ごみ箱




「似てねぇよ」

雪が降る中、彼はそう言って笑っていた。



雪上

 


「…スカイファイアー?」
「…スタースクリーム」
「なんだ…寒いのにご苦労なこったなぁ?」


スタースクリームがまさかこんな所にいるなんて。スカイファイアーは驚いた。
背中を向けて、こちらを見ないスタースクリーム。
長い時間いたのだろうか、身体に雪が積もっていた。
メガトロンが3時間前、子供達を楽しませる為にコンボイ司令官が用意した
プレゼントを兵器と勘違いして攻撃を仕掛けてきた。
その際にスタースクリームがいないのは分かっていたがまさかこんな所に居たとは

町も何もない、大雪の降る雪原。


スカイファイアーも見落とすところだった。
プレゼントを配り終わり、基地に戻る最中に赤い物がチラリと目に入った。
最初は人間がまさかこんな所に?と思った。そしてこんな所に居たら
死んでしまうのではないかと心配になった。
そして近寄った次に思ったのは人間より大きい事がわかり、もしかして噂の
サンタクロースか?と、まだ見ぬ存在を期待してしまった

スカイファイアーはサンタクロースを知らない。
赤い服に白い大きな袋を持って子供にプレゼントをあげて回るんだ。と
スパイクから聞いた、そんな人間がいるなんて…凄い人だろうと思った。
そんな凄い人間だ。もしかしたら人間より一回り以上大きいかもしれない。
そう結論を出していた。

しかしすぐ近くまで来て気付いた。
旧友だと言うことに。


「君は何をしてるんだ」
「…別に。子供にやるプレゼントと兵器を勘違いしてる馬鹿リーダーを
 放ってのんびりやってるだけだ」
「ここでかい?君は寒いのが苦手だったと記憶してるんだが…」
「あぁ。寒いな」
「…なら何故こんなところに」

小さく「うるせぇな」と呟いたのは聞き逃さなかった。
しかしおかしい、いつもより覇気がない。
普段なら怒鳴りつけて撃って来てもおかしくない。

「スタースクリーム…具合が悪いのかい?」
「あぁ?ちげぇよ、触るな」

スタースクリームの腕を掴むとそれを振り払うように振り向いた。
身体に積もっていた雪がぱらぱらと周りに落ちる。
触れて分かる、冷たい。すごく。

「こんな冷えて…」
「サイバトロンが敵の心配か?笑わせるな…」
「そんな」
「どけよ」

触れた腕を放せない。こんなにも冷たくなった彼を放っておきたくない。

「……んだよ…」
「…冷たい」
「っ…触るなよ」

頬に手を置くとそこも冷えていた。
身体中冷たい、金属生命体だからと言って体温がないわけではないし、金属
だからこそ、冷やそうと思えばどこまででも冷えていってしまう。

「…頭も、雪が積もってるよ」
「触るなって…!おいっ…!」

逃げようとするから掴む。振り払おうとするから引き寄せる。
身体が密着したから抱きしめる。スタースクリームは抱きしめられて
酷く驚いたようだった。

そういえば、彼に触れたのは何ヶ月ぶりだろう。暫く会ってもいなかった。
私が復活した日から、スタースクリームは私を避けるから。

抱きしめたまま頭や羽に積もった雪を落としてやった。
撫でるように優しく払うと雪は小さい音を立てて雪の上に落ちた。

「スタースクリーム」
「…はな、せよ…気持ち悪いんだよ。お前…」
「…すまない」
「もうお前にこうやって触れらせるつもりはねぇよ…嫌いなんだよ」

元からそんなに強い力ではなかったが、彼の発言、声質で抱きしめていた腕の
力を緩めた。その隙に彼は逃げた。
後ろに飛び退くように数歩下がって睨まれる。
しかしその表情に寂しさが浮かんでいたのを見逃すことはなかった。

スタースクリーム。どうしてそんな顔をする?
自分で触られたくないと言ったじゃないか。
自分で嫌いだと言ったじゃないか。

「そんな顔をしないでくれ」

思っていたことが口を割ってでる。
一度驚いた顔をしてスタースクリームは下を向いた。
彼の翼にあるデストロンのインシグニアがなければ。
それがなければ私はサイバトロンには入らなかった。

「雪が凄いね…」
「…あぁ」
「スタースクリーム…君は上半身が赤いからさ」
「…あ?」
「サンタクロースと見間違えてしまったよ」
「はぁ?」
「雪が凄くて視界が悪いし、君は雪塗れで赤と白しか見えなかったから」

困惑した顔でやっと顔をあげてくれた。そうだ。これが君らしい。

「はっ…馬鹿じゃねぇの…」
「うん。そうだね」
「似てねぇよ」

雪が降る中、彼はそう言って笑っていた。
笑い方が研究所にいたころにそっくりだ。

「スタースクリーム」
「…?な、に?」

大股で詰め寄る。
スタースクリームが驚いて後ろに下がる。
両手首を掴んでそれを阻止した。

「なんだよ!またてめぇっ…!」

触れたい。

「キスするよ」
「は」
「したい」
「なっ…だっから、ざけんな…」

身体を屈めて顔を覗き込むようにして近づける。
スタースクリームが俯いて口に触れられない。
それならば仕方がない。

額に口を押し付ける。
ちゅっと音を立てるとスタースクリームはびくりと身体を動かした。

「君はデストロンだから。口にはしないよ」
「……てめぇなんて…復活させなきゃよかった!」

足で腹部を蹴られるようにして離れたスタースクリームを追う事が出来なかった。
痛かったからではない。今度追えばきっと額では収まらないから。
背中を向けてトランスフォームするとスタースクリームは捨て台詞もなしに
飛んで行ってしまった。


「…スタースクリーム」


君がこんな雪原にいた理由は。

「ここは私が墜落した場所だね」

これが私の妄想ではないことを、願うよ。




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…クリスマス関係ねぇ…いいんだ…だって…更新したの26日だもの…(遅刻)
最初は最後の額ちゅーシーンなかったけど急遽付け足した。
そしていらなかった…と後悔してる…

一回書いたけど全部書き直しました。
最初はスカファがプレゼント配ってる最中だったんですがやめた。
そしたらクリスマス関係なくなった。\(^o^)/

自分の中でジェットロンは寒いの嫌い。
その中でもスタスクは雪が嫌いなイメージが強いなー。