*導線ミスの続きになります。 最後に唇を重ねたのはいつだったか。 まだ地球にも訪れていない、かなり昔の話になる。 唇を指で一度撫でられて、ゆっくりと暴れる時間を与えられながら塞がれたが 自分は暴れるつもりなんてなかった。 気持ちよかっただろうか。それとも気持ち悪かっただろうか。 あの方はなんて自分に言っただろうか、そんなことも全て忘れてしまった。 サウダージ あの日、スタースクリームにリペアしてもらったジェットファイヤーはスター スクリームに悪戯してしまったのだ。 最初こそそんな事するつもりはなかったがリペア慣れしていないくせにリペアを 実行した自分は誤った処置によりスタースクリームの痛覚を快感へと直結させて しまったわけで、喘ぐスタースクリームに興奮してしまったのも事実だった。 気を失ったスタースクリームの処理をしてラチェットのところへ行けば リペア患者を大量に抱えていたラチェットも多少時間が空いたのか出迎えてくれた。 そして適当にリペアしたら失敗しましたと正直に言った。気を失った理由は間違った リペアが問題ではなく、その失敗から派生した効果によりだと言う事は内緒だ。 しかしラチェットはリペアできないものが適当なリペアをしたことに酷く怒りを 覚えたらしくリペアの間その場にいることを命じられた。俺のほうが立場は上の はずなんだがな。 そうしてリペアの終わったスタースクリームを寝室まで持っていけと言われたのだ。 意識は戻っていなかったが背中も足も綺麗に元に戻り、新品同様のスタースクリーム が出来上がったわけだ。ラチェットがリペア中に何度か睨んできたのが悪戯が ばれたからだとは思いたくない。 「ん、起きたか?」 スタースクリームの寝室まで行って、スタースクリームの為にと用意された寝台へ 寝かせてやればスタースクリームは身じろいだ。 明滅するアイセンサーを覗き込めばスタースクリームはしっかりとこちらを見つめ 返してきた。 笑いかけながら「わりぃな」と声をかけるとスタースクリームはゆっくりと自分の 背中に手を回し、羽の近くに手をやった。 次の瞬間には羽が変形し、ブレードの柄の部分を手前へ引き出すとスタースクリーム はそれを素早く引き抜いてジェットファイヤーの首元をかすめた。 「あっぶね!!」 「…」 「ちょ、ちょっと待てよ!」 「黙れ…!」 「悪かったって!」 ギリギリのところで避けると剣先は向きを変えて素早くこちらへと向かってきた。 それも何とかかわす、ブレードに赤い光りが灯り本気で殺しにきてるのがわかる。 何度も攻撃してくるスタースクリームを避け続けると赤い残像を残すほどの スピードで振り下ろされるブレードが今の今まで自分が寄りかかっていた机を 真っ二つにした。そこで斬撃が一度止むとスタースクリームは無言で寝室の 鍵をかけた。 「わっ、スタースクリームそんなに俺と二人っきりに」 「邪魔が入ったら困るからな…」 真っ赤な目が殺意を帯びながらこちらに振り向くと再び剣先がこちらを向いた。 まいった、こんな狭い場所じゃ何度も避け続けるのは無理だろうし、スター スクリームもそう何度も避けさせてくれるほど優しくない。 「ごめん、スタースクリーム」 「…」 「何度も謝ってんじゃねぇかよ、そう拗ねんなって」 スタースクリームはアイセンサーを極限まで細めて白い機体を睨みつけていた。 謝る態度は誰が見ても「とりあえず、仕方ないから謝ってます」と言っている しかし本来なら土下座でもするべき状況である。 いくら金属生命体でも性的悪戯は犯罪である、ましてやスタースクリームのように プライドが高い男には屈辱であろう。 スタースクリームがもう一歩こちらに近寄ってくるのをみてジェットファイヤーは 気合を入れなおした。幸いなことに周りが見えていないどころか自分の剣筋が 鈍っていることにも気付いていなさそうだ。 斬りかかって来た所を一度避ける、今度は電灯の一部が斬れたがさほど問題はない と思われる、スタースクリームが避けた自分へと視線を定めなおし武器を構える その腕をジェットファイヤーは見た。 正確に腕と、手に持たれるウィングブレードの軌道を測定すると曲げられている 肘関節の部分を強く叩いた。その反動で勝手に伸びた腕に手をやると手首を捻る ように掴み、少し痛いだろうが肩から捩れるように回すと小さい悲鳴と共に ウィングブレードは床へと落ちた。 「よし、っと」 「くそっ…放せ!」 「待て待て!そう怒んなって」 放せというスタースクリームの言うとおりに手を放してやるとスタースクリームは 数歩下がった。ジェットファイヤーの足元に落ちる自分の羽を恨みがましく見つめて くるので拾い上げてスタースクリームへ差し出してやる。 「なっ…」 「ほら、受け取れよ」 「…」 奪うようにブレードを手に取るとスタースクリームは少しばかり躊躇を見せながら 羽に形状を戻した、しかしその間合いと警戒を解く気はないようだ。 