先日、スタースクリームをからかって遊んでいた。 いや、からかったつもりはまったくない。むしろ基地内を1体で うろうろするのを見てちょっと声をかけてっただけだった。なのに 「この変態が!放せ!」 確かに逃げようとしたスタースクリームの腕を掴んで引き寄せて近距離で どうして逃げるんだ?俺が嫌いか?とまで聞いてみたが 別に愛とかそういうこと語ってるんじゃなくて、仮にもサイバトロンに いるうちは自分はお前の上司で、同じ目標を目指している仲間だ。 1体でぷらぷら基地内を好き勝手歩かれても困るし 火星に一緒に行った仲として司令官に当面の面倒だって任されてる。 なのに変態?俺が? この真っ白で純白でいかしたジェットに向かって変態とはねぇよなぁ。 更に言うなら多分スタースクリームが顔真っ赤にして「触るな!」と 逃げようとばたばたしたのが自分のアイセンサーには結構可愛く映って しまったわけだ。 ショック その日の夜、俺は俺の上に跨るスタースクリームの夢を見た。 少し揺れ動かすだけでスタースクリームは媚声をあげる。 頬に手をやるだけで低い声で辛そうに喘ぎを殺す姿は絶景だった。 先に言うが俺は男に欲情する趣味はないし、こいつの事は火星での一件で 信頼してはいても抱きたいだなんて思わない。頼まれても無理だ。 しかし自分はどう言い訳してもあいつを抱く夢を見たわけで夢が願望だとか 言う話も聞いたが流石にそれはないと思いたい。 だから今日は、いや一週間ほどは会いたくなかった。 しかしそんな日に限ってよく会うもんだ。 「あー…スタースクリーム?」 「なんだ」 「…いやぁ、良い天気だなぁとか」 「は?」 「…わりぃ…今日ちょっと駄目だ」 外の空気を吸いたいし、ついでに見回りしようと外に出たら スタースクリームが外でウイングブレードを振り回してたってだけの話なのに やはりこういうときの罪悪感は耐え難いものがある。 近くにいるだけでむずむずする。 いっそ話してるうちに払拭できると思ったが顔を見たら鮮明に思い出されて逆に 駄目だった。 デストロンらしい顔つきがこちらをみると軽く首をかしげた。 数歩こちらに歩み寄ってきて腕を伸ばせば届く距離でスタースクリームは 「どうした」と声をかけてくる。 スタースクリームは火星から戻ってきて多少は表情がでるようになった。 むっすりとしていた常に無表情だった顔から微かに目を細めて心配そうに するのがわかる。 本当にちょっとした表情の変化過ぎて他の奴にはわからないかもしれない。 「何かあったのか」 「…まぁ、ちょっと」 「…?」 首を傾げてますます近寄ってくる。 あーあーと両手をスタースクリームの肩に当てて押し返すと スタースクリームは「触るな」とそれを払った。 お前から近寄ってきてそれはないだろう。 「なんだ?」 「自己嫌悪中」 「…じこ?」 「とにかく今日は、まぁ近寄るなって話だ」 スタースクリームが一瞬硬直したのに気付いた。 暫く黙った後に一歩二歩と下がり「そうか」と静かな声が返ってきた。 表情が急に冷めたものに変わってまたブレードを握りなおすと背中を向けて 素振りにはいった。 「ご、ごめんなぁ?」 「何故謝る。意味がわからない」 「だってお前今しょんぼりしなかったか?」 「…してない」 振り向いた顔はむすっとしていて怒っているのがわかる。 もう一度ごめんと謝っても「消えろ」と辛辣な言葉が返ってきた。 「その言い方はなくないか?」 「お前が消えろと言った」 「近寄るなって言ったんだよ。今日だけだって」 「同じことだ」 スタースクリームが空へ向けていた切っ先をこちらに勢い良く向けた。 ぶんっと風を切る音が聞こえて鼻先をかすめるようにブレードが動くと スタースクリームは鋭い視線を向けてきた。 「…悪かったよ。夢見悪くて…」 「…トランスフォーマーが夢とはな」 「まぁな。俺だって夢ぐらいみるぜ」 「…どんな夢だ?」 「…」 口を噤むとスタースクリームは暫く黙り促すように頷いた。 しかし言えるはずもない。お前を抱く夢だなんていったらどんな反応するか。 怒るですめば良いが下手したらそのまま切り殺されかねない。 「秘密かな」 「…」 「いかした男は秘密くらいあってもいいだろう?」 「イカレタ男に秘密はあるだろうな」 「…あー、その俺って変態かな…?」 「…は?」 「昨日お前言っただろ?変態!って」 「…言ったか?」 「言っただろ!」 忘れたなと首をかしげたスタースクリームにため息を吐くとむっとされた。 お前のせいであんな夢見たのにあんまりすぎる。 