メガトロンがすぐ後ろで自分に直接命令を下していた。
それは空を滑空しろと言う戦闘指揮ではなく、かと言って素粒子の流れを分析しろと
言うわけでも多数のドローンと自走式移動掘削装置を使いエネルゴンを発掘しろ
と言うものでもなかった。

では何だというのか、今日はサウンドウェーブから送られてくる情報全てに目を通し
地球のサイバトロンの動きと、デストロンたちの消息を確認した。
卵の温度とエネルゴン濃度も正常値を保っているし今日はウイルスによって
死んだ卵もなかった。全て好調なのだ。

だったらどうしてこの男はここにいるのか。



ドーパミン




戦艦ネメシスの中はとても冷え静かだった。
その戦艦の中でアイセンサーに光を灯しているのは自分と、今背後にたつ
白銀の身体と自分よりも禍々しい赤さを放つアイセンサーを惜しみなく
見せ付けてくる男、自分の直属の上司でありディセプティコンの主メガトロンだった。
今日既に働かせたドローン達は今は眠り身体を次の労働に供えて休ませている。
最初から卵たちは眠ることと寒さや熱さに震えるだけのこの2つの行動しか行わない。

床を這う無数のコードたちを引き寄せ、金属同士が床を引っ掻き
甲高い音が立つ以外、このネメシスに音はなかった。
あるといえば

「早く片付けろ」
「…はい、閣下」

これだけだ。
自分は床に膝を着きひたすらコードを手繰り寄せていた。
それらのコードは今は亡きメガトロンの師でもあるフォールンの足元にあった
接続端子たちであり、数日前まで放っていた光沢は主の死を嘆き悲しむように
ただ静かに床に横たわっていた。

メガトロンはそれを随分と嫌がった。
決してメガトロンがスタースクリーム同様自分よりも上の立場の者に
恐れを抱いて従っていた訳ではなく、自分の師として崇めていたが
それでも亡き者をずっと引き摺る性格でもなければ師のいた場所に残る
コード達を形見だなんだと残しておく気もなかった。

身体をリペアし終わったスタースクリームにメガトロンは命令した。
その命令に従ってひたすらそのコードを片付ける仕事は中々はかどらない。

「…っ?」

手を伸ばし、掴んだコードを引っ張り寄せれば金属同士が立てていた
キーキーと甲高い音ではなく、ガラスの倒れる音がした。
そちらに視線を送ればそこには予想していた素材が倒れていた、手を伸ばし
掴みやすくくぼんでいる部分を掴めばたぷんと中が揺れる。

「…」

あの、糞野郎。
それは当人には決していえない、当人を目の前にして思うことも出来ない暴言だった。
しかしスタースクリームは亡きフォールンを瞼の裏に描くと誰にも聞こえないように
舌打ちを放ち、内心ぐちぐちと暴言を積み重ねていった。

これはエネルゴンなのだ、自分たちが宇宙を飛び回り、匂いをかぎわけ
兵力を裂いてまで穴を掘り壁を崩しエネルギーを再構築しなおして作り
そうやって必死に探しまわったエネルゴンなのだ。
それが何故こんな質素な素材の瓶ボトルに入って床に転がっていようか。

「どうした」
「閣下…エネルゴンです」
「なに」

ボトルは中々大きいものだ。
スタースクリームが瓶の口をつまみあげるとそれはスタースクリームの
肘関節に触れるほど大きく、ネメシスがいる凍りついた惑星には存在しない
木のコルクで蓋をされている。
スタースクリームの鋭い指先がその弾力性に富む素材を刺し、指先を
食い込ませると一気に引き抜いた。
瓶からコルクが抜けると同時に密閉されていた中の空気と匂いが飛び出して
小気味いい音とスタースクリームがここ何年嗅いでいなかった深い
エネルゴンの匂いをあたりに散布した。

「…!」

スタースクリームは急激に眩暈を感じた。
エネルゴンが毒性を帯びているのではと思わせるほどにスタースクリームは
頭を揺らめかせたがそうではなく、それほどに優雅な匂いを放っていたのだ。

洗練されたエネルゴンの匂いはオールスパークを失ってから一度たりとも
飲んだこともなく、触れる機会もそれこそ匂いを嗅ぐこともできなかった。
ブラックアウトやバリケードと供にメガトロンを探す途方もない長い年月を
旅したがその時も立ち寄る惑星でエネルゴンやその代わりになるものを探し
メガトロンをやっとの思いで見つけてみれば地球何ていう文明の進みが
酷く鈍い惑星で活動停止を起こし、オールスパークは失われた。

