「めがとろんさま」 「………」 舌ったらずで稚拙な喋り方。 普段なら怒鳴りつけたくなるような子供のような口調。 それを全て抑えて頭に手を置いてやる。 「どうした?スタースクリーム…」 優しい声で囁くように言うとスタースクリームはにぱっと笑った。 薫陶 「これがスタースクリームだと!?この愚か者め!」 「っ……ごめ、んな、さ、…」 「メガトロン様、そんな脅えさせないでやってくださいよ…」 サンダークラッカーはスタースクリームを胸元に抱き上げて手のひらで身体をさすってやった。 スタースクリームもサンダークラッカーの頭にぎゅっと抱きついて少しだけ身を縮める。 子供をあやすように大丈夫だぞと声をかけて頭を撫でると、こくこくと頷く スタースクリームはまさに子供の表情だった。 スタースクリームはサンダークラッカーに抱き上げられるほどに小さく、いや、幼くなってしまったのだ。 しかも以前のような傲慢な態度もなければむかつく顔つきも生意気な喋りもない。 幼く、小さなスタースクリームはサンダークラッカーの胸元でぷるぷると震える。 メガトロンは見当もつかなかった、スタースクリームがこうなった理由が。 サンダークラッカーとスカイワープが唐突につれてきたのだ。 最初は何をつくったんだこいつらはと思ったがこれがスタースクリーム本人なのだと言うから驚きだ。 サンダークラッカーとスカイワープの説明は酷くわかりにくい。 語録の少ないこいつらの説明を聞くたびにスタースクリームが賢いのだと理解する とりあえずはサイバトロンのホイルジャックの所為だと言う事ぐらいしか 分からない、主語と文脈のたりない説明の中からそれだけを理解した。 「リペアは?」 「すぐには不可能。対抗する兵器を開発するべき」 「それがあれば元に戻るのか」 「そうだ」 サウンドウェーブはメガトロンの後ろで調べてきたデータから一番デストロンの為になる行いを示す。 「ビルドロンに開発をやらせろ。急ぎだ」と伝えるとサウンドウェーブはメガトロンにゆっくりと近寄った。 「メガトロン。調べたのだが…」 「ん…?」 「今のスタースクリームなのだが、感情が少し初期化されている」 「見ればわかるわ」 呆れた声で返事を返すとサウンドウェーブが少し笑ったような気配がした。 「今の段階で調教しなおせば、元に戻った際にそれが反映される」 「なに?」 暫くサウンドウェーブの顔をメガトロンは見つめた。 調教…?考える、今のサウンドウェーブの言葉の意味と意図を。 そしてそれが理解できると自然と口元がにやけてしまう。 「お前も悪い奴だわい」 「褒め言葉として受け取ろう」 笑う破壊大帝と無表情ながらに楽しげな情報参謀はスタースクリームを見た。 そして「ビルドロンには急がなくて良いからゆっくり作れと伝えろ」とメガトロンは呟いた。 その2体を見てサンダークラッカーは脅えたが スタースクリームは何もわからずきょとんとするばかりである。 サンダークラッカーは幼いスタースクリームを少しだけ羨ましがった。 * 「いいか、スタースクリーム」 「はい!」 「よし」 メガトロンはスタースクリームを常に傍に置いた。 エネルギーの補給の時も、訓練の際も、作戦決行時も。 流石に戦闘で前線に晒す事はしなかったがメガトロンは常に スタースクリームの頭に手を置いて先頭の間際にも傍らに置き見守った。 「良く狙って撃て」 「はい」 「儂を援護しろ」 「はい」 「このデータを三媒体にわけてくれ」 「はい」 スタースクリームは3日もすればメガトロンの忠実な参謀となった。 1日目はやはり初期化がかかっていてもスタースクリームはスタースクリーム。 メガトロンに対して「嫌だ」「ふざけんな」と言った態度だったのだがそこは調教しなおした。 サウンドウェーブからあまり暴力的な躾はいけない。と言われていたので メガトロンは自分にしては優しく接したつもりだ。 「スタースクリーム」 「めがとろん様?」 「こい」 「はい!」 てけてけと小走りについてくるこの姿を微笑ましく見る。 近くに走りよってきたスタースクリームを抱き上げて笑いかければスタースクリームもまた微笑んだ。 「今日も儂の部屋で寝るか?」 こくっと頭を縦に振って、「はい」と元気に笑う。 可愛い。スタースクリームだと思うと馬鹿馬鹿しくなるがこれは可愛い。 身体は小さく、知識的なものは欠損しているが、このままでも良いかもしれないと 考える。しかし火力や飛行スピードのなさ。そして科学者としての機転と応用がきかないのは痛い。 それ位メガトロンはスタースクリームの知識と機転、応用力を買っていたのだ。 その元の大きさに戻ったスタースクリームが文句一つ言わず、忠実な僕になるのは また気持ち悪いが、もしそれが本当に可能ならばデストロン軍団に一切の死角なしと言っても良い。 「…それほどまでにお前は我が軍に必要なのだぞ…」 「…?」 首をかしげてわからなそうにする。その頭を撫でると気持ちよさげに目を細めた。 早く元に戻って欲しい。いや、まだこのままで構わない。そんな感情が葛藤する。 もう少し…このままでも構わんな… 寝室で共に寝るのももう1週間はたっただろうか? 自分には大きすぎる自室。