「…?」 「…スタースクリーム?まさか、正気か?」 「…うん…?なに?」 はっと意識が戻ってくるとメガトロンの寝室だった、まただ。 また寝台の上。いい加減にこの夢と現実を区別したい。 だが、いつもと状況が違う。 「…なんで、俺あんたの上…ひっ…なに?なんか…」 スタースクリームはメガトロンに跨り、馬乗りになると下腹部に違和感を覚えた。 苦しいような、むず痒いような、圧迫感に下腹部を覗き込むと自分の レセプタとメガトロンのコネクタが繋がっていた。 「…なに…が、うっあ…」 「落ち着けスタースクリーム」 「うっあ…ぬ、ぬい…!ぬいて…!!」 苦しい。微かに流れてくるパルスが全身をくすぐる。 音声がひび割れている。今まで自分が声を発していたことが分かる。 メガトロンのコネクタを繋いでいるのに痛まないレセプタと そこから流れる潤滑油の量がこの行為が初めてではないと告げる。 自分の記憶ではメガトロンと繋がったことはない。しかし間違いなく 自分は初めてではない。 「すぐ、終わる…黙っておれ…」 「んぅっ…うぅっあ…」 黙りたくても口から漏れる喘ぎ声はとまらない。 メガトロンがパルスを強めると身体が弓なりに反った。 * 「…う」 何度目かの目覚め。 今日はいつだ?最後に目覚めたのはいつだ? 身体を起すとそこが自室だとわかる。 メガトロンの部屋にいたはずだ。自分で戻ってきたのか? それとも全部嘘だったのか?夢?最初から? チャージポッドのわきにある小さなテーブルの上にはいつもメガトロンから 手渡されるエネルゴンキューブと、この間メガトロンが 持っていた布が置いてあった。喉が痛む。音声不良が出ている。 もし、先ほどの行為が本当ならばこの音声不良は長時間にわたり 喘いでいたからだというのだろうか? この身体の痛みは全身に快楽のパルスを流していたからだろうか? エネルゴンキューブを手に取ると少しずつだが喉に通していく。 もう片方の布を手に取ると布はオイルでべたべたになっていた。 しかも体内循環用のオイルではない。潤滑油と下腹部からでたのだろう 少し白みを持った特殊なオイル。 そうだ。この間もメガトロンは俺の身体を拭いていた。気を失った自分を。 ならばやはり今回の行為も夢ではなく、本当にあった出来事なのだろうか。 初めてメガトロンの寝室で目を覚ました日、メガトロンが自分を 気遣ってくれたことを思い出す。 『痛いところは無いか?』 驚いたし、自分の知っているメガトロンだとは思わなかったし。 しかし悪い気はしなかったことを覚えている。 立ち上がり、メガトロンに会いに行くために扉の前に立つ。 自室の扉。スライド式の扉を開いてメインルームか自分の寝室で難しい顔で 仕事をこなしているだろうデストロンの、自分のリーダーに会いに行く。 風を切るような音と共にスライドされた扉の向こうはいつもの廊下ではなかった。 真っ暗だ。何も無い。 恐ろしいとも不思議にも思わず真っ暗な廊下に身を進めると自室の扉は閉じた。 あぁ。そうか。夢だったのか。どこからかはわからない。 いつもの夢と同じだ。 真っ暗な廊下をひたすら走り始める。 ガチャンガチャンと金属の脚と鉄製の廊下がぶつかる音が響いて耳につく。 この夢の続きはわかってる。 走って。走って。息が切れて、自分の呼吸が荒くなっていって 鉄同士がぶつかる音に慣れてきた頃に光の漏れる扉を見つけるのだ。 その扉の向こうにはもう一つ扉があって、それで、その先には。 * 「サウンドウェーブ」 「メガトロン様」 「スタースクリームの調子はどうだ」 「よくない。全身の動作不良、及びパーソナルコンポーネント ブレインサーキット他の機器にも異常が」 「…そうか」 スタースクリームはデストロン基地内のリペア室の更に奥に位置する部屋にある 高濃度エネルゴンから生成されたリペア液の中で眠っていた。 普段はサイバトロンに手酷くやられ、とてもじゃないが 治療しきれない者を入れるためのものだ。 しかしスタースクリームに怪我は一つもなく、目を伏せていた。 不可解な行動に出たり、正気を失ったように歩き回ったり、気を失ったりと スタースクリームの行動に異常が出始めたのは地球に降り立ってから。 しかしリペアすれば一時でも数日でも正気を保って行動し デストロンの戦力になりえる。 それでも自分の行動に対する記憶に損傷があり、数日前の記憶、酷い時には 前日の記憶も無い。 もちろんセイバートロン星から専用のリペア器具や部品を届けてもらい 出来うる限りの治療も行った。 しかし、地球とスタースクリームの相性が悪いのだ。 地球にいるだけで折角修理しても数ヶ月も持たない。 メガトロンはセイバートロン星勤務につかせる事も考えたがこの副官が その申し出を受けるはずも無い。 無理やりセイバートロン星に送れば次の日には自分を追って戻ってくるのだ。 サウンドウェーブは原因が不明だといったが地球の元素とスタースクリームの 持っている体内エネルギーの相性。または大昔に一度地球に来た事があり 再度地球に来た時に精神経路に異常が出るようにされていたかの どちらかの線が強い。それともまた別原因か。やはり憶測の域を抜けない。 メガトロンはこんな面倒で裏切り者なスタースクリームを手放す気には ならなかった。 一度だけ、楽にしてしまおうかと首に手をかけたことはあった。 「最後に起きたのは?」 「2日前、自室にいたのだが自室から出た瞬間倒れたところを サンダークラッカーたちが目撃している」 「次はいつ目覚める?」 「わからない。だがそろそろ目覚める頃だ」 「…後3時間したら自室へ移動させておけ」 「了解」 * 「…何か…夢を見てた気がする」 夢の内容はまったく覚えていない。 んーと唸って背筋を伸ばすと流れの悪い体内電圧を調節して スリープ状態からの完全復帰に向けて指の先まで電流を流す。 今日は調子が良い。 そうだ。良い作戦が思いついたぜ。 今日はサイバトロンを駆逐しようか?メガトロンを裏切っても良いな。 メガトロン?そういえば何か大切なことを忘れている気がする。 ふと自分のチャージポッドのわきにある小さなテーブルの上を見る。 エネルゴンキューブと布が置いてあった気がしたのだが。 しかし見る限りきれいに片付いている。 なんだ?と首を少しだけ傾げると内線が入った。 『スタースクリーム』 「お、サウンドウェーブ。どうした?」 『メガトロン様がお呼びだ』 「メガトロンがぁ?またどうせ阿呆みたいな作戦だろ?」 『阿呆な作戦で悪かった。スタースクリーム』 「げっ、聞いてらしたんで?」 『御託は良い。早くこんか!』 「へいへい」 今日のメガトロンは不機嫌だ。 下手に逆らって裏切り行為に走るのは良くない結果を招きそうだと サイバトロン殲滅のほうに頭を切り変える。 通信しながら自室の扉を開くとそこは見慣れた広いデストロン海底基地廊下が 広がっていた。 Schizophrenie ------------------------------------------------------------ お蔵\(^o^)/ 最初はもっとエグかったのでお蔵にしてました。 エグいとこカットして書き足してってやったらこうなった\(^o^)/ 夢=耐性の話やスタスクのかかってる病気は実際にあります。 どこが夢でどこが現実かは文字の色に惑わされず受け取って頂けたら。 *お蔵でしたが好評だった為再録されました。