フォールンが現れて卵の世話を任されている間、自分はずっとエネルゴンとは
呼べないものを舐め続けてきた。手に入れた貴重なエネルギーはメガトロンを
救い出すための部隊に渡し、少しばかり見つけ出した純度の高いエネルゴン達は
卵に全て差し出した。
そうして自分は純度がどうこう言えるはずもなく、まるで一度泥水と
混じってしまったのではないかと思うようなオイルを舐め、どうしても
耐えられない時は自らだけで誰の手も借りずにエネルゴンを探しに出た。
ドローンたちを動かせばフォールンや口うるさいサウンドウェーブが
その行動に気付き手に入れたエネルゴンなど少しも手をつける前に
没収されるのがわかっていたからだ。

そんなスタースクリームの前に、何も混じらない至純なエネルゴンが
現れたのだから、立ち眩みくらい起こしても罰は降りない。
匂いを嗅いだだけで手足が痺れるような思いがした。
今すぐボトルの口に唇を押し当てて仰ぎ飲んでしまいたい衝動に
かられたがそれはすぐ背後の気配に押しとどめられていた。

ごくりと自分の口内オイルを飲み込んでブレインサーキットに
これで我慢しろと警告した。勝手な行動はこの主を前にして許されない。

「とても…純度の高い物のようです」
「師のものか?」
「私の管理にそのボトルは含まれていません、まったくの管理外です」
「…隠し持っていたのか」

隠し、とはまた違う気がした。
あの方は自分が純正エネルゴンを持っていても隠したりしないだろう
これを飲む姿を見ても私は文句を言える立場ではないし、他のディセプ
ティコンも同じだ。とりあえず、動かないあの老獪なディセプティコンは
自分のすぐ手を伸ばす範囲にエネルゴンを置いておき、摂取したい時に
摂取する、と言うことがしたかったのだろう。

持っていた瓶を名残惜しみながらメガトロンに渡すと
受け取ったメガトロンはその口に嗅覚機器を近づけて匂いを嗅いだ。
「ほう」と感嘆の声が発せられ、主もその純度の高さに気付いたようだった
しゃがみ込んでいた自分とは違い立っていたにも関わらずメガトロンは
2本の脚をふらつかせる事なくその匂いに浸っていた。
自分はと言えば座っていたにもかかわらずまだ頭がくらつき足元が覚束ない。
立てば転ぶのではないかとも思えた。

「…」

大帝が匂いを吟味している間にコードをもう一度引っ張ってみた。
まさかな、と思いつつも引けばごろりとボトルが転がってくる。
まだ、あるのか?と心が躍ったたがもちろんわかっている、メガトロンが
自分に1本でも分けてくれる筈がないのだ。
それでも一口でも、少しだけでもいいから飲ませてくれないだろうかと
諦め悪く転がってきたボトルを手に取った。

「メガトロン様、まだこちらにも」

転がってくるボトルたちを全て集めればメガトロンの手にある分も
合わせて全5本ある。これだけあれば卵全てに栄養価の高いエネルゴンを
与えることが出来る。もしかしたら卵から孵るかもしれない。

しかしスタースクリームは手にあるボトルを眺めた後、視覚スキャンを行った。
本当なら容器に移し替え機器を通すなり、いっそ飲んでしまったほうが正確な
値が出るのだがそれはこの場では出来ないし飲むこともできない。
視覚のみでスキャンを行えば誤差がでるのは仕方がないがその純度を
特定することは出来る。

「…これは」
「どうした」

ボトルからようやく目を放したメガトロンがスタースクリームを見た。
スタースクリームのアイセンサーはスキャン中の為カチカチと音を立て
赤い光の中に白の光と黒い字が浮かんだ。
目をボトルからそらしスキャンを停止するといつもの赤い灯火だけが
残った、それを自分の主へと向ける。

「卵には使えそうにありません」
「何故だ」
「純度は高いのですがウイルスが」

むしろ、この純度が高いのはウイルスのおかげでもある。
コンピューターウイルスともまた違う、しかし生物でもないそれは
人間世界で言う微生物のように視覚では捉えることができず
それでもこのエネルギーの液体を更に研磨するように働いていた。
ワインの生成などでは菌の力を借りている、
それにも似通っているがやはり違う。

「…卵には耐えられないかと」
「…そうか」

薄めれば、とも思ったがやはり無理であろう、あまりに卵たちは
脆弱で儚い。今順調に育っている卵たちでテストのような真似は避けたい。
自分たちのような強いトランスフォーマーならそんなウイルス身体に
入った所で頭が認識する前に排除してしまうだろう。

