ごみ箱





 クリスマス
 


「どうした」
「……どうしたもこうしたも…ねぇでしょうが…」


メガトロンはメインルームで仕事をしていた。
基地内には誰もいない。いるかもしれないがここにはこないだろう。

『今日は地球でクリスマスというものがあるらしい。数日間は全員好きに過ごせ』


メガトロンのたった一言。
その後に地球外にでても構わんと呟いてメガトロンはメインルームに篭った。

デストロン軍団はクリスマスを知らなかった。
一部を除いて全員が「クリスマス」を検索する、「聖夜?」「誕生日?」と
検索しながらぼそぼそと喋る。そして最終的にでた結論は

『好きな者と過ごす日』

デストロン軍団はメガトロンの唐突な休暇を喜んだ。
仲間を誘っての飲み。地球外にでて賑わう惑星に遊びに行くものもいた。
セイバートロン星へ戻るものもいた。

スタースクリームもジェットロンと混ざるつもりだったが
全員が好き勝手に相手を選びどこかへ行ってしまった。
「普段から一緒にいるんだしよぉ」「たまには別の奴誘っても良いだろ?」
スタースクリームに反論はなかった。しようがなかった。

そうして一人メガトロンの傍にいるのだ。

「好きに遊んで来い。いつもは仕事をしろと言ってもしないではないか」
「……サンダークラッカーも…スカイワープも…」

スラストも…他のジェットロンも…他の奴らいなくてとぼそぼそ呟く。
メガトロンは仕事していた手を止めてメインルームには言ってきてから
動かないスタースクリームの方を振り返った。
見れば口を尖らせて酷く不満げだ。構ってくれる奴がいなくて
拗ねているようだった。

「儂は仕事があるからな。自室へ戻れ」
「……」

そう言ってまた仕事をするためにコンソールに触れたが
後ろから退出する気配はない。
無言でメガトロンはカタカタと仕事を続けた。

他の連中は楽しんでるのに自分だけいつも通り過ごすのが嫌なんだろう。
そうは言っても今はこの仕事を仕上げなければいけない。
とてもじゃないがスタースクリームを構ってやる時間はない。



「メガトロン様」
「………」
「…仕事終わったらで良いんで…」
「……終わる頃にはクリスマスは終わってるぞ」
「……」


スタースクリームはとぼとぼ歩いてくる。足音でわかる。
少しかったるそうに脚を引きずりながら、ゆっくり後ろまできた。
無言でモニターを眺めていると後ろからにゅっと腕が伸びてくる。
少し驚いたが肩の上に肘を乗せられ、そのまま身体の前に腕は
だらりとしたままだ。

冷たい身体だ。自室の方が温かいだろうに。

「メガトロン様、ホワイトクリスマスって知ってます…?」
「確かクリスマスの日に雪が降った時の名称だったと思ったが…」
「そうです」
「雪は降らなかったな」
「…もう少し、北に行くと…降ってるらしいですよ…」
「……」
「別に雪が見たいわけじゃねぇけど…」

スタースクリームはメガトロンの後頭部に頭を押し付けたままじっとしていた。
メガトロンはカタカタと指を止めずに続けた。
スタースクリームは期待せずに言った。なので無反応だったことに
悲しくなることもなく何の感情もわかなかった。


*


スタースクリームがその体勢のまま、暫くたった。
メガトロンと自分との間にある椅子の背もたれがウザイと
スタースクリームは思っていた、メガトロンの頭と肩だけに触れている
部分が暖かい。
いっそ前に回って、いや、仕事中だしな、前に回ったら流石に殴られるか。
スタースクリームはとりあえず一人で過ごすことにはならなそうで安堵した。
メガトロンでも良い、誰でも良い、こんな日に一人で過ごすなんてのは嫌だ。
そんな状態でうとうとする。

「眠いのか?」
「…いいえ」
「…スタースクリーム」
「…はい…?」
「仕事が片付いたぞ。全部ではないが…区切りがついた」
「…はい」
「どうする?眠いなら部屋に戻るか?」
「……ん」
「雪、見にいくのか?寝るのか?」

あぁ、どっちでも良いな。
メガトロン様どちらが良いですか?
俺様はニューリーダーの器だから…

「…スタ…リー…、ス…」

聞こえない。



*



「起してくださいよ」
「何故儂がそこまで面倒みるのだ」
「…あーあ、せっかくの休暇…寝て過ごすなんて…」

「まだ数日残っておる。クリスマスは終わったが、見に行くか?」
「…寒いからこのままで」
「我侭な奴だな」

スタースクリームが目を覚ますと相変わらずメインルームだった。
そしてやはり後ろからより前の方が暖かかった。



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クリスマスおわっちゃったww
本当はクリスマスにあげるつもりでした



オマケ


「邪魔だ。起きたなら退け」
「いやー…ここ温かくて」
「なら暖房をつけろ。コンソールが弄りにくいわ…」
「……後で手伝いますから…」
「……」