私の名前はスカイファイアー。 今はちょっとした実験をやってその片付けの最中。 カシャン、カシャンとガラスたちがぶつかる音を立てるのはスタースクリーム。 自分の片付けは終えてしまってスタースクリームの手洗いの様子をすぐ隣で見ていた。 このガラス製品たちは凄く繊細で、普段のように使い終わった研究用品を 自動の洗浄器にかけるわけにもいかないのだ。指先で泡を立てながら洗浄するスタースクリームは つまらなそうに、しかし慣れた手つきで洗っていく。 「なんだよ…?」 スタースクリームがこちらをみた。 にこっと笑い返すと顔をそらされる。ちょっと不機嫌そうだ。 「今回の研究結果はいつ提出だ?」 「まだ先だよ。ゆっくり進ませよう」 スタースクリームがまたかしゃんと音をさせた。 最後の道具を洗い終えて自然乾燥をさせる。 スタースクリームは水の滴る自分の手を眺めるとこちらをちらりとみた。 「はい。タオル」 「あんがとよ」 ふわふわの布でスタースクリームの手を包んだ。 自分で拭けば良いのだがスタースクリームの手を拭くのは私の仕事だ。 指先から付け根まで、水気を取り関節まで拭っていく。 「ねぇ、スタースクリーム」 「ん?」 「私は君が好きなんだと思うな」 「…はぁ…?」 驚いたというより「なんだそれ」といった声色でスタースクリームは首を傾げてこちらをみた。 それにもう一度笑いかける。 私に、トランスフォーマーに性欲はない。まったくないわけではないのだが 有機生命体のように子孫繁栄しなくてはという意思がない分、唐突に興奮するなんてことはまずない。 その点、スタースクリームと私は凄く意見が合っていた。 互いに「接続」もとい「交歓行為」などの性欲に関してまったくの無関心で 研究所内に時々いる下品とまでは言わないもののそういった行為に関心の強いトランスフォーマーを 少し理解しかねるのだ。スタースクリームに至っては嫌悪しているようで そういう会話を聞くと顔をしかめる癖がある。 「好き…ってなんだ?」 好きの意味がわからなかったのではないだろう。 自分が好きと言う理由を聞きたいのだ。 もう一度笑う、今度は少し屈んでスタースクリームの顔の高さにあわせた。 「変な意味じゃないんだ。ただ、落ち着くんだ」 「…」 「君と居るだけで、幸せなんだ」 「…ふーん」 スタースクリームは照れる様子もなかった。 水気を拭い終わった手を見て問題ないところを見るとどうでも良さそうにガラスの製品をみていた。 「なら、俺もお前が好きなんだな」 「…そうなの?」 「一緒に居て落ち着くのが好きになるんだってなら。俺もお前が好きだってこった」 「…」 頬が緩んでにこりと言うよりへらっと笑ってしまった。 スタースクリームはその顔をみて呆れたような顔をしながら笑ってくれた。 「なんだ、その顔」 「うん。嬉しくて」 「嬉しいのかよ」 「スタースクリームは?」 「別に」 「これってさ」 「うん?」 「付き合ってるってなるのかな?」 スタースクリームがやっと驚いたような顔をした。少し飛躍しすぎたか。 顔の高さを合わせていた身体を持ち上げて普段どおりに立つと スタースクリームが先ほどまで洗っていたガラスを手にとった。 水滴が下に溜まって落ちるという一連の流れを繰り返し、水気が消えていく。 スタースクリームをもう一度見ると首を傾げて唸っていた。 「あぁ、まぁ、似たようなもんじゃねぇの」 「そっか。じゃあ私たちは付き合ってるんだね」 「とは言っても俺らは何もしねぇじゃねぇか」 そうだね。と笑いかける。 スタースクリームを抱きしめたいと思ったことはない。キスもいらない。 愛してるだなんて言われなくて良いし、接続なんて考えたくもない。 君と一緒に居るだけで、私は幸せなんだから。 「俺はお前を抱く気はさらさらねーからな」 「え!君そんなこと考えたの…?」 「お、お前が言い出したんだろ!?」 「抱くとか、抱かないとかは考えてなかったよ…」 「…っとにかく、変なことすんなよな!」 こんな日。 ガラスから水滴が落ちるのを2体で見つめながらいつものラボ内。 月に数回合えれば良い方なトランスフォーマーと付き合うことになった。 相手も自分が好きらしいけど付き合い始めても私たちの生活サイクルは変わらず。 ただ、一ヶ月に1度でも、2度でも、会えたら幸せだった。 ----------------------------------------------------------------- 次のえろ祭スカファスタの前提。 真っ白スカファと真っ白スタスクの話。