「ウーマンサイバトロンを発見したとレーザーウェーブから報告が来た」
「へぇ」
「ウーマンサイバトロンか。珍しい」
「スタースクリーム。部下をやるからお前にこの件は任せよう」





Alpha Trion
 






アストロトレインの隣に居たスタースクリームは目を一度輝かせた。
ついこの間わかったことなのだが、スタースクリームは口で言うほどメガトロンを憎んでいない。
それどころか逆だと言うことがわかった。
メガトロンに声をかけてもらったり、メガトロンが活躍しているとすぐこの目になる。
気付いているのかいないのか、メガトロンはそれに対して何も言わない。


「俺がですかい?メガトロン様直々に行ったらどうだってんです?」
「儂は今手が放せない仕事を抱えている頼りにしているのだぞ?スタースクリーム」


スタースクリームの目がますます光を増した。
誰も気付いていないのか、気付いていての無視なのか。


「部下はフレンジー。ラムジェット。それから…アストロトレイン。お前も行け」
「…俺もですかい?」
「あぁ、この間の反逆を流せるほどの功績を期待しておる」

やっぱりまだ根には持ってやがるなと思ったが
反乱を起こした日から自分はすっかり大人しくなっていた。
いつぞやかこのデストロン軍を自分の手中に。なんてよくも思ったものだ。
今では仕事をして、ある程度褒められて、美味いエネルゴンが飲めれば幸せだなんて言う腑抜けになっちまった。

「スタースクリーム」

メガトロンがスタースクリームを呼ぶとスタースクリームは犬のようにメガトロンへと近寄った。
ない尻尾が自分には見える。ぶんぶんと尻尾を振って主の顔色を窺うスタースクリームが哀れを通り越し
いっそ愉快に見えてくるから不思議だ。これも自分が変わってしまったのだろう。

メガトロンがスタースクリームのインテークを鷲掴み、引き寄せると耳元で何か言っている。
言い終わるとスタースクリームは驚いたようにメガトロンを見上げて
今日一番の目の輝きを見せ付けてきた。





「…で?何言われたんだ?」
「…どーでもいいだろ」

ラムジェットがフレンジーと戯れているのをぼんやり見つめつつ
アストロトレインは自分の腕の装甲に触れてその感触を確かめた。
スタースクリームは自分のすぐ隣で腕組みをしてふんぞり返っている。
その目にはもうあのキラキラした輝きはなかった。

「あんなに喜んでたじゃねぇか」
「喜んでいた?俺が?」
「あぁ」
「気のせいだろう。上手くいったら褒美がでると言われただけだ」

嘘ではないのだろうが反応の違いは明らかだ。
メガトロンに「褒美」といわれればあんなにもキラキラするくせに。
「そうかい」とどうでもよさ気に言い返して装甲から手を放すと
ラムジェットをみた。どういうわけだかフレンジーを肩に乗せて遊び始めている。

「出発だぞ馬鹿ども!サンダークラッカー!スペースブリッジを閉じろ!」

鉄壁に囲われた外よりジェットロンの声がする。ゲートが閉じるとぶわりと風が巻き起こり
冷たくも肌にまとわりつくその空気に包まれた。

「さぁ、レーザーウェーブに会いに行くとするか」
「おぉ」
「セイバートロン星は久しぶりだぜ〜」
「俺は速く帰って寝たい」

思い思いの言葉を一言ずつ吐くとその空気はお互いを見えなくさせ、アイセンサーを煙が覆った次の瞬間には
耳を裂くような音と激しい閃光に包まれた。それがスペースブリッジの起動を表していた。





*




スタースクリームの言葉とは裏腹に、やる気だけはぼろぼろと零れていた。


「さっさと捕まえるぞ」
「はいはい」
「何があっても失敗は許されねぇ」
「わかったわかった」
「ここまで来た目的を忘れんなよ!」
「へいへい」
「どんな犠牲を払ってでもエリータワンを捕まえるんだぜ」
「うんうん」
「入り口を探せい」
「わかったよスタースクリーム」

アストロトレインは馬鹿丁寧に一つ一つに返事を返していた。
ラムジェットとフレンジーは口には出さずともアストロトレインに感謝していた。
ここで雑でも良いから相槌がなければ「聞いてるのかこの愚図どもめ」とはじめるのは明白なのだ。
適当でもアストロトレインがスタースクリームに構ってくれるのは助かる。



