デストロンで。
セイバートロン星で。
もう数百万年も前の話だ。




スタースクリームが好きだ。
気付いたらそうだった。最初はその感情を無視し続けていた。

『見てんじゃねぇよ!』
『メガトロン様に贔屓されてるからっていい気になるなよ』
『2は俺様だ!』

どうやら感情を無視していても自分はスタースクリームを目で追っているらしい。
それに加えてスタースクリームは自分を敵視していた。
構わなかったはずだ。スタースクリームの戯言など。
なのに、気になった。どうしたら自分に笑いかけてくるかなんて愚か過ぎる考えもあった。

だから告げた。告げてしまった。
その日のスタースクリームの、ぽかんとした顔は忘れない。





「好きだ」


「サ、サウンドウェーブ。お前どっかおかしくなっちまったんじゃねーの?」
「なってない」

スタースクリームは怒るかと思いきや困惑していたようで少し避けられた。
その場逃げられて、次の日は会わないように避けられて、その次の日は鉢合わせても
口も聞かず、目も合わさず告げる前より酷くなってしまった。
だから捕まえてみた。

「何故避ける」
「だ、だって、お前…」
「返事はいらない」

スタースクリームはまたポカンとした。
自分が返事の催促に来たとでも思ったのか。

「ただ告げた。それだけだ」
「……へぇ…そか…じゃ、俺は何もしなくていーんだな?」
「あぁ」
「…」

そのままスタースクリームは黙り込んだ。少し安堵したのだろう。
見つめるとスタースクリームはまたたじろいだ。
初めて見る反応にほんの少し、自分の何かが揺らいだ。

「触れて良いか」
「は!?ど、どこにだよ!」
「…」

唇を指で撫でるとスタースクリームはぞわぞわっと全身を震わせた。
その指を振り払われて左手で唇を隠したスタースクリームを好きだと思う自分はおかしい。

「ば、ばかやろう…!」
「…」

じゃあ、と頬を撫でて見ると左右に顔をぶんぶんと音が鳴るほど振って顔を赤くされた。
手を一度引っ込めてどこなら良いとスタースクリームを眺めた。
スタースクリームは頬を紅潮させたまま顔をそらしていた。
まだ口を隠しているスタースクリームの顎から喉にかけて指先で撫でると
隠された唇から「ふっ、くくっ」と笑いを堪える声が聞こえた。

「や、やめ、くすぐって」
「…」

ジャガーの首を撫でるように触るとスタースクリームは身体を捩って笑った。

「や、やだって、っくく…」
「…」

笑った。
可愛い。と思った。






*






あれから、幾つ日を過ぎたか。


「よう。どうした?」
「…スタースクリーム」

サウンドウェーブの部屋にスタースクリームが来ていた。
首を傾げてエネルゴンをちょいちょい飲みながらスタースクリームが
仕事中のサウンドウェーブの脇に来て手元を除いてくる。
スタースクリームは少しだけ口に笑みを浮かべて顔をのぞいてくる。

「今日、ちょっとおかしいぞお前」
「そうか」
「あぁ、疲れてんのか?」
「かもしれない」
「だったら休めよ」

スタースクリームが手を伸ばしてきてサウンドウェーブの仕事をかちゃかちゃと弄る。
サウンドウェーブは黙ってそれを見ていると今までやったデータを保存して終了させようとしている。
それも良いかとサウンドウェーブは止めず、スタースクリームの好きにさせた。

最後にモニターの電源を切るとサウンドウェーブのほうをスタースクリームは向いた。

「おら、終わらせてやったから寝ろよ」
「…」

椅子から立たされて寝台に誘導される。
寝ろ寝ろと押されるがままに寝台に横たわるとスタースクリームは寝台の端に少しだけ腰掛けた

「スタースクリーム」
「んー?」

エネルゴンを丁度口に含んだところだったらしく口を少し膨らませたスタースクリームが振り向いた。
上半身を起こすとスタースクリームの腰に手を回して引き寄せてやる。

「んっ、げほ…はっ?な、なに?」
「…」

腰に手を回された瞬間焦ってエネルゴンを飲み落とし微かに咽るスタースクリームが
やんわりと抵抗してくる。腰に回した手を引き剥がそうと動くがそれが本気じゃないのが分かる。
あの日から、毎日少しでもスタースクリムに触れるようにしている。
ここ数年でようやくスタースクリームは自分から会いに来てくれるようになった。
声をかけてくるときに少しだけはにかむようになった。これを放したくはない。

「んっ、どうしたんだよっ、零れるぞおい」

エネルゴンを気にしているスタースクリームの首筋にマスクをどけると現れる口で舐めた。

「ひっ、なになに!どうした!?」

普段は急にこんなことしないサウンドウェーブにスタースクリームが驚きの声を上げる。
いつもなら一言「触れて良いか」と訪ねるのだ。急に触れることはない。

びくっと震えたスタースクリームを見ると微かに赤くなっていた。
あぁ、忘れていた。自分らしくもない。

「触れて良いか」
「…場所による」

言い直すとスタースクリームは俯きながら言った。
更に引き寄せてその唇を歯で噛んだ。
スタースクリームが硬直して唇をぎゅっと閉じたがそれを舌で撫でると
微かにそこは開いた。

「あっ」
「…」
「っん…」

エネルゴンの味がする舌を絡めてスタースクリームの顔を覗き込むと
うっとりとした表情を向けられて満足する。
自分がスタースクリームの舌を撫でるとスタースクリームは少しだけ舐め返してくる。
それだけで満足だ。

(ごめんなぁ…!)

サンダークラッカー。
お前は似てる。

「…サウンドウェーブ…?」
「…」

舌の動きが止まったサウンドウェーブを首を傾げて見つめ返すスタースクリーム。
その表情を見て安堵する。

サンダークラッカー。
お前は俺に似てる。

「スタースクリーム。好きだ」
「っ……」

スタースクリームは返事を返さない。顔を赤くして視線を泳がすだけだ。
しかし抵抗しない。嫌がらない。呼ばなくても部屋にやってくる。
それが答えだと、自分は勝手に思ってる。

サンダークラッカー。お前は似てる。
唇に触れるだけなら許されると思ったのか。

スタースクリームに思いを告げた日。返事は返ってこなかった。
自分も返事はいらないと言った。ただ、唇に触れるくらい構わない事だと思った。


「好きだ」
「……」


スタースクリームは視線を交わしてきた。
冷却液が滲んできてるのかアイセンサーは少し潤んでいた。
零れてしまうのではと思うほどアイセンサーが水っぽさを帯びていた。
ちらりと、外見だけがそっくりの青い機体を思い出す。あれは、泣いていた。
押し倒されて触れられそうになった。それでも自分はあいつを憎むことはない。
あいつの感情はわかる。スキャンしなくても、あいつは俺に似ているから。


「…」


スタースクリームは結局、返事を返さない。。
ただ、スタースクリームからのキスは初めてだった。






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サンクラ→音波スタはこれで本当に終了。
( ゚∀゚)o彡゜サンクラタソは音波さんのもの!ってコメ大量に貰ったので
わ、わざと音波スタを強調してみtあっ殴らないで!すいませんすいません!

この後スタスク裏切ってサンクラのとこいくのか
サンクラのことは放置になるのかは妄想タイムでよろしく…


コメで綺麗に音波スタ派と音波サンクラ派でわかれたのに笑った。
きのこの山とたけのこの里戦争の始まりか…(??)