「…メガトロン様が御飲みになられるのが一番でしょう」
「…」

メガトロンが持っているエネルゴンを揺するとたぽんと
中の液体が動いた、それと同時に再発する濃く、強く鼻に掠めるくせに
上品さを損なわない匂い。

メガトロンが見ているだけだったその瓶口に顔を近づけて
微かに口を開いた。そこにボトルが当たるのをスタースクリームは自分の
事のように緊張しながら見つめた。

どんな味だろうか、どんな匂いが喉を通り越すのだろうか。
冷たいのか、温いのか、刺激するのか、滑らかなのか。
スタースクリームはもう一度喉をごくりと鳴らして見せた。

メガトロンはそれに気付かないのか躊躇せず瓶を傾けると
喉を微かに動かした。喉に走るケーブル達と鋼が上下する。

「…い、いかがでしょう」

あのフォールン秘蔵の品だ、気になって仕方がない。
思わずメガトロンに土下座でもする、いやそれだけでは足りないだろうから
跪いてその左手の指を全て舐め上げてもいいと思った。まだ足りないのなら
その足のキャタピラを、いや、それはやめておこう。
とにかくそれを飲みたいのだ、少しでいい、ここまで自分は頑張ってきたの
だからそれくらいは良いのではないか。

「…流石、師の物だ。恐ろしく濃い」
「…」

口内にオイルが満ちてくる。零れそうになるそれを喉を鳴らして飲み込んだ。
頼みます、メガトロン様。私にも慈悲を向けてくれないだろうか。

「…」

無情にもメガトロンはそれを呷った。
喉を鳴らし飲み干していく姿に自分を重ねるのがせめてもの楽しみだ。
もしこれが卵に使えるものだったらメガトロンは卵に回せと言っただろうが
使い道が飲食以外にないのならもう飲む以外に選択肢はない。
そうなったらこの男は遠慮しないだろう。

メガトロンが半分を飲み終えるとこちらを見た。
自分はメガトロンの動きを一挙手一投足眺めていた、ふと送られてきた
視線に「はい」と声をつけて見つめ返せばメガトロンは
視線だけでなく顔も向けてくる。

「…飲みたいか」
「…はい」
「…」

飲ませてくれるのか、あなたが。私に慈悲を与えるのか。
身体の向きをメガトロンに向けると片膝をついた状態で恭しく頭を下げた。

「飲ませて、頂けませんか」
「…」

ふっと鼻で笑われる、それでも構わない。
泥水のようなオイルをすする日が何年と続いたのだ。時には卵達の残り物だ。
人間で言えばただの残飯処理のような、美味い部分を全て他人に明け渡し
残ったカスだけに手をつけているような、そんな生活。
それが今は目の前に高級料理店顔負けの、一国の王が口にするような物が
あるのだから堪らない。

メガトロンは左手の不揃いな長さの指を構えて見せた。
その指の中でも一番長い指を瓶口に入れていくと液体が鉄にぶつかり
水音を立てた。引き抜いてみれば輝く色のエネルゴンが指についている。

そんな物飲めるか。飲むではなくそれは啜るにも満たない舐めるではないか。
そんな文句は一つもなかった。それでもいい。それを舐めさせてくれればいい。

スタースクリームは砂漠のど真ん中で数日水を飲まない人間のように
液体を欲していた。そしてメガトロンの指は冷えた水あふるるオアシスの
ようなものである。

興奮した息と、オイルが口から漏れそうになる。
メガトロンが指をこちらに向けてきて何も言わずに笑って見せた。
根元より段々細くなるその金属の指はエネルゴンを伝い、指先に水滴を
作った、それが時折落ちそうに揺れ、ネメシス内の光を反射して
きらきらと光ってみせる。

スタースクリームはいつその水滴が落ちてもいいように両手のひらを
メガトロンの指の下で構えながら口を開いた。
そこより金属の舌を覗かせると今にも口内オイルが垂れそうになって
少しばかり焦る、もたつき、オイルをちゃんと飲みこんでからもう一度その
指先に唇を近づけた。
最初に礼を言うように指に唇を当てるだけの忠誠を見せた。
それからゆっくりと舌を落ちそうに揺れる水滴に押し付けて
舌に触れたエネルゴンをアイセンサーを細めて味わった。

なんと言うことだ。また眩暈が起きそうになるほどの匂いが立ち上った。
今度は瓶口から顔をそらせば匂いは遠退くなんてものではなく
落ちた一滴が口内を犯し、鼻と喉を通して身体に訴えかけてくる。