「本当にこの辺に基地なんかあるのか?」
「こんなところに秘密基地なんてあるわけねぇやい」

ようやくその2体も会話に参加するとスタースクリームは
先頭を歩んでいた歩みを止めて振り返った。
愚痴を零し、ラムジェットを罵り、フレンジーに命令を下す。

おいおい。張り切ってんじゃねぇか。
アストロトレインはこのあたりに基地があろうがなかろうが構わないから
早く地球に帰ってくつろぐたいと考えていた。
フレンジーが両腕をハンマーアームに切り替えてその地面をたたき始めるのを見つつ
揺れる地面にあわせて身体を揺らし、バランスを保っていると光線の音と物が壊れる音を聞いた。

「なんだ!?」
「っ!?」

物陰よりエリータワンが狙っているのに気付いた。
まさか本当にこのあたりに基地があるとは。
スタースクリームの天性の勘には驚かされるぜ、と内心呟く。

銃撃を受けてもスタースクリームはフレンジーに床を叩くよう命じた。
スタースクリームはこの地下に秘密基地があるのを確信したようだった。
ならばラムジェットと俺のする仕事はエリータワンを倒すことにある。

ラムジェットに一度視線をやる。あちらも頷き返してくるとまずは自分が歩み寄った。
女だ。たかが女。ウーマンサイバトロンだ。軟弱な癖に武器を持つ弱い戦士。

両手を伸ばし、出来るだけ早く間を詰めると
思った以上にあちらの反応スピードも速く、足元を数発的確に撃たれると自分は転んだ。
俺、格好悪!と思ったがあちらは追撃を喰らわせる出なくスタースクリームへと銃身を向けた。
それをスタースクリームが危うくも避けるとラムジェットが飛び出して
エリータワンへと銃撃を開始した。

しかし思った以上に強い。甘く見ていたのだろうか。
ラムジェットの追跡ロケットすら手で掴むと逆に投げかえしてくる。
それを正面より食らったラムジェットは身体から煙を出して倒れた。
スタースクリームがそれを見て腕を構える。

「俺様のナルビームで大人しくさせてやる…」

構えてから砲撃まで1秒もなかった。
しかも狙いは的確。

ラムジェットとアストロトレインはスタースクリームの活躍をだらしなく地面に倒れたまま見守った。


「…おい、今日のスタースクリーム強くねぇ?」
「褒美があるらしいからな」
「…餌につられてんのかよ…」

ナルビームの直撃を受けて少しばかり高さのある柱に立っていたエリータワンは
自分たちの目の前に落ちてきた。
ラムジェットとアストロトレインは立ち上がり、ようやく仕事らしい仕事にかかる。
麻痺でくらついているウーマンサイバトロンを両サイドから挟み、腕を掴むと
先ほどまでの威勢は失われ、うなだれるエリータワンを捕らえることが出来た。

「お前達の秘密基地に別れを良いな…」

スタースクリームは捕らわれたエリータワンに激しい眼光をぶつけた。
それはあのキラキラした目ではなかったがデストロンらしい眼差しに
釣られて自分まで笑みが漏れる。
ありえない話だが、今この状況下でスタースクリームの部下であることを少し誇りにすら思えていた。

エリータワンがフレンジーより壊された基地を見て息を呑んだ。
それを見たスタースクリームのなんと悪い笑みか。最高だ。お前最高だよ。
今すぐスタースクリームを褒め称えてやりたい。お前がデストロンのNo.2だ。

「それじゃあ、この映像をメガトロン様にでも送りますかね…」

スタースクリームは耳に手を当てて通信回路を開くとメガトロンの個人周波数に繋いだ。
すぐに現在は地球にいるだろう大帝から応答がある。

「どうしたスタースクリーム」
「お喜びください。メガトロン様…エリータワンを捕らえました」
「流石だスタースクリーム。期待通りの働き嬉しく思うぞ」

ちらりとその会話をするスタースクリームの顔を盗み見た。
自分たちの角度からじゃ見えにくいそれを少し身体をそちらへ向けて極力視界に入れようとする。

あぁ、やっぱり目がキラキラしてやがる。
先ほどの真っ赤な目に、右口角だけがあがる悪い笑み。目も相手を見下すように細められていた。
なんと素敵なデストロンだっただろうか。それが今はへらへらと笑い、目を輝かせている。

