「頼んだぞ!ソナー!!」 相棒は困ったように、しかし頼んだといわれたのが嬉しかったのか電子音で 返事を返した。 笑顔 まぁ、簡単に言えば俺はスタースクリームの笑顔を見てみたいわけで。 しかも口元だけでニヤリとか、マイクロンと遊んでる時のちょっとだけの微笑みとか じゃなくて本当にちゃんと笑ってる笑顔が見たい。 「って言ったらソナー!お前しかいないんだ…!」 電子音を鳴らしながら任せろという相棒に笑いかける。 笑ったところを写真で取ってきて欲しい。写真というか、ソナーが 真正面からその笑顔を見ることが出来れば後々ソナー自体を媒体にして 再生すればいいんだから簡単だ。 ソナーを小脇に抱えてスタースクリームを探すとソナーが鳴いた。 ソナーは探査車に変形できる分、誰がどこにいるのか気付きやすい。 与えられた部屋にいるとソナーが教えてくれるままに会いに行くと確かに居た。 当然しかめっ面で。 「よー」 「…」 「そんな顔すんなよ。ちょっと頼みがあるんだ」 「…頼み?」 「ソナー、見ててもらえねぇかな?俺仕事でさ」 「連れて行けば良い」 「それができねぇんだよ。頼む、な?」 「…」 あ、訝しそうな目してる…疑われてるこれ… 「コンボイは」 「司令官も忙しくて、お前ならって思ってさ」 「…マイクロンを預けて良いのか?私に」 「いいよ!お前が適任なんだって!」 ちょっと無理がある押し通し方をしたけど スタースクリームは驚いたように目を見開いた。 いいよ、スタースクリームがマイクロンに何かするはずない。 デストロンのところへ持って行ったりしないのは火星での出来事でもうわかってる。 「…わかった」 「有難よ!」 ソナーを手渡しするとアイコンタクトでソナーに「頼んだぜ」と合図した。 グリッドがスタースクリームの肩より降りてきてソナーとじゃれ始める。 あぁ、グリッド頼む邪魔しないでくれな。後で飴ちゃんでもなんでもやるから。 半日でも時間を空ければいいだろう。 実際本当に仕事が入っている。別にソナーを連れて行けない仕事ではないのだが 戻ってくるのは夜になるだろう。 「頼んだわ、じゃあ」 「ああ」 スタースクリームのマイクロンへの面倒見は本当良い。 どうなるかが楽しみだなぁ、と仕事へ向かった。 * 思いのほか遅くなってしまった、怒っているかもしれない。 ゆっくりスタースクリームの寝室に入るとスタースクリームの名を呼ぼうとした。 その前に電子音が耳につく。ソナーだ。 「ソナー」 しゃがむと嬉しそうにとたとたと走りよってくる。 「楽しかったか?」 何度も頷き何度もジャンプし、興奮した様子だ。 楽しかったのはいいんだけどちゃんとやってくれたのか心配になる。 スタースクリームは?と聞くと口元に指を一本当てて「静かに」っと言われる。 首を傾げて立ち上がるとわかった。 「あーあー、大変だったろこれ…」 スタースクリームは床に座っていた。 その膝の上にはシャトラーとグリッド。ジェッターは両腕で抱えて、マッハは肩。 更にソナーの面倒まで見ててくれたんだから大変だったろうに。 悪い事をしたなぁと目の前まで行ってしゃがみ込むとギクリと身体が強張った。 「ス、スタースクリーム…?」 「…」 寝てる。寝てらっしゃる。 まじで?と顔を覗きこむがその目に光は灯っていない。 寝顔!と思わず食いつくように見るといつもの表情より穏やかで 微かに寝息を立て身体を揺らすスタースクリームは初めて見るものだった。 うわぁ、からかってやりたい。こういうのって僥倖って言うよな。 それから無理頼んでごめんな!って抱きしめてやりたい。 しかしここは我慢だ。紳士に、なんたって俺は天空の騎士だし。 「スタースクリーム」 「…」 「そんなとこで寝るなよ、寝台使えって」 「…ぅ」 「…起きたか?」 「…キサマ…は」 「ジェットファイヤーです」 「…遅い」 ごめん、と謝ってエネルゴンを渡すと「?」といった表情をした。 お礼だよ、と出来るだけ微笑むと顔をそらして「ふん」と鼻を鳴らす。 「ほら、ソナーも喜んでっし」 「…」 「忙しいのに悪ぃな」 「…別に構わん」 スタースクリームをジャングルジムのように扱っているマイクロンたちも 目が覚めたのか電子音を鳴らし始める。 「その、さ」 「…」 「今度一緒飲まないか?」 「なに?」 「お礼だよ」 スタースクリームは顔をしかめて今渡したばかりのエネルゴンをみて お礼…?と呟いた。もう貰ったと言いたいんだろうがこれだけで終わらせる つもりはない。 「思った以上に重労働になったみたいだしよ」 「…別にそこまでされる覚えは」 「あぁ!良いんだよ…!俺がしたいの、お礼!」 「…そうか」 「だから明日夜俺の部屋こいよ、な?」 「…」 微かに、だが一度だけ頷くのを見て 寝顔を見たときに手ぇ出さなくて良かった。紳士でよかった。 * その日はどうしても疲れててソナーのデータを漁ることが出来なかったが 次の日、仕事を終えた後にソナーを呼んだ。 「ソナー、撮れてるか?」 電子音で返事が返ってくるとソナーを部屋にあるモニターと繋いだ。 やはりソナー自体が記録に特化したタイプではないから途切れ途切れだ。 映像をモニターに映すがなんていうか視点が低すぎてスタースクリームの顔が 見づらい。 そのうちマッハ、ジェッター、シャトラーがやってきてスタースクリームの脚に じゃれ付いてソナーに気付くと絡んできて一度スタースクリームが視界から消える。 くるくると回されるように遊ばれれ視界が大分落ち着かない。 『あぁ、やめろマッハ』 「!?」 なんか、いま、凄い優しい声が。 『大丈夫か?ソナー』 視界に金属の手が映りこむ。 多分、腰の辺りを両手で持たれて持ち上げられると スタースクリームの眼前まで高さが変わった。 思わず停止ボタンを押す。笑顔ってほどじゃない、けど笑っている。 口元を緩ませてソナーの名前を呼んでいる最中だから「ナ」の口で小さく首を 傾げている。 最初は微笑む位じゃなくてちゃんと笑顔、って言ってたけど この笑顔は、なんていうか大満足です。ソナーに有難うを言った。 「この静止画保存しといてくれ」 頷いたソナーの頭を撫でながらモニターを消すと 丁度扉のブザーが鳴った。 「は、はい?」 『スタースクリームだが…』 「あっ、あぁ!今、あける」 約束通りきてくれた。顔がにやけるがマスクがあるから大丈夫だ。 扉を開けると肩にグリッドを乗せたスタースクリームが居た。 「どうぞ」 「…あぁ」 もてなそうと上質なエネルゴンも用意できたし部屋も片付けた。 スタースクリームが嫌がりそうなものも全部片付けて、上品な机も用意した。 「…案外綺麗だな」 「当たり前だろ?」 あくまで紳士らしく。あくまで丁寧に。 そうすれば俺にもあの微笑を向けてくれるだろ? --------------------------------------------------- 「変態という名の紳士だよ!」 頭の中妄想だらけのまったく紳士じゃない副指令。 自分で自分の事「天空の騎士」とか言っちゃう副指令に敬礼!