「ナイトスクリームさん」
「どうした」


声をかければデストロンではあまり聞くことが出来ない静かな声質がかえってきた。
あぁ、素敵な声だ。その声で是非言って欲しいと思っているんです。

「シックスショット?」


熱い装甲の中、奥深くにあるスパークがじんと震えた。



ブラザー




「何してるんですか?」
「仕事だ、お前こそ何をしている」
「休憩中です、貴方の様子を見にきてみました」
「…?」

ナイトスクリームはしゃがみ込み仕事する手を止めて顔を微かに傾けた。
突然の訪問者シックスショットに視線を向けて黄緑色のアイセンサーを光らせると
追い出すでもなく招き入れるでもなくナイトスクリームは自然な態度で受け入れた。

「ガルバトロンの傍にいなくて良いんですか?」
「お一人で休みたいとの事だ、私は私の仕事をする」
「そうですか、では近くに居させてもらってもいいですね」
「…何を言っている」

ナイトスクリームは視線を元へ戻すと壊れた機材のケーブルを手で引き寄せて千切れた部分の
修復にあたった。細い指がケーブルたちを引き寄せるのを見てシックスショットは笑った。
それは声には出さず、表情にも出ないため自分だけにしかわからなかった。
シックスショットはナイトスクリームを好んでいた。好きや愛などと言うものではなく
自分の名を呼んでくれると言うその部分だけがシックスショットを震わせた。
あえて言うなら自分をレーザーウェーブと言う兄と同一視しなく、そして自分に初めて
優しく接してくれた他人でもある。優しくというのはデストロンの中での話であって
特別自分を可愛がってくれているわけではなかったがそれでもシックスショットは
その事実にスパークを震わせていた。

「…ナイトスクリームさんの手って綺麗ですよね」
「考えたこともない」
「綺麗ですよ、ほら、僕には手がないですし」
「…自分で改造したのか」
「えぇ、兄も喜んでくれました」
「…」

ナイトスクリームは一瞥するようにシックスショットの腕を見た。両腕がアンバランスに
大きく、どちらの腕も強力な武器だ。シックスショットは自慢でもあるその両腕を
ほら、と見せびらかすように構えたがナイトスクリームは視線を機材へと戻した。

「褒めてくれても良いんですよ」
「お前は変わった奴だ」
「そうですか?ナイトスクリームさんほどじゃない」
「…」

ナイトスクリームが意外そうに頭をあげるとシックスショットはふふふっと声に出して
笑った、あざ笑うでも本当に楽しそうでもなく、聞かせるように笑いナイトスクリームの
隣に座った。

「捕まってからここに来るまで名前で呼ばれたことなどなかった」
「それは」
「それにナイトスクリームさんは僕を馬鹿にしない」
「…」

どいつもこいつも自分を馬鹿にする、罵り殴り、レーザーウェーブの弟と呼ぶ。
使えない奴だとガルバトロンに言われても、新参者だと他の連中に馬鹿にされても
ナイトスクリームだけは自分を名前で呼んでくれる。「やれ」ではなく「やれるか?」と
聞いてくれる。

「ナイトスクリームさんは僕の味方ですよね」
「…味方ではない」
「えっ」
「私はガルバトロン様のために動くだけだ」
「…酷いなぁ」

それが事実なのは知っていた、この玩具はあの絶対主君の言うことしか聞かない。
どこをどう改造したら僕のものになるのかな、と考えたこともあるがこのナイトスクリームと
言う玩具はとても強くて自分では適わない、もしかしたら兄よりも強いかもしれない。
それに普段はあの主君の近くに居て自分はまったく手出しできないだろうし、いつか
チャンスが巡ってくることを祈るしかない。

そういえば、兄はこのナイトスクリームを見て何か思わなかったんだろうか。自分と兄は
興味を引くものが似ていたから何かあってもおかしくないはずなんだけどな。

「ナイトスクリームさん」
「なんだ」
「名前呼んでくれません?」
「どうしたシックスショット」
「…」
「嬉しそうだな」
「えぇ、嬉しいです」
「そうか」

今は隣にいるこの状況を楽しもう。このガルバトロンの懐刀が自分を見てくれるこの現状を。
他の連中が自分を馬鹿だと罵るのを見て見ぬふりしているのは同罪だとも言えるが
それでもシックスショットは自分の名を呼んでくれるナイトスクリームを好んでいた。
大帝を筆頭に残りの馬鹿達はいつか僕にひれ伏すだろう、自分が必要だと頭を下げるんだ。
ガルバトロンには土下座させるつもりだ、その時ナイトスクリームさんだけは許してあげる。

「ナイトスクリームさん」
「…なんだ、シックスショット」
「ふふ、ふ…」
「…シックスショット」
「はい、はいナイトスクリームさん」

くすくす笑い、頭にはえる2本の角を忙しなくぴこぴこと動かした、ナイトスクリームは
そんなシックスショットを罵ることもなく、一本のケーブルを直し終ったところだった。
もう一本引き寄せてその故障箇所をチェックしながら横目でシックスショットの表情を
盗み見るがやはりフェイスパーツが隻眼一つのシックスショットから心を読み取ることは
できない。それでもナイトスクリームはいつでもブレードを引き抜けるよう警戒心を
高めていた。





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迸る変態臭に警戒心MAXなナイスク。その内続く。

最初の方は凄い良い子なんだけど徐々に精神崩壊していくシックスショットが
可哀想でもあり好きでもあると・・

トレッドとシックスショットの初対面が
「僕、武器製造の技術者なんですよ!」って言うシックスショットと
「誰これ!誰こいつ!」なアイアントレッドと
「(なんでわかんねーんだよ、見た目でわかるだろjk)」なナイスク。(いやなナイスクだ)

誰なのこれってナイスクに聞いてナイスクが無言でトレッドを睨む(見つめる?)とことか
まさに(なんでわかんないんだろ…)って言ってて良いよね!
その後「アイアントレッド、彼に手を貸してやれ」って言うナイスクが好き過ぎて困る。
しつこく誰これ誰これ!って続けるトレッドに「言ってなかったか?(´ω`#)」(声色が
若干呆れ怒ってます)なナイスクさんが好き過ぎて困る。って言うかナイスクが困る。
って言うか41話はほんっとナイスクだらけで俺得すぎる。