ナイトスクリームの活躍はデストロンの面々を感嘆とさせた。
どんな状況下でもガルバトロンの側を離れず、ガルバトロンが何も言わなくても
ガルバトロンの望む行動を先取りする、ガルバトロンの命令ならどんな敵とでも
戦い、どんな状態でも動いた。

「お前は本当に優秀だ」

その言葉だけが嬉しく、その言葉だけが自分を動かす糧になる。




ティーチング・プレイバック3



ナイトスクリームは数日前に犯した失態で微かに自信をなくしていた、それは
ナイトスクリーム本人にもわからない程度のものだ。それでも自分は本当に
あの方の力になれているのだろうかと疑念は持っていた、だからこそ活躍して
その自信を挽回したかったのだ。

「リペアが終了しました…如何致しましょう」
「休ませておけ、今日は良くやったぞ。エネルゴンも多く強奪できた」
「はっ」

多少の犠牲はあれど、ナイトスクリームの働きもあり今回の戦いはデストロンの
勝利と言うに相応しい結果をもたらしていた。
戦いで活躍できる、それがナイトスクリームに自分が必要だと自信を与えるのだ。
ガルバトロンが褒めてくれればあの失態を忘れる事が出来る。

「ナイトスクリーム」
「はっ」
「お前はどうだ」
「はい、特に怪我もありませんので…」
「そうではない、この間のような状態にはなっておらんか」
「どこも問題ありません、有難う御座います」

この間のような感覚はあれから10日ほどたったが特に変化なかった。
身体が熱くなる様なこともなく、最近では集中してガルバトロンのために
働けていると自分でも評価している。
もしこの間のような事があれば次は自分で出来る自信もあった。

「そうか、こちらへ寄れ」
「…?」

ガルバトロンが手を差し伸べてきたので疑問に思いつつもその手を取った。
軽く引き寄せられ大きな玉座へ腰掛けているガルバトロンの目の前に立つ。

「…ふむ」

自分の腰を片手でつかめるほどの大きな手が両手で腰を掴んだ。
ナイトスクリームのデストロン軍の中でもきわめて細い脚を撫でつけそのまま
下腹部の辺りに手を伸ばすとナイトスクリームはやんわりその手を押さえた。

「あ、の…?」
「どうした」
「大丈夫ですので…」
「確認する」
「それは…っ」

ナイトスクリームの下腹部をガルバトロンが指で擦る、ナイトスクリームは
またガルバトロンの手を煩わせるのが嫌だった、問題ありませんと言いながら
軽く手を押さえたがガルバトロンはそんな抑制を受けるようなトランスフォーマー
ではない。

ガルバトロンが強くパネル越しに内部を引っ掻いた。ナイトスクリームのコネクタに
かかる圧迫感は最初こそ何でもなかったが強く擦られ続ければ無視できない感覚に
かわる。ナイトスクリームがその感覚に気付き先ほどより少しだけ強めに腕を
押さえにかかった。

「どうした」
「っ…あの、私は大丈夫ですので」
「にしては少し熱いな」
「そんなことは…!」

否定した、しかしナイトスクリームはわかっていた。
ガルバトロンが一度撫で付けるたびに身体中に痺れが走り、身体が熱くなってくる。
おかしいのはわかっている。兆候は一切なかった、そろそろ熱くなるだとか
処理しなくてはと思う兆しは一度もなかったにも関わらずガルバトロンが触れた
所から身体はどんどん熱くなり、このままでは前回同様の結果になるのは
理解できた。

「は、放して頂けませんか…」
「…ならん」
「私は大丈夫ですので」
「そんなに大丈夫だと言いたいのか?なら玉座に立て」
「…たつ…とは?」

ガルバトロンの前に立つナイトスクリームをガルバトロンはいとも簡単に持ち上げた。
自分が座る玉座の立たせると「そのままだ」と言い、丁度ガルバトロンの
眼前にきた腰を撫で回す。

「あの…この格好は」
「そのまま立っていろ、大丈夫ならそのままでいられるだろう」
「何を…」
「辛かったら好きなところへ掴まれ」

ガルバトロンの声が笑っている。ナイトスクリームにはどうしてこの状況を
主が楽しんでいるのか理解できなかった。
ガルバトロンがナイトスクリームの腰をしっかり掴んで顔を近づけるとキャノピーの
下に隠されたパネルを舌で舐めた。

「っ…!あ、あの?」
「どうした」
「何をして…!」
「特別な事はしておらん」
「っ…いけません」

ナイトスクリームはガルバトロンの頭を押した、ナイトスクリームはガルバトロンの
優秀な部下だが場合によりガルバトロンを否定する。
今まで敵を深追いしようとした時や目先の事に意識がいって目的を忘れてしまう
ガルバトロンを何度も指摘してきた。時には声を張り上げて「駄目です」という時も
あった。
今回はいつもと少しばかり勝手が違う、自分に触れる主を止めたい。
しかしどうしたら良いかわからなかった。止めたいのは自分の勝手な理由で
軍のための行動ではないのだ。

「んっ…」
「…声を抑えるな」

パネルを開き、直接ガルバトロンの舌が触れるとナイトスクリームの脚が震えた。
必死に離れようとするナイトスクリームを一度言葉で制すればナイトスクリームは
そこに留まるしかなく、逃れる術をなくしてしまう。

腕を押さえようとしていたはずが気付けばガルバトロンの腕に体重を預けるような
形になっていた。支えがないと自立も出来ない自分に怒りとガルバトロンに対する
疑問が浮かび上がる。何よりも口から漏れ出てしまう吐息に罪悪感を感じた。

「お待ちくだっ…さ」
「吸うぞ、しっかりとしがみ付くが良い」
「駄目で、す。ガルバトロン様…!これは違っ…」
「何が違う?何を嫌がる」
「こんなことは、してはいけません…貴方の私の主っ…ぁ!!」

ナイトスクリームのコネクタをガルバトロンが口に咥えると強く吸った。
甘く噛み、優しく舐めては強く吸う。感じたことのない刺激にナイトスクリームの
脚が震え始める。
それに気付いているガルバトロンが片腕をナイトスクリームの腰に通し崩れ落ちない
ように支えてやると安定感を得たナイトスクリームの口からは喘ぎが漏れた。

「ふ、っ…ぁ」
「お前は儂の大切な部下だ、ナイトスクリーム」
「…っ…はっ…ぁ」
「お前の為に何かしてやりたくなるのは不思議か?」
「しか、し…これは…!」

理解はしていない、この行為がなんなのか、しかし何故か背徳感に襲われる。
これはいけない行為だとガルバトロンにさせて良いことではない、とわかる。
なのに止める事ができない。


「ひ、ぁ…!」
「…気持ち良いだろうナイトスクリーム…どうだ」
「…っ」
「答えろ、思うままに吐き出せ」

快感など知らない、自分の脳内を何かが埋め尽くし、考える事を許さないこの
行為が気持ちがいいというのなら自分はすでに落ちている。
しかし快感に落ちる事を許さないのは主に対する感情がそれを上回るからだ。
主にしてもらう、それで快感を得るなど許されるはずがない。そう思えば
快感も背徳感や自分の至らなさが勝るのだ。

「わからなっ…ガルバト…さま…私は…」

ガルバトロンがナイトスクリームのコネクタを強く噛んだ、口から悲鳴がでると
ガルバトロンは笑い、すっかり腰の抜けたナイトスクリームを抱き寄せる。
駄目だと思いながら、主の頭部にしがみ付き、主の耳元で吐息を吐き出せば
自分の無力さに死にたくなる。

「も…っ…」
「もう駄目か」
「…は、い…もうでます…」
「このまま出せ」

朦朧としたブレインサーキットにガルバトロンの声は染み渡った。
どろりと汚してしまった手を思い出す、前回は手だった。主に拭えない汚れを
つけてしまったのだ。

「いけません!」
「何故だ」
「汚してしまいます…!」
「構わん」
「そんっ…な…!」

もう限界だった、ガルバトロンの頭部を引き離そうと押しても離れず
ナイトスクリームはそのままの状態で限界を迎えそうになる。
しかし許されるはずはない、当人がそれを良しとしても主の顔に不純なオイルを
かけるなど不義以上に酷い。

「おやめください!やっ…やめ…っふ」
「…」
「っい…あぁ!」

悲鳴と共に吐き出したナイトスクリームは一度強くガルバトロンに抱きつくと
ゆったりと腕から力が抜け玉座から床の落ちそうになった。ガルバトロンが
そんなナイトスクリームの腕を掴み、床に強く打ち付けないようにそっと
降ろしてやる。

「…っ…ぅ」
「…少し零したか」
「…ガ、ル…」

床に崩れ落ちたナイトスクリームはガルバトロンの顔を見て息を呑んだ。
ガルバトロンは舌をだすと自分の口の端を舐めた、頬と口を伝い流れるオイルは
ナイトスクリームが吐き出したオイルだ。どんなに拒んでも出してしまった液体は
ガルバトロンを汚した。

「…っ…」
「気持ちよかっただろう」
「…」

ナイトスクリームは握りこぶしを作り歯を噛み締めた。
それは純粋な怒りだったが決してガルバトロンに対する怒りではない。
自分に対する怒りだ、何度主を汚し、手を煩わせれば気が済むのか。


「ナイトスクリーム?」
「…申し訳…ございません…っ」
「ナイ…」

ナイトスクリームは伏せていた顔をあげた。ガルバトロンが頬を拭い舐めながら
ナイトスクリームと目が合うと硬直する、鋭い目つきに、噛み締められた口。
黙ったガルバトロンと顔を逸らしたナイトスクリームは暫くその重い空気を吸った。
はっとしたガルバトロンはようやく我に返るとナイトスクリームの震える腕へと
手を伸ばし、掴もうとする。
しかしそれは実現しなかった。


触れる直前でふっとナイトスクリームの姿が消え、ガルバトロンの手は宙を掴んだ。
何も居ない場所より再び「申し訳御座いません」と囁く声がした、その声の震えは
彼らしくない。
何よりも主の手から逃げた事がガルバトロンにとって一番驚いた。
あの、ナイトスクリームが逃げたのだ。


「な、…ナイトスクリーム!」


無言だ、何もない。自分だけの玉座の間でガルバトロンはデストロンで一番
優秀で一番忠誠心の高い部下の名前を呼んだ。
普段ならその姿を現し、「如何致しました」と自分の要望を尋ねてくる存在は
逆に逃げていく。

「ナイトスクリーム!でてこい!ナイトスクリーム!!」

何度呼んでも出てこない。
微かな焦りがガルバトロンのブレインサーキットを揺らす。

その日、ナイトスクリームがガルバトロンの前に現れる事はなかった。