スタースクリームは特別性欲の強い固体ではない。
しかし気持ちが良いものに触れればもはや個体値など問題ではないと思っている。


「閣下ぁっ…か、…」
「中で出すぞ、いいなスタースクリーム」
「はいっ…は、い」

たとえこんなでもだ。




触手くんと副官ちゃん




スタースクリームは静かにコンソールと呼ばれる制御盤の前に立っていた。
カタカタと指を動かして今後のディセプティコンの活動を見る。
どんなにシミュレーションしても良い結果はでないのだからため息も耐えないが
これは現時点の兵力を考えてのシミュレーションであって、卵は換算されていない。

はやく産まれれば。

しかしそれにはエネルギーが必要なのだと話は一巡して戻ってくる。
エネルギーを手に入れるにはどう考えても惑星探査が必要だし、手っ取り早く
まだ地球にあるかもしれないオールスパークの欠片へと意識を持っていっても
「オプティマス・プライム」という恐ろしい存在が脳内をちらつけば地球に
行く気にはなれなかった。

「…」

地球に行くには兵力が欲しい。兵を手に入れるにはエネルギーが必要。
エネルギーを手に入れるにはオールスパークの欠片か惑星探査。しかし惑星探査は
行方知れずになったメガトロンを探す際に幾つもの年をまたぎ調査し尽くした。
また新たにフロンティアと呼ばれる新境地を探すにはやはり兵が必要だった。

「…うう」

大体どうして私がこんな悩まなくてはいけないのだ?
スタースクリームはエネルギー、兵力、卵、オールスパークの欠片と話を数巡させた
後にアイセンサーをコンソールへ落としながら思った。

閣下は、少し荒れているし、と内心愚痴も吐く。
オプティマスプライムにやられた閣下はリペアを急ぎ、現時点において未だに安静に
しておいた方が良いと判断した。
唐突に何を思ったのか出撃するととち狂った発言を大目に見れば安静にしている
方だろう。時には一人でふらふらと他の惑星に行くこともあるようだがスタースク
リームは一度止めただけでそれ以降は止めていない。顔の原形をとどめないほど
殴られたくなければこれが最も正解に近い。

閣下は何を考えているのだろうか、粗暴だが決して頭が悪いわけではないあの方には
何かしら考えがあるのだろう。きっとリペアが終わればまた地球へ行くことになる。
それまでに卵をどうにかするのが自分の仕事なのだが、それもなかなか上手くは
いかないものだ。

だから自分も出来るだけコンディションを整えておきたい。日々そうするように
心がけても居る。
なのにメガトロンは唐突にスタースクリームを抱くことをやめない。
名を呼び、壁か床に押し付けられ、一発目は必ず殴るでスタートしてそれから
腰に手が回れば行為の始まりを意味していた。10発連続で殴られれば
行為は目的でなく、殴りにきただけ、これも最近理解した。

殴るだけに来たのに「私を抱きたいなら好きにしてください」などと
生意気を言った時は酷かった、それこそボコボコで。その辺に捨ててある鉄の
塊と見比べてもそう遜色ないほどに酷かった。

かと言って行為にきたのに「殴らないのですか」といえばこれも酷い目にあう。
だから閣下が来た時には喋るのをやめた。
ただ、あの方の行為の技術は凄いと思う、縋りつくのをやめられなくなる効果を
もっているのだ。


そこまで考えてスタースクリームは隣を見た。
アイセンサーを向けた先には触手が動き、自分を見ている。

「……なんだ」

自分の目の前、数十センチの距離に触手が近づいたのでスタースクリームは
その触手の先を指で摘まんだ。まるで指をさされ、その先を摘まむような仕草は
自分でも気持ち悪いと思うが指ではなく触手なのだからいいだろう。

「…」

隣の椅子へ座った存在はサウンドウェーブだった、いつこの部屋へやってきたのかは
わからないが触手をにょろりと動かすだけならそこまで邪魔じゃないので
追い出すようなことはしなかった。

