メガトロン様から話は聞いた。
スペースブリッジが開いてそこに現れたスタースクリームはいつも通りだったと思ったが。




LASERWAVE





「よう。久しぶりだなレーザーウェーブ?」
「よく来たスタースクリーム。メガトロン様より話は聞いた」
「聞いた?どこまで?」
「どこ?スタースクリームがウイルス駆除ソフトの配布をしているから受け取れと」
「…メガトロンの野郎。配布とか言うとただで配ってるみてぇじゃねぇか…」
「金を取るのか」
「いや、そういう意味じゃねぇけどよ…まぁ、いいや。ちょっとゆっくりさせてくれよ」

奥に入っていくとスタースクリームはセイバートロン星を監視するモニターの前に座った。
欠伸をして頬杖をついている姿に微笑みがもれる。どうやら疲れているようなので
エネルゴンでも用意しよう。

「忙しいのか?」
「え?あ」
「酷く疲れてるように見えるぞ」

目の前に改良した高質エネルゴンをだすとスタースクリームはたじろいだが匂いをかいで一口飲んだ。
仕事の合間にする趣味にも似たことだ。質を上げるためにさまざまな工夫を凝らしたエネルゴン。
メガトロン様がいらっしゃった時にも出せるよう常に準備してある。


「…うめぇ」
「お前にそういわれると悪い気しないな」
「なんでだよ」
「お世辞を言わないからな」
「……」

ごくごく飲む姿を見てもう一杯用意しようかと思い立ち上がる。

「あぁ、十分だぜ」
「そうか?」
「あんまりセイバートロン星にはエネルゴンねぇだろうが。地球に行けば大量にある」
「遠慮するなんて珍しいこともあるんだな」
「……」
「睨まないでくれ。はは」

スタースクリームがふいとそっぽを向いたが本気で怒っているわけではないので気にしない。

スタースクリームはメガトロン様には随分迷惑をおかけしている様だが私にはそんなんでもない。
スタースクリームは優しくすればちゃんとした反応が返ってくるので扱いやすいと思っているのだが
サウンドウェーブに言わせれば「愚かな奴」らしいのでそうなのかもしれない。
サウンドウェーブの言うことはいつも正しい、それは私の中では歪みないものだ。
確かに迷惑被るときもある。こいつのせいで何度危険な目にあったかなんて考えるとキリがない。
が、スタースクリーム自身を嫌いになることはなかった。

「接続して、ウイルス駆除ソフトを送り込むから」
「あぁ。ここですぐできるのか?」
「…どこでも」
「じゃあここで良いか?あまりここから長いこと離れるのは不安だからな」

一応見張りの感情のないロボットも数体準備できるが
万が一の自体には対応できるほどの行動力はない。


「じゃあ、お前のコネクタを挿してくれ」
「あぁ。どこに挿す?」
「…」


スタースクリームがモニターの前に用意されている椅子の上で小さいため息を吐いて
椅子ごと身体をこちらに向けると椅子の上に足を乗せた。
随分と態度が悪いなと思いつつもその様子を見ていると足をこちらに向けて開いた。

「…ここに」
「え?」
「ここにいれて」

顔をこちらに向けず、感情なさそうにぼそぼそ喋るスタースクリームを見たことがない。
何を言っているんだこいつはと思った。黙ってスタースクリームを見つめる。
それが雰囲気として伝わったのかむっとした顔でこちらを見た。

「他のレセプタじゃ送れるソフトじゃねぇんだ!他の連中にもここを使って送ってる!」
「…そうなのか?」
「あぁ!メガトロンの命令だ!」
「……そうか。なら仕方がないな」

メガトロン様とスタースクリームが実は身体を繋げる仲だというのは知っていた。
もちろん、仕事ではなく快楽を求める交歓行為として。
そのメガトロンも知っているのなら自分としても問題ないだろう。何より快楽は求めていないわけだし。
確かにおかしい事ではあるが、そこでしか接続できないというのならそれを拒む理由はないし
交歓行為が出来る部位であるだけで情報伝達する部位であることも確かだ。

