ジェット音がしたから基地の外へ出ればスタースクリームがやってきていた。
オンスロートはスタースクリームを見つけると目を細めて地面に足をつけるまで
声をかけずに待った。

「何しに来た」

ここは俺たち、コンバットロンの基地で。
お前は普段はメガトロンの近くにいる副官で。

「俺はお前らの創造主だぞ、定期メンテナンスだ」




創造主





「スタースクリーム」
「スタースクリーム?」
「スタースクリームじゃねぇか」


コンバットロンがスタースクリームの名を呼ぶと
スタースクリームは腰に手を当てて偉そうな態度で「おう」と声を出した。

「メンテナンスだそうだ」
「お前が?」
「俺様以外に誰が出来るんだ、てめぇらの身体はビルドロンじゃ見れねぇ」

コンバットロンは地球の金属から作られた合体戦士だ。
ただでさえ合体戦士はメンテナンスが面倒臭いのにそれがセイバートロン製では
ないだなんて信じられない話でもある。
ビルドロンはコンバットロンの面倒を見るのを辞退した。理由は逆に壊しかねない
から、またコンバットロンの性格も受け入れられないらしい。

「あー、ただ先に寝かせてくれ」
「は?」
「何言ってんだてめぇ」

オンスロートの隣に居たスタースクリームが少しふらついた。
演技ではないのはその顔色でわかる。あんまり良いとは言えないだろう。
スィンドルがその顔を覗き込んで「顔色悪いぜ」と笑った。
見ればわかる、とオンスロートが続けるとスタースクリームの腕を掴んでこちらに
身体の向きを返させた。

「わざわざ俺たちの基地に来て具合が悪いってのか?」
「…寝てねぇんだ、仕事ばっかで」
「じゃあ何で来た」
「メガトロンがうっせぇんだよ、お前ら最近合体してんのか?」

コンバットロンが顔を見合わせる。
最近はしていないな、するような状況下にもならない。
スィンドルは勝手にどこかへ出かけては地球の金銭に目が眩んでるみたいだし
ボルターはヘリとして様々な飛び方なんかして遊んでる。

「メンテするのかしねぇのかどっちだよ!」

ブロウルは短気だ、すぐ怒る。
それが今も出てスタースクリームの腕を掴んで引っ張ろうとした。
それを仕方がないので自分が止める。仮にも自分はこのコンバットロンの
中核、リーダーだ。

「やめろ、ブロウル」
「オンスロート、こいつが」
「少し寝たらすぐやってやんよ!オンスロート…」
「なんだ」
「各自のスペックと現在の身体情報をスキャンして、だしておいてくれ」

起きたらすぐ目が通せるようにな。といわれる。
確かに最近合体していないせいもあって5体全員の安定率が不安定だ。
情報は限りなく似たものにして、パルスの波長も合わせておくべきだ。
そうしないと合体しても脆く、すぐ離れてしまうだろう。

「わかった」
「ところでよう」

ブレストオフがスタースクリームに近づいた。
大きな機体をスタースクリームが見上げて目があうとブレストオフは
スタースクリームを指差した。

「どこで寝るんだよ、こいつ」
「…俺様の部屋があるだろ」
「え?」
「え」
「え?」

各自顔を見合わせる。
聞いてない、見てない、知らない。
もうこの基地を与えられて半年以上立つがそんなもの見たことがない。

「え?じゃねぇよ、こんなこともあると思ってこの基地には俺様の部屋がだな」
「ねぇよ、見たこともねぇ」
「ないない」
「知らねぇなぁ」

スタースクリームが顔をしかめて歩き出す。
全員がそれについていくと途中まできて「あっ」と思った。
各自の部屋は横並びだ。その一番奥の方に端部屋があったはずだ。
それの事を言っているのか?しかしあそこは。
スィンドルを見るとスィンドルもあの部屋かと察したようで笑った。