「メガトロンと」
「なんだ」
「接続したか」
「…ああ」

スタースクリームは考えを読まれたのかと思ったがすぐに返答を返した。
こいつはメガトロンが気まぐれにスタースクリームを抱くのを知っている数少ない
ディセプティコンの1体だ。
スタースクリームはコンソールで少しはなれた惑星にエネルギー源がないか
調べ続けていた。それを同じように見つめるサウンドウェーブは触手以外動かない
物のような男だった。

「俺と」
「お前とはしないぞ」

暫くの静寂が生まれる。
多分外れていないだろう、サウンドウェーブの言いたいことはメガトロンより
多少読みやすい、多少…だが。

「何故だ」

外れていなかったらしい。横目で見ながらスタースクリームは続けた。


「メガトロンにばれたくない」


これがメガトロンが好きで、あの方以外に抱かれたくないなんて気色悪い
理由でなくて良かったとスタースクリーム、サウンドウェーブ両名が思った。
メガトロンが居ない間、スタースクリームはサウンドウェーブに抱かれていた。
無理やりではなく、同意の上で。決して拷問ではなく、快楽を求めて。

スタースクリーム自身はそこまで快楽に執着してはいなかったが
サウンドウェーブは違っていた。年中あの真っ暗な宇宙空間にいる彼は
破壊を司る大帝の率いるディセプティコンの中でも特別陰湿と言う存在だったが
誰かに触れなくてはならないと思うらしい。
宇宙空間に何年も一人で居ると溶けてしまうと彼は言った。
スタースクリームは首をかしげ、機械が溶けることはないと告げたがサウンド
ウェーブは首を左右に振って「溶ける」と言った。
だから、抱かせてやった。

こいつとの行為は事務的だったが接続してしまえば声が絶えず漏れるのは
スタースクリームの方だった。メガトロンのように縋りつきたくなるような接続
ではなく、共に満足するような、行為だった。だから嫌いではないのが本音。
もし、メガトロンが許可するようなら別に続けても構わないくらいだったが
あの独占欲の塊がそんなことを許可するはずがなかった。


「接続は暫くできないのか」
「…そうなる、な」


スタースクリームは顎に手を当てて考える様な仕草をした、見つめてくる
サウンドウェーブの視界から逃れるようにアイセンサーはコンソールに落とした
ままの状態でだ。

先ほどまで摘まんでいた触手がスタースクリームの腕を掴んでサウンドウェーブの
方へ向くように引っ張るとサウンドウェーブの両腕がスタースクリームの両肩を
掴み、コンソールへと倒した。

「は?」
「お前が残念そうな顔をするので」
「…」
「空気を読んだ」
「してないぞ、このくそ衛星!」

サウンドウェーブを押し返すと力が拮抗した、触手が脇腹を撫でてくると
力が抜けそうになり焦った。

「っ…死ね!」

手加減してやっていたが焦りが勝ると腕を変形させて6連式ミサイルを顔面に
叩き込んでやった。
小さいうめき声を上げて飛び退いたサウンドウェーブに蹴りを一ついれて
立ち上がると自分の身体をチェックした。変なところはなさそうだ。

「何をしている…」
「っ…閣下!」
「…」

メガトロンが物音に訪れるとサウンドウェーブを見下ろし睨みつけてくる。
スタースクリームは慌てた。

「お、愚かなことを申し出たので制裁を加えました」
「…」

両膝を床につけ顔を抑えるサウンドウェーブをメガトロンは一瞥すると
小さくため息を吐いて背を向けた。

「加減しろ」
「了解しました」

あんたがそれを言うかと突っ込みたくなるのを堪え、一礼した。
時には自分の腕をもいだり、羽を折ったりするくせに顔にロケットランチャーを
打ち込んだだけで加減しろなどと言われる筋合いはない。

サウンドウェーブに近くで屈むと再び部屋からでていったメガトロンを見ながら
小さい声で囁いた。

「接続はもうしない、閣下にバレたらお互いどうなるかわからないのだ」
「…」
「特にお前は痕をつける、ばれないはずがない」

そう言ってサウンドウェーブをコンソールルームからたたき出した。
仕事の邪魔だと判断したからだ。





*




今日も今日とてコンソールルームにて惑星を探す。
既に5回ほどエネルギー、兵力、卵、オールスパークの欠片という考えを巡らし
特にエネルギーなどみつからないだろう新たな惑星を探していた。

