スタビリティー スタースクリームが自分の怪我を庇いながらネメシスに着陸すると 僅かな時間もおかずその上にメガトロンが降り立った。 降り立ったというには語弊が生まれる。ぐしゃりと鉄同士がぶつかり互いに傷つき重なり合った。 「ぐあっ…!」 「つ…ぅ…スター、スクリーム」 「は、はい」 メガトロンは口と欠けた頭を手で押さえるとスタースクリームに自分のオイルを垂らしながら名を呼んだ。 まともに飛ぶ事もままならず、着陸する場所を大幅にずらしてスタースクリームに爪を立ててぶつかり ネメシス内に向けた視界が霞み、むせ返ると口よりオイルが零れた。 スタースクリームは浅かった怪我をメガトロンによって悪化させられ微かに呻くと 怯えながらメガトロンを見上げ、返事を返す。 「リペアしろ…早くだ」 「は、はい。すぐに…」 怪我をしていてもメガトロンに逆らうことはできない。 それが致命傷であっても。 スタースクリームは起き上がるとよろめき歩くメガトロンの周りをうろうろと歩き回った。 その姿は怪我をした主人を心配する犬のようだったがメガトロンはそれを鬱陶しがった。 「肩を貸せ」 「はい」 身を寄せてメガトロンの傍に立つと動かない足の変わりにスタースクリームは足幅と歩く速度を あわせてメガトロンの体重を肩代わりした。 歩きながらメガトロンの顔を数度覗き込み、弱る主人に何を思うのかその度に顔をそらしては 微かに口を開き何か進言しようとする。それも鬱陶しいとメガトロンは内心舌打ちをした。 「何か、言いたいのなら言えば良い」 「そんな」 「裏切るか。スタースクリーム。このメガトロンを」 「……私は貴方様の忠実な部下にございます。メガトロン様」 スタースクリームが弱弱しく呟く。 それは自分に言い聞かすような声色でもあり、メガトロンはスタースクリームの心の奥底には 自分に歯向かい、ディセプティコンの全権を手中に収めてしまいたい気持ちがあるのを知っている。 オプティマスの手によってフォールンは死んだ。自分よりも上の立場はもう目前にいる 弱り果てた破壊大帝のみなのだ。なんと言うチャンスだろうか。 「…早く、リペアしろ」 「もちろんです。…閣下」 もう一度自分に言い聞かすように「閣下」と呼び、スタースクリームはメガトロンを見つめた。 リペア機具やパーツが揃う一室につくとメガトロンをゆっくりと降ろし、スタースクリームは 自身も怪我する足を引き摺ってエネルゴンと機具を取りに歩き 一式全て持ってくるとメガトロンの正面にしゃがみ込みその顔を覗き込んだ。 「…見せてください」 「…」 押さえていた手を下ろすとそこには何もなかった。 破損し、こげた鉄屑だけが無残に残るそこをスタースクリームは見ると顔をしかめて エネルゴンをそこに塗り込み始めた。 「がっ、ああ…!」 「っうああ!」 ブレインサーキットに近い顔は微かな痛みも機敏に察知する。 メガトロンは敵のいない、味方すら目の前にいるスタースクリームだけのその場で 取り繕うことなく悲鳴を上げた。 手をスタースクリームの脚に伸ばしてそこを激しく掴んだ。 スタースクリームは純粋にその痛みに悲鳴を上げるとメガトロンの顔に触れさせていた手を びくりと硬直させてメガトロンの顔をもう一度見た。 「メ、ガトロンさま」 「続けろ…」 「…」 配線の治療をする前にエネルゴンを与えて少しでも自己修復してもらわないと ドクターではないスタースクリームには高度すぎる治療になる。 もう一度エネルゴンを傷口にあてるとメガトロンは悲鳴は抑えたものの スタースクリームの脚を先ほどよりも強く掴みへこませた。 「…っ…ど、どうかおやめください」 「何をだ…」 「脚を、脚を…」 「続けろ」 もう一度同じ命令を下すとスタースクリームは痛みに耐えて治療を続けた。 