「夢見の悪い原因が変態と言われたからか?随分と心が狭いな」 「あーあー俺はナイーブなんだよ」 「変態といわれたからなんだ」 「傷付いたんだ」 スタースクリームがそうか、と呟いた後に手を下ろした。 やっと向いていたブレードが退くとスタースクリームはまた黙りこんで顔を そらした。その横顔を見ると小さく口を開いてぼそっと何かを呟いた。 「…った」 「は?」 「…る…かった」 「はぁ?」 「悪かったと言ってるんだ!」 「…謝るのか!?お前が!?」 「…きさま…」 また腕をあげようとするのを慌てて押さえると「触るな!」とまた言われる。 ブレードを向けられるのが嫌で押さえただけなのにどうして触るなとまで 言われるのか。 「その触るなってのもやめろよ!」 「お前が馴れ馴れしく触るからだ!」 「それ傷つくんだよ!」 「…っ…」 腕を掴んで引き寄せるとスタースクリームはまた「触るな」と言いかけてやめた。 口を開き閉じを繰り返し最後には歯軋りするように口を閉じると顔をゆっくりそらす。 どうやら多少なりに俺が傷つくって言うのは理解してくれたようだ。 「…スタースクリーム、俺も傷つくんだぜ」 「…わかった。わかったから」 「本当に?」 「あぁ」 ぺたりと首に手をやると身をすくませて酷く嫌がった。 しかし言葉にはしない。その態度だけで傷つくが反射で身を竦ませているのは 口でどう言っても対処しようがないだろうから指摘はしなかった。 「…さ、触りすぎだ」 「この程度スキンシップだろ?」 「…っ」 「…」 あっ、やべーなと思った。 拒否したいのを堪えながら慣れない他人との接触にびくつく姿は情事の姿に 似てると思う。腕から腰に手を回すとスタースクリームはそらしていた顔を 一瞬強張らせこちらを見た。 「な…!」 「普通普通」 「普通…?サイバトロンの普通がこれか!?」 「あぁ」 「うそを…つくな!」 「本当だぜ、ホットロッドや司令官にでも聞いてみれば良い」 「…っ」 からんっとスタースクリームの腕よりウイングブレードが落ちた。 その手が強く拳を作って肩に置かれる。 「…いいね…拒否しないってのが」 「傷つくだの…なんだの言ったのは貴様だ!」 「あぁ、だから今俺は癒されてるぜ?」 「…っ」 逃げようとした顔を掴んで至近距離まで顔を近づけた。 驚く顔にマスクを触れさせる。別に、キスとかじゃない。顔が近づいただけだ。 「やめ…っ!」 「最高に、くるな…お前」 「…!」 スタースクリームが再び手を握りなおすと頬を強く殴られた。 ウイングブレードでなくて良かったと喜ぶべきか。 しかしとてもじゃないが照れ隠しなんて言う威力ではなく前線で戦う兵士の 力だった。 ぶっ飛ばされ地面にどさっと倒れこむ。 いてぇな!と怒鳴りつけようと顔を上げると顔を真っ赤にしたスタースクリームが いた。歯軋りし、握りこぶしをぶるぶる震わせるスタースクリームの赤面は やはり照れているのではなく怒り狂っているようにしか見えないが何故か 可愛く見えるのは夢のせいか。 「この変態ジェットが!」 「あ!また変態って言ったな!」 「ど変態だ!」 「お前こそ人間のしかも子供に惚れてるだなんて変態だろ!」 「ほ、惚れてっ…!?」 「アレクサはお前の中で別次元の存在だもんなぁ?この間火星の石あげてただろ!」 見たんだぞ〜と指差すと今度は照れで頬を染めた。 おっ、今度は可愛い。今度はガチで可愛い。 「可愛いなお前」 「なっ…んだと…キサマ…侮辱しているのか!」 しゃがむとウイングブレードを掴む姿をみた。 ヤバイ斬られる。むしろ刺されると危機を感じて急いで状態を起すと急いで 場所を移動した。 今まで居た場所にブレードが突き刺さるのをしっかりと目で確認する。 あぁ、やっぱり斬るとかそういうレベルじゃなくて殺しに来てるなと判断すると 羽を展開して空へと逃げた。 「待て!」 「いやぁ、ほら、今日は一人にして欲しいって言ったろ?」 「そんなの聞き入れると思うな…!」 後を追ってくるのを見て自然の頬が緩む。 それはマスクによって隠されたが自分は気付いていた。 命を狙われているのに頬が緩む。変態!と言われてもにやける。 「スタースクリーム〜怒るなって」 「ふざけるな!」 まずいよなぁ。うん。まずい。 あんな顔見せられちゃきっと今日も夢見が悪い。 いっそもう罵られるくらいが丁度いいのかもしれないなぁと 斬りかかって来たスタースクリームを腕の中にお招きしつつ考えた。 --------------------------------------------- M伝難しいお!