「映像を送れるか?」
「はい、フレンジー。エリータワンをカメラに写せ。転送する」
「はいよっと〜」

両腕をアストロトレインとラムジェットが押さえたままの状況をフレンジーが片腕をカメラに切り替え
それを電波としてデストロン基地にライブ映像として送った。
すぐにスタースクリームの通信機器よりメガトロンの声がする。

「うむ、確認が取れたぞ」
「どうするつもりで?」
「コンボイをおびき出す罠に使うわい…」
「そりゃ名案ですな」

スタースクリームがへらへら笑みを消すとやっと振り返って正面よりその顔をうかがうことが出来た。

「デストロン本部へ戻るぞお前ら。絶対逃がすんじゃねぇぞ」
「わかってるよ」
「任せろ」

またスタースクリームが悪い笑みを浮かべる。あぁ、俺はそっちのほうが好きだと思った。





*





「おお、すごいじゃないかスタースクリーム」
「まぁな」

レーザーウェーブがスタースクリームを褒めるとスタースクリームは素直に喜んだ。
自分よりもレーザーウェーブとの方が長いのだろう、随分慣れ親しんでいる。

「レーザーウェーブ」
「ん?」
「スペースブリッジをコンボイはつかってくるだろう」
「オメガじゃないのか?」
「いいや、あいつはスペースブリッジを使う。罠を張ってくれ」
「…お前がそういうのならそうだろう。わかった」

レーザーウェーブがメインコンソールを叩くと紫色のエネルゴンを加工した線が現れた。
それをスペースブリッジの出入り口付近に張り巡らすとその線を更に透明化する。

「ありゃなんだ?」
「触れた者を捕らえる罠だ。お前もかかってみるか?」

スタースクリームが冗談交じりに小首を傾げて聞いてきた。

「冗談」
「はっ、お前なんかに罠を無駄遣いできるかよ」

そんなやり取りを繰り広げるとレーザーウェーブが笑った。

「仲が良いな。お前ら」
「俺らが?」
「おいおい、お前まで冗談言うなって」
「そんなつもりはなかったのだがな…」

エリータワンの両肩を掴むラムジェットが近寄ってくるとアストロトレインの名を呼んだ。

「変わってくれ。腕が疲れたぜ」
「はいよ」

ラムジェットよりエリータワンを受け取ると背後よりその両肩を強く掴んだ。
スタースクリームがぼんやり眺めてくるのを見つめ返すとスタースクリームは笑った。

「逃がすなよ。お前らの責任は俺に来るんだからよ」



チリッと電気の動く音がした。
デストロン全員が反応する。視線はスペースブリッジだ。


「…レーザーウェーブ。メガトロンから仲間が応援にくると連絡でもあったか?」
「いいや、ないな」
「コンボイだ…」

空気がはりつめる。しかし既に罠はかけられた。
開いたスペースブリッジよりコンボイが飛び出してきたが透明化された罠にかかり
コンボイはすぐにそのエネルゴンでできた線より作り出されるキューブに閉じ込められた。
スタースクリームは「やっぱりな」と笑ったがエリータワンを興奮させる光景だったことに誰も気付いていなかった。

「コンボイ!」

エリータワンがアストロトレインを蹴り飛ばした。
驚いたのはアストロトレインだけではない。
自分よりも大きい機体で、しかもあのアストロトレインを蹴り飛ばすことの出来る女がいるとは思ってなかった。
あのレーザーウェーブですらその光景に判断が遅れた。
唯一、冷静さを保っていたのはスタースクリームであろう。
すぐに腕を構えて先ほど同様その胸にナル光線を打ち込むと悲鳴をあげた女は倒れた。

「黙れ、このじゃじゃ馬めが!」

追撃を食らわせようと腕を倒れたエリータワンに向けるとレーザーウェーブがそれを止めた。

「私に良い考えがある」
「…」

その声に腕を下ろしてしらっとレーザーウェーブをみた。
スタースクリームは暫く黙った後に「わかった」とその戦意を伏せた。
アストロトレインがのろのろと起き上がるのをスタースクリームは歩み寄って上から見下ろした。

