transmission
 
 



「サウンドウェーブ。入るぞ」
「…なんだ」
「うっわ…つまんねー部屋」
「何しに来た」
「メガトロンに頼まれてるデータ解析にお前の持ってるソフトが必要だったんで
 借りに来たんだよ。物騒な声出すんじゃねぇ」



部屋の主に許可なく入って来た男はキョロキョロと部屋をみる。
無礼な奴だといつも思う。煩く、邪魔で、裏切り、嘲笑う。
この男の使い道を毎回ながら皆無だと思う。
確かに、時には冷静で的確で強く、賢い。
だが本当に時々だ。時々使える常に愚か者ならスクラップと何も変わらない。



「何もねぇのな〜。感情疎いお前にはお似合いかもな。ほらソフト寄越せよ」
「ここにはない」
「は?」
「あれは他の媒体には移せない。だがこの部屋のコンピューターには
 俺しか接続できないようにロックがかかっている」


「……つまり?」
「サイバートロン星のコンピューターにはあのソフトが入ってる。
 行って解析データを接続して通信するのが良いだろう」


嘘は一つもない。
しばらく黙ったスタースクリームは俺を見て笑った。


「お前この間、外でこの情報系列処理してたろ?」
「…あぁ」


確かにやった。
地球の人間から奪ったデータを使う際に解析をかけた。

「それをやってくれれば良い」
「何が言いたい」
「お前と俺で接続して、お前をコンピューターがわりにするんだよ。
 解析データを通信ケーブルから送るから解析終わったらそのまま送り返してくれよ」


できなくはないが時間がかかる。
面倒だ。何故この男の為にそこまで時間を無駄にする必要がある。


「通信ケーブルで繋ぐと他の仕事に手が回らない」
「メガトロンがすぐに解析しろってうるせーんだ。
 最近スペースブリッジもわざわざ申請ださないと許可降りないんだぜ?
 しかも今1週間待ちってサンダークラッカーがぼやいてたしなぁ」


だからよ?と卑しい顔をする。
姑息な男だ。メガトロンの名を出されただけで許可を降ろす自分も随分と浅はかだが。

スタースクリームのキャノピーから伸ばされたケーブルを胸部のカセット内にあるレセプトに
差し込む。今カセットロン達は全員でているので中は空だった。
通信が始まるが互いに向かい合わせでデスク付属のイスと客用のイスに座り黙ったままだ。
スタースクリームが足先を動かして暇そうにゆする。

「つまんねぇー」
「黙れ」
「黙れ黙れで俺1時間黙ってたわけだが?」

思ったより量が多い。スタースクリームが持って来たデータは
地球人の書物から一度セイバートロン星の言葉に書き直し、そこから更に
今現在使ってるソフトに合う様に文字列を弄ってある。
スタースクリームがこの膨大な量をそこまでやって持って来たことにも驚いたが
この量を今日中に持ってこいと言うメガトロン様にも驚きだ。

これは流石に時間がかかる。
スタースクリームが解析できる状態まで持ってきていなければ
間違なくない明日、いや明後日までかかったやも知れない。

つまらない。退屈だとゴチる顔を良く見る
整っているものの聡明さの見えない馬鹿そうな顔だ。
だがこの仕事っぷりは素晴らしいと言って良い。
ここがメガトロンの側におく理由なのだろうか?

流石にバイザー越しでも視線に気付かれた。眺めすぎたか。


「何だ?」
「何でもない」
「何でもない事ないだろ。わかった。お前も暇なんだな?」
「…………」


違うのだがわざわざ否定して疑問をぶつけられる必要もない。
それに退屈なのは確かだ。

「……そうだ。俺様に良い考えがある…こんなんはどうだ?」
「何…っぐ…」
「お。ちゃんと感じるのか」
「ふざけるな」

バチっとした瞬間送られて来たのは間違なくないパルス。しかも快楽を含む物。
会話の最中やパルスを送られてきた時も、解析データはしっかり送られてくる。
そのデータに混じって送られて来ているのだ。

「声、あげねぇんだ?」
「……」
「もう少し強めるか?」

からかう物が見つかって楽しそうに笑う。
しかし無駄な所が器用だな。パルスとデータを同時送信。
パルスを受け取らないとデータも遮断される。


小賢しい。


「いっ…!なんだよ!いてぇな!」
「痛くした」

データ解析の終わった物をスタースクリームに送り返す
その際にパルスを混ぜ込み、送信する。快感よりも痛みを含めて。
もちろん、遮断はデータの遮断にも繋がる。

「売られた喧嘩は買う」
「べ…別に喧嘩売ったわけじゃねぇさ…」

まさかの反撃にしどろもどろに返答するスタースクリームが愉快だった。

「…わーったよ…やめりゃ良いんだろ?」

そう言うとパルスの送信をやめ、またデータのみで送られて来る。
誰がやめると言った?やられたら、やり返すのがデストロンだ。

「あっ…?いっ!いてっ!いてぇ!やめっ!やめただろ!?」
「誰がやめると言った」
「愚図野郎!!うぁああ!!たっ…たのっ…痛い…!!」

やめてくれ。やめてくれと繋がっているケーブルを引っ張られた。
その手を押さえて耳元まで口を近付ける 

「無理に抜けば今までのデータが飛ぶ危険有。大人しくしていろ」
「頼むからっ…痛く…するなっ…」
「………」

ならばこうなら良いのか

「んっ?……あっ…やっだ…」
「声色が変わった」
「違う!んっんっ…!」

先程スタースクリームが送ってきたものを同等、或いは少し出力を増して送信すると
スタースクリームは喜んだ。口からは嫌だやめろといってるものの
ブレインスキャンするまでもなく快楽のパルスに揺れている。
表情、口から漏れる喘ぎでスタースクリームの状態が手に取るようにわかった。