指先がぶるりと震えた。美味い、美味すぎる。
そうだ、これがエネルゴンと言う物だ。今まで私が飲んできたのはなんだ?
ただの水か、それ以下だ。スタースクリームは口内に満ちた匂いを存分に
味わった後にその舌をメガトロンの指にそって這わせた。

その指につく液体を勿体無さそうに舐め尽し、時には吸った。
メガトロンの指にいくつもある関節が少し動くたびにその関節の隙間に
あったのだろう水分が口内に広がりまた自分を動かした。
指についているエネルゴンは一口にも満たない本当少ないものだったが
スタースクリームは大いに満足していた。
まだ残っている、液体はなくても匂いと、その風味はまだ残っていると
既にエネルゴンが舐め拭われてしまった指を未だ租借するように味わって
金属の独特の味と、少し錆びた匂いと火薬の鼻につく匂いがでてくるまで
その指を離すことはなかった。

ゆっくりと、名残惜しむように指を放すとメガトロンは
たぽんと瓶を揺らして液体を飲み込んでいた。
既にスタースクリームには興味をなくしたように喉を鳴らして飲んでいく
姿をスタースクリームは見上げ、羨ましいと目で訴えかけた。
意図していたわけではない、スタースクリームは満足していたのだ。
ただ、どうしても残る気持ちがアイセンサーに投影され「できることなら
それを一口飲ませて欲しい」と叫ぶ。

メガトロンが満足そうに息を吐きもう一度スタースクリームを見やった。
そしてその痛ましいまでに向けられるアイセンサーと目が合った。
メガトロンは暫くその顔を見つめた後アイセンサーを細める動きをすると
スタースクリームに舌を見せた。

エネルゴンの色をした舌がでてくるとスタースクリームは息を呑んだ。
それでも、構わない。舌に残るエネルゴンの風味を味わいたい。
生物は欲には勝てない、中でも生理的現象にあたる「食欲」「睡眠欲」
「性欲」には抗うのが困難だ。
スタースクリームは心より欲していた、トランスフォーマーの主食で
ある、エネルゴン。しかも滅多のお目にかかれない純正な。

よろりと足を動かすとスタースクリームはその鳥のような脚を
しっかりと地面につけて立った。メガトロンの顎に手を伸ばし
触れる直前で止めるとその指先を震わせる。

自分は何をしているのだ、何をしようとしている?
僅かに欲に浸っていなかったブレインサーキットの一部が言葉を投げかけた。
相手は破壊大帝なのだ。と。

「欲しいか」

大帝が言葉を発した、もちろんだ。欲しいに決まっている。
良いのだろうか、良いのだろうか。自分のブレインサーキットが葛藤を
始めたがメガトロンが顎を掴み引き寄せてくれた事によりそれは終わった。

悲鳴ではなく歓喜の声が出た。
唇同士がぶつかって、舌同士が絡むと先ほどよりも濃く、多い量の
エネルゴンを味わえた。身体中が歓喜に震えて眩暈に脚がよろめく。

目を開けているのが気だるくなって手がメガトロンの腕に触れる。
細く偏った左腕は先ほどの長い指先で顎をひっかけていた。
立派な右腕に手を置きうっとりと意識を飛ばし始める。

「あ、まだ」
「…」

離れようとしたメガトロンの腕を強く掴んでその舌を更に絡める。
舌の表面同士がぶつかり合ってオイルとエネルゴンとでぬるりと動き
その表面は何度も滑るように絡まっていく。
スタースクリームはエネルゴンに夢中だった。メガトロンがスタースクリームの
恍惚とした表情を細めたアイセンサーで眺めていることにも気付かないほどに。
遂にエネルゴンの味がしなくなるとスタースクリームは唇を放した。
「ほぅ」とため息にも似た吐息がでると自分の口内もエネルゴンの匂いで
満ちているのがわかる。

「…」
「満足か」
「あ、ありがとう、ございました」
「…」

礼を述べて少し下がるとメガトロンはまたもエネルゴンを口に含んだ。
身体がまたその匂いに反応して視線をやる。
メガトロンがその視線に気付いたように再度こちらを向き、手を伸ばしてきた。
喉元を鋭い指先でくすぐられ、上を向かされると再び唇が触れた。

