「…あっ」

飛び起きるとすでに朝だった。
最終日でもやっぱりサウンドウェーブはいないのだ。




7日目






ぶわっと昨日の記憶が鮮明に思い出されて頭がかっとなる。
下半身を見てもそんな痕跡はひとつもなかった。
が、自分は完全に感じていた。イッた。

サウンドウェーブの治療目的なのに、自分までイッた。
恥ずかしさで死にたくなる。
でも腕を首に回しても拒否されなかったことだけが嬉しい。

もうここまできたら本気で俺あいつが好きなんだって事に気付く。
最初は憧れだったのに。
最初はただの願望だったのに。
触れてたら十分だったのに。

「…俺を好きになってくれるはずねぇよなぁ…」
「誰がだ」
「…またスタースクリームとスカイワ…プ…」
「…今日は休みだ」

サウンドウェーブが戻ってきた。
寝室の扉を開けた状態で、両手にはエネルゴン。

「起きたのか」
「あっあぁ…その、うんまぁ…」
「飲め」
「あっ、いつもありがとよ…」
「…」


サウンドウェーブは自分のデスクに座るとエネルゴンを飲んだ。
やっぱ格好良いんだよなぁと目を細めて見つめ続けると
サウンドウェーブがこちらを見ながら言葉を放った。

「何故謝っていた」
「え?」
「昨日の行為中、お前はずっと」
「あっ、なんとなくだぜ…!なんでもねぇんだ」
「…」
「…何故謝ったか聞こう」
「…あー…迷惑だよなぁって」
「…?」
「首に腕なんか回してよ…」
「構わない」


サウンドウェーブが即答してくれた。
嬉しくて俯きながらエネルゴンを一口含んだ。
飲み込んでから一言低い声で囁くように「ありがとう」と言うと
サウンドウェーブは聞き取れたらしく「あぁ」と呟いた。


「…まだ起きたばかりか」
「あぁ、さっき目ぇ覚めたんだ」
「…今日で最後だ」
「ん…そだな…」
「…」
「お、おつかれ」


サウンドウェーブがエネルゴンを置くと歩み寄ってきた。
両肩に触れて寝台に再び押し倒される。
柄にもなくスパークがばくばくいった。

「あ?あっ?…あのなに、なに?」
「…」
「も、もう?」
「やるぞ」
「だって、まだ昼…」

身体を弄られ始める。
いつもより積極的に触れてくるサウンドウェーブが珍しく恥ずかしかった。

「さう、んど…!」
「抱くぞ」
「も、もういれんの?」
「違う。抱くぞ」
「…なに?なにが…」

サウンドウェーブが中に押し込んでくる。
後片付けはされていたがこんな時間をおかず再度いれられるのは初めてだ。
「待って…!」と一言告げ押し返してもその手をぎゅっと握りこまれた。

「な、なんで、サウンドウェーブ」
「…」
「あ…?」

両手首を掴まれて首の後ろに運ばれる。
両手がサウンドウェーブの首の後ろに回りこむと手首は開放された。

「あ…良いの…?」
「なにがだ」
「首の後ろ…」
「回していろ」
「…」

い、いいんだ。と嬉しくなってしがみ付く。
もはやしがみ付くより縋りつく、いや抱きしめるに近くなったが
サウンドウェーブは引き剥がそうとしなかった。

「…あ、さう…」
「流す」
「なが…す?…ぅああ!」

パルスが流されると身体が跳ねた。
サウンドウェーブから送られてくる初めての快感を含むパルスに困惑する。

「なっ…なんで…?」
「…」
「や、やめ…ああっ…」
「…サンダークラッカー」
「やだ…!やめ、やっ…」
「サンダークラッカー」

名前を呼ばれる。何度も何度も呼ばれたが何か用があるわけではないようだった。
今回の抱き方は異常だ。いや、この一週間で言えば異常である。
サウンドウェーブが自分本位ではなく、サンダークラッカーに優先して快感を
送り込んでくる。

「やめっ、い、いっあ…」
「…もうでるか?」
「で、でる…っ…ぅああ!」

サウンドウェーブと自分の腹にオイルが滴った。
サウンドウェーブのものではない。自分のものだ。
昨日と同じでずるずると身体が寝台に倒れていくと何度も息を吸って吐いてを
繰り返して呼吸を整えようとした。

「…」
「…サウンド、ウェーブ」
「気持ちよかったか」
「…ん…」

頷くと目を細めて意識が飛びそうになるブレインサーキットに落ち着けと命令を送る。
こんなサウンドウェーブが優しくしてくれてるのに意識を飛ばすのなんて勿体無い。
寝るな、起きるんだ自分。

ぼんやりしているとサウンドウェーブの顔が近くにあるのに気付いた。
マスクがない。口が見えてるのが珍しくてほうっと息を吐いた。

「…さう」
「…」

頬を撫でられて嬉しくなる。
サウンドウェーブが優しい。1日目や2日目なんて酷かったのに。
格好良いな、おい。マスクとっても格好良い。
それで仕事が出来る参謀だ。モテんだろうなぁ。

