「スタースクリーム」


声をかけられた。




MEGATRON






「…メガトロン様」
「良いか?」
「…」



自室の小さいながらリペア台の上にナルビームを取り外して置いている最中だった。
自室のリペア台は簡易的なもので大掛かりな処置は出来ないような小さい台で
それでも自分のナルビームの清掃やらちょっとした調整なんかには丁度良いサイズのものだ。
このサイズのリペア台が欲しいといったのは自分で、それを取り寄せてくれたのはメガトロンだった。

「…どうぞ」
「…」

口元に笑みを作っている破壊大帝が入室許可を得て入ってきた。
自分が今日そこまで機嫌が悪くないのを知って来たのだろう。
ナルビームの出力を変えようとしていたので手に持っていたナルビームを台に置くとメガトロンのほうを振り向いた

振り返るとすぐ近くにメガトロンが居て驚いたがメガトロンが自室へ来た理由なんて知ってる。
何も持たない両手のひらを差し出した。

「…今日はどうするんです?」
「少しシリンダーとバレルの調子が悪いのでな。それとマズルの汚れをとってくれんか?」
「わかりましたよ。どうぞ」

両手のひらにメガトロンが手を置いた。そのままトランスフォームすると
自分の主はワルサーのまま手のひらに納まった。


「…じゃ、やりますよ」


*



「シリンダーとバレルの隙間を狭くしすぎですよ」
「破壊力向上の為だ」
「もう少しだけ広げますよ。そうしないといくらエネルギー弾でも詰まってジャム起こします」
「……」
「…あとマズルが焦げてます」
「………」

メガトロンを膝の上に乗せて椅子に座る。
膝の上でばつが悪そうに静かになった上司に小さいため息を聞かせてリペア台に手を伸ばした。

「焦げは軽いもんですから、ちょっと削って磨いておきますよ」
「あぁ」

慣れた手つきでメガトロンの調整、清掃をする。
自分が機嫌悪い時はわざと出力低下させたり傷つけたりするのを知っているメガトロンは
機嫌の悪い日は決して自分の部屋へはやってこない。
しかし機嫌が良い事を知っていると訪れる。

「…」
「…痛くないですか?」
「…あぁ」

リペア台に常備している使い捨ての綿棒を一本取った。
セイバートロン星のもので地球人が使ってる綿棒とはまた違うのだが容姿は大分似てる。
何だかんだで使い勝手良いんだよなこれ。そろそろ補充しとかねぇと。
って言っても自分よりもメガトロンに使う本数のが圧倒的に多いけどな。

ワルサーを構えて隙間に洗浄用の液体をつけたスティックを差し込んで擦った。
グリップも薄汚れているので綺麗に拭い、装甲が削れている場合は
自室に常備しているメガトロンの白銀色の液体を引き寄せて、むらが出来ないように塗りなおした。

「…まぁ、こんなもんですかね…マズルは新品同様ですぜ。あんまり酷くなったら交換しねぇと」
「……そうか」
「…どうしました?」
「…少し眠いわ」
「…まだ着色乾いてませんから、まぁ寝てても良いですぜ」
「……」

ワルサーが喋らなくなり、トランスフォーマーではなくただの銃のようになってしまった。
膝の上で眠りにつこうとする主をスタースクリームは暫く眺めた。本当に寝てしまったようだ。
掃除、整備中のメガトロンはよく眠る。ある日何故か聞いてみた。
『そうだな…地球的に言うなら耳掃除をしてもらった気分だわい』
全然わからん。とジェットロンである自分はため息を吐いたのを覚えてる。


「…」


眠っている主を撫でた。
塗装が乾いていない部分は触らず、指先だけで大事なものを撫でるようにそっとそっと撫でた。


「…俺様の主が不恰好じゃ俺様まで格好つきませんからね」


だから、ご自愛してくださいよ。
スタースクリームはメガトロンを眺めたまま微かにアイセンサーを細め笑った。



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銃の整備ってやってもらったらメガ様的には気持ち良さそうだなぁって。
メガ様って軍団が一番大事で自分は2の次っぽい。
ちょっとの汚れや怪我にエネルギーを無駄に使うな!って感じ。
でもスタスクは自分の主が小汚いのだけは許せん。