「大丈夫ですか…?ガルバトロン様…」 「う、む…少し飲み過ぎたようだ…」 ガルバトロンのすぐ傍でナイトスクリームは気遣うように立っていた。 アイアントレッドとスノーストームが見つけたとエネルゴン酒を持ってきたのだ。 確かに高濃度でガルバトロンの口に合うものだったのだが、悪酔いしやすいもの だったようでガルバトロンは珍しく額に手を当てて俯いている。 アナフィラキシー 「少し、横になる」 「お傍でお守りします」 「好きにしろ…」 ナイトスクリームは寝室まで付き従うとガルバトロンが寝台に横になるのを見守った。 ガルバトロン気だるげな声を聞いてナイトスクリームは心配そうに顔をゆがめ すぐに眠りに落ちたガルバトロンの額に手を置き、少し熱をもったそこを撫でる。 唸っていた声が少しでも楽になればと冷たい手をそのまま乗せ続けると ガルバトロンが少しだけ身じろぎ、ナイトスクリームは少しだけ慌てた。 「…リーム」 「はっ…起こしてしまいまし」 「スタ、スクリーム」 「……」 乗せていた手が強張ってしまった。 自分だと思っていたが呼びかけは自分にではなかった。 微かに手を下げるとガルバトロン様の腕がすいっと腰にまわってきた。 「ガ、ガルバ…ト」 「こい」 起きているのかと顔を見れば相変わらず顔はぼんやりとしていた。 多分意識はそこまでしっかりしていないだろう。 虚ろ気な表情のまま引き寄せられて自分は動いた。 両腕を掴まれて寝台の上へ導かれ、そのまま腰の上に跨るように座らされる。 決して体重をかけずナイトスクリームは不安げにガルバトロンを見つめた。 「…どうかなさいましたか?」 「…スター、スクリーム」 「…」 「近くに寄れ」 頬を撫でられて普段とは違う手つきに息を呑んだ。 スタースクリームのことは少しだけ知っている。 ガルバトロン様がメガトロン様だった時の右腕的存在。自分の前の姿。 口調も、少しだけ知っている。スノーストームが情報源なので嘘かもしれないが。 「…メガトロン、様」 ガルバトロン様が一瞬強張った。その後すぐに触れてくる。 大切に大切に触れるその挙動を静かに見守った、首に指が回ってきてぞくぞくする。 普段のように触れてくれれば、何も感じないだろうに。 「……れ」 「…どうしました。メガトロン様」 「もっと…よれ」 自分なら「どうなさいましたか」だ。 『馬鹿真面目だったから敬語だったけどお前ほど丁寧じゃねぇ』が スノーストームからの情報。この程度だろうか。 もう少し丁寧に言った方が良いかもしれない。 この方が望むなら私はスタースクリームになる。 情報さえ与えてくれるのならばもっと上手くスタースクリームになることも出来る。 なのに、この方は一切の情報を与えようとはしてこない。 「メガトロン様…」 「…スタースクリーム…」 酔いつぶれた時にガルバトロン様は時々、こうやって触れてくる。 その時だけは自分を「スタースクリーム」の名前で呼ぶ。それは構わなかった。 息を吐くとその息は酒の匂いに満ちていた、完璧に酔っている。そしてこういう時は 次の日までガルバトロン様はこの記憶を持ち続けない。忘れてしまうのだ。 「…メ、ガ」 「…」 上半身を寝台より起こしたガルバトロンがナイトスクリームの身体を強く抱きしめた。 壊れるほど、ではなかったがいつもよりも強く。 むしろ今まではずっと触れてくるだけで抱きしめたりだとか、そういう行動には でなかった。 「あ、あの」 「…」 首筋を一度舐められて一気に身体が硬直した。 ひっと息が口から漏れそうになったのを懸命に堪えた。 「ど、どうなさ、どうしました…?」 「…じっとしていろ…」 「あ、」 首から顎を舐められて身体が震えた。 正直、こうやって触られるのは初めてで、どうしたらいいのかわからない。 スタースクリームはどうした?こんな時にどうガルバトロン様に触れた? 「あの」 「…こちらを向け」 目が合った。それでもガルバトロン様は自分を見ていなかった。 両頬を掴まれてゆっくりガルバトロン様が近づいてくる。 唇を噛まれ、軽くあわせるとガルバトロン様は片方の手で頭を撫で擦ってきた。 「…あ」 「…」 「っ…」 「…スタースクリーム…もう」 「……?」 「離れるな」 「……はい。もちろんです。メガトロン様…」 そう言うとガルバトロンは満足そうに笑って口内に舌を入れ始めた。 ナイトスクリームはそれを無表情に受けて軽くガルバトロンの背中に手を回した。 初めて受けた行為にナイトスクリームはスタースクリームとガルバトロンの 関係に少しだけ気付いた。 もしかしたら一方的かもしれない。それでもガルバトロン、改めメガトロンは スタースクリームに好意を持っていたのだろう。 それは好意ではなく少し境界を越えた主と部下の関係だったのかもしれない。 しかし今現在、ガルバトロンはスタースクリームを求めている。 自分ではなく、スタースクリームを。 それでも、ナイトスクリームのガルバトロンに対する気持ちは変わらなかった。 ナイトスクリームは再度眠りに落ちたガルバトロンの腕から抜け出すと 再度額に手を置いてメガトロンではなく、ガルバトロンが目を覚ますのを ただ待つのだった。 ---------------------------------------------------------------------- スタスクのことをナイスクはどう思ってるんだろうか… ナイスクはガルバトロンの「過去はいらん」を受けて過去話なんかしなさそうだよね。