメガトロンを正面から見つめ返し 目をきらきらとさせていた。は?と思って更に見てもその表情は変わらない。 「者ども続け!」 メガトロンが微かに傷つきながらもしっかりとした動作で空へと飛んだ。 アストロトレインも続こうとしたが足が痛んで中々立ち上がれない。 ブリッツウィングも同じだ。身体を辛そうに起こしている。 デバスターから分散したビルドロンも未だに床に体を倒したまま。 「メガトロン様…!」 スタースクリームだけがばっと立ち上がるとそれを追った。 今の今まで死闘を繰り広げていたとは思えないほどの俊敏性で 空へと飛ぶとそのままトランスフォームして加速していった。 「あいつ元気だな…」 「くっそ…おらっ…!」 かかとを思い切り蹴って飛ぶ。 どいつもこいつも何とか飛び上がるとやっとその背中に追いつけた。 * 「あっはっは!!」 「スタースクリームまじ受けるわー!」 「ほんっとお前は面白いな!」 「うるさいうるさい!黙れ!」 リペア室にてスタースクリームの回りにジェットロンが集う。 スタースクリームは足を組んでぼーっとするだけで自分でリペアはしていなかったが 左右にいるスカイワープとサンダークラッカーがスタースクリームをリペアする。 それを手伝うようにラムジェットスラストダージが囲んでいた。 「エネルゴン」 「ほい」 スカイワープが手を差し出すとその手にラムジェットがエネルゴンを置いた。 それをスタースクリームの怪我してる部分にかけてサンダークラッカーが熱で溶接する。 まるでリーダーの手当てをするようにちやほやされるスタースクリームを見て アストロトレインとブリッツウィングは目を見合わせた。 「おい、お前ら手ー開いてるんならこっち手伝え」 「そうだぜ。腕があがりやしねぇんだ」 「はぁ?お前らメガトロン様に逆らったんだ。自分で手当てしやがれ」 「あぁ、中々面白い見せもんだったなぁ。ぎゃはは」 ブリッツウィングが「はぁ!?」と怒鳴るとジェットロンは笑ってまた スタースクリームをからかって遊び始めた。どうやら本気らしい。 「おい、待てよ。そいつだってメガトロンを裏切った」 ぴたりと談笑が止む。 サンダークラッカーもスカイワープもその手を止めるとこちらをみた。 新ジェットロンどももこっちを見たまま動かない。 スタースクリームだけが壁を見つめたまま偉そうに足を組んでいた。 「あぁ、お前らまだ新人だしな」 「知らないのもしゃーねーな」 「あぁ?」 「スタースクリームは良いんだよ」 「あぁ、スタースクリームは良いんだ」 「スタースクリームだからな」 「…はぁ!?」 「なんだそれ!?」 スカイワープが何もなかったように持っていたリペア器具を取り替えてスタースクリームの羽をなだらかにしていた。 サンダークラッカーは汚れたスタースクリームの手を布で拭いた。 新ジェットロンもスタースクリームの方を見ると「おっ汚れてるぜ航空参謀殿…」と スタースクリームの頬に手をやってそこを拭った。 あぁ、と悟った。 スタースクリームと俺にはこれだけの地位差があるのか。 スタースクリームがどんどん丁寧にリペアされ整えられていくのを見つつ 自分の身体を動かない腕で汚らしくリペアするアストロトレインとブリッツウィングだった。 ---------------------------------------- トリプルチェンジャーの反乱。 スタスクとトリプルチェンジャーじゃ扱いが違うって話。 「スタスクはいいよ^^」「だってスタスクだもん」「スタスク(笑)」