ジェットファイヤーはため息を一息ついて両手を何もしないと上にあげた、どうして こんな親に捨てられた子猫のように警戒心が強いんだよ。 まぁ、確かに捨てられちまったんだけどな、こいつは。 「悪かった、あんな事するつもりなかったんだ」 「…」 「それに、あんな状態のまま放置されるのも嫌だろ?」 「放っておかれた方がマシだ!」 「え、俺だったら絶対無理」 「お前とは違う」 「…だったら、ちょっと俺に付き合ってくれよ」 「は?」 多少警戒心の落ちたスタースクリームに一歩近づくとスタースクリームは3歩下がった。 背中を壁にぶつけて驚いたのか結構大きな声で悲鳴を上げたスタースクリームは それを恥だと思ったのか口に手を当てて頬を染めた、それが可愛く見えたのは あの喘ぐスタースクリームを見たからって言うのもあると思う。 「な、なん…だ」 「お前だけイって、俺はなしって納得いかないんだよな」 「イ、イッてない…!」 「何言ってんだお前、イッたろ。ちょっと触ってくれるだけで良いからよ」 「さわっ…!?」 スタースクリームが折角しまった羽にまた手を伸ばした、まだ変形を始めていない 羽の形をしているがすぐにでも引き抜けるだろう。 「ふざけるな!」 「…駄目か?」 「駄目に決まっている!私はこんなことの為にここにいるのではない!」 「…そうかー…じゃあせめてキスさせてくれ」 スタースクリームが硬直した。それは傍目で見てわかるほどに、先ほどまで 荒ぶっていた声も表情も羽に回した腕も全て硬直してジェットファイヤーを 見つめ続けた。 「キスしたことないのか?」 「ばっ馬鹿を…!」 「じゃ、あるのか」 「っ…」 ジェットファイヤーがスタースクリームにもう一歩近づくのに気付かないまま スタースクリームは記憶を漁っているのだろう、視線を左上に向けて考える顔を 晒した。 「…昔一度だけある」 「へぇ、あるのか」 「…もういいだろう、出て行け」 「いやいや、キスさせてくれって」 「断る」 「ちゅーだけで良い」 「嫌だ」 「…イッちまった事、ホットロッド達に言うぞ…」 「っ…き、さま…」 流石にこれは自分でもどうかなと思った、あの正義のサイバトロン、中でも 自称紳士を名乗っているこのジェットファイヤー様がこんな脅しのような真似で キスを迫るだなんてどうかしている。 その脅しはかなり効果があったのかスタースクリームは羽に伸ばしていた手を ゆっくりと力なく降ろした、それを許諾と取って手を握り締めるとスタースクリームは 面白いほど飛び上がった。 「そう驚くなよ…」 「待て、待て…!」 マスクが収納され、口が露出するとスタースクリームは観念したのか身体を小さく 丸めるように下を向いた。ジェットファイヤーが下を向こうとする額に自分の 額をぶつけるとスタースクリームの真っ赤になった顔が見えた。 「…するぞ?」 「あ、ぅあ…」 「…」 スタースクリームの薄い唇に自分の唇を重ねるとスタースクリームの唇が震えて いるのがわかった。可愛い奴だなと思いながらそこを食む。 舌はまだ押し込まず、唇を何度も吸うと身長差をあわせるようにスタースクリームは 微かに上を見上げた。舌でべろりとその表面を舐めてからゆっくりと歯列をなぞる ように舌を入れていくと息をしづらいのか過呼吸気味に息をする。 慣れてないんだな、と舌をずいずい押し込んでいく。 「ん、んん…」 「やっべ、ちょっと…」 「も、う」 「可愛すぎね…?お前さ」 「やめろ…やめろ私は、」 「…お前にキスした、前の奴って誰だ?」 「…っうるさ…」 何度も何度も放しては塞いで、塞いでは中を侵して、そして放れてを繰り返す。 スタースクリームは誰とだという質問に答える気はないようだ。 「前のってどんなだった、気持ちよかったか?」 「覚えてない」 「そっか」 じゃあ上書きする気持ちでもっと深くまで侵していこう。昔の、恐らくは メガトロンだと思うキスの感触なんて思い出さなくて良いくらいに。 だってこいつはもうサイバトロンなんだから、デストロンのことなんてもう 思い出さなくても良いだろう? スタースクリームの右手を掴んで自分の下腹部へと導いた、驚いて腰の引ける スタースクリームの腰を自分の右腕で引き寄せて放さない。 「や、やめろ…!何をさせ…っ」 「好きだぜ、スタースクリーム」 「っ」 「最後まではしない、だから俺と気持ちよくなろうぜ」 唇をもう一度ふさいだ、文句なんて聞きたくない。 スタースクリームの手を自分の足の付け根へ持っていきそこを触らせると スタースクリームは本当にゆっくりだが自分で指を動かした。 舌を絡めるように動かせばスタースクリームはアイセンサーを細めてうっとりと した表情をジェットファイヤーに曝け出し、身体の緊張を解いた。 これはオッケーって意味だよな?いいんだよな?