エネルゴンを吸収した傷が熱で溶けた部分を自己修復するとまだスタースクリームの見知る配線たちに姿を変えた。 スタースクリームはリペア機具に手を伸ばしてその配線たちを繋げ、ネメシス内に残っていた パーツをメガトロンの顔に合わせてカットするとその怪我を塞いだ。 決してそれは丁寧な仕事ではなかったが傷を塞ぐには十分なもので、これ以上悪化することはなくなった 傷口をメガトロンは手で一度触れさせるとそこを撫で擦った。 「エネルゴンがあればそのパーツは馴染み、メガトロン様の身体の一部となりましょう」 「今はこれが限度か」 「忌々しいオートボットと人間どもに、またしても」 「言うな」 スタースクリームの顔を掴みその場に押し倒す。 スタースクリームは驚き悲鳴を上げた。聞きなれたそれをメガトロンは目を細めて受け入れると その顔を握りつぶさん勢いで力を込め爪を立てた。 「っああ!」 「愚か者め…お前は何をしていた」 「他の…他のオートボットたちを牽制し…閣下が戦いやすいよう」 「誰の命だ」 「フォ、フォールン様に」 「お前は誰の部下だ。スタースクリーム。たった数年でそれすら忘れてしまったか」 「そんな…!私は、私は貴方様の、閣下のもので、ぐあっ!」 「そうだな。スタースクリームよ。…このタトゥーは誰に、誰の命でいれた?」 「…それは」 言いよどむスタースクリームを見てメガトロンは歯をむき出した。 フォールンか。海の奥深くで眠りについていた、たった2年の間でお前は我が師に 全てをささげたのかスタースクリームよ。このタトゥーは文字だ。オールスパークや 古代のトランスフォーマーたちが使うその模様を何故お前が身体に入れている。 「スタースクリーム」 低い声で囁くとスタースクリームは目でわかるほど震えて怯えた。 「あぁ、閣下。どうかどうか、おやめくださっ…私も怪我をして」 「わかっているわ。しかし、修理は後だ」 エイリアンタトゥーを鋭い爪で撫ぜる。 スタースクリームのオートボットより食らった怪我は自己修復機能が働いて オイル漏れしない程度にはふさがれていた。流石自己修復においては右に出るものがいないスタースクリームだ。 そこをえぐり、一枚剥ぐとスタースクリームが泣き声にも似た悲鳴を漏らした。 愚かな愚かなスタースクリーム。お前は忘れてしまったようだ。 「この身体は誰のもだ。スタースクリーム」 「あ、貴方様のものです…!メガトロン様…!」 オートボットとあの少年には復讐する。必ず。 まずは力を溜め込むのだ。エネルゴンを溜め、そして卵を孵化させて軍隊をつくる。 この屈辱は忘れないぞオプティマス。必ずや雪辱を果たして見せよう。 自分の手の中で悲鳴をあげるスタースクリームを見てメガトロンは息を吐いた。 こいつは自分のものだ。こうしていると安心する。 思い出せば怒り狂いそうな記憶をスタースクリームにぶつけることによってメガトロンは安堵した。 --------------------------------------------------------------------------- 一応メガスタっぽいだけでメガ+スタでも可能な感じにした。 この後のむふふな関係は脳内で^^ 実写スタは初代スタとサイクロナスを足して割った感じ。 メガ様いない(見てない)ところでは初代スタ。メガ様が近くに居ればいるほどサイクロナス。 一応礼儀正しくしてたら良いよ!やべぇって思ってる最中は「閣下」呼びとか。萌だな…(!?) スタの身体の模様は伝説のディセプにあやかっていれたオールスパークにも書かれている刺青らしいですが ちらりと字だとか何とか聞いたようなないような(!?)オールスパークの模様って知識なんじゃないのかわからん。 どちらにせよ伝説のディセプ知ってるってことはフォールンが書いたのかな…