「何笑ってやがる」
「あの端部屋か?スタースクリーム」
「あぁ、あそこは俺様の仮眠室として」
「物置かと思って鉄屑置き場にしてるぜ」

スタースクリームが歩みを止めた。
ゆっくりと振り返りスィンドルをみると悪びれなく笑って
その口からは思ってもいないだろう「わりぃねぇ」なんて言葉が吐かれた。

「…お前メンテナンスでみてやがれ」
「おいおい、身体いじられるのは冗談じゃねぇぜ」
「誰でも良い、部屋貸してくれ」

その一言に飛びついたのはブレストオフとボルターだった。
正直意味がわからないがこいつらのスタースクリームを見る目は何か変だ。
スタースクリームが憎いのだという。嫌いなのだと。
しかしじゃあ殴るのか、破壊するのか、と言えばまた違う。

「俺の部屋こいよ、スタースクリーム」
「いや、ボルターの部屋は狭い、俺の寝台なら広いぜ」

ブレストオフはコンバットロンの中でもでかいから
寝台もやや大きめに作られている。スタースクリームは2体の勧誘を黙って聞くと
欠伸をして「どっちでも良い」と呟いた。

「じゃあ俺の部屋で決まりだ」
「まてよ、ブレストオフ。てめぇに任せると危険だからなぁ」

どっちに任せても危険だろう。
こいつらはスタースクリームが好きなのではないか、とリーダーの
オンスロートは何度も頭を捻ったことがある。
しかし指摘すれば「いつか復讐してやるんだ」というばかりで実際行動に出た
ことはないし、もしかしたらスタースクリームが俺たちを新たに改造した時に
メガトロンだけでなく、スタースクリームにも忠誠を尽くすようされたのかも
知れないな、と知略家のオンスロートは唸った。

スィンドルがその口論に飽きたように元スタースクリームの寝室に入っていく。
今度売りに行く鉄材でも品定めするのだろう。
ブロウルはメンテナンスしてくれないならここ居る意味がないと苛立ち
先ほどのメインルームに戻ろうとしている。
自分もここに居る必要はないだろうが一応事の次第は見届けておこう。

「てめぇみたいのがスタースクリームを抱いてみろ壊れちまうだろ」
「そりゃてめぇもだボルター」

…下卑た話になったもんだ。
スタースクリームはそれを聞いても何も思わないのかと思えば既に
うつらうつらと頭を揺らし、ブレインサーキットが鈍くなっている様子が窺えた。
奴らの会話の内容も聞こえていないのだろうが今聞いておかないと後々大変だと
思うが、と内心で呟くだけでそれを親切にスタースクリームにいう必要はない。

結局自分も良い奴ではないのだ。
スタースクリームへの復讐もいつかしたいと思っている。
俺たちのコンポーネントをあの薄暗い牢獄から出してくれたのは多少なり感謝して
いるが、こんな錆鉄臭い身体に閉じ込められてメガトロンに忠誠を誓うように
改造されて、それでスタースクリームを好きになどなれるはずない。
ま、抱かれるなり何なりしても良いだろう。奴らのストレス解消にはなる。


黙って口論を聞いていると隣で突っ立っていたスタースクリームの揺れる頭が
自分の腕にぶつかった。
驚くよりも苛立ちがでてきて睨みつけるがスタースクリームのアイセンサーは
明滅し始め、もうしっかりとした視認もできていないのではないだろうか。

「おい、スタースクリーム。寄りかかるな」

肩に寄りかかるスタースクリームの腕を掴んで引き離そうとすれば
「んん」と唸ったスタースクリームが安定した場所を求めてすがり付いてくる。
すっかり自分の胸にしがみ付いてきた自称、創造主を睨みつけながら
口論する2体を見ればヒートアップしてきたのかこちらに気付く様子はない。

