ごみ箱







「……………………誰だ」
「サウンドウェーブ。見りゃ分かるじゃねぇか」

自分の隣をとことこ歩いて居た小さい相棒。フレンジーが笑いを堪えながら言った。

「スタースクリームだ!!ぎゃははははは!」

これがスタースクリーム…?

「随分縮んだ」
「どうしたい?スタースクリームぅ!実験が失敗でもしたかい?」
「………俺様はスタースクリームじゃねぇぞ」

目の前の小さい小さいスタースクリーム。フレンジーと同じか…いや、少しだけ大きいか…?
外見、色は見間違うことなくスタースクリームだ。
あえて言うならスタースクリームがまんま小さくなったと言うよりは
顔が幼くなった気がする。潰れたと言ったほうが早いか…?

「あぁー?だってどっからどうみてもスタースクリームだよなぁ?もしかしてスカイワープとか?」

配色ミスの!ぷぶっ!と笑うフレンジー。
何がおかしいのかフレンジーは口の端から息を漏らしながら笑いを堪える素振りをしている。

「…ならお前は誰だ」
「俺はスタスクだ!」
「ぶぁはっははははは!!」

いてぇ!腹がいてぇよ!サウンドウェーブぅぅ!!
リペアしてくれリペアっギャハッハハハ!

………ため息すらもでなかった。


*

「と、言う訳で俺はスタースクリームのコピーだ!」
「スタースクリームもその技術を少しでも他に回す気ないのかね…」

フレンジーはリペアする必要もなく腹の調子は大丈夫らしい。
今は自称スタスクに興味があるらしく、肩に触れ、頭に触れ、翼に纏わりつく。

「何のためかは聞いているのか?」
「自分と同じくらい優秀で同じ思考を持った情報収集係が欲しいって言ってたな。
スピードは若干落ちるけどこれくらい小さくないと情報収集能力を発揮できねぇって。」


……カセットロンは俺を通す。そして俺はメガトロン様に通す。
スタースクリームが自分のミニクローンを作った理由は『自分だけの情報』が欲しいからだろう。
わかりやすい馬鹿め。しかり気がかりはこれだ。

「お前あんまり嫌がらないなー」
「んー」

フレンジーが翼に跨がり、飛べと言うとスタスクは特に嫌な顔もせずトランスフォームした。
フレンジーも冗談で言ったのだ。言う事を聞いてくれたスタスクに驚き戸惑いながら
ゆっくり小さいF-15の機体を撫でる。
何も言い返さずにキャノピーをなでられ、落ち着いた様子だ。
コピー、クローンなら性格が酷似していてもおかしくないはずだが。

「…スタスク。ちょっとこっちにこい」

フレンジーを降ろすとトランスフォームして足元に歩み寄ってくる。
そのままブレインスキャンをかけると面白い事がわかった。

「サウンドウェーブ?」
「からっぽだ」

こいつの頭の中には大した考えなんてものはない。
あるのは必要最低限のメモリ。
言語能力と状況認識。自分の存在意義と作られた理由。作ったロボットであるスタースクリームのこと。

「こいつにはまだ自我がはいっていない。嫌な事。良い事。イマイチわかってない。」

本当必要最低限は分かるみたいだが。
スタースクリームが追加メモリを入れ忘れたか。途中だったか。
それとも下手に考え起こされて、裏切られないようにわざとか…
スタスクと名乗るコピーはきょとんとするばかりだった。

「えー…じゃあこれってスタースクリームの形してるけどほとんど別物?」
「これって言うな!」
「基盤がスタースクリームだ。ある程度は似ているだろうが、クローン・コピーと言うには失敗と言って良い」

