メガトロン。と師が名を呼んだ。 片膝をついた状態で面を微かに上げるとそこにはまず鋭い爪があった。足である。 トランスフォーマーというよりも他のエイリアンを想像させるその脚を ゆっくりとなぞるように視線を上げていく。 すると身体を走る模様とそれよりも視線を引く青い光沢を放つ顔があった。 「師よ。何か?」 「…」 師はかすかに笑うだけである。 oath 「プライムが死んだ今、我らの勝ちは目前だ」 「はい」 「そしたらどうするのだ?」 「…は」 質問の意図を掴み損ねたメガトロンは暫く黙ったが フォールンがそれを助けるように言葉を繋げることはなかった。 ただ笑うように顔にあるヒゲのような機器をうねらせてこちらを見る。 「まずは、ディセプティコンを…種族を増やします」 この答えで間違いはないだろう。 我らが勝った暁には憎いオートボットどもは絶滅させるが 我らに忠実なディセプティコンは増やし、トランスフォーマーという種族の繁栄を 目指す。 「そのときスタースクリームはどうする?」 「…は?」 「スタースクリームだ」 「…あの愚か者が何かしましたか」 今度こそ意図がわからない。 どういう意味だろうか、何かあやつがしでかしたとしか思えない。 「あいつが何かしたのなら制裁を加えてきますが、師よ」 「いや、違う」 「…では」 「お前はどうもあやつを嫌っておるな」 「…」 嫌ってなどいない。それは師の間違いである。 しかし否定はしなかった。自分がアイツをどう思うかなど自分すらわからないのだ。 ただ漠然とした存在で、自分をいらつかせ思わず破壊衝動にでてしまう。 声、表情、動作どれをとっても自分を興奮させ苛立ちを与えてくる。 他の兵に比べればあいつが優秀なのくらい自分が一番知っているのだ。 だからこそあいつをディセプティコンの副官にした。自分が名を呼び指名した。 『お前が副官、No.2だ。スタースクリーム』 そう言えばアイツは少し驚いた表情をした。皆が見てる前でそう言ったのだ。 他の連中にこいつがお前らの上官である。と見せ付けるには丁度いい場だった。 そして理由はそれだけではない。あくまで自分が大帝で、優秀だろうと狡猾だろうと その下に位置する存在としてスタースクリームを立たせたのだ。 スタースクリームは一瞬自分にだけ見える角度で驚いた表情を晒し、すぐに周りの 目に気付くとそれをひっこめた。 『閣下。有難き幸せ。光栄でございます』 そういったあいつの顔は「当たり前だ」と言っていた。 自分を置いてNo.2は他にいないとでも言うかのような。 「戦いでは使っているのか」 「はっ…自分のいない場での戦闘指揮は任せています」 「…暫くは戦争が続くだろうがオートボットが殲滅し終わればあれは必要あるまい?」 「……師?」 自分の顔は情けなかっただろう。 破壊大帝、ディセプティコンの頂点は驚いてはいけない。たじろいでもいけない。 なのに自分は今一番適切な表現をするなら呆気、自失、唖然といったところか。 はっと我に返ってその表情を正すとまた静かに師を見つめた。 メガトロンの静かな表情の内側は必死だった。 メガトロン自身気付かないほどに必死だったのだ、師の言葉から意図を探り出すのに。 「必要あるまい?」とは「存在意義の消失」だ。 つまり、戦争が終わればアイツは必要のない存在。生きていても無駄だというのか。 「…ではあやつを…」 「あぁ、くれ」 「…くれ?」 「復興はお前に一任する」 「師は」 「休む。オールスパークで生成されたエネルゴンを摂取しながら暫く退く」 師の言うことはわかった。 戦争が終われば後は自分に全て任せて隠遁したいと言っているのだ。 自分の師をこういうのはなんだがもう師は若くない。 トランスフォーマーに寿命と言った概念などはないが年はある。 普段はこうして立ち歩かずネメシス内でじっとしているのがいい証拠だ。 「だからスタースクリームを譲れ」 「…」 「あれはお前の部下だろう。戦争が終わればいらぬだろう」 「…それは」 「戦いの駒として使い終わったら後は必要ない」 「…」 「ならこのフォールンの身の回りの世話をさせる」 「あれを…」 「お前がいない間見てきたが、愚かでも頭は悪くなさそうだ」 「…しか、し」 「いいな?弟子よ」 自分は黙り込んでしまった。 * 「…何をしている」 先ほどまで話の中心人物だったトランスフォーマーが驚いたようにこちらを見た。 気配や足音を消していたつもりはない。よほど集中していたのかスタースクリームは 現在は卵の傍に立っている。赤い目がこちらをみて一瞬だけ恐れをアイセンサーに 灯したがすぐに消していつも通りに振舞う。 ばれていないと思っているのかこの男は。だから愚かだと言うのだ。 すぐ近くまで歩み寄るとスタースクリームは一歩だけ退いた。 