「スタースクリーム、放れろ」
「…オンスロート、お前の部屋でいい」
「断る、邪魔だ」
「俺様、に、逆らう…な」

途端がくりと力を抜かし床に落ちそうになるスタースクリームの
背中に手を回しそれを防ごうと身体が動いた。
なんだ?勝手に身体が動いた。床に崩れ落ちようとそのまま床で寝てしまおうと
構わないがスタースクリームから力が抜けた瞬間腕が勝手に背に回り
抱き起こしてしまった。
やはり、俺も身体の中を弄られてるのだろうか。そんな疑問が湧いたが
それよりもまずは腕の中の航空参謀をどうにかしなくてはいけない。

「てめぇは乱暴すぎるんだ」
「身体がでかすぎるてめぇほどじゃあねぇぜ」
「…」

助けを求めて視線を送ったがやはりこちらに顔を向ける気配はない。
仕方がない、と姫抱きにして立ち上がると自室へ向かった。
手のひらに埋め込まれている認証チップで扉に手をかざせば勝手に開くそこを
スタースクリームを落としてしまわないように何度も抱えなおしながら
手を押し付けて開いた。


「…」
「…のんきな野郎だ」


何が創造主だ。馬鹿なんじゃねぇのかこいつは。
コンポーネントから作り出されたわけじゃなく身体を鉄屑から作り
コンポーネントとの接続と身体の安定率の調和をとっただけじゃねぇか。
それは自分にはできない、もしかしたらデストロンでもそんな事出来るのは
こいつだけかも知れないが創造神ベクターシグマを気取るには馬鹿げてる。

寝台に横にして適当な布をかけておけば十分だと
腕からスタースクリームを放すと背を向けて寝室を出た。
数時間寝かせれば十分だろう。そしたらブルーティカス時の駆動域の
チェックをしてもらいたい。後スクランブル合体システムが不具合を起こしてる。
何だかんだで俺らの面倒を見れるのはこいつらだけなんだ。

扉を閉めて外からロックをかける。
中からも開けられるが外からは自分にしか開けられない。
メインルームに戻ってこの間の報告書の続きでも作ろう、メガトロン様の
催促が来る前に作り終えておきたい。

足を一歩前に出す前にその前に2体が並んだ。
顔を上げればそれがボルターとブレストオフだとわかる。

「…なにやってる」
「そりゃこっちの台詞だぜオンスロート」
「てめぇ、何勝手してやがる」
「どこでも寝かせられれば一緒だ、お前らの寝室でも問題なかった」
「じゃあ」
「口論が長引いてスタースクリームが落ちちまったんだ」

仕方がない、自分のせいじゃない。といえば
2体は黙るだけである。なんだかんだでこいつらは口も素行も悪いが
自分をコンバットロンのリーダーとして認めてくれている。


「じゃあ起きるまで近くに」
「静かにさせてやれ、疲れてる」
「なんだオンスロート。スタースクリームの肩を持つのか」
「違う、早くメンテナンスを済ませたいんだよ俺は」


お前らと一緒にするとな付け加えるとそのままメインルームに向かった。
2体は少しだけスタースクリームを諦めきれない様子だったが
起きてからまた構えばいいだろうと腕を引っ張った。

まったく、コンバットロンはどうもスタースクリームを構いすぎる。






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「スタースクリーム」
「スタースクリーム」
「だぁ、うるせぇ!メンテナンス中だ!黙ってやがれ!」

コンバットロンはひよこみたくスタースクリームの後ろをついて回って欲しい。
悪い奴らなんですが「オンスロートがやってくれるよ」みたいな
リーダー頼りの所とかスリングに上に乗っかられて(´;ω;`)<助けてー
って言ってるところは本当可愛くて涙出る。

メガ様の言うことを聞くようになった後のブレストオフの格好よさは異常。
人間が仕事してるところをお手伝いするところとか最高に可愛いと思います(!?)
ブレストオフは実はアストロのスペースシャトルと同じ変形機構だから
案外変形について話し合ったりとかしてても良い。「最近調子が悪くてよ…」とか