肩に手をやって椅子にスタースクリームを押し付け、安定させる。
そのまま片足を左腕の銃身で持ち上げれるとスタースクリームのレセプタが良く見えた。

「…少し負傷してないか?」
「…気にすんな」

肩にやっていた右手でレセプタの淵をなぞるとザリザリとしていて擦り切れている。
これは相当痛いんじゃないか?と淵を撫で続けるとスタースクリームが震えた。

「どうした?」
「は、はやくいれろよ」
「わかってるが…リペアが必要だな…交換したほうが良い」
「最新型にすると意味がねぇんだよ…古いレセプタから送らねぇと」
「終わった後、手当てしよう」
「…あぁ…」
「私が最後か?」
「多分…あ、いやメガトロンが…」
「わかった。全て終わったら部品を地球へ送る。取り替えておかないと内部にまで損傷が及ぶぞ」
「わかってる」
「…」

頭部を撫でる。
スタースクリームが薄く開いていたアイセンサーをしっかりと開くと
こちらを見て撫でる手に寄りかかるように頭を預けてくる。
この子は案外甘えたがりだ。
デストロンでそれに気づいているのはメガトロン様やサウンドウェーブくらいか。
本人がそれを前面に出すのを嫌がり、逆に強がりばかり言う。
それで損することもあるだろうに、そういうところが私はサウンドウェーブの言う「愚か」なのではと
ほんの一時思案する。

「ゆっくりやるが、痛かったら言うんだぞ」
「あぁ…」

背もたれにスタースクリームを寄りかからせてレセプタに自分のそれを押し付けた。
ぐいぐいと押し入るようにするとスタースクリームが呻いた。

「痛いか?」
「大丈夫だ…からっ」
「わかった…」

上手く押し込んで一定の部分で固定するとスタースクリームに送信を頼んだ。
しかし一向に送られて来る気配はなく、スタースクリームはがっくりと頭をうなだらせて居る。

「スタースクリーム?」
「あ、ぁぅ…」

頬をぺしぺしと叩くとうつろな顔でこちらを見た。
酷く、痛がっているように見えた。目を細めて歯を食いしばり時折びくりと肩を震わせる。
ただ、痛いだけではないのは誰が見ても分かっただろう。


「大丈夫、か?」
「……お、おくる」
「あぁ。頼む」

小さい声で喘ぐスタースクリームを見る。
不思議なことに驚かなかった。嫌悪感もなかった。
レセプタにコネクタを挿れただけで反応するのはおかしいことだ。
サウンドウェーブあたりなら不愉快だとか言いそうだなと考える。しかし自分は違う。
可哀想に。

背もたれをギシギシ言わせながら仰ぐスタースクリームの顔を眺めた。
苦しそうな顔を撫でて耳元で大丈夫かと囁いてやる。
頷くスタースクリームから送られてくるソフトをインストールしていく。

動かないようにしているがデータを送り込むたびにスタースクリームは声を漏らした。
自分だけにこの反応なのだろうか。他の誰とでもこうなってしまっていたのなら
大変なことだな。メガトロン様がなんと仰るか。

「…一度、達したほうが楽か?」
「…だ、だめだ!」

首を左右に振るスタースクリームを見てやっぱりなと思った。
プライドの高いスタースクリームがメガトロン様以外に犯され、達したなどあってはならない。

スタースクリームは感じていることを誤魔化すように小さい声で「痛い」と何度も言った。
それを受けて私は謝罪するしかない、スタースクリームが必死に取り繕うそこを暴いてはいけない。
全てのデータを受け取ったところで引き抜きスタースクリームの息が整うまで顔を撫でてやった。

「…メガトロン様がお前を寵愛する理由がわかるよ」
「…ちょ、うあい?」
「されてるだろ?」
「…まさか…」

小さく低い声で首を振る。
心からそんなことないと思っているのだろう。だがそれはお前だけじゃないか?
スタースクリームの息が整ったことを確認してから足の間に身体を挟み
レセプタクルを覗き込んだ。


「なっなに!」
「手当てだ。応急処置として良質のエネルゴンを塗っておくべきかもな」
「すぐ取替えんだから良いよ…」
「そうじゃない。すでに内部の神経回路まで傷つき始めてる」
「…」
「これ以上酷くなったら部品交換じゃ直らなくなるぞ」
「…わかったよ…」

ぶすっと唇を突き出すスタースクリームに笑いが込みあげる。
よく我慢できるな。スタースクリーム。辛くないのか?辛かっただろう。
そう声をかけるのを耐えた。きっと普段どおりに接して欲しがっている。

一度立ち上がって瓶に入った良質エネルゴンを持ってくると指先に塗り、それをレセプタに塗った。

また顔をもぞもぞと快感に走らせるスタースクリームを見ていないフリをしながら
スタースクリームが早くメガトロン様に寵愛されている事実に気付けば良いと思った。