全ての根源は


「お前らのせいだ」



「「何で」」


紫基調の2体が声を揃えて、おまけに双子の兄弟かと思うほどのシンクロ率で
首を傾げる仕草までもぴったりと揃え、疑問を口にした。






勉強会
 








それは前々から考えていて、それでも実行する暇もなくただただ毎日が過ぎていく。
しかし今日という日、それはやってきた。
朝メインルームの扉をくぐった瞬間にメガトロンに顔面を殴られて決心がついたのだ。

「はい。何故俺の美しい顔に傷がはいってるかわかりますか?」
「メガトロンに殴られたから」

スタースクリームはペンを手に持ちペン先を勢い殺さず紫基調の大きい方に突きつけた。
アストロトレインは用意された机に両膝をがっつりのせると言ってのけた。
あってるだろ?とアストロトレインが隣に居るスカイワープに同意を求めても
スカイワープは「あってる」と頷き返してくる。

ここはスタースクリームの自室であった。
デスクの上はメモリやディスクやケーブルが散乱し汚かったが
スタースクリームが用意した、低めで四方に大きい机は床に座っているスカイワープと
アストロトレインには丁度良かった。いや、少し大きいくらいだ。

「では、何故殴られた?はい、スカイワープ」
「お前が馬鹿だから」
「お前は後で殺すから」

スタースクリームはペン先をアストロトレインからスカイワープに向けると質問を投げかけた。
しかしその質問に対しスカイワープは唯でさえ要領の悪いブレインサーキットに巡らす事もせず
脊髄反射のノリで頭の悪い答えを飛び出させた。


「前々からお前らには言おうとしてたんだ」
「へぇ」
「ふーん」
「俺が殴られた理由はコンソールがぶっ壊れてて」
「うん」
「あぁ」
「2日前、徹夜でやったデータが全部飛んでたのが理由だ」
「大変だな」
「そりゃえらいこったな」


スタースクリームは正方形の机から立ち上がると2体に紙とえんぴつを差し出した。
問題を書かれた紙と削りたての鉛筆は人間で言うまだ子供。小学生を思わせるような道具一式で
受け取ったものの紫2体は口をぽかんとあけたままだった。

「では、壊れた理由はなんだ。アストロトレイン」
「しらね」
「スカイワープ」
「えー?」
「お前が昨日の夜、最後にコンソール触ったんだよ!」

ペンをスカイワープの頭に向かってなげるとカツン!と音がして当たった。
スカイワープは痛くはないがそこを擦ると「だからなんだよ」と言った。

「お前らを呼んだのは他でもない。頭が悪すぎる」
「は!?」
「てやんでい!」
「今回はアストロトレインとブリッツウィングもついでに勉強に参加してもらうつもりだったんだけどよ」
「あ?ブリッツは?」
「逃げられた。とりあえずお前ら1ヶ月に3体あわせて11回故障させてるわけだ」

なのでこの俺様が直々に面倒みてやる!と腰に手を当てて勇むスタースクリームを
アストロトレインとスカイワープは下から見上げた。

「帰って良いか?」
「駄目だ!まず最初っからコンソール操作や情報については教えない。まずは基本知識からだ」
「まどろっこしいな〜」

スタースクリームは机の上に足を乗り上げて2体を見下ろした。
足を強く机に降ろした為そこに響いた音に2体は一度だけ身体を強張らした。


「メガトロンからナルビームの使用許可を貰ってる…逃げたきゃ逃げろ」

アストロトレインとスカイワープが一度互いの目をあわせ、アイコンタクトをとると
もう一度スタースクリームを見上げた。
そこにはいつもよりうっとりと、それでいて狂気に満ちた表情をしたスタースクリームがいた。

軍を率いる破壊大帝からの許可が下りた勉強会。見上げる2体からすれば拷問。
スタースクリームからすれば折檻の許可が下りているこの状況下は実に楽しいのだろう。


「…ス、スタースクリーム」
「おちつけって…な!」
「あぁ、もちろんだとも。だからスタースクリーム様手製のその問題用紙を見ような」

キュインと音がしてナルビームに熱が溜まっていくのが2体の目から見えた。
もう一度怒られた子供のように机の前に座り込む2体は崩していた足をきちんと座りなおすと
机に置かれたスタースクリーム手製の紙を引き寄せた。


問題は15個。最初にはご丁寧に名前を書く欄まである。
問題はエネルギークリスタルの扱い方やら、エネルゴンの耐熱性やら。
途中からスペースブリッジの扱い方やらそれらしい問題があるが
最後の問題はまず問題すら読めなかった。

