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ごみ箱






定期的に降る雨はやたらと顔をぬらした。

 

 

 
 
暖かい雨

 


 


「やまねぇなぁ」

雨が降ってくる。
スタースクリームは近くの岩に座り込み、空を見上げていた。
どんよりとしていて雲がかった空。灰色が多い尽くしていて青が見えない。
いっそ晴れたところまで飛んでみようかと思ったがやめた。

「鬱陶しいな」

正確には先ほどあまりにも雨がやまないので移動したのだが雨がついてきた。
スタースクリームの目には自分より数メートル離れたところは降っていないように見えたのだ。
何だ。数歩あるけば雨から逃れられると移動すると雨は自分を追って移動してきた。

この雨には意識があるのだろうか。
自分が移動するとついてきて、時々自分を置いてどこかへいなくなる。
時々さっとやんで、時々大降りになって。


「最悪」


びしょびしょだ。

 

 

*

 


今日も雨だった。スタースクリームは腹部を一度だけ撫でた。
少しだけ熱い。自分以外のスパークを感じつつキャノピーに目を落とす。
未だに信じられない。というか信じたくないだけかもしれない。自分以外のスパークが体内にあるなど。
このスパークを大事に思ったことはあまりない。スカイファイアーがうきうきしながら
「機体はどうしようか?」とか「名前はもう決めているかい?」とか言うもんだから若干楽しみになってくる気がするが
そんなの一時の気分だし、スカイファイアーははっきり言って気が早すぎる。何年先の話だってんだ。


雨が生ぬるくて、長時間浴びてると寒くなってくる。
今ではこのスパークの暖かさだけが頼りだ。身体を両手で抱くと少しだけ暖かかった。
あんまり雨がやまないもんで、どんどん気分は落ちてくるし。ここそういやどこだっけとか思うし。

「こいつは寒くないのかよ」とか。俺らしくもねぇ。

 

「寒いな」

返事はない。地平線が見えるこの広い大地に自分しかいないのだから。当然といえば当然だ。

「スカイファイアーがよ」

「お前の機体を何度も何度も考えてるみたいでよ」

「なんだっていいじゃねぇかなぁ」

「手と足先は絶対青とか」

「エアインテークは両肩に赤でとか」

「それまんま俺だろ…とか」

「寒っ…」


どんどん声が小さくなっていく。
むしろ眠い。意識が落ちそうになる。雨もやまねぇしよ。

スタースクリームは暖かいスパークを抱え込むようにしていたのだが
後半は暖かさを求めるよりも雨に濡れないように抱え込んでいた。
背中に雨が強く当たる。これまた生ぬるいし。俯いてるのに顔すげぇ濡れてるし。
時々膝とか、腹部とかいてぇし。


「俺は機体は白一色でも良いと思うんだけどよ。ワンポイントで色入れてもいいよなぁ」

「少しだけ赤が入ってたら映えがいいだろうし」

「羽は可動式にしてよ」

「寒くないか?」

 

ブレインサーキットが落ちていく。
だめだ。こんな寒いとこで寝るのは機体を損傷させる原因になる。
またスカイファイアーに怒られるじゃねぇか…
ここには俺しかいねぇのに、誰がこいつの話相手になんだよ。

そういやスカイファイアーどこいったんだよ…

 

*

 

 

 


「つめてぇ…」

「スタ…スクリーム…」
「はぁ…疲れた…」
「お疲れラチェット。久しぶりに良い仕事したんじゃないか?」
「デストロンを直すことがか?」


顔がびしょびしょだ。
視界が開けると天井とスカイファイアーの顔が見えた。
ぼたぼたとスカイファイアーから液体が零れてくる。目から冷却水がたれてきて頬を伝い落ちた。


「……?スカイファイアー…?」
「……スタースクリーム…」
「……なに?」


腕が動かない。膝が痛いし。なんだ?
ここデストロンの臨時基地だよな。

身体を起こそうと少し軋ませるとスカイファイアーが身体を押し返してきた。

「ダメだよ。まだ動いちゃいけない…」
「…っ…なんだ?」
「気がついたようで何よりだけどね、スタースクリーム」
「……?」

目線だけを横に向けるとそこにはサイバトロンのラチェットがいた。
なんでデストロンの基地内にサイバトロンが?と思いつつさらに周りを見ると
メガトロンもいるし、その後ろに居るのはコンボイか?
スカイファイアーが圧し掛かってきているのであまり周りが見えないが
扉の近くに居るのはもしかしてスカイワープとサンダークラッカーか?
あそこにいるのはマイスター?なんだ、この状況…


「すまない…私が近くに居なかったせいだ…私が近くに居れば…」
「……はぁ?」
「こんな大怪我することもなかっただろうに…」
「怪我?」
「1週間も目を覚まさなくて…凄く心配したんだよ…」
「…一週間も…?」


まったく思い出せない。怪我何てしたのか?なんでだ?
つかいい加減泣き止めスカイファイアー。顔動かせないんだから顔中びしょびしょじゃねぇか。


「スタースクリーム!馬鹿やろうっ!」
「スカイワープ…お前まで何…」

スカイファイアーを突き飛ばしてスカイワープが視界に入ってくる。
こいつまで泣いてるしよ…オイルもったいねぇな。つか濡れるからよせって。

「大げさじゃねぇか?」
「一回スパークの活動が限界まで落ちて大変だったんだぞ…」

スカイワープの後ろでサンダークラッカーが小さく言った。
サンダークラッカーの馬鹿。目元の装甲削れてやがる。擦ったんだな。


「まったく…この愚か者め…」
「メガトロン様…」
「コンボイに頼んでラチェットを呼んでもらっても治療に5日間かかったのだぞ。この馬鹿者が」
「グレンとラチェットで交代にリペアして、スカイファイアーが付きっ切りで看病したんだぞ。スタースクリーム」
「コンボイ…」


なんでそんな大怪我したんだ?うーん。わかんねぇな。

 

「……こいつは?」
「ん?」
「…俺のじゃねぇスパークは?」
「無事だよ…君が懸命に守ったおかげでね」
「はぁ?何いってんだ…」
「お前は行方不明になって発見まで2週間かかった。その間スパークを痛めないように身体を丸めておったのだろう?」


夢の中での内容が思い返される。
違う。温かかったから丸くなってただけだ。守る為?馬鹿馬鹿しい。
こんなスパークいつなくなっても構わねぇ。スカイファイアーが少し悲しむだけだ。

ぎしっと鳴らして腕を微かに動かして腹部からキャノピーを撫でる。
若干暖かい。意識が落ちていた間ずっと近くに感じていた暖かさだ。

 

「スカイファイアー」
「…なんだい?何かほしいものが?」
「お前が泣くせいで寒かったじゃねぇか」


雨はてめぇだろと呟くとスカイファイアーは首をかしげた。

 

 

 

 

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スタスク流産の危機(!?)
スパリンでスパーク破壊されると零れるって言うか拡散って言うか
液体なんだか電子なんだかよくわからん感じだったけど実際どうなんだろうか…
こんな大怪我の理由は各自妄想してください(投げるなww)