「…!」
「…」
「んっ…ん」

今度こそ、液体だった。
飲み終えた舌でも、僅かな水滴のつく指でもなく、口内に含まれていても
それは間違いなく液体だった。
物足りないと訴えかける気持ちがメガトロンに透けて見えていたのだろうかと
スタースクリームは考えてすぐにそれをやめた。
今は思考も何もかもこのエネルゴンにだけそそぎたいと思っていた。
足が震えて片膝つくとメガトロンもそれに合わせて膝をついてくれたのが有難い。
口内でメガトロンと液体の奪い合いをした、それは強奪するような動きではなく
お互いに楽しむようにメガトロンの口内へ、スタースクリームの口内へと
行ったり来たりを繰り返した。

そんなことをしていては零れるのは仕方がない、口の端から数滴
自分の膝の上に落ちたのを感じるとスタースクリームはそれを目で追おうとした。
しかしそれは適わずメガトロンがそのまま押し倒し、背中に床を感じて
普段なら恐れるはずの状態に晒される。
仰向けに、弱点の腹と喉をメガトロンに差し出すように倒れこみ、それを
自分にいつも恐怖を与えてくる主が四肢を押さえるように圧し掛かり見下ろしてくる
のだ。いつもなら既に許しを請う時間だ。

「…閣下」
「…」

メガトロンがはぁ、と興奮した息を吐いた。
それを見つめ返しながら自分の口からも似たような息が漏れているのに気付く。
はぁ、と息づくがそれははっきりと音として奏でず、息だけを吐き出すように
ささやかに自分の存在を主張する。

メガトロンが本物の獣に見えた。
四つん這いになり、自分の四肢の自由を奪い、荒い息を喉に浴びせかけてくる。
食い殺されると思ってもエネルゴンの匂いを放つ舌が自分にもその匂いを
分け与えるように口を塞ぐだけだった。

がしゃんと音がして視線をそちらへ向けると空になった瓶が顔の横に転がった。
結構な量だったのにもう一本飲み終えたのか、と驚きと羨ましさと変な尊敬を
覚えた。

「あ」

手が身体を弄り始めた。
キャノピーと装甲の隙間に指を引っ掛けて持ち上げると軋んだ音を立てて
そこが少しだけ開く。
そこにもう片方の手を差し込まれると中にあるケーブル達を撫でた。

「っふ」
「…」

何か、何かがおかしい。どうしてこうなったんだ。
視線は空になったボトル瓶を見つめ続けていた。
ブレインサーキットが意味のない行動に出てその空のボトルを
再度スキャニングし始めた。先ほどもしたのに更にもう一度。
意味のない行動だ、とわかっていてもメガトロンの行動を受けている最中は
暇なので好きにさせていた。

純正で、良いエネルゴンだ。と何度スキャンしても思った。
しかし多少の誤差を発見してそれを修正するようにデータを書き換えた。

ブレインサーキットを刺激して、心身を活発化させるような働きを持っている。
それでも純正なエネルゴンだと言える、何かを混ぜ合わせたのではなくこの
原材料が既にその働きを持っていたと考えられる。

…これは。
興奮剤の一種なのではないか?
スタースクリームはそこでようやくメガトロンに目を戻してみた。
自分は量で言えば二口、三口分だがこの大帝はボトル一本飲み干したのだ。

メガトロンが興奮したように息を吐く。
自分がどんな状況下に置かれているかはわかっているつもりだったが
それでも身体が動かないのはエネルゴンのせいなのか。それとも
何かを期待しているからなのか。

「閣下…エネルゴンを…」
「あぁ、飲ませてやる」

腕を伸ばしたメガトロンがボトル瓶のコルクを歯で抜いた。
二、三口飲んでからまた口に含んだそれを口移しで飲まされると
自分は待っていたかのようにメガトロンの背後へ腕を回した。
私が期待しているのは、この味だ。他の何でもないはずだ。

スタースクリームは摂取の量が増えると同時に緩やかに
アイセンサーを細めていった。







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半分以上は捏造だよ!
フォールンは別に一人でこれをこそこそ飲んで一人でむふむふ興奮
してるわけではなく、麻薬入りのアッパー系ワインじゃねぇと
うまくねぇよ!って感じで自主的に作ったものだと思ってくれれば…
でも純正だよ!メガ様とスタスクは慣れてなくてそれに酔った的な、酒より
薬で考えた方が良いかもしれん。

続きは▽様がえろいことになるのでやめた。
▽さんにはまだ「性的な悪戯」程度にしておきたいんだよ・・
DVDがでたら・・むふふ・・(きめぇ)

ちなみにまだ残ってる3本は冷静に戻ったスタスクとメガ様で
「どうしよっか…これ」ってなったらいいと思います。
捨てるのは勿体無いよね!