文句言いたげに2体はスタースクリームを見たがスタースクリームににっこり笑って
ナルビームを構えるだけだった。

「少し、時間をやる。解けてなかった場合は…なっ」

良い笑顔にナルビーム。
仕方なく2体は鉛筆を構えた。


スタースクリームは暫くナルビームを構えていたが専用デスクへ戻ると
自分の仕事をするだけで、付きっ切りで教えてくれるわけでもなく
スカイワープが脱走しようとしたりアストロトレインが昼寝に入ろうとするのを阻止するだけだった。

「…アストロトレインは馬鹿。スカイワープは阿呆だな」
「……」
「……」
「アストロトレインはとりあえず電車やら列車やらから離れろ。なんでエネルゴン生成方法に電車がはいってきやがる」
「必要だろ」

問題のエネルゴン生成について「電車の力を借りる」と堂々と書いた男を見た。
次にスカイワープを睨む。

「スカイワープは考えもしてないだろ」
「…だ〜ってよう」

まだまだ白紙部分の多い紙をもう一度スカイワープに突き返して続きを促す。
アストロトレインのほぼ空欄が「電車、列車」で埋まった用紙ももう一度目を巡らせて突き返した。

「スタースクリームよう」
「なんだ」

スタースクリームが立ち上がって自分のデスクに戻る。
紙やリペア道具。データを保管しているだろうディスクの山。
その横の方には紫から暖色寒色、様々な色の液体を試験管に入れてクランプに設置してある。
そんなものを背景に振り向くスタースクリームは確かに頭良さそうに見えた。

「これ、全部解いたら何かあんのかよ。褒美」
「解けると思ってるのかよ。今の回答するような奴が?」

スタースクリームが馬鹿にしたように椅子に座り、床に座りながら机を囲む2体を見下ろした。
不敵に笑いその口からは自信に満ちた言葉が躍り出る。

「まぁ、何か考えてやっても良いぜ」


アストロトレインはふーんと返事を返しつつも真面目に頭を働かせ始めた。

スタースクリームのあの自信に満ち溢れた顔。間違いなく「解けない問題」でも混ぜている。
そう判断したアストロトレインはまだうーうー唸るスカイワープを尻目に冷静になり、ふざけるのをやめた。


*





「は?」
「だから、全部正解だろ?」


スタースクリームが口をぽかんと開けたままアストロトレインの用紙を見た。
スカイワープも「え?」と覗き込んでくるがそこに空欄を埋める答えを見ても
あっているのか間違っているのかは理解できずにいるようだった。
スカイワープにわかったのは解答欄から「電車と列車」がいなくなったことだけだった。

「…あってる」
「最後の問題はちょっと難しかったけどな」

一番最後の問題は参謀レベルじゃないと解けない問題だったのだ。
いや、もしかしたらサウンドウェーブやレーザーウェーブですら、と疑わせる内容。
ただの基礎ではなく、地科学、研究員としての問題。数式でそれはスタースクリームの専門だった。
アストロトレインが解けるはずもないのだ。そうスタースクリームは考えをめぐらせていた。

「…お前、何か」
「まさか。自力だぜ?」

動揺し、何度も問題用紙を見るスタースクリームをアストロトレインは内心大笑いした。
それにスタースクリームは気付けなかったのはまさかのアストロトレインが
難問を解くなんていう奇跡をやって見せたからだった。

スタースクリームにばれないように通信機能を使ってビルドロンに連絡を取っていたのだ。
ビルドロンたちは「わかんねーよ」と連絡を返してきたが「礼はする」とアストロトレインが言うと
宇宙ネットワークにのって調べてくれた。それが難問を解けた全容だったが
今、動揺しているスタースクリームには気付けるわけもなかった。

「スタースクリーム」
「っ…あ?な、なに?」

スタースクリームが怯えたような表情するとアストロトレインは見下ろしながら詰め寄ってきた。
目前まで迫ってからその腕を取って顔を覗き込むと咄嗟に逃れようとした。
スタースクリームは危機察知をしていた。なんか、危ない。と。

「褒美、どうすんだ?」
「こ、今度、エネルゴン、奢ってやるよ…!」
「わりぃな。今エネルゴン足りてんだよ…他のもんにしようぜ」
「と、とりあえず放せ。な?」

あぁ、勉強会など開かなければよかった。と思ったときには既に遅い。

「ちょ、ちょっと待ちやがれってんでい!俺は!?」
「お前は何もしてねーだろ!」
「そうだぜ。スカイワープ。お前は黙って見てろよ」
「見てなくて良い!」

参加してきたスカイワープにスタースクリームは怒鳴り返すとアストロトレインを見返した。
うるさいスカイワープだが現状を把握する冷静さを取り戻す要因の一部として役立ってくれた。
「はぁ」とため息をつくとできる限り冷静な声で取り繕い言葉を放った。