「データが止まった。送信しろ」
「むっ無理言うな……!あぁ!くっあ…っ」
「送信しろ。俺も暇ではない。早く終わらせる」
「畜…生…っんぐ…っ!」

スタースクリームからかすかな駆動音とともにまた解析する為のデータが
送られてきたがそこにまだ快楽中枢を刺激する為のパルスが混じってついてくる。

「…っ…変なものまで送るな」
「そうじゃなくてっ…!勝手…!ついていっちま…うんだ!」
「っ…あ」
「ひっ!さ、さうんど…っ!サウンドウェーブ!頼むから…もう飛ぶ、駄目…だ!」
「っは…」
「…さう…サウンド…っウェーブ…?」

スタースクリームに送った快楽のパルスが
スタースクリームの送って来るデータに間違なくない乗っている。
送ればそれがデータに無意識に混ざりかえってくる。
滅多にこういった行為はしないのだが…これは


「興味深い」
「は?」
「出力をまして、もう少し奥にパルスを届かせる」
「や、やめろって言ったんだ!もう良い!データ送信も一時中断だ!」
「待て」


スタースクリームが自分に刺さるプラグを掴み
引き抜こうとするのを上から手で押さえつける。
抵抗が強いのでパルスの出力を勢いよくあげるとスタースクリームが背を
仰け反らせて悲鳴をあげた。

「っあああ!!うぁあっ!!」
「っは…ぁ」

スタースクリームの手ががくがくと痙攣をおこしているのを指先に感じる。
そのまま握りこんで二度とプラグに指が届かないようにする。
俯いて悲鳴をひとしきり上げたスタースクリームが椅子からゆっくりと落ちる。
コードが繋がった状態で自分もつられるように床に膝をつくと
スタースクリームが俯いていた顔をゆっくりこちらに向けた。

「っあ…サウンド…うぇー…ぶ」
「…どうした」
「っ…も…もっと送ってく…れ」
「………」
「もっと近く…」

どうやら出力をあげすぎたのか、ブレインサーキットの理性をつかさどる部位が
活動異常を見せている。
とはいっても、短時間で熱を持ちすぎたため少し鈍くなっているだけで
放っておいても直るレベルだろう。問題はない。

スタースクリームの目が赤い光を放っているが時々明滅している。
握りこんでいた手がゆっくりと動いて肩へ首へと手が回ってくるのを拒まなかった。
下手に嫌がられるより、この方がやりやすいと判断したからだ。
スタースクリームの右手がマスクを撫でる。何がしたいのかわからない。

「これ、はずれねぇのか…?」
「………」

無言でマスクをスライドさせてはずすとスタースクリームは驚いたようだった。
マスクを撫でていた指先が恐る恐るマスクで隠れていた部位に触る。
頬を撫で、唇を撫でられる。
口を少しだけ開いてその指を噛む様に口に含むとスタースクリームが笑った。
その顔を見た後でパルスの出力を増すと笑顔はすぐに引っ込んだが
その顔もまた好感が持てた。






*



「お、俺様はなんて事を…」
「……」


行為が終わってからしばらく立つとスタースクリームのサーキットの冷却が
終わったらしくわなわなと身体を震わせた。
若干顔色が青く見える。あぁ、やっと正気に戻ったようだ。

「どうした」
「どうしたじゃねぇ!何しやがる!」
「交歓行為」
「言うな!!畜生畜生…こ、こんなやつと…!」
「………」
「最悪だ…こんなヤツのパルスを身体の中に入れちまうなんて」
「お前がやり始めたことだ」
「冗談だって言っただろうが!」
「途中から催促したのはお前だ」
「サーキットがイカレた事ぐらいわかっただろうが! 何でそこでやめなかった
 んだよ!あぁ!畜生!まだ身体の中にお前のデータが残ってる!!」

別に何の解決にもならないのに身体をさすり、時にかきむしり
身体の中の他人のデータに身体を震わせる。

「スタースクリーム」
「なんだよ!!」
「解析データだが」
「そうだ!解析データ…!」
「加熱が原因でショートした。最初からやりなおす」
「…………」
「途中までの過程はバックアップでなんとかなる。急ぎ接続すれば」
「断る。お前ともう一度接続するならメガトロンに融合カノン砲撃たれた方がマシだ」

馬鹿がぁ!と勝手に怒鳴りつけられ、よろよろと
しかし急ぎながらでていく彼の背中を見送った。

が、結局メガトロンとサンダークラッカーにスペースブリッジの割り込み転送を
却下されすごすごと、そして怒りと警戒と絶望を含ませた瞳で
サウンドウェーブの部屋に戻ってくるのは数時間と要さなかった。





---------------------------------------------------

恐ろしいくらいお互いに愛がない2人
難しいんだよ…どっちも妥協してくれなくて。
音波→スタスクの状況が浮かばない…だからと言って逆も浮かばん…

慣れたらそのうち、ラブラブな2人が書きたい。