「ナイトスクリーム」 「はっ…」 ガルバトロンの背を守るようについてまわっていたナイトスクリームは ふと名を呼ばれた。 足を止め、振り返ったガルバトロンの顔をみてナイトスクリームは 「ご命令ですか」と声をかけた。 黙って見下ろしてくる主の顔は不愉快だと言わんばかりの表情だった。 「何故」 「…?」 「何故あんなことをした」 「…あんな…こと?」 「弟なんかにあんなことをする必要はなかったぞ」 「…申し訳御座いません…」 弟という単語を聞いて思い出す。 先日レーザーウェーブの兄弟であるシックスショットが反乱というには 温いがガルバトロン様に「謝罪」をしろと促した。 今すぐサイバトロンを撃退しなくてはいけない状況下。 内部でもめている暇なんてなかった。 それでもガルバトロン様は謝罪をしない。してはいけない。 ナイトスクリームはそこまで考えて足を前に進めた。 『よせ、やめろ!』 肩膝を床につけて身体を床に降ろしていくとガルバトロン様が制止の声をだした。 次に両手を床につけ頭部をうなだれさせた。 そのご命令は聞けません。ガルバトロン様。 シックスショットは自分の土下座を見て重い腰を上げ ようやくサイバトロン撃退のため動いた。 「ナイトスクリーム」 「私は、ガルバトロン様の為なら…なんでもします」 「…」 ますますその言葉に顔を歪める主をみてナイトスクリームは悲しくなった。 命令に反したことを罰するなら罰して欲しい。そんな顔をさせるのが 自分なのなら自分を殴り、罵ってほしいくらいだ。 シックスショットは撃退するためのエネルゴングリッドを扱えなかった。 その失敗を「邪魔だ」と罵り、殴り、傷つけたように自分も同じ目に あわせてくれればいい。 『儂の忠実な部下ナイトスクリームに謝れ!』 そう言って下さっただけで、私は幸せだ。 「ナイトスクリーム」 「はっ…ガルバトロン様…」 「…土下座をしろ」 返事を返す暇もなく身体を床に沈めた。 ここは互いの寝室でも玉座でもなく、ただの基地内の回廊。 シックスショットにした時同様に頭を下げるとガルバトロンも片膝をついた。 「が、ガルバトロン様…!?」 「…顔だけあげろ」 「…」 片膝を折ったままのガルバトロンが顔に触れてくる。 中指でその反った首をゆっくりと撫で回されてぞくぞくと何かが走った。 「口を開け」 「…はっ…」 微かに口を開くと今まで触れていた中指が唇をなぞった。 その間もずっと見下ろしてくるガルバトロンを見つめ続けた。 これがガルバトロン様流の罰だというのなら甘んじて受けよう。 しかし触れてくる指に怒りが込められている様子はなく どちらかといえば愛でる様な動きにナイトスクリームは微かな喘ぎを漏らした。 「ガル、バトロン様…申し訳御座いません…」 「何故謝る」 「命令に背きました」 「…もう少し口を開け」 「はっ」 口を大きめに開くと顎を掴まれてそのままガルバトロンが近づいてきた。 目を見開いたままそれを受ける。 滅多に感じないぬるりとした物が口内に侵入した。 「…っ…ん」 「…絡めろ」 「は、い…」 この行為が何を意味するか知っていた。 いくら記憶のない自分でも。戦闘以外に無知で、感情が欠け落ちている自分でも。 ガルバトロンの両手が肩を掴み、ぎゅっと握られた。 微かな痛みに身体を震わせつつも舌を互いに絡めて幸いにも 誰もいない回廊に水音を発生させた。 互いを貪っている間に床に縫い止めていた両手が宙に浮き、ガルバトロンの 片膝に触れた。 暫くそうしているとガルバトロンの舌の動きが緩慢な動作に変わり 少しだけ絡めていた舌を放した。 ナイトスクリームも相手の意図を読み取り舌の動きをのろくすると ゆっくりと身体を引き離された。 「…ガルバトロン様…」 「…」 戦闘後でもないのに微かに上下する両肩に乗せられたガルバトロンの 手が力を失いやんわりと肩を撫でた。 主の名を呼んでも返事は返ってこなかったがガルバトロンは そのままナイトスクリームを見つめ続けてから顔をそらした。 「…悪かった」 「いえ」 「…」 強く掴みすぎて軋んだ音を立てた肩を撫でながらガルバトロンは 視線をナイトスクリームへ戻した。 ナイトスクリームはガルバトロンにいつも通りの表情を返し、それから少しだけ 口角をあげた。 微かだが笑みと呼べる表情に変わったナイトスクリームの唇に 指を這わせてガルバトロンは目を細めた。 「…もう、するな」 「?」 「土下座などもうする必要はない」 「は、い」 「…」 触れていた唇から指を下にさげて顎を掴むと上を向かせた。 良く見える喉にガルバトロンは歯を立てず噛み付き、ナイトスクリームの 小さな悲鳴を聞いてから立ち上がった。 「…儂は玉座へ行く」 「はっ…お供いたします…!」 「いや、お前は…少し休め」 「…ガルバトロン様…?」 未だ立ち上がらない部下の頭に手を置いて撫でてからガルバトロンは笑った。 「儂の忠実な部下に自ら怪我をさせるところだった」 少し痛む肩を一瞬見てガルバトロンにナイトスクリームが視線を返すと ガルバトロンは背中を向けて歩き始めた。 「リペア液を塗っておけ。戦闘で痛んだら笑い事ではすまされんぞ」 「…は…了解…しました…」 そのまま上機嫌で歩みを進めるガルバトロンをナイトスクリームは 見えなくなるまで見送ってから立ち上がり今まで触れられていた肩を 自分で撫でた。 もう片方の腕を自分の顔前まで持ち上げて細い指で唇を押す。 今の行為は決して主と部下の間で行われるようなものではないだろう。 なのに互いに当然のように触れて貪った。 触れている間は何も考えられないのに身体が自然とガルバトロンを欲した。 「…何故」 あのような真似をなさるのですか? うっとりとした声でそれだけ呟くとナイトスクリームはリペア室まで歩き始めた。 ------------------------------------------------- まだくっつく前のガルナイ。 ガルナイには告白だとか片思いだとか言う時期がなさそうだよね。 互いに当然だと思ってるけど時々どうしてだろうと悩む情緒不安定な 2体がおいしいです^^