ごみ箱










メガトロンはコンドルとフレンジーを見ていた。
破壊大帝がこういう顔をするときは何か変なことを考えている時だとサウンドウェーブは静かに思った。








「フレンジー」
「はい?なんですボスー」
「先ほどから何をしておる」
「コンドルの胸を撫でてるんですぜ」

コンドルが基地内のデスクの上、ポールの上などにいるとフレンジーはコンドルを構ってやる。
コンドルが首を傾げれば胸元を撫でてやるし頭を下げれば頭を撫でてやる。

「鳥は頭か胸元を撫でると喜ぶ」

サウンドウェーブが背後からメガトロンに一言付け足すと「ふむ」と顎を掴んで唸った。
興味深いと呟いてコンドルを眺めるメガトロンは破壊大帝というよりも研究者のようにも見える。
しゃがみ込んでコンドルと撫でるフレンジーをまじまじと見るメガトロンをサウンドウェーブは眺めていた。

「うお!」
「おっと、すいませんなぁ。メガトロン様。そんなところに座ってると粗大ゴミみたいですぜ?」
「…絶対お仕置きだな…」
「なぁ…」

スタースクリームがそのメガトロンを蹴飛ばすと右腕を腰に当て、身体の重心を片足にかけた。
ジェットロンのフォルムから言ってそのポーズは格好良い。しかしこれがスタースクリームでなければ。
いや、スタースクリームの性格がまだましだったらそのポーズも格好良いといえただろう。

「…この愚か者めが!そのダサいポーズをやめんか!」
「ダサい?ダサいのはあなたでしょう。メガトロン様。破壊大帝が床にうずくまってなにしてるんです?」

スタースクリームの言うことももっともなのだが蹴る必要はなかったのだ。
サンダークラッカーとスカイワープは既にカノン砲の爆風を受けない程度の場所に移動しその様子を眺めた。
メガトロンは部下に蹴飛ばされ投げ出された身体を起こすと正面よりスタースクリームに近寄った。

「な、なんです?しゃがんでるから見えなくて、足がぶ、ぶつかっただけで」
「…じゃあ何故口篭る必要がある?」
「そ、それは、」

視線をそらすためにスタースクリームは俯いた。
いっそカノン砲を撃ってどたばたしたほうが良いのだ。
スタースクリームはメガトロンに説教されることを嫌う。返答のしにくい押し問答よりも
撃たれて撃ち返して、殴って殴り返して基地から脱走。これがいつものパターンだ。

メガトロンは俯いたスタースクリームがある光景と被って見えた。
差し出された頭に手を置くと左右に撫でてみた。

「え?」

スタースクリームから間抜けな声が聞こえるが顔を上げる様子はないのでそのまま撫で続ける。
フレンジーの動作を思い出し、時々指先でかりかりと引っ掻くようにする。

「そ、そのぉ…メガトロン様ぁ…?」

ちらりと視線を寄越してくる部下が微かに首をかしげた。
首をかしげたときは胸元。だったな。

その引っ掻く指を移動させると顎を指一本で持ち上げ上を向かせる。
スタースクリームが息を呑むのがわかったが見えやすくなった首筋を指で撫でさすり下がっていく。
キャノピーにたどりつくまでの間、傷をつけない程度の力で指を機体に押し付けていった。

「あ、あ、あの」

キャノピー下まで指をこすりつけていくと今度は来た道を戻り、首筋まで指を這わせていく。

「ふ、…っあ」

スタースクリームが目を細めて声を漏らす。その表情は恍惚としていて嫌悪は一切見られない。
別に縛り付けているわけでもないのに指一本動かせず、先ほど顎を持ち上げた角度で顔は静止していた。

「コンドルを撫でる理由がわかったかもしれんな」
「め、めがとろ…ん」

破壊大帝はうんうんと何度も頷き、納得したと呟くと悦っているスタースクリームに
微笑みがけそのまま楽しげに退室していった。

サウンドウェーブはその様をみていてやはりジェットロンは鳥類と同じ扱いなのかと首をかしげた。
わけもわからず微かな快楽に落とされ、床に座り込んだスタースクリームと
半信半疑ながらも、何かに納得し始めているサウンドウェーブをサンダークラッカーとスカイワープは見て思った。


「…俺らもあぁなるのか?」
「いや、それよりコンドルと同列ってところに突っ込もうぜ…」



同機の腰立たない様子を目を細めて見ながら2羽はため息を吐いた。





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コンドルさんとジェットロンは時々空中散歩にでかけてたら良いと思うよ!