目の前にいる小さな存在の脇の下に手を差し込んでそのまま持ちあげると小さく驚きの声を上げた。

「ぅあ!」
「………」
「…なんだよ!」
「見ているだけだ。じっとしていろ」
「…………」

…命令は聞くようだ。
戦闘能力は持ち合わせているんだろうか?
このサイズでスタースクリームと同等の火力・スピードなら戦力にはなる。
後は、裏切らないようにできればメガトロン様に差し出すにぴったりだ。


「俺が誰だかわかるか」
「……サウンドウェーブ」
「俺の何を知ってる?」
「……名前と…情報参謀…」
「…………」
「……だけ…」


持ち上げたまま眺め続けていると斜め下からの視線に気付く。
フレンジーだった。

「サウンドウェーブー」
「どうした」
「…可哀想だから降ろしてやってくれよ…」
「可哀想?」

視線をスタスクに戻すと俯いている。
顔を覗き込むが無表情と言うか口を一文字に結んでいて
感情が読み取りにくい。簡単なブレインスキャンをかけると「怒られている」と言う感情が読み取れる。


「叱るつけているわけじゃない」
「………は、破壊されるのか?」
「……」
「サウンドウェーブ…壊すのか?」
「……」


フレンジーは随分とこいつが気に入ったように見える。
サイズが似たり寄ったりだからだろうか。同族意識みたいなものか
ため息を吐いて床に降ろすとフレンジーがすぐさま近寄った。


「破壊しない。壊さない。フレンジー。」
「え?あ、何?」
「見張っていろ。スタースクリームが悪用する可能性がある」

スタスク単体なら害はないだろう。上手く利用すればメガトロン様に従順な僕になる。
ただ、自分のオリジナルにメガトロンの暗殺だの、監視だと命じられれば高確率で従うのも目に見えてる。
破壊するのが一番手っ取り早いのだが、多分自分のカセットが止めに入るだろう事が今見る光景でわかる。

フレンジーがスタスクを随分気にかけ、大丈夫か?こいつは良い奴だから!怖くねぇよーと声をかける。
自分の弟のように思っているのか、あやす様な動作が目に付く。
面倒なものを拾ったな。


*


「…あいつ…どこ行った!?」


コードに繋ぎとめておいた自分のコピーがいなくなっていることに気付き
スタースクリームは大慌てで自室を探したが、その時自分のコピーはサウンドウェーブの部屋にいた。


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続きません。
ちっこいスタースクリームがサウンドウェーブに持ち上げられるの書きたかっただけでした。
続きも考えてはいたんですが無駄に長くなりそうだったんで。ここで切り止めます。


続き希望の方が結構いたのでオマケ…↓




懐いてきた頃のすたすく君。

「サウンドウェーブ」
「どうした」
「フレンジーは?」
「今は寝ている」

そういってサウンドウェーブは自分の胸元を一度撫でる。
フレンジーは今日の戦いでかなり疲労していたから暫く起きないだろう。
小さいスタースクリーム。自称スタスクはとことこと近くまで歩いてきて足元で飛ぶと胸部前で止まった。
そうしてフレンジー達が眠る収納場所に触れる。

「ここにいるのか?」
「そうだ」
「俺は入れないのか?」
「…お前はジェットであってカセットではない。不可能だ」
「………」

少しだけしゅんとするとスタースクリームは俯いた

「怒ったわけではない」
「わかってる」
「どうした?」
「……俺も」
「?」
「俺もフレンジー達みたいにお前とひとつなら良いのに」

目を細めるスタスクの顔をみてサウンドウェーブは思う。
こんな表情をスタースクリームはできるのだろうか?見たことがない。
やはりスタースクリームとスタスクはまったくの別物だと判断できる。
別物だと判断するとあの憎らしいスタースクリームと同じ顔でも違う感情が芽生えるものだ。


「仕事が残っている」
「…あぁ、邪魔しねぇから」
「いや、膝の上にでもいろ」
「は?」
「少しでも近くに居れば良い」

そういえばスタースクリームはきょとんとしながらも胸元に寄り添ってきた。




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ここで終わるw