「まだ直らねぇのかよ…!」
「まだまだかかるぜ」
「早くしろー!凍え死ぬ!」
「さみー…」

ビルドロン部隊が基地内全ての暖房器具を管理するシステムとその機具本体の
周りに立つと中を調べては唸っていた、故障の原因がわからないのである。
寒さに弱いジェットロン達はカタカタと震えて身を寄せ合うと隅の方へ座り込み催促の
声を上げ続けるがその催促で機器の修復作業が早まるわけでもなかった。

「頼む…!俺もう無理だ!」
「さみーさみー」
「ビルドロン部隊早くしろよー!」

「うるせぇ鳥どもだぜ…だったら南にでも飛んできたほうが早いんじゃねぇのか?」

先ほどから休みなくちゅんちゅん鳴くジェットロンにため息交じりの提案を出すと
ジェットロンは顔を見合わせた。
現在、季節は真冬。雪が降るだけでなく外は嵐が近づいているために風は強く雨の
混じった霙が降りそそいでいる。
その中を飛んで南まででるのもまた一苦労である、だからと言ってずっとここにいても
状況は変わらないだろう。

「俺は嫌だぜ…こんな中外に出るなんてよ…」
「…俺行ってみようかな」
「まじかよサンダークラッカー!」
「死ぬ気か」
「いや、アフターバーナー全開でちょっと我慢すりゃよ」
「じゃあ俺お前の後ろ飛ぶ…ちょっとは温けぇはずだし」
「てめぇら頭いかれやがったか…あー、死ね死ね。勝手にしろ」

スカイワープとサンダークラッカーが顔を見合わせると「じゃ」と一言言い残して
立ち上がった。立ち上がり同機の装甲が離れると自分の装甲に冷たい空気が触れて
ぞっと身体が震えた、一瞬でやっぱりこいつ等について行こうかと言う案が脳内に
出現したが外の気温と風を思えばやはり嫌だった。

後姿を見送りつつ足を貧乏ゆすりするように揺らし、とにかく自分の温度を温めようと
する。きっと南にいくよりこっちの修理の方が早いはずだとスタースクリームは
思い込んでいたのだ、同機が居なくなって数十分がたった頃にもう一度催促の声を
上げてみた。

「おい!ビルドロン!まだかよ」
「…こりゃ後10時間は待てよ」
「はぁ!?じ、10時間!?」

ここに10時間いるのと南へ飛んで行くのどちらが早いのかなんて決まっている。
飛ぶほうのが断然早い。やっぱりあいつらと、と思ったが既に30分近く経過した今
まだ基地内に居るとは思えないのが自分を行動に移させない一番の理由である。




「…つーわけで入れて」
「…」

サウンドウェーブの寝室を叩けば中から無愛想な青色カセット野郎が顔を出した。
こいつの寝室の戸を叩いたのは別にこいつと仲がいいと言う訳でも
こいつなら何かした自分を救う手立てを持っていると言う訳でもない。

メガトロンはレーザーウェーブのところへ。ジェットロンは新旧どちらも
既に基地内から脱出してしまった。ビルドロンは自分をイライラさせるだけ
だったし他に誰かと思ったが誰が居るわけでもなくこいつしかいなかったのだ。

「自室へいけ」
「頼む、温度の少しでも高い場所にいねぇと死んじまう」
「…」

サウンドウェーブが鬱陶しそうに扉のわきへそれて室内に入る許可を与えてくれた。
「どーもー」と適当な声を返すと其処には素敵なものが置いてあった。

「ちょ、お前これなんだよ!」
「…ジャガー用だ」

ジャガーが名を呼ばれて顔を少しだけあげるとジャガーの下には小さめのカーペットが
引かれていて、それが床のどこよりも温度が高いのがわかる。
電気カーペットなのだ、アイセンサーを赤外線に切り替えればそれは一目瞭然で
自分の身体には見合わなくてもないよかマシという物だし、身体を丸まれば
結構十分な大きさなんじゃないか?

ジャガーのすぐ傍に座るとそのカーペットの端を掴み引っ張った。
うぅ、とジャガーが唸り睨んでくるがお構いなしに引っ張り、何とか
ジャガーの下より引き抜こうと試みた。

「やめろスタースクリーム」
「俺の命がかかってんだ」
「大げさだ」
「てめぇらと一緒にすんじゃねぇ!俺はナイーブな作りになってんだよ」
「…」

スタースクリームの横に立っていたサウンドウェーブがスタースクリームの掴んでいる
カーペットを違う方向から掴み、「ジャガー」と一言名を呼べばジャガーは
すっとその上から立ち退いた。
スタースクリームが引っ張り寄せる前にサウンドウェーブが引っ張れば
スタースクリームの手から掴んでいたはずのカーペットはすり抜けた。

「あっ」
「…」

寝台の上にそれを引きなおすともう一度ジャガーの名を呼び、寝台の上を叩けば
ジャガーはその跳躍力で飛び乗った。カーぺットの中央に座ろうとする
ジャガーを手で押し留めるともう一度その寝台を猫か何かを呼ぶように叩いた。

「…なんだよ」
「ここに乗れ」
「…」
「ジャガーと使え」
「この俺様がそんな猫と一緒くたにすんじゃっ…」
「使え」

サウンドウェーブがそれ以上の譲歩はしないとばかりに強気の態度にでた。
もしその要求がのめないなら追い出される気配を感じスタースクリームは
少したじろいだ後ゆっくりと近づいて行った。

「…」
「ジャガーの身体は温かい、保温もできる」
「…」

寝台に横になり、カーペットを下敷きにするとサウンドウェーブがジャガーを
自分の上に乗せた。重たくて「うぇ」と悲鳴をあげるとサウンドウェーブは
鼻で笑うような仕草をして机に戻った。

「お、おい、これこのまま?」
「あぁ」
「俺がジャガーのベッドになってんじゃねぇか!」
「寒くはないだろう」
「そういう問題じゃねぇよ!」

舌打ちをこれ見よがしに大きく打ち鳴らすとジャガーは安定した場所を探すように
自分の腹部に頭をこすり付けるような仕草をして金属の手で数度踏みつけてくる。
その足には肉球なんてものは存在しないがまさに「ふみふみ」といった動きに
スタースクリームは払いのける気すらなくなった。

あ、あったけぇな、案外よ。
ジャガーも、使い道あるじゃねぇか・・

スタースクリームはゆっくりとアイセンサーを消灯すると
意識まで奥底に落として行った。ここが同僚で、天敵で、同じ参謀職につく
サウンドウェーブの寝室だということなど忘れて。



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この後サウンドウェーブも一緒になって寝台に乗って寝ようとして
2体と1匹で寝台から落ちたら良い

唐突にこの「同僚」って位置を書きたくなる。

メガスタ「主従(裏切りのオプションつき)」
音波スタ「同僚(ライバル)」
ジェットロン「同機」
スカファスタ「友人」

スタスクの立ち位置は神ポジションすぎるぜ・・