曲がり角の向こうには 破壊大帝と航空参謀がいて 自分と、最近失恋したらしいジェットは だらしなく床に座り込んでいる。 「…」 「…」 曲がり角の向こうから聞こえる会話。 顔を見なくてもどんな表情してるかわかる声色。 「スタースクリーム」 「…く、くすぐったいですよ…」 「こちらを見ろ」 「…メガトロン様」 何をしてるんだかしらないが こっちにまでラブラブした雰囲気が飛んでくる。 やっぱりスタースクリームは俺には無理なのか。なんて思ったりして そりゃそうだ。当然だ。あいつにはあの我らが破壊大帝がいるんだからよ。 ちなみに隣に体育座りして泣きじゃくってるのはスカイワープ。 顔を脚に押し付けてぐすぐす言いやがって メガトロンにふられたんだと。 玉砕覚悟で誘って、「お前は大事な部下だ」と言われて 「部下には手をださん」って言われて、恥ずかしくて メガトロンを直視できないからって影から見つめ続けて こんなところまで目撃しちまって。 可哀想なやつだ。 「…っふ…っう…う」 「…」 「えぐ…ぐ…うう」 「…うっせぇよ」 「うるせぇ!うる、せ」 「…泣くなよ」 こっちで鬱々してる俺らと違ってあっちはやっぱりいちゃいちゃしてるし 隣は全然泣きやまねぇし、俺も泣きてぇってんだよ。 まぁ、「部下には手をださない」って言われて部下に手ぇ出してるとこみたら 泣きたくもなるよなぁ。お前は自分の好みの圏外だって言われてるようなもんだ。 えぐえぐ煩い紫と黒のジェットのインテークを鷲掴みして引き寄せた。 体育座りの格好は解かずそのままことんと胸に倒れてきた頭をがしがしとかいてやる。 「泣くな」 「な、ってな、い…」 「俺も泣きてぇ」 「…っす…ず」 「鼻すすんな。きたねぇなぁ」 「…うせ…よ」 「まぁ、俺は泣くに泣けねぇ性質だから泣くなら俺の分も泣いといてくれや」 「…ん…む…っつ」 「…」 ぱたぱたと自分の胸にスカイワープの涙が落ちた。 ずずっとすする音に涙の落ちる感覚。あぁ、泣いてるなぁ。 気付けば俺の意中の相手は声も聞こえないどこかへ行っちまったみたいだし。 まだまだ泣き止みそうもない航空兵は胸にしがみ付いてくるし。 「…まったく、やんなんなぁ」 まだ俺たちの失恋は拭えそうもない。