「…はぁ」

見つからない、このテンプレートのような一連の流れも飽きたなと
スタースクリームは背中の羽を動かした。
とんっと肩を叩かれそちらの方向を見ればサウンドウェーブが、いや触手が
肩を叩いていた。
その触手を指先で摘まむと「なんだ」と声をかける。

「今日からまた宇宙に出る」
「そうか、どうせ成果も上がらないがな」
「…」
「…なんだ?」

サウンドウェーブがゆっくりと両肩に手を伸ばしてきた。
スタースクリームはアイセンサーを細めながら両腕をミサイルポッドへと変形させ
いつでも打ち込む準備は出来たと見せびらかす。

「スタースクリーム」
「どうした」
「メガトロンがここから片道1日の惑星に行った様だ」
「そのようだ」

でかけるとは聞いていた、だからその言葉に驚きはしない。
サウンドウェーブは頷くと今度は両手をしっかりと両肩にかけたので
ミサイルポッドをサウンドウェーブに向けた。

「今から引き返してきても18時間は戻ってこない」
「そうか」
「接続できる」
「…お前は話を聞いていたのか、私はもう二度とお前とは」

サウンドウェーブの口がスタースクリームの口へぶつかった。
スタースクリームは硬直したがすぐに離れたため軽く拭って「なんだ」と聞いた。
キスの存在を知らないわけではなかったが、サウンドウェーブが自分にした行動が
キスだとは思わなかった。ただ、身体の一部が接触した。スタースクリームは
メガトロンには一度もされていない行動に首をかしげた。

「今回の地球偵察、及び情報操作は8ヶ月を予定している」
「そうか」
「溶ける」
「溶けないとこの間も言ったはずだ」
「痕は残さない」
「…いや、お前は残す。残すなと言っても残す」

サウンドウェーブはじれったそうに触手を動かした。
スタースクリームは黙ってそれを見つめた後、ミサイルポッドに変形した腕に戻す。
その腕を広げるとサウンドウェーブは腕を見て、スタースクリームの顔を見た。

「接続はできない」
「…」

サウンドウェーブが倒れるようにスタースクリームの胸に身体を寄せた。
触手が動き、スタースクリームを抱き込むように背中をサウンドウェーブの方向へ
押した。きつい、と思ったがスタースクリームもサウンドウェーブの背中に
腕を回してやった。これで情報活動に支障が出ないというのなら安いと思うだろう。

サウンドウェーブがスタースクリームの表情を見るように動き、再び唇を塞いだ。

「なんだ」
「…」
「?」

スタースクリームが首を傾げると再び唇を塞いだ。その後も何度も塞ぎ、時に噛んだ。
ちょっと考えればどうしてサウンドウェーブがこんな行動に出るのか理解するのは
そんなに難しい話ではなかった。しかしスタースクリームの考えなくてはいけない
問題は多く、最近ではエネルギー、兵力のあの一つの流れを持つ問題だ。

サウンドウェーブが強くスタースクリームを抱きしめた。
スタースクリームは抱きしめられながらでもその問題を考えることが出来ると
気付くと抱きしめられたまま卵に必要なエネルギーはどこで手に入るかと
考え始めた。
だから、後18時間くらいなら、抱きしめさせても構わないだろう。






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変態触手くんとドM副官ちゃん。

珍しく寛容なスタスクと結構喋る音波さん。
ただ「空気読んだ」発言させたかったと言う管理人が通りますよ。

スタスクは快感に興味はないけどやることはやってるタイプ。
かつ上から高圧的に攻めていいのはメガ様限定で音波さんの場合
お願いする立場と言うことを忘れんなよこの野郎とか思ってそう。

隠れなきゃいけないのに闇に溶けそうで怖いからいつも青い光りを放ってる
音波さんとか凄い萌るんですけど(妄想乙)