サウンドウェーブは大きなモニターを見ながらコンソールと、また別にある
タッチパネルで様々な情報を動かしていた。
どうやら今日は全員出払っているのか誰もいない、しかしそれがとても仕事が
はかどる理由でもある。
しかし扉がスライドする音がして振り返るとそこには紫色の機体がいた。


「サウンドウェーブ、おめでとう」
「…は?」


目の前にエネルゴンをぽんと置かれた。大きなキューブにだいぶ濃縮されている
高濃度高級エネルゴン。
しかも相手はスカイワープ、自分のエネルゴンは滅多に他人に渡さない奴が
理由もなく自分にエネルゴンを渡してきて、なおかつ「おめでとう」なんて
言葉が飛び出したのだから驚くに決まっている。

「あ、サウンドウェーブ」
「?」

扉の方から水色の機体が来た。それがサンダークラッカーだとわかると同時に
すっと手元に何かを渡される。視線をやればそれが宇宙有線でよく流れている
有名なシンガーソングライターのベストアルバムだとわかった。

「…どうした」
「あれ?これじゃなかったか?最近よく聞いてたから」
「…あっている」

手を差し出すと名曲がつまったディスクを置かれた。安いものではないだろう。
ますますわからない。最近このデストロンでも美形だと言われるジェットロン
2体に何かしてやったこともないし、おめでとうと言われる何かもない。
首を傾げると「おー」と聞きなれた声が室内に入り込んできた。

「ここにいやがったか」
「スタースクリーム」
「ほらよ」

今度は随分と小さい、しかしそれが何かはサウンドウェーブにはすぐにわかった。
その小さいディスクにはサウンドシステムなら喉が手が出るほど欲しいサウンド
システムの能力向上データでもあるダウンロード可能なデータだった。

「これは」
「サウンドシステムのことなんか知らねーから高いやつなら何でもいいだろ」

セイバートロン星でも有名ブランドのアンプなど、電圧増幅可能な電子回路
データがつまったそのディスクとスタースクリームを何度も見比べる。
こちらも値段的にも生産量的にもそう簡単に手に入るものではないだろう。

「不服かよ」
「いや、そうではない」

スタースクリームが隣の椅子にどかっと音を立てて座ると目を細めてモニターを
見た、そのスタースクリームのインテークにスカイワープ達が手をかける。

「なに、あれスゲーの?」
「てめぇらのプレゼントより遥かに入手困難なもんだよ」
「へぇー」

嬉しい。がわからない。
戦争が始まってから中々飲めなくなった超高濃度エネルゴン。
地球やセイバートロン星からじゃ手に入らない有名シンガーのアルバム。
中々手に入らない高級能力向上データのつまったディスク。

サウンドウェーブは顔にも雰囲気にもださなかったが嬉しかった。
どれも欲しくても一朝一夕では手に入らないものだし、参謀でもある自分が
そんなものの入手に躍起になって周りや大帝に失望されたくはない。

「それで何が目的だ」

3羽が振り向く、全員目をぱっちりと開きこちらを見てくる。
その3羽がアイコンタクトを取ると立ち上がって外に出て行こうとした。

「待て」
「お前覚えてねーの?」
「なにがだ」
「いや、俺らもメガトロン様とレーザーウェーブの会話聞いただけだし…」
「たまには労おうって思っただけでぇ、じゃあなー」

スカイワープが手をさっとあげるとその場で空間をゆがめ、紫色の大気の揺らめき
だけを残して消え去った。
スタースクリームとサンダークラッカーは徒歩ででていくようだ。
デストロンが見返りも求めずそんな行動に出るなんて何かがあるに決まっている。


「サウンドウェーブ、ご苦労」
「メガトロン様、データをまとめるのにまだ時間がかかる」
「いや、それじゃない。これを受け取れ」
「?」
「レーザーウェーブからだ、セイバートロン星でできあがった武器らしい」

右肩にあるエレクトリックランチャーとそっくりな武器を手渡される。
しかし中の構造は大分向上しているようで威力、耐熱度、エネルギー容量、強度
全てに改善が見られている。素晴らしい技術力だ。

「お前のためにつくったらしい」
「…俺の」
「そうだ、それからな、サウンドウェーブ。明日から部屋を変えてもらえるか」
「部屋を?」
「あぁ、新しく寝室をこしらえたからな、最上階だ」
「なに」
「一回り大きく、機材のレベルもワンランクあげた。寝台も大きくしてある」
「何故」
「忘れてるのか、お前も仕方ない奴だな」

大帝は微笑んで背を向けた。
扉がスライドするとメガトロンと入れ違いに入室してくる奴らがいる。
大きさは小さいのが2体に、4本足の音もするところから自分の忠実な部下達
カセットロンであることがすぐにわかった。

「サウンドウェーブ!」
「サウンドウェ〜ブ!」

ジャガーの背中に止まるコンドル達もこちらを見ながら羽を動かしている。
そちらに身体後と向けて少しだけ身体を屈めるとフレンジーが飛びついてきた。

「ぐっ…!」
「おめでとう!」
「おめでとー!」

にこにこ笑うカセットロンは声をそろえて「「じゃーん!」」とジャガーの方を見た。
自分もつられて見るとジャガーの口に小さな箱がある。
箱にピンクのリボンが巻きつけられ、そのリボン部分を口ではむと揺らしながら
こちらへと持ってくる。

「ジャガー…」

頭を一撫でしてからその手のひらサイズの小箱を受け取る。
ふわふわのリボンを丁寧に外しているとランブルが声をかけてくる。

「これ、サンダークラッカーに頼んで結んでもらったんだ」
「そうか…」
「意外に器用だよなぁ」

リボンを解き終えると中からクリスタルが出てきた。それは決して大きくないが
きっとスタースクリームが見たら欲しがるだろうなと少しだけ笑う。

「…今日はどうした」

机の上に並んだもらい物の数々を一瞥し、呟きながらそう言うとカセットロンは
目を合わせてきょとんとした。そしてコンドルがこちらへ飛んでくると肩に止まる。
コンドルは何か言いたげにばたばたと羽を動かした。それを見ているとフレンジーが
仕方なさそうに笑った。


「今日はお前の製造年月日だろ?」
「地球じゃ誕生日って言うんだぜ」


サウンドウェーブは少しだけ頭を動かした。
まったく気付いていなかった、いや、昨年も一昨年も祝われなかった。
どうして突然、どうしてデストロンの皆がそんな行為に走ったのかわからない。
ただそんな疑問はすぐに吹き飛んだ。


「「おめでとう、サウンドウェーブ!」」


カセットロンが笑う。それにサウンドウェーブは小さく頷き返した。


「ありがとう」





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あまり長くないのでリクの数には含ませません。
サウンドウェーブSS、吟遊詩龍様リク有難う御座いました。
音波さんは皆に労われるのを望んでもいないし労われても
ポカーンだと思う。この後他の連中からもプレゼントもらったら
いいと思います。企画者はメガ様かな!
リク者様は反転をどうぞ。
リク有難う御座いました〜!ちゃんとしたリクでなく、SSという形で
本当申し訳ないのですが音波が皆に愛されてるSSです。ギャグにならなかった
ことをお詫びもうしあげます。orz
(以上反転でした)