スタースクリームが実験していた道具などが 散らかった部屋はこいつには酷く汚らしく落ち着かない部屋だったらしく 就寝時に部屋に戻れと伝えると離れたくないと言う意思をあらわにしたので自分の寝室にて一緒に寝ることにした。 甘やかしすぎだろうか。いや、作戦中は厳しくしている。 こういうのは優しい時と厳しい時で落差があったほうが良い。 それに寝る前におやすみと起きた時におはようは言うようにしっかりと躾もした。 「仕事はあるんですかい?」 「いいや、終わっている」 口調は似ているのだがやはり稚拙な口調。 最近同じ部屋で睡眠をとるようにはしているが自室に仕事を持ち込むことが多く 構ってやれなかったなと今日は一緒に寝ることにした。 抱き上げていたスタースクリームを寝台へ降ろす。 自分も寝台の中央で座り、後で目を通しておこうと思っていたデータを枕もとの画面で表示する。 寝かしつけたら少しだけ目を通そうと準備するのを見てスタースクリームが擦りついてくる。 「どうした?」 「いいえ」 なんでもありません。とそのままスリープ状態へ移行しようとするスタースクリームを見た。 あぁ、まだ寝てないのに仕事のデータを見ようとするのはよくないな。 それでも躾のかいあってか、仕事をしているのなら邪魔はしてはいけないと無理やりスリープに落ちようとする。 気を使うのは良いことだが小さいスタースクリームに気を使われるのはすっきりしない。 「スタースクリーム」 「めがとろん…様?」 手を取って小さな指に唇を触れさせる。 スタースクリームはきょとんとしてまた舌ったらずに自分の名を呼ぶ。 何をされているのかわからないだろうがその表情に悪戯心がわいてくる。 舌で少しだけ舐めると掴んでいた手が少しだけ震えた。 「っ」と小さく悲鳴をあげておどおどとする。 「めがとろん様?…な、なんです…か?」 「…ちょっとした悪戯だ…少しだけ楽しませるが良い…」 「くすぐっ…くすぐった…!」 人差し指と中指を舐めて口に含む。時々吸うとスタースクリームは俯いた。 「どうした?」 「くすぐ、ったいんです!」 「…そうか、じゃあやめてこう」 「……」 手を放すと困惑した顔でこちらをみた。 舐めたせいでオイルに塗れた指先を拭ってやる。 困った顔をするスタースクリームはすごくそそられた。 普段、作戦の邪魔をする大きなスタースクリームの困惑した顔は 腹立たしいだけなのだが身体が縮むだけでこんなにも可愛いくみえるのは 元からこいつの顔が整っていることも起因しているだろう。 「スタースクリーム」 「なんですか?」 「上を向け」 「こうですか?」 「もっとだ」 「…こうで」 あぁ。良い角度だ。 まだ話しているスタースクリームの唇を軽くふさいだ。 * 「こっの…愚か者め!!!」 「そんなっ、許して!違う!」 「まったく!これなら元に戻さん方がよかったわい!」 スタースクリームが元に戻ってメガトロンは泣いた。 はっきりいってほとんど躾けた結果が反映されていないからだ。 もうあの幼きスタースクリームには会えないだろう。 いや、ホイルジャックの発明を奪ってくればもう一度会えるだろうが。 あの良く笑い、命令に対して「はい!」っと返事する小さい航空参謀は もういなくなり、今この場に居るのは作戦を台無しにして、時には反逆してくる 生意気な航空参謀。 あえて言うなら。 「スタースクリーム」 「はい?なんですかい?」 憎たらしい顔をするが。 「一緒に寝るか?」 「…まぁ、あんたが、そう言うなら」 唇をとんがらせて仕方がなさそうに別に構いませんぜ?とか言う。 張り倒したい顔だ。それでも先に歩くとスタスタとついてくる。 寝室につくとスタースクリームは寝台まで歩いて転がり、落ち着きなさそうにごろごろする。 「あんたまだ仕事するのかよ」 「今日はもうない」 「へぇ…そうかい」 スタースクリームはまた落ち着きなさそうにする。 仕方がないので手を掴んで引き寄せてやった。 「もう眠れ。うるさいぞ」 「……」 指先を撫でて少しだけ舐めると小さく「はい」とスタースクリームが呟いた。 指先を一通り舐めて拭ってやるとスタースクリームが上半身を起して顔を近づけてくる。 「どうした?スタースクリーム」 「…畜生」 呟いて唇を重ねるとスタースクリームはまた転がった。 気恥ずかしそうにするスタースクリームの顔は数日前に見た。 あの時はもっと幼い顔をしていたが。 「…おやすみ」 「…あぁ。良く眠れスタースクリーム…」 そのまま起動音が小さくなって落ちていく。 メガトロンはそれを見た後に枕際の画面に電源を入れて目を通しておくべきデータ起動した。 横目に幼いスタースクリームの面影を残したスタースクリームを見ながら。 ---------------------------------------------------------- メガスタ(幼児化)でした。 メガスタで幼児化は某サイト様の幼児化が凄い好きで 一度書いてみたかったんだ…!自己満☆足! でも女性向けにするか悩んだ…!え、えぇー?ちゅーはおkなのか…? 問答無用でえろはねーよな。幼児なのに女性向けにしちゃって申し訳ないです。 反省しますぜ。ちなみに何もしてないよ!!本当だよ!