仲直り










スタースクリームに何があったか知らないが。
怒り狂った同機に羽をもがれたのは久しぶりだった。
サンダークラッカーは誰も居ない床に這い蹲っていた。



「いって…」

目の前がくらくらする。
ナルビームを打たれて、翼をもがれた。
背中が軽い。翼…俺の翼…どこだ?
身体動かない。腕。動かない。
周りを見渡すと右後方に左翼は見える。
俺の右の翼どこだよ

いてぇ。なきたい。くるしい。


腕の通信機が生きているのに気付いたのはそれから1時間後だった。
指先を辛うじて動かしてカチカチと通信機を動かすと聞こえたのは見慣れた声だった。



『サンダークラッカー?』
「…スカイワー…プ」
『サンダークラッカー?どうしたよ?』
「……今どこ?」
『部屋。お前は?』
「……同じ基地内のラボ6」
『なんで?』
「………」


俺達の自室とラボ6は結構な距離がある。
ラボ6はスタースクリームが中心としてるデストロン兵器製作所
スタースクリームにここに呼び出されるときは大抵鬱憤晴らし。
スタースクリームは本当に浮き沈みが激しくて。落ちてる時は手加減を知らない。
前回は腕もがれたし。その前は足だし。エネルギー抜いて縛られて放置されたこともあるし…

でも俺の右翼は返してほしいもんだなぁ…


「スカイ…ワー」
『サンダークラッカー?どうした?サンダークラッカー』
「…もし、今すぐ…逢いたいって言ったら…」
『……』


ブツっと音がして通信が切れた。
じわっと涙が出る。
切られた。通信。切られた。

ポタポタと冷却液が目から零れ落ちる。
頬を濡らして床に水溜りを作る。

イヤだよなぁ。
あいつ、呼び出されるのあんまり好きじゃないし。
俺なんか。ここで停止しちゃえばいいってか?
馬鹿やろう。スカワープのあほやろう。
床をオイルと冷却水まみれにしてぐすっと鼻を鳴らした。

「何してんだよ…ばか…」
「……スカ…?」
「スタースクリーム見付けるの時間かかった。わりーな」
「スカイワー」
「スタースクリーム見つけるために4回ワープ。右翼返してもらってここくるのに今ワープしたから計5回だな。
許可なしでワープ使っちまった。5回分のエネルギー消費はキツイぜー」
「……ど、どして」
「今すぐ来いっていったろ」


両翼リペアしような。と
肩に手を回して引きずってくれる。


「サンダークラッカー」
「うん」
「つめてぇ」
「うん。わりぃ」
「つめてぇよ」
「ごめん」

スカイワープがきてくれた。
目からこんなにも冷却液が零れるのは初めてかも。
スカイワープの肩や胸元に冷却材が零れたらしく、文句を言われた。


「ありがと。スカイワープ」
「馬鹿やろー。お礼はしてもらうからな」
「あぁ。わかってるよ」
「エネルゴンクッキーな」
「うん」
「エネルゴンココアな」
「うん」
「スタースクリームには言っといたから」
「…うん」


暫く黙った後、スカイワープは小さく冷てぇってと呟いた
スカイワープには悪いけど、これはまだ暫くは止まりそうもない




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スカワ+サンクラ
不憫サンクラの不憫な一日。



オマケ↓
ちょっと幸せなサンクラと2羽





「…サンダークラッカー」
「ス、スタースクリーム…」
「……」


スタースクリームが寝室にやってきて自分の声が裏返るのが分かった。
背中で治療中のスカイワープは一度手を止めたが再度その手を動かし始めた。


「……」
「…どうした?スタースクリーム…」
「……」

寝台に座る自分の目の前まで歩いてきたスタースクリームの顔は沈んでいた。
今にも泣くんじゃないかと言うほど目元を緩ませている。むしろ目の下が赤い。
冷却水を零しすぎると異常発生を知らせるために目の周りが赤くなったりするのだが


「…泣いてたのか?スタースクリーム」
「……」

ほら。と手を伸ばすとスタースクリームが控えめに手を預けてきた。
お互いに握りこむとスタースクリームはかがんでサンダークラッカーの額と自分の額を擦りつけた。


「……サンダークラッカー…目元赤いぞ」
「お前もだろ?」
「ん…」
「……大丈夫か?スタースクリーム」
「…ん」

額通しをすりすりこすり付けて互いを慰めるような動作をする。
スカイワープがふっと鼻で笑ったのがわかった。


「おいおい。あんま動くなってんでい。リペアしにくい」
「わりぃ」
「ごめん」
「まぁ、可愛いもんみれたからいいけどよ」



スカイワープがにかっと笑うのをみてサンダークラッカーとスタースクリームは「お前の方が可愛いだろ…」と思った。