ちゅっと口に何かが当たった。
ぼんやりと受け入れているとそれはゆっくりと侵食するように
口内に入り込んできて舌を犯してくる。

「…ん?」
「…」
「…んん!?さっ…ん!」

サウンドウェーブの舌だと気付いてスパークが飛び跳ねた。
手のひらと手のひらを合わせて指と指の間に指を絡め、決して離れないように
恋人つなぎをされる。
ちゅっと音を立てて吸って、舌でかき混ぜて翻弄された。

「ままま、まって!!」
「…」
「な、なに?なんで?」
「『…俺を好きになってくれるはずねぇよなぁ…』」
「!」

自分の声がサウンドウェーブの胸部より聞こえた。
ばくばく跳ねるスパークの脈動が先ほどとは違う意味で跳ねる。

「どういう意味だ」
「…それは」
「…」
「…ほ、放っておいてくれ」
「駄目だ」
「なんで…!」
「…理由を聞こう」
「…」
「誰の話だ」

ばちっとパルスが送られてきた。
ひっと声をあげるとサウンドウェーブがもう一度顔を限界まで近づけて囁いた。

「誰の、話だ?」
「…さっ、さう…」

パルスが送られてきて喋れないと知るとサウンドウェーブは一旦パルスを止めた。
もう一度低い声で囁かれてそれが脅迫だと知る。
何も言わなければもう一度パルスを流されるのだろう。

「誰の話をしていた。答えろ」
「…うぇ…ぶです」
「聞こえない」
「サウンド、ウェーブ…の」
「…俺が好きか」
「っ…!!」

顔が真っ赤になる。
ばれた。ばれてしまった。
言わないつもりだったのに。

思わずアイセンサーが熱くなる。
零さなかったが冷却液が滲んできて潤んだ。

「何故泣く」
「泣いてな…っ」
「答えろ。好きか」
「っいや…だ」
「…上官に逆らうのか」
「…っひ、ひでぇよ…サウンドウェーブ!」
「答えろ」
「…っす、きです」
「…」
「好きです…ごめっん…ごめんなさ…」

サウンドウェーブが体内で動いた。
悲鳴があがるのを必死で堪え、耐えていた冷却液が落ちた。
パルスが再び再開されて身体が反った。

「…ごめっなさ…!やめ…!」
「気持ち良いか」
「あああ!サウ…ゆるして…」
「もっと喘げ」
「うぁっあ!いあ…いやだ…っ!」
「…」
「ふあああ!」


次こそ耐えられなかった。
自分が達するのとサウンドウェーブが達するのは同時で
自分だけ意識が混濁してそのまま昏倒した。




*





「…さうん、ど」
「起きたか」
「…おしまい…?」
「ああ」


体内時計を調べる前にサウンドウェーブが「夜だ」と教えてくれた。
夜、もうすぐ12時を過ぎるくらいと知る。


「…一週間終わるのな…」
「あぁ」
「…この生活も終わりか」
「…サンダークラッカー」
「…はい?」
「…今後こういう事が起こらないようにする必要がある」
「はぁ…?」

首を傾げるとサウンドウェーブは少し黙り込んだ。
何か言い辛いのだろうかと名を呼ぶとこちらを見て頬に手を伸ばしてきた。

「…な、なに?」
「…そのためには定期的にこういった行為をする必要がある」
「………?」
「協力しろ」
「…………!……!!」

口を阿呆のように開けてサウンドウェーブを凝視する。
つまりそういうことだ。

「あっ…あの…」
「……」
「えっと、その」
「構わないのか」
「あ、はい、や?はい…」
「いいのか、どうなんだ」
「だ、大丈夫、です」
「…サンダークラッカー」
「協力、する…」


サウンドウェーブが微かに笑った気がした。
顎を掴まれるとマスクがスライドする。
あっこれキスされんなぁーって思った。抵抗する暇は十分与えられていた。
それほどゆっくりと丁寧な動きだった。抵抗する理由なんてない。

「…」
「…んっ…」

目を細めて受け入れるとサウンドウェーブの腕が首に回ってきた。
あれ…俺告白したんだ、よな?なのに返事もらってないし
でも、これからも抱いてくれる。んだよな。それが返事…なのかな

サウンドウェーブの手が下腹部に触れた。
「あっ」とサウンドウェーブを押し返すようなそぶりを見せたが
サウンドウェーブは構わずそこを撫で擦った。

「あっ…」

もう12時過ぎていた。1週間すぎたのに触ってくれる。
小さく、「嬉しい」と本音が漏れるとサウンドウェーブが一度だけ硬直した。
顔を見つめ返し、更に小さい声で「俺もだ」と言ってくれた。





--------------------------------------

長い間拍手にいてもらった音波サンクラ