手に持っているのは貴重なエネルゴンと、薬物に見える。 「もう一度聞くぞ、何をしている」 「…卵に栄養を。ウイルス耐性がないためいくつかの卵が駄目になりかけています」 「…」 「なので、薬を」 「卵に薬をか。量を間違えれば死ぬぞ」 「弱い薬を毎時間与えてます。これなら大丈夫かと」 スタースクリームがこちらを見て恭しく頭を下げた。 毎時間ということは休んでいないのか、よく働く男だ。見せかけだけの時もあるが。 しかしその働きはメガトロンのためでなく、スタースクリーム自身のためだと 言うのはよくわかっている。黙って見つめ返すとスタースクリームは 少し慌てたようにもう一歩下がり卵に触れ始めた。 「何かご用でしょうか」 「…いや」 「…」 用など、ない。 しかし聞いてみたいことがある。 「お前は」 「はっ…」 「お前は戦争が終わったらどうする」 「…は?」 「聞き返すな」 先ほどは何度も師相手に首を捻った質問だ。 こいつが何て答えるのか気になった。 「…考えたこともないですが」 「答えろ」 「…」 「…答えろと言っている」 「…」 「…スタースクリーム」 自分でも低い声だと思った。 スタースクリームがびくりと跳ねるように動くときっと反射だろうが逃げようと 背を向けた。 その羽を掴んでこちらを向かせると卵にたたきつけるように投げた。 卵を傷つけないように受身をとろうとしたスタースクリームをもう一度掴んで 卵に押し付けるとスタースクリームから悲鳴に近い声があがった。 「た、卵が…!」 「答えろ!」 「卵が割れてしまいます!おちつい、」 「答えろと言っている!」 「…閣下…?」 首をぎりっと絞めるようにすると声ではなく、機械音で鳴いた。 きゅうっと機械同士が擦れて鳴くような音がいくつも零れた後スタースクリームが 懸命に首を動かしてこちらを見る。 「か、っか…やめ」 「…」 「…わた、しは」 手を緩めると急激に入り込んだ空気に咽てしゃがみ込んだ。 それを暫く見つめながらも答えを待った。 何か言いかけただろう、その続きを待っているのだ。 「いつまでも…あなたと供に」 「…」 「閣下。何があろうと供に行きます」 「…」 「……誓います…私の心は貴方と供に」 首を絞められ恐怖で言った言葉だろうそれは。本心はどこだ。どこにある。 フォールンに命令されれば手のひらを返すのではないか? 決定的チャンスがくれば裏切り、自分が大帝になろうとするのではないか? スタースクリームが小さく「ハイルメガトロン」と呟いた。 スタースクリームよ。お前は今驚いている。いや、緊張して恐れている。 気付いていないのか、お前の胸部の歯車がきゅるきゅると回転している。 恐ろしい時の癖だ。殴るとすぐ動き回るから嫌でも目に付く。 しゃがみ込みまだ微かに咽るスタースクリームに視点をあわせてしゃがむと その胸部に手をやった。スタースクリームが恐怖で息を呑む。 歯車、キャノピー、シャフトに手を滑らせてその奥にひっそりと隠れて いるだろうスパークを想像した。 胸部に走る刺青を両手で撫でるとスタースクリームが微かに声を震わせながら 名を呼んだ。 「…閣下…?」 「いつまでも付いてくるのだな」 「…もちろんです」 「決して裏切るな。誰の命令でもだ」 「はい」 「今の誓い、破れば…破壊する」 「…心配ございません。それは杞憂に終わります」 「…」 「心より誓います。閣下」 『いいな?弟子よ』 『…』 『どうした』 『それは、スタースクリーム次第でしょう』 『…』 『あやつが他にやりたいことがあれば…それに戦争後も他に使い道が あるやもしれない』 『つまり』 『今はまだ、断言できません』 渡せません。と呟いた。 師は暫く黙った跡に「下がれ」とだけ呟いた。 何故、手放さない。近くに居ても無能なだけの存在のはずだろう。 ならば必要とする師に譲り渡したほうがまだ使い道があるのではないだろうか。 なのに、捨てきれないのは何故だ。 ------------------------------------------- フォールン「スタースクリームや…メシはまだかいの…(´・ω・`)」 スタスク「いやだフォールン様。おととい食べたじゃないですか(´∀`)」 ってなるよフォールン様!毎日食べさせてあげて! こうやって裏切らないようにさせた結果がリベンジでの最後のシーン オイル吐きながらぼろぼろメガ様「スタースクリーム!」に繋がるわけですね ゴースト〜小説で「メガトロン自ら俺を副官に任命した」って言ってたから 多分こんなんかな!と。いつもの捏造です トイスタスクって首動かすと胸元の歯車が回るらしいよ! さぁトイスタの首を回すんだ!もいじゃ駄目だぞ! しかし管理人トイ実写スタもってないよ…!確認できないよ…! 買えって意味かな…