「あぁ、スタースクリーム。手をかしてくれ」
「馬鹿が。自分で起きろ!お前のせいで逃げられるところだった!」
「お前が防いだだろ」
「だからお前らは安心できねぇんだよ…!」

スタースクリームは暴言を吐くとレーザーウェーブの隣まで移動してしまった。
なるほど、メガトロン。レーザーウェーブ。そこに越えられない壁を挟んで俺か。
アストロトレインは自分の頭撫でるとレーザーウェーブの隣に立つスタースクリームの背中を見た。





*






今日こそはコンボイを倒せると、確信していた。



「この、愚か者め!!」



メガトロンの手がスタースクリームの顔面を叩くのをアストロトレインとラムジェット。そしてフレンジーは見ていた。
鈍い音がしてスタースクリームの頬を殴るとそのまま勢いを殺せず壁までスタースクリームは吹っ飛んだ。

「うっ、わ〜…痛そう〜!」
「フ、フレンジー…今は黙っとけ…!」

スタースクリームが咽て咳を何度も繰り返しながら起き上がった。
その目はキラキラなどしていない。メガトロンを目の前にしても。

「お、俺は頑張って…」
「結果がついてこなくては意味がないだろう!」
「でも、俺は悪くない!俺は悪くなんて」
「うるさい!」

もう一発はいる。
フレンジーが顔をそらしたのを視界の隅に捕らえつつアストロトレインは見続けた。
顔を殴られたスタースクリームは殴られた部分を手で押さえながら涙声で懇願している。
本当に泣いているのではと思ってもその目は涙など流さない。

「あんたらがサイバトロンの連中にスペースブリッジを使わせるから…」
「言い訳など聞きたくもないわ!お前には失望したぞ」
「…!」

メガトロンが背を向けてメインルームを後にした。
自分たちのミスへの責任を取らされているスタースクリームはその場に座り込んで動かなかった。
俺らも動けない。いつものようにスタースクリームに「馬鹿だな」と言ってやりたくてもいえないのは
今回、特別スタースクリームにミスはなかったのが原因だ。

どちらかといえば、ついていったくせに何も出来なかった自分たちに非がないか?


「…」


視線をスタースクリームからラムジェットとフレンジーに送るとフレンジーはその空気が耐えられないのか
すぐにその部屋を飛び出した。ラムジェットも少し躊躇った後それを追う。
自分は、どうするか。
とりあえずはスタースクリームに歩み寄ってみた。

「…おい」
「……」
「…顔みせてみろ」
「うるせぇ」

自分も床に片膝をつけてスタースクリームの顔をうかがった。
しかし俯いて手で顔を抑えていては見えもしない。
「おい」と手を伸ばすとその手を殴られた。
それと同時に顔をあげたスタースクリームをアストロトレインは見ることが出来た。

「触るな!」
「…おまえ、ひっでぇ面してんぞ」
「…うるさい!お前の、お前らのせいだ!」

また殴られた部分を手で押さえる。
今度は俯かないが押さえられた頬は見ることが出来なくなった。
しかし見えたのはへこみ、擦れ、ヒビが入った頬だった。
想像よりもよっぽど強く殴られたのだろう。

「俺は、頑張ったんだよ!」
「…」
「お前らが足手まといだったんだ…!命令もまともに実行できないお前らのせいで!」

スタースクリームは基地をみつけた。
エリータワンを捕まえた。
コンボイを捕まえた。
サイバトロンの援軍が来た時も誰よりも強く、臆することなく戦った。
結局は殺したと思っていたエリータワンとコンボイが生きていて、失敗に終わったが。

「あぁ、お前は悪くねぇよ」
「…」
「悪くない」
「…うるせぇっ…」

スタースクリームの顔が崩れた。
表情が歪められ、今にも泣きそうに目を細める。
その頭に手を乗せてぽんぽんと軽く叩いた。叩くというよりは撫でるように。泣き止ますように。

「なに、も殴ること…!」
「あぁ、ないな」
「…っ俺は」
「頑張ったな」
「…っう…」

スタースクリームは泣かなかった。
ただ嗚咽を漏らして自分の胸元に寄りかかってきた。
頭部においていた手で撫でてやる。

「…リペアしねぇとな」
「っ…ア…っスト」
「わかったから」

手を貸して立ち上がらせる。
俺はいつからこいつにこんなに甘くなったんだ。
こいつが悪い。強いくせに、デストロンのNo.2のくせに
急に弱くなって、ぐすぐす言いやがるから。
まるで子供だなとアストロトレインはスタースクリームを見て思った。

シュッと音がして扉が開く。
自分たちではない。誰かが、と扉を見る。
白銀のボディ。赤い目。その眼差しだけで誰かなどすぐにわかる。

「メガトロン様…」
「っ…」

スタースクリームが顔をあげる。
メガトロンは腕組をしたままスタースクリームの名前を呼んだ。


「こちらに来い」
「…う、るせぇ!あんたが!」
「フレンジーとラムジェットから詳しい報告を受けた」
「…」

あいつら。とアストロトレインはすぐに部屋を逃げだした2体を思い浮かべる。
空気に耐えられなくて逃げたのではなかったのか。メガトロンを追いかけたのかと
あのちびっこいフレンジーに尊敬の念を抱く。
先ほどの怒り狂ったメガトロンに声など到底かけられないだろうよ。

「…こい」
「…言い訳は聞かないんじゃなかったんですか」
「…」
「俺の、報告聞きもしないで、殴ったのによ」
「…」
「あんたなんかの」
「スタースクリーム」

黙るメガトロンにヒートアップしてくるスタースクリーム。
アストロトレインはそれを止めた。頭かっかしやがって、この馬鹿が。

「意地はってんな」
「…意地?意地だと?」
「そうだろうがよ。さっきまで褒めて欲しくて泣いてたくせに」
「なっ、泣いてなんかねぇだろうが!」
「わかったよ。後で話は聞くから、今はメガトロンのとこ行けって」

睨みつけてくるスタースクリームの背中を押す。
メガトロンはそれをみて背中を向けるとそのままメインルームを出た。
「ついてこい」という意味だろう。
その背中を見つめたまま動かないスタースクリームに呆れつつも自分は部屋に戻ろうと考え始めた。


「あっ」
「あー?」
「アストロトレ、イン」
「なんだよ」
「……その、悪い」
「はぁ?」
「…」


スタースクリームが正面から見つめ返してくる。
ぎくりと身を強張らせた。目が、スタースクリームの目がキラキラと輝いていた。

「…あんがとよ…」
「お、おお…」
「今度、酒奢るから、飲もう」
「…あ、あぁ」

ふいっと顔を反らされるがまだその場から動かないスタースクリームの目は未だキラキラしている。
いつもメガトロンに向けられているのは知っていたが自分のほうへ向くとこれまた一段と輝いている。
まるで真っ赤な飴玉だと思った。機械よりも、また何か違うもの。
舐めてみたい。と本能が呼びかけてきた。自分はその声に忠実に動き、手をスタースクリームへと向けた。

「…じゃあな、また」
「…え、ああ、あ」

スタースクリームがこちらを見ずにメガトロンの後を追った。
残されたのは自分と、スタースクリームへと向けられていた手。
その手のひらを自分眼前まで持ってくると眺めた。

「…?」

なんだこの手は。何をしようとした?
ばくっとスパークが音を立てた。スパークの脈動を感じることなど、滅多にない。
死に掛けの時なんか、感じたりもするが今は状況が違う。
一度音を拾えばスパークの脈動は手に取るように感じ取れた。
ばくばくと跳ね上がる。なんだこれは。


「…あれ?」


スタースクリームに向けていた手を自分の胸にあてる。
手のひらでも、ぶ厚い装甲を通り越して脈を感じる。
なんだ。なんだこれは。熱い。なんだ。

アストロトレインは今まで生きてきた中で感じたことのない脈に出会った。






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こ〜い〜しちゃったんだ♪

経験は豊富だけどアストロは初恋を覚えたよ。
アストロはもうヤること一通りやってるし覚えてるし出来るしで
「俺オトナ。俺すげー」なんだけど恋愛はしたことないと思う。