「何が、いいんだ?」
「…そうだな…」

スタースクリームの手首を掴んでいた手がゆったりとした動きで肩まで動くと
スタースクリームは猫の毛が逆立つような動きで身体をぶるりと震わせて睨み付けた。

アイセンサーで「やめろ」と呟いた。しかしそれはなんとも説得力のない力で
アストロトレインはそれを無視して身体に触れていた手をスタースクリームの顔に触れさせた。

「…できたら接続を」
「ふざけんな!」
「ふざけんなってんでい!」

スカイワープまで怒鳴りつけてくる。
接続と聞いて頭が一気に熱くなった。なんで俺様がそんなことまで?
スタースクリームは逃げようと自分とは反対側に体重を移動させて腕を自由にしようともがく。

「スカイワープはなんだ。お前も相手して欲しいのか?」
「馬鹿トレイン!スタースクリームは俺のなの!サンダークラッカーも!ジェットロンは!」
「いつ俺様がお前のものになった!ジェットロンは俺様のなんだよ!」
「おいおいおい。何だお前らは」

話が変な方向へ脱線しかけてる。このまま褒美もなかったことにしてしまいたい。
しかしそんな思惑に勘付いていたのだろうか。アストロトレインはスカイワープの方を
向いてぎゃんぎゃん騒ぐスタースクリームの顎に手をやると
そのまま顔を見上げさせてこちらに向いた唇をふさいだ。

「っ!」

スタースクリームは黙った。
スカイワープも黙った。

黙るしかなかった。塞がれた唇から言葉を発することはできない。
それ以上にブレインサーキットが一時フリーズしてしまった。
ほんの少しの間だけ口の中に舌をいれられて一度だけ舌同士を絡めるとすぐにアストロトレインは
離れて唇同士が離れる直前にスタースクリームの唇をなめた。

「まぁ、これで許してやるよ」
「ア、アス…!!!」
「ず、ずるい!」
「ずるくねぇ!阿呆ワープは大人しく机に戻りやがれ!」

怒鳴ると頬が紅潮していくのがわかった。ふざけんな!誰も見るな!
スタースクリームが口を押さえたままスカイワープに怒鳴りつけた。
すぐにアストロトレインの方に向き直ると既に力を抜いた拘束から腕を抜き取り
その手で胸元を殴った。しかし相手が少しひるむ程度の力だった。
本来ならば顔面を、吹っ飛ぶほどの力で殴ってしまいたい。
しかしそれができなかったのは自分が動揺していたからだろう。

「お前カンニングだろ…!」
「そんなまさか」
「お前が解けるはずねぇんだよ!」
「でも解けたわけだ。次の問題は?スタースクリーム」
「ねぇよ!」

スタースクリームは廊下を指差して帰れ!と大声を出すとスカイワープと同じ卓上にもどった。
アストロトレインは暫し笑うと言われた通りに帰らずスタースクリームの隣に座って
そのままにやにやと居続けた。鬱陶しい。追い返してしまおうと復旧したブレインサーキットが囁く。

「アストロトレ」
「今日、当番俺なんだ」

モニター管理の。と付け加えられた。
だから、なんだ?もしかして教えてくれとでも?

「だから教えてくれるんだろ?壊さねぇようにコンソールを弄る方法」
「そんなの…!」
「何のために開いた勉強会だよ。メガトロン様に殴られても良いってんなら別だがよ」
「……スカイワープが追いついてからだ」
「へいへい」

スカイワープを見るとまだ白紙部分の多い紙を手遊びしながら見つめていた。
そのスカイワープが顔をあげるとむすっとした表情が見えた。

「スタースクリーム。俺もこれ解いたら褒美あんのか?」

同機が怒っている。それはむすっとした表情でわかるが台詞から
嫉妬。自分にも何か欲しい。という感情が読み取れた。
本来ならばうるせぇ!と黙らせるのだがこう言う時のスカイワープは引くことを知らない。

「……今の以外ならな」
「スタースクリーム」

アストロトレインが声をかけてくる。むすっとしながら振り返ると
アストロトレインはさも楽しそうに笑った。

「なんだ」
「今日コンソール壊さなかったら褒美くれよ」
「ふざけんな。今ので十分だろ」
「次は接続で」

「ふざけんな!」
「てやんでい!」

同機が一斉に吠えるのをアストロトレインは机に頬杖をついたまま笑って出迎えられた。
きっと、もう、2度と馬鹿の面倒はみない。とスタースクリームは内心ムカつかせた。






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オチがない。

書き下ろし(微えろ注意)








「スタースクリーム〜!って閉めるんじゃねぇよ」
「っ、くそ…!」

開いた扉を急いで閉めようとすると紫色の手がそれをさえぎった。
勉強会を開いた次の日の夜。つまりはアストロトレインが当番を終えた次の夜だ。

「いれて」
「…」
「何もしねぇって」
「…嘘くせぇな」
「本当」
「…」

閉めようとする手を引くと大型の男が口元にニヤケ顔を作って入ってきた。

「今回は殴られなかっただろ?」
「…それが当たり前なんだよ」
「お前のおかげだったりしてなぁ」

頬にアストロトレインの手が当たって蠢くのを手で払いのけると
アストロトレインは作った残念顔を見せてきた。

「いてぇな。酷いぜ」
「…褒美が目当てか?」
「…くれんのか?」
「まさか」

この間の勉強会より出しっぱなしの机を掴んでどかそうとすると
アストロトレインが背後に迫ってきた。
気付いた時には既に遅くというのはよくある話だ。

「スタースクリーム」
「っ、あ!」

背中を音がするほど強く押されて両手を広げて両端を掴んでいた机に押し付けられる。
振り返るとアストロトレインは未だに笑っているだけだ。

「本当に何もしねーよ」
「はぁ?」
「ただ、ちょっと触らせてくれても良いだろう」

机の上に倒れる自分へと圧し掛かるアストロトレインは身体を弄ってくる。
ある意味、何もしていない。装甲を撫でるだけなのだ。
机とスタースクリームの間に手をいれてきて腹部を撫でる。

「ひっ…」
「…おいおい、何もしてないのに、変な声だすんじゃねぇよ」
「ば、ばか!今…!」
「腹触ったくらいなんだってんだ?まさか、そこも性感帯だとでも言う気かよ」

ぐっと言い返せなくなる。
性感帯ではないが身体がぞくぞくしたのは確かだった。
今のような言われ方をされてはそうだと言うこともできない。
唇を噛むとアストロトレインの手が口に触れた。

「お前何してんだよ」
「うるさい…!」
「気持ち良い、んだろ?」
「黙れ!んなわけあるか!」

そうかい。とアストロトレインがまた身体を物色し始める。
別にキャノピー内を弄るわけでもなく、コネクタを押し付けてくるわけでもなく
レセプタにも興味はないようでただ撫でてくるだけ。
ぞくりと身体の中心が熱くなってくる。まずい。と耐えると同時に
話をそらそうと考えた。

「お、おい…お前って…頭良いのか?」
「はぁ?なんで」
「この、間の問題…」
「あぁ、あれ」

一度頷くとアストロトレインは手を止めて暫く黙った。
考えるようなそぶりを見せる。スタースクリームはそれを黙ってみた。

「…まあ、時効だろ。言うけどカンニング」
「はぁあ!?やっぱり!!!」
「自分で宇宙ネット接続したらお前にばれるから、ビルドロンに頼んでな」
「て、めぇええ…そんなときだけ頭使いやがって」
「ビルドロンの連中にエネルゴン奢るハメになっちまったよ」
「しらねぇよ!褒美やった俺はどうなる!?返せ!」
「…返せ、ねぇ」

物品ではないのだ。
返せ返さないの前に「返せない」が一番正しいのだが
スタースクリームにとってそれは関係ないことで
言い方を変えれば騙した責任を負えと言っている。

「…じゃ、こっちむけ」
「は?っておい。まて」

顎を掴まれて無理やり反り返らされると
スタースクリームの口にアストロトレインがかぶりついた。
体勢が悪すぎて逃れることができない。スタースクリームの口内にオイルが満ちてくると
それを少しずつ喉の奥へと流していった。
アストロトレインがスタースクリームの喉に手を当てて、自分のオイルの流れを感じ取ると
満足そうに笑ってそのままスタースクリームの舌を食んだ。

「やっ、め」
「返してるんだから、受け取れよ」
「ざけん、んっ」

アストロトレインの舌使いにうっとりする。
時々離れる舌の隙間から息を吸うとアストロトレインがその動きにあわせて
また舌を挿入してくる。それを繰り返すうちに自分は抵抗する気がなくなってきていた。

「…ア、ストロ…」
「良い顔すんじゃねぇか」
「も、っと…」
「素直なもんだな?褒美として、もう一回してやるよ」
「んっ…ん」

スタースクリームは小さく喘ぐとアストロトレインだけを見た。






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机の上でってえろえろだと思うんです。