とジェットファイヤーは内心 何度も問いかけた、しかし実際に口に出さなかったのはスタースクリームはきっと 聞いて欲しくないと踏んだからだ。 「スタースクリーム、好きだぜ」 「…」 スタースクリームが俯いた、一瞬表情が見えなくなるが拒むような表情 ではなく、アイセンサーを数回明滅させただけだった。 もう一度唇を催促するように鼻筋を噛めばスタースクリームは自分で上を向き その口を差し出した。 できることなら最後までしたい、リペア時に見つけた、恐らくはメガトロンが 壊したのであろうレセプタクルを自分で埋め尽くしたい。 アイツみたいにこいつを壊すような真似はしないと誓えるし、あんな愛も 知らないだろうデストロンの大帝にこれを渡したくはなかった。 それでもジェットファイヤーは接続を実行には移さず、今回は触りあうだけで、と 我慢した。同意はしてくれないが自分の行為を受け入れてくれているスター スクリームと自分の間にはまだまだ無限に時間が転がっている。 これからゆっくりとスタースクリームとの仲を深めていって、それから告白の 返事を受け取る事だって出来る、それからでも接続は遅くない。 ---------------------------------------------------- 副スタでした。導線ミスの続きとしてリク有難う御座います! M伝副スタはリク数が少なかったので1本のみになります、えろは なしにしました・・!えろ祭で書きまくったからね!自重する2010年。 以下リク者様へ! 7日22時様23時様有難うございました!大変遅くなり申し訳御座いません! えろ祭「導線ミス」の続きということでリク有難う御座います!お二方とも えろ指定はなかったので中途半端な部分で終わらせて頂きました! 副スタならボコリ愛でも甘甘でも〜!という言葉に甘えてどちらもいれました(笑) M伝は初代に比べるとあまり見かけなくて管理人も(´・ω・`)ショボンとしてます。 これからもM伝はちょくちょく書き続けていきたいですね、スタスク可愛いよスタスク! リクエスト有難う御座いました〜^^(以上反転でした) ↓オマケ 頬をなぞる指は大きくそして緩やかだった。 「スタースクリーム」 「…メ、ガトロン様…」 「もっと、気を抜いても良いのだぞ」 「え、あ…はぁ」 どうしてこの方はこんなことをするのだろう。口などフェイスパーツの 一つに過ぎないのに歯で唇で何度も触れてくる。 スタースクリームはメガトロンのキスを甘んじて受けながらも疑問にブレイン サーキットの半分以上を奪われ集中できずにいた。 感触も、味も何もなく、ただ触れられているという事しか認識できず メガトロンはそんなスタースクリームの心情を全て読み取って笑いかける。 「スタースクリーム」 「あ、はい…」 「わからんか」 「…自分には理解、できない」 「楽しめスタースクリーム、自然と感じればいい」 「…」 口内を自分よりも大きな舌と歯が荒らす。丁寧なのに、大きくうねる舌が口内 オイルをかき混ぜて顎より零した。 メガトロンが微笑みながら自分のそんな表情を見てくる。なにか、気持ち良かった。 大帝が自分に興味を持ってくれるところ、触れてくるところ、舌の動き、メガトロンの 声。全てが自分に快感を与えてきていた。 ゆっくりと床へ押し倒される、恐怖はなく、ただ緊張だけが残っていた。 地球も何もしらない自分はメガトロンを軽く崇拝していて、あの強い大帝が 自分を見ているというだけで喜びがこみ上げてくる。 「スタースクリーム」 「…はい、メガトロン様」 「お前のことは他の誰よりも気に入っている」 「…」 スパークがばくばく音を立てた。気に入っていると言われただけじゃないか そんなにも喜ぶな、自分が愚か者のようで、恥に思える。 「この感情の名は『好き』に近いかも知れんな」 「…メガトロン様…」 「…お前はどうだスタースクリーム」 「…自分も、同じ、気持ちです」 メガトロンが笑った。 これからもこの方について行きたいと思っていた。 どうして忘れていたのか。 「好きだぜ、スタースクリーム」 言われて全て思い出してしまった。 メガトロンにキスされたのはあの遥か昔一度だけ。 その後も地球に来てからもたびたび抱かれることは合ったが唇を重ねることは なかった。 だから忘れていたのかもしれない。 「スタースクリーム、好きだぜ」 「…」 『この感情の名は『好き』に近いかも知れんな』 じゃあどうして捨てていったんだ。メガトロン。 鼻筋を一噛みされ、上を見れば自分よりも一回り大きいジェットファイヤーが 笑っていた。同時に悟る、自分はここにはいられない。 ただ、今だけは楽しませてもらおう、あの方が言ったように自然と感じてしまえ ばいいだけの話だ。 自分でジェットファイヤーの唇を塞ぐために顔を近づけた。 その数日後、